IS-Black Gunner-   作:reizen

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あけましておめでとうございます。今年も稚拙な小説共々よろしくお願いいたします。


第29話 意外な出会い

 武の現状はとてもひどいものだった。誰もがその活躍に期待しておらず、専用機を持つことにすら不快に思う人間もいる。例えそれが「篠ノ之束の弟」だとしても、だ。

 決してブサイクというわけではない。むしろその顔は整っている方で黙っていればイケメンとすら言われる程だ。だが、口を開けば相手を侮辱し、挑発し、否定する。度が過ぎれば全員から敵意を向けられるのは当然と言えるだろう。

 そんな武はVTシステムを所持していたことで一夏とラウラのペアが失格になり、次の試合にコマを進めることができたが相手がどちらも訓練機と知ると途端にやる気を出さずに試合開始と同時に後ろに下がった。

 

「機体性能の差が、戦力の絶対的な差じゃないと教えてあげるわ!!」

 

 そんな発言ですら鼻で笑って相手にしない武。その態度が女たちを刺激し、士気が高まる。

 昨日は専用機持ち相手に圧倒した武だが、それでも相変わらず敵意を持たれたままだった。そして今日も箒の頑張りで試合が終了するのである。

 

 だが、これで彼女たちが納得できるはずがなかった。武の鼻を明かしたい、情けない姿を晒してやりたいという欲望が強くなっていく。

 

「それよりも気になることがあるのだが、何故千冬さんもお前の勝手を許してるんだ?」

 

 それを聞いたのは箒だった。だが武もその理由はわかっておらず首を振る。

 

「何度か制裁は受け流しているけど、それでも愛の鞭(笑)程度だしな」

「普通、千冬さんの攻撃を食らう事自体が自殺行為だと思うのだがな」

「箒が弱いだけだよ。慣れればそれなりに攻撃を捌く事はできる」

 

 そう言われて箒はため息を吐くが、箒もそれは自覚していた。

 何故なら目の前にいるのはガチの実力者でこれまで生身で暴れまわっている猛者。昨日も放心状態のラウラを背負って戻った時は何かあったのだと察している彼女は深くは聞かない。精々「姉が一人増えるよ」くらいだろうと思っているが、実のところ箒の内心ではホッとしているところもある。

 昔から関わらなければ害はなく大人しい武の言動が変わり、姉のように敵に容赦ない双子の兄。小学校の卒業を機に引き離され、余裕を無くしてきた箒だがそれでも少しは武の事も心配していた。それを武が知れば鼻で笑うだろうが。

 

「ところで箒」

「何だ?」

「第三世代兵器は使わないのか?」

 

 武の言葉に箒は苦い顔をした。

 

「それはだな……」

「なるほど。やっぱりそうだったか」

 

 ため息を吐いた武はウインドウを展開して何かを操作した。

 

「今お前のベッドの上に参考書を出しておいた。後で見ておけ」

「………ちょっと待て」

「何だ? どうやったか聞きたいなら簡単だ。お前の部屋に入った時に仕掛けておいた。いずれ理由を付けてお前には専用機を渡すつもりだったからな。その参考書を渡すのにちょうど良いだろう」

「まさか、色々な機能があるとか、言わんよな?」

「まぁ、お前が俗世に染まったり発情して我慢できずに同居人を襲いたくなるからその写真が欲しいのなら撮影機能を付けた奴に変えてやってもいいが」

「誰が襲うか!!」

「わからんぞ。今は女尊男卑社会が浸透しているからな。どうしても我慢できずにってことで襲うケースはないとは言えないものだ。それに百合モノが好きなマニアにはいるので高値で取引できる。よりリアルの情報があれば喜ぶらしいからな。資金調達としては良い方法だと思うがね」

 

 ちなみに武本人はそう言った分野は知っている方でないのでやり方など詳しく知らなかったりする。むしろ男女でのやり方を知っているだけで「むしろどうやってやるのか」と疑問は持っているが、それだけだ。

 

「とりあえずそれは読んでおけよ」

「………ああ、わかった」

 

 と、食堂で話していた二人。そんな時にIS学園の至る所でウィンドウが展開された。

 

『生徒のみなさん、学年別トーナメントお疲れさまでした』

 

 ウィンドウ内ではいつもの服装をした山田真耶が意図せず胸を揺らしているが、それ並の物を一時期よく見ていた武は動揺せずに次の言葉を待つ。

 

『本年度の学年別トーナメントはタッグマッチ方式にしたことで例年よりも早くスケジュールが進み、二、三年生の部は既に終了し、一年生の部も残るは決勝トーナメントのみになりました。それでは一年生の部の決勝トーナメントに進出した三組を紹介していきましょう』

 

 画面には六人の選手が表示される。

 

『まずはAブロックから。Aブロックはどちらも一年一組所属で双子の兄妹。篠ノ之武君と篠ノ之箒さんです!』

 

 表示された二人。箒は恥ずかしさから顔を赤くしたが武は特に気にしていなかった。

 

『兄の武君は二人目の男性IS操縦者ながら操縦センスは高いものの、残念ながら未だにその技量をまともに見せているのは三回戦の織斑君とボーデヴィッヒさんのペア相手のみ。それ以外の相手はほぼ妹の箒さんが対応しています。学年別トーナメントに合わせて専用機に搭乗を始めた箒さんですが、流石は全国大会を制覇した実力は伊達ではないという事ですね。機体性能も合わせてこれまでかなりの活躍をしています。すべてとは言いませんがそれでもこの二人が決勝トーナメントに進出を果たしたのは彼女の奮闘があったから、と言えるでしょう!』

 

 その言葉に武たちの周りにいた生徒たちは敵意を持って武に対してヒソヒソと話していたが、武はどこ吹く風と言わんばかりな態度を取っていた。

 

『続いてはBブロックです。Bブロックはこちらも専用機持ちペア。セシリア・オルコットさんと凰鈴音さん!』

 

 今度はセシリアと鈴音の映像が出る。こちらの戦闘はツーマンセルというよりもタイマンを2つずつ行っていると言った方が良い感じだった。

 

『やはり専用機持ち同士だと下手に合わせる事はないのでしょうか? ですがこちらはきちんと二人とも戦っているようです。ですが自分たちの土俵で戦うというのもセンスの成せる技と言えるかもしれませんね』

 

 その言葉通りと言うべきか、全く戦わない武と違って二人はきちんと二人で倒していることが多いが、武は少し操作して映像を確認した。

 

「へー」

 

 それだけ言った武は笑みを浮かべる。

 

『最後はCブロックより、更識簪さんと布仏本音さんペア! こうしてみると順当に専用機持ちが上がってきたという感想を抱けますが、こちらはきちんとコンビネーションで相手を倒しています』

「……山田先生、意外と毒を吐くんだな」

「そりゃあ、問題児しかいない生徒の相手だけでなく千冬の無茶ぶりに振り回されているだろうからな。ストレス溜まるんだろ。今後、良い定食屋があるから千冬に連れて行かせるのもあるか。織斑への態度を見る限り、完全な年下趣味というわけではないだろうが、少なくともあの馬鹿よりも気が利く男はいるからな」

 

 などと会話する兄妹。ちなみにその定食屋とは「五反田食堂」の事だったりする。

 

「意外だな。お前が他人を褒めるのは」

「そうでもないだろ。この学園の女たちが詰まらん思想を持ちすぎなだけだ」

 

 コーヒーを飲んでいそうな雰囲気だが武が飲んでいるのはミルクココアだ。それ口に入れていると、真耶の放送はとうとう注目のトーナメント表へと移った。

 

『では最後に次回のトーナメント発表となります。試合は朝9時より準決勝。そして午後1時より決勝が行われることになっていますが、それぞれのブロックから代表ペアは1組ずつなので自動的に1ペアは決勝に進んでしまいますね』

「……武はどう思っている?」

「面倒だからトーナメントじゃなくてサバイバル方式が良い。どっちにしろ俺たちの優勝に変わりないからな」

 

 自信満々にそう答えた武に対して周りは睨むように見て来る。

 

「………まぁ、お前がそう言うなら―――」

「それにもう相手は決まっている。シードは凰とオルコットのペア。そして次の相手は更識と布仏だ」

 

 そう答えた少し後、トーナメント表が開示された。そこには確かに武の言う通りになっている。

 

『準決勝が篠ノ之兄妹VS更識さん、布仏さんペア。そのどちらかの勝者が午後の決勝でオルコットさん、凰さんのペアと戦うことになります!』

「……何故わかった?」

 

 素直に驚く箒。周りも気になっているのか頷いて二人に注目した。

 

「初歩的な推理だ。今は女尊男卑社会で俺という不穏分子は排除したい。さらに言えばたかが篠ノ之束の妹というだけで専用機を貰ったことが気に入らない奴らが仕組んだことだろう。準決勝で負ければ万々歳。そこで勝っても次は鬼門の専用機持ちペア。疲労して負けることに期待しているのだろうさ。全く。更識の奴はともかく、他の奴に関してはあの程度の機体しか作れん無能はこれだから困る」

 

 ―――思い上がりも甚だしい

 

 そう、明らかな敵意を持った発言をした武は残っているココアを飲んで食堂を去った。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 夕方。俺はボーデヴィッヒを回収するために保健室に行くと既に準備を終えていたらしい。戦闘服を着用したボーデヴィッヒがいた。俺はそのままボーデヴィッヒを引き寄せて頭を撫でる。

 

「おいやめろ」

「えー。何で―?」

「恥ずかしいからだ!」

 

 顔を赤くするボーデヴィッヒを撫でまわす。流石はクロエにそっくりなだけあって可愛い。

 

(そう。これで良いんだ)

 

 クロエを甘やかしたい。そう思うのは別に良いとしても俺自身がクロエに依存するのは違うだろう。あのキスをしたことで目が覚めた。……俺個人としては少し酷い事をしている気がしなくもないが、必要悪という奴だと思っておく。

 

「お兄ちゃん、何しているの?」

「ん? 奴隷を愛でてる」

「奴隷とか言うな!」

「まぁそんなものだし気にするなって」

「おい待て。どういうことだ」

「ん? ボーデヴィッヒをこの学園に置いておくための理由付けとして、とりあえず俺の秘書兼奴隷兼楓の遊び相手として確定している話だけど?」

 

 そう言うとボーデヴィッヒは驚いていた。

 

「まぁ、ゴミとはいえお偉いさんに手を出した時点でボーデヴィッヒが良くて軍追放悪くて国追放は予想していたからな。まぁ、普通の人間ならばともかくボーデヴィッヒは落ち目の遺伝子強化計画(アドバンスプロジェクト)の素体だからそれくらいして殺処分か裏で回収して慰み者にするかってところだから、無能の発散よりも俺のような人間のために使った方が有意義だってことでその立場にしたんだよ。その首輪も実のところその証」

 

 そう説明すると知らなかったのか呆然とするボーデヴィッヒ。ちなみに首輪は普段は見えないようになっているし、彼女にもわかるようにはしていない安全設計だ。あと、趣味で着けさせている。

 

「でもそれじゃあ「ボーデヴィッヒ」って呼ぶのは違うな。じゃあこれからは名前で呼ぶとするか。よろしくな、ラウラ」

「………私が言うのもなんだが、無茶苦茶だな」

「そもそも篠ノ之自体が無茶苦茶な存在だから、今更だ」

 

 なんて答えながら俺たち三人ははある島に移動していると、その手前のゲートで困っている千冬を見つけた。

 

「何やってんだ、アンタ」

「武……それにラウラに楓か。珍し…くもないな」

「アンタはこっちに来るのは珍しいな。ここは基本的にアンタは立ち入り禁止のはずだが?」

 

 そう言ってやると苦い顔をして俺にある紙を出した。そこには「招待状」と記載されており、ただ一言「ゾンビに会いたい?」とだけ書かれているだけだった。裏面を見るとここの写真が貼られている。

 

「なるほど。だいたいわかった」

「そうか。ここに来ればどうにかなると思ったが……。それでこれは一体どういう事なんだ?」

「ゾンビに会わせると言われても知り合いがいないからな。ただこのエンブレムが入っていたからもしやと思ったが……」

「?」

 

 見せられたのはアサルトライフルのようなものを持った黒い兎の周りにバレットベルトが巻かれているエンブレムだ。

 

「これは「シュヴァルツェ・ハーゼ」の……まさか」

「可能性が無いとは言えないのでな」

「……確かラウラがいたところだよな?」

「そうだ。まさか私がVTシステムを作動させたことでその責任を取らされた、なんて事はあるまいな」

 

 ラウラの言葉になんとも言えなくなっていると、近くで黒いオーラの発生を感知した俺はそっちを向く。

 

「―――逆だよ。君のVTシステムの作動もシュヴァルツェ・ハーゼの壊滅も最初から仕組まれていた事さ」

 

 携帯していたのか、千冬は背中から木刀を抜いて構える。

 

「誰だ? 姿を見せろ」

「…雑魚の癖に口だけは達者だな、ブリュンヒルデ」

「零司か」

 

 オーラから零司が現れる。千冬が何かを言う前に零司が言った。

 

「……あなたを呼んだのは知ってから騒がしくしてほしくないからだ。そこの小さいのは武のペットだから良いけど」

「? 零司、お前知ってたのか?」

「ドイツ軍で妙な動きがあることは感知していた。同時にそれがシュヴァルツェ・ハーゼを狙ったものだということもね」

「……こいつじゃなくて、か?」

 

 ラウラの頭を撫でながら尋ねると、零司は首肯した。

 

「シュヴァルツェ・ハーゼの戦闘員は一人を除いて遺伝子強化素体で構成されている。ドイツ国内にも女たちが助長しているけど、軍内の状況は大きく変わったんだよ」

 

 そう言って零司は入り口のロックを解除した。先に行く零司に俺たちは付いて行き、俺も良く知る円卓がある部屋に移動した。

 

「聞きたいことがある」

「……何?」

「君はシュヴァルツェア・レーゲンの中にVTシステムがある事に気付いていたのか?」

 

 千冬の質問に零司は首肯した。すると千冬は怒りを露わにした。

 

「何故黙っていた!? 先に知っていればあの事件は回避できただろう!?」

「……回避する意味があるの?」

「何?」

「……助ける意味が分からないから僕は奴らを見捨てた。女尊男卑なんて下らない思想はいらないでしょ? どうせ裏では男女関係なく子ども犠牲になっているんだから。そんな世界を動かしているクズなんて生かす価値もない」

 

 千冬が零司が距離を取る。どういう事だと言いたげに俺を見て来るが、説明して良いものかと思っていると代わりに零司が答えた。

 

「……僕の態度が不思議かい? これくらい普通さ。むしろ弟君がおかしすぎるんだよ」

 

 それは確かにな、と内心同意してから俺は話を戻す。

 

「零司。それよりもお前の言うゾンビとやらを紹介してくれないか?」

「……そうだね」

 

 零司は小型の端末を展開して「入って」と仲間を呼ぶと、別の扉から黒い軍服を着た女たちが現れた。

 

「お、お前たち!?」

「何故ここに?」

 

 ラウラが驚き、千冬が睨むように零司を見た。

 

「……連れてきた」

「いや、ダメだろう?」

「……じゃあ、軍に返して慰み者にしろって?」

 

 その言葉に千冬は何も言えなくなった。するとその内の一人で他の人間と比べて少しばかり年上と思われる女性がラウラを見て接近してきた。

 

「たいちょー!!」

 

 咄嗟に手を出して止めたが、その女は「邪魔しないでください」と睨んでくる。

 

「……えっと、誰こいつ?」

「知らん」

「待ってください隊長! 私です。クラリッサ・ハルフォーフ大尉であります!!」

「私の知るハルフォーフ大尉はいきなり飛び掛かって来やしないぞ!」

「堪えていただけです」

 

 真顔で答えた女を見て、俺はこいつが本物だと理解した。

 

「……少し堪えて、大尉。これからは彼女が来るたびに色々できるから」

「わかりました」

 

 零司の事をボスだと思っているのか、敬礼する女性。俺は少し混乱していると、零司が説明してくれた。

 

「……織斑千冬。あなたを呼んだのはあなたが学園側の指揮系統責任者だからでしかない。今後、武だけでは対処できない事案が発生した場合、こちらも出張る必要がある。その為の打ち合わせということだ」

「……脅し、ということか?」

「……そういう事。ま、別に良いんだけどね。いざと言う時に武が生徒たちに牙を剥いても良いって言うんだったら。今のあなたに武を止められるとは思えないけど」

 

 早々止められるつもりはないがな。って言うか確かに疑問だよな。何でこの女、機体を使わないんだろうか?

 

「了解した。だが彼女たちの意思は聞いているのか?」

「……一応は。もっとも、僕はこの大尉以外興味がない。適当に武の部屋に押し込むさ」

「俺の部屋はそんなに一緒に寝れないぞ~」

 

 そう言うが零司はそのつもりだったようで「じゃあどうしようか」とか言っていた。

 

「……ってか回収してきたのはそいつらだけなのか? 軍の構成は知らないが、整備兵とかは―――」

「……整備兵は全員男」

「なるほどね。寝返ったか」

 

 そう言うと隊員は顔を逸らす。千冬は信じられないという顔をしているが、それはたぶんこいつがブリュンヒルデだからそういう一面を見せていなかっただけだろう。

 

「まぁ、詳しい話は追々ってことにするか。彼女たちにも首輪をするのか?」

「待て。それだとまるで既にしている言い方ではないか」

「普通だろ?」

「……別にしても良いけど、彼女たちがここからどこに行くつもりなのかが重要じゃない? 好きでもない男に襲われたいなら本人の意思を尊重すれば良い」

 

 凄いシンクロ率を叩き出す黒兎部隊。全員が首を一斉に振った。

 

「……私もできるなら取りたいのだが」

「……してるの?」

「まぁな」

 

 するとハルフォーフ大尉が俺に対して殺意を向ける。

 

「それはどういう事でしょうか?」

「趣味であることは否定しないが、逃亡されたら困るからな。主に俺のために」

「では何故それを隠すのです!? むしろオープンにしませんと!!」

 

 という言葉に俺の目はおそらく点になっただろう。千冬からみたいに怒りを出しているがそれは首輪を見せない方の不安だとは思わなんだ。

 

「こんな事ならば宿舎に置いてある秘蔵のコレクションをIS学園宛てに送っておくべきだった……」

 

 しかも心から本当に残念そうに言っているから反応に困る。

 

「武。ラウラの首輪を取ってやれ」

「断る」

「取ってやれ」

「絶対にNoだ」

 

 そんなやり取りを余所に零司と楓がヒソヒソと話をしていた。

 

『何で他の子をお兄ちゃんに?』

『……悠夜には更識が、僕にはこの施設自体が大切なものだから良いとして、武の場合はこの先ずっと守っていくものがないと思ったからね。それに武の実力を考えれば愛人がいくらいても問題ないだろうし、あと何人か武に興味があったから、流れでどうにかなるかなって』

『あー。確かに。お兄ちゃんみたいに理外な存在って何人も女を囲ってそうだしね。現に助けてもらった人間の中で「愛人でも良いから愛して欲しい」って人がいたし』

『……でしょ? それなら武に黒兎隊に入ってもらって作戦隊長を務めてもらうのもいいかなってさ』

『? 良いの? あの女性の事が好きなんでしょ?』

『……というよりもあの人には艦長を務めてもらおうかなって』

『……なるほど。そっちか』

 

「良いから取れと言っている」

「ふざけんな。こいつは俺の抱き枕にするんだから絶対に渡さねえ」

「……ふざけているのはお前だろう!! その歳で子どもでもこさえる気か!!」

「……え? 別におかしくないでしょ?」

 

 そう言ったのは意外にも零司だった。

 

「貴様、それを本気で言っているのか?」

「……? むしろ武みたいな人間の遺伝子はちゃんと残さないと後世に残るのはクズだけだよ? ただでさえ女尊男卑で社会が腐っていると言っても過言じゃないのに、あなたはまだ体裁を保つの? 今の世界の体裁なんて全世界共通であって無いようなものなのに? それとも証明した方が良い? 世界がどれだけ遅れているか?」

 

 千冬は零司から発せられる気をまともに当てられたからか後退した。

 

「……なんだったら、ISを使用しないという条件でだったら学園に喧嘩を売ってあげるよ。あぁ、これじゃあフェアじゃないか。別に良いよ、IS使っても。それでも僕が勝つから」

 

 俺は千冬の腕を掴んで部屋を出ると同時に楓に零司のフォローをしてもらう。今の零司はシャレになっていない。そういう意味で千冬に会わせるのはマズい存在だったんだ。それを完全に忘れていた。

 大空島から学園島に移動したところで千冬は俺に聞いてきた。

 

「……何なんだ、あの男は」

「アイツもまた、今の世界が気に入らないと思っている奴だよ。しかも学園に通っていない分、下手すれば手遅れかもな」

 

 俺がIS学園に通っているのは理由がある。そもそもインフィニット・ストラトスを動かせるのはチーム内では俺だけという点と、俺自身が囮だから。

 

「そこまで酷いのか、今の世界は」

「ああ。酷いな。そうじゃなければ俺たちはIS学園にいないさ」

 

 それだけ答えて俺は楓とラウラを迎えに行く。今日の夜は妙に風が強いように感じた。




という事で一足先に黒兎部隊登場。ただし零司の中では武用らしいですが。

何故こうなったのかは別で書く予定です。
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