IS-Black Gunner-   作:reizen

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たぶん最近感想が来ないのはつまらないんだろうなぁと思いつつ、それでも書くことは止めない。止められない!!
さぁ、年末だ!!


第28話 異常な予感

 ラウラが気が付いた時にはIS学園に停車するモノレールの中だった。唐突の処分に呆然としていた彼女はISスーツのままだったのだが、周囲の注目は幼い頃から慣れていることもあって平然としていた。少し問題があるとすれば、ほとんど夏だが寒いという事だろう。

 次の駅で降りて、一度IS学園に戻ろうと考えたラウラ。駅に降りた瞬間、ガラの悪い男に囲まれてしまった。

 

「お前、IS学園の人間だろ?」

「あそこって託児所でもしてんのかよ」

 

 つい最近に限っては正解を言った男に対して少し興味を持ったがすぐに視線を逸らしたラウラ。それをどう捉えたのか男たちはラウラを囲う。

 

「おいガキ、テメェ」

 

 一人が腕を伸ばしたところを反射的に掴んだラウラはそのまま捻って相手を倒した。

 

「何しやがるこのガキ!!」

「おいここでは目立つ。お嬢ちゃん、酷い目に遭いたくなければ俺たちに従え」

「………」

 

 ラウラは抵抗せず駅の外に付いて行き、人気がない鉄橋の下に移動した。さらに奥に移動しようとしたところで黒いスーツを着用した一団とすれ違うと、ラウラを囲っていた男たちを抑える。その様子もラウラは特に何することもなく、ただ呆然と眺めているだけだった。

 スーツ姿の一人がラウラに対して嘲笑している。その顔を見てラウラは相手が軍の関係者だとアタリを付けたが、いつもの癖でしただけでこれと言って抵抗はしないでいた。

 

「ふん。これがあの黒兎隊の隊長かよ」

「元、だろ。しかし落ちぶれたな。生意気なメスガキが―――」

「あ、ようやく見つけた」

 

 突然の第三者の声。スーツの男たちがそちらを一斉に向くと、黒いコートと繋がっているフードを被った男がいた。顔は見えないが、当然のようにラウラたちに近付いてきて話しかける。

 

「全く。勝手に出て行ったらダメだろ。みんな探してたぞ」

「……誰だお前」

「え? もしかして記憶でも失ったか?」

 

 そう言った相手にスーツの男たちが近づいてくる。だがフードの男は興味がないからかそれらを無視してラウラに近付いた。

 

「えっと、自分の事はわかるか?」

「………さぁな」

「じゃあ教えてやる。お前の名前はラウラ・ボーデヴィッヒ。つい先ほどまでドイツ軍に所属していたが、軍と国に追い出されたことで篠ノ之家長男「篠ノ之武」の専属隷者となって専用機が与えられることになった」

「…………………は?」

 

 言われた事にポカンとしているラウラ。そしてスーツの男たちも同様で、いつでも抜けるように構えた。

 

「すまないな。この少女は―――」

「拒否権はない。今日からお前は俺のモノだ」

 

 例え女尊男卑社会でなくても完全にアウトな発言をしたフードの男はラウラを抱きかかえるとスーツの男たちを超えて逃げ出した。

 

「逃がすな! 追え!!」

「もう一人の方は!?」

「どちらにしても消す。それだけだ」

 

 そんな物騒なやり取りをして行動に移す男たち。その時、銃弾の雨が降り注ぐ。

 

「ところでアンタら、どこの所属だ?」

 

 フードの男は逃げておらず、スーツの男たちに銃口を向けている。

 

「先程の少女を渡してもらおうか」

「それは無理だ。アレは今日から()の専属隷者になるからな」

「……成程。つまりお前は―――二人目の男性IS操縦者か」

「ご名答」

 

 フードを脱いだ武は両手に『ダークフェイト』と『グロリアスパスト』を展開した。

 

「ISを展開する前に抑え―――」

 

 男の一人が吹き飛んだ。

 

「おいおい、酷いなお前ら。つまり何か? 俺を―――家畜共と同類と思われているのかよ。そんなことするわけないじゃん」

 

 『ダークフェイト』から黒い竜巻、『グロリアスパスト』から白い竜巻が剣に纏うように放出されている。その一部を飛ばしたことで一人飛ばしたようだ。

 

「大人しく降伏するって言うなら見逃してやる」

「何をふざけたことを―――」

 

 懐に入って一人を吹き飛ばした武。その間に別の男が武に対して発砲するが、『グロリアスパスト』を飛ばしてすべて防いだ。

 

「銃弾が弾かれただと!?」

「囲め。一斉掃射で意識を逸らせば―――」

「何言ってんの?」

 

 独りでに宙を舞う二本の剣。そして武の両手には『ヴァリアブルシューター』が握られていた。さらに彼の周囲には銃姫に搭載されているタイプを小型化した筒状のビットが滞空しており、背部には四枚二対のマシンウイングが広がっていた。

 

「そもそもお前らの装備如きで俺を倒せるって本気で思ってる?」

「クソッ! やっぱりISを使いやが―――」

 

 発言の途中で銃弾が男を貫通する。武の目は瞳孔が開き、今にもその男を殺しそうだった。

 

「時間を一分あげるよ。それで自分の愚かさを理解すればいいさ」

 

 男の一人がセンサーを使用して反応を探るが、周囲にISが展開されている表示はない。目の前にそのような姿を取っている者がいるというのに、だ。

 

「わかったか? 世界がどれだけ愚かなのか」

 

 徐々に浮かび上がる武。男はセンサーにISの表示を探すが全くない。

 

「だから使ってないんだって。技術は使っているけどコアは使ってない。そんなの、少し考えればわかるのに誰も理解できない。挙句に大して強くもないし粋がられるのってムカつくよね?」

 

 見た目では考えられないほどの殺気。数々の修羅場を潜ってきた彼らだが、彼から放出されているのはそれを遥かに凌駕する。

 

「でも今回の相手は専門家だし、数人は伝令代わりに生かしておけば別に良いだろうから―――」

 

 武の左側に黒い影が現れた。咄嗟に二本の剣を飛ばして斬撃を防いだ武はその相手を確認する。

 

「誰?」

「やれやれ。我々のせっかくの楽しみがこんな若造に奪われるとはな」

 

 歳はそろそろ60近いが身体が鍛えられていることもあってその衰えを感じさせない男性を見た武は手に持っていた『ヴァリアブルシューター』を向けて引き金を引いた。身体を逸らして銃弾を回避したその男性は武自らが放った蹴りを食らって壁に叩きつけられる―――前に身をよじって足を先に着かせた。

 

「へぇ」

「流石は篠ノ之と言ったところか、少年」

 

 かなりのスピードを出して武に接近した男性だが、武は下に潜り込んで打ち上げた。咄嗟に腕で防御した男性だが、高度100mに到達した瞬間、横から斬られた。

 

「何!?」

「まだまだ――行くよ?」

 

 男性は過ぎ去った武の姿を見た瞬間、身を捻った武が襲い掛かってくる姿を見た―――それがこの戦闘中の武の最後に見た姿だった。

 

 

 

 

 

 男性が目を覚ました時にはすべてが終わっていた。ホテルで寝かせられ、治療が施されている。

 

「気が付きましたか」

「……状況は?」

「二人目は元帥を倒すと満足して遺伝子強化素体を回収し、去っていきました」

「………そうか」

「学園に苦情を伝えますか?」

 

 部下の一人がそう言った事で元帥と呼ばれた男性は首を振る。

 

「不要だ。仮に伝えたとして何になる? 国家代表でも呼ぶか?」

「………ですが」

「アレに関してはノータッチだ。それに奴も「篠ノ之」だからな。おそらく自分を抑えるためにラウラ・ボーデヴィッヒを選んだだけだろう」

 

 その発言に疑問を浮かべた部下たちだったが、深くは聞かなかった。

 

「それで、例の男は始末できたか?」

「はい。最初に始末しておきましたが、あの遺伝子強化素体は放置しておいて大丈夫なのでしょうか?」

「別に良いだろ。我々ドイツは少なくともあの坊主に「怪我人程度で済ませた」という借りがある。おもちゃ替わりとしてもらってくれるなら万々歳ってところだろう。それに―――」

 

 最後まで言わずに言葉を止めた元帥と呼ばれた男の脳裏にふと、老人の笑みが過った。

 

『―――生憎、私の孫とその友人たちは今の女を代表する二人すらも倒せる可能性を持ちますからね。私のような非力な老人にはどうすることもできないんですよ。ま、それはあなたも同様かもしれませんが。だから今回の件、参加しても良いですが死なないでくださいね? 黒星を消してあげますが流石にクロニクル元帥が日本で行方不明になったとなれば戦争はもちろん制裁は必至でしょうから。あぁ、別にあの天災は何もしないと思いますよ? むしろ暴れるのは「レイヴン」ですから』

 

 静かに笑っていたあの老人をぶん殴りたいと思ったラシウス・クロニクルは部下たちに撤収の命令を出した。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

「それで、弁明はあるか?」

「姉だけ美少女付き添いを持つのは不公平だと思ったから」

「知るか!! 大体お前には楓がいるだろう!?」

「いやぁ、流石に妹に手を出すのはちょっと……」

 

 と返すと織斑先生はぶちぎれそうになる手前で止まって大きなため息を吐いた。おいおい。まさか「手遅れだろう」とか思ってないよな?

 

「まぁ、ボーデヴィッヒを連れ戻したのは良いとしてだ。隷者とはどういう意味だ」

「読んで字のごとく。この子を俺の奴隷にするわけ」

「…………お前は世間に大して戦争を仕掛けるつもりか?」

「大丈夫だって。少なくともアンタが今想像したことはたぶんしないから。あ、でも可愛いからしちゃうかも」

 

 まぁ、流石にそこまでしないんだけどな。

 

 俺はボーデヴィッヒを回収してIS学園に戻ると織斑先生に呼び出された。ボーデヴィッヒはとりあえず楓が風呂に入れてくれているらしい。

 そして応接室で今も怒鳴られているわけで。

 

「大体、何で隷者がダメなんだよ。女たちだって日頃から男をこき使ってんじゃん。それと大して変わらないどころかむしろ待遇良いと思うけど」

「………ほう。一体どういう待遇だと言うのだ?」

「朝起きる時に可愛く起こしてもらって、夜は甘えてもらうなんだが。誰も裸エプロンとか強要しないけど?」

「………武、お前は少し女に夢を見すぎだ」

「おいおい。自分がそんなことできないからって言い過ぎだろ。山田先生辺りなら映えるだろ? してほしくないけど」

 

 あくまで客観的な意見だと言わせてもらいたい。

 

「………ほう」

「あ、でも姉貴はできるか。楓には既にされているし………箒は無理だな。できているならたぶん今頃アンタの弟と関係持ってるはずだし」

「……それで、後は何をさせるつもりだ?」

「それ以外は普通に通ってもらうけど。大体、現状でIS学園の守りが万全だと言えるわけ?」

 

 その言葉に織斑先生は口を閉ざした。

 それもそうだ。ハッキリ言って今のIS学園のセキュリティは弱い。まず戦える人間が圧倒的に少ないのだ。それを元とは言え軍務経験がある適性Aを放置または殺害をするなんてそれこそ人類の損失と言えるだろう。

 そしてこれは俺の個人的な問題だが、ボーデヴィッヒには俺の耐性を鍛えるための練習台になってもらいたい。なにせ俺はとうとう姪に手を出してしまったからだ。もし俺が完全に耐性を持っていたならばあんな―――可愛いからという理由でキスしてしまうなんて愚行はしなかっただろう。

 

「だから、アンタの元教え子に今のところ何かするつもりはないさ。……たぶん」

「……以前から思っていたが、最近ぶっ飛んでないか?」

「気のせいだろ」

 

 最近じゃなくて元々だとは思うけどな。

 

「ところで話は終わり? 俺のIS学園からの外出は千冬以上の人間からもらっているから、アンタがどうこうする権利はないと思うけど?」

「……なに。色々と聞きたかっただけだ」

「ですよねー」

 

 冷徹なイメージが強い千冬だが、実は割と優しい女だ……が、色々とイメージが先行しているせいか中々モテない。いや、思考が特殊過ぎて付いて行ける男と中々出会えないというのが正しいか。

 

「何か思ったか?」

「別に。ただこの先千冬は良い男に出会えそうにないなぁと思っただけさ」

「………」

 

 急に黙りこむ千冬。話は終わったかと思って俺は適当に挨拶して部屋を出た。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 千冬は武が去った後、自分の手が震えている事に気付いた。

 

(……何が起こっているんだ、アイツに)

 

 確かに束と武は姉弟だが、それでも似ているところは似ているわけで、小さい頃の武はどこか周りを見下している雰囲気があった。それが顕著になったのは千冬が一夏が暴れた時にかつての母校に呼び出された日。その場でたった一人、異質な態度を取った者がいた。それが武だった。

 千冬が保護者として現れた事で話は進んだ。一夏が殴ったとされる事による男子生徒の保護者からの責任追及。それは一方的にこちらを悪とするものだった。その事で千冬が一夏の事で謝ろうとした時に自分の隣から「待った」がかかったのである。

 それから武は持っていたパソコンを担任の机に置かれていたパソコンに繋がっているディスプレイを取り外して持ってきて接続し、映像を流した。それはその時の映像だということだった。

 

「つまりそこにいる三人は掃除をサボった挙句に妹を虐めていたわけ。しかも俺なんて早く別の事をしたいってのにさ。たかが子どもの暴力沙汰を云々言うならまともに仕事をしていない自分の子供を叱ったらどうなの? そこの馬鹿が単細胞過ぎるのは否定しないけど、掃除はしないわ人の妹にちょっかいかけるわ。挙句に俺が巻き込まれている事を誰も否定しないわ。お前らの下らないイザコザに巻き込むわ。クズの分際でどれだけ足を引っ張るのさ? しかも親子揃って。やっぱり大人って先に生まれただけで大した存在じゃないよね? 遺伝子的にも邪魔だから世界の為に今すぐ消えておく?」

 

 思い出した千冬は頭を抱える。そう言えばそんなことを言っていたな、と。だが千冬も当時は「ざまぁみろ」と思っていた反面、強く言えないのは確かだった。

 

(……何か、嫌な予感がする)

 

 まるで近い内に自分の権限ですら対処できないような、そんな異常事態が武が引き起こす。千冬はそんな予感がしていた。

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