学年別トーナメント。一年の決勝戦は専用機持ち四人という結果になった。
他の学年の試合も終わって観客席には立ち見で見ようとする生徒も現れるほどで、それほど注目度が高い試合となっている。もっとも、観客たちが楽しみにしているのは不正にISを手に入れた二人がやられる様なのだが、期待されている二人はそれどころではない。
「どうしたお前ら。少しは嬉しそうな顔をしろよ」
「無茶言うな」
「ただでさえ箒さんが専用機を持ったという状況な上にあなたとコンビを組むなど、不公平ですわ!」
煽りに煽る武に二人は不満そうな声を漏らす。
「大体アンタの機体スペック絶対に色々とおかしいでしょ!? いくつ第三世代兵器を積む気よ!!」
「レギュレーション違反だっての? 安心しなよ。レギュレーションは守っているさ」
武の手には既に《リヒトブリッツ》が展開されており、いつでも撃てる状況になっている。
「逸るなよ、武。この二人は代表候補生だ。何か策が無いとも限らない」
「うーん。それは困るなぁ」
とふざけた態度を取る武。鈴音は苛立つのに対してセシリアは冷めた状態だった。
『鈴さん、わかっていると思いますが冷静になってください。相手はあの武さんですよ』
『わかってる。ハッキリ言ってアイツはそう簡単には落とせない。そして何より箒という邪魔もいる』
『打ち合わせ通り、先に箒さんをどうにかしますわよ』
『ええ』
試合前の打ち合わせの再確認をするセシリアと鈴音。その前で同じく武と箒も打ち合わせをしていた。
『どうする箒。今回も最初から行くつもりだけど、お前を引き立てれば良い?』
『その必要はない。お前がしたいことをすれば良い』
『そういうところ好きだけど、織斑の手綱はしっかりと握っとけよ』
『お前は一言余計だぞ!!』
試合開始のカウントダウンが始まる。それが0になった瞬間、仕掛けたのは武だった。だが武の一射目を二人は回避して迎撃する。その相手は箒。
「やはり私か!?」
「悪いわね箒!」
「落ちてもらいますわ!」
「ところがギッチョン!!」
《サーヴァントシューター》が遠隔展開され、箒を守るようにビームが発射される。
「え?」
「鈴さん、離脱を!」
鈴音は咄嗟に反応して後ろに下がる。武の《村正》は空を切り、その代わりと言わんばかりのレーザーが飛んできたので回避した。
「逃がしませんわ!!」
「させるか!」
箒が武とセシリアの間に割って入る。武はハイパーセンサーから来る情報を確認して回避するも、死角からの見えない砲弾を食らって吹き飛ばされた。
『ノヴァ』
『わかっているわ。派手にやりなさい』
笑みを浮かべた武は《村正》ともう一本の近接ブレード《
「……何で」
思わずといった感じで呟く一夏。それほどまでに武の手から展開されたことに驚きを隠せない。そしてそれは武にも見えており、笑みを浮かべて鈴音に仕掛けた。
「舐めんな!!」
鈴音も二本の青龍刀《双天牙月》を展開して応戦する。
「アンタ、この試合一夏も見てるって知ってるわよね。その武器、本気?」
「安心しな。こっちにバリアを無効化する力なんてねえよ」
「だとしても、後で痛い目に遭うわよ」
「知ったことか。それにだ、凰。お前少し勘違いしているぞ」
一度距離を離した武。そして二本のブレードを鈴音に向けて投げた。鈴音は《双天牙月》を回して弾く。
「勘違いですって?」
「ああ。そうだ。高が田舎の町道場とは言え、家族が離れて捨てるような腰抜けに俺が負けるとでも?」
「大した自信じゃない」
「当然だ。楽しそうだからお前たちの作戦に乗っているだけに過ぎない。本物ならばいざ知らず、兵器を使わなければ男にすら勝てない家畜程度の力しか持たないアホと俺を一緒にする―――なッ!!」
―――閃ッ
《影片》を収納し、下から上への切り上げを《村正》で行った武。《双天牙月》で受けた鈴音。
(ウソッ!? パワータイプの甲龍と互角!?)
驚く鈴音。だがすぐに《龍砲》のチャージを始めた彼女は武の頭めがけて発射した。それを武は後ろに瞬時加速することで回避した。
「やるじゃない。後方への瞬時加速を成功させるなんて」
「別に難しいことじゃない。多少Gはかかるとしてもイメージなんてゲームしていれば自然と構成される」
武は軽く箒たちの方を見た。
箒は逃げの一手だった。というのも彼女とセシリアの相性は悪い。箒がセシリアの懐に入ればその限りではないだろうが、それまでの過程が長い。
(武が差別化のためにとレーザーを付けてくれていたからまだ生き乗れているが)
自身から発生されるレーザー。それがセシリアから守ってくれている。
「厄介ですわね、そのレーザー」
「だろう? 武の方針でな。「いくら近接メインと言っても他に容量割いてまで武器一つしか入れないバカと一緒にするな」と言われたよ」
「だとすればあの方に感謝が必要ですわね。正直、そこまで厄介とは思いませんでしたが」
箒はセシリアとの距離を詰めようとするが、ビットからの援護射撃に二の足を踏む。
(とはいえ、私に牽制など器用な事はできん……)
それができるならば今頃は一夏と―――とまで考えてからその場から下がるとレーザーが自分がさっきまでいた場所を貫く。
「落ちなさい!!」
セシリアが放つレーザーを辛うじて回避する箒だが、自身の死角に回り込んでいたビットが箒の頭に当たると同時に絶対防御が発動し、シールドエネルギーがかなり減った。
「フィナーレですわ!!」
さらに自分を襲うレーザー。箒は咄嗟に上に逃げるとダメージを少し食らったが逃げることができた。
(このままでは埒が明かん。なんとかセシリアの懐に飛び込まなければ―――)
その時、不思議な事が起こった。箒の視界に遠かったはずのセシリアのISスーツが眼前に広がっていたのだ。
「何!?」
「キャアッ?!」
突然の事で混乱した箒とセシリアはお互いに距離を取る。
「あなた今、何をしましたの!?」
「知らん!? 気が付けばお前が目の前に―――目の前に……まさか」
箒はセシリアのISスーツを見てから「セシリアの前に行く」と念じるとそのままの体勢でまたセシリアのISスーツの前に移動した。
「まさか!?」
「もらった!!」
それを見ていた武はため息を吐いた。
「おい凰、箒の奴、ようやく第三世代兵器を使ったぞ」
「ようやくってアンタ……使い方の説明してなかったの!?」
「篠ノ之の弊害の一つで―――ねッ!!」
蹴り飛ばして鈴音と距離を取る武。その間、箒もまた優勢に立った。上にいたはずの箒が下に、下にいたはずが右にと縦横無尽に移動する。IS操縦はセシリアに分があるとは言え、ここまで早い移動をこうも連発されると対応が仕切れない。だが一つだけ彼女とてわかることがある。それは―――
「―――そこだ!!」
箒がセシリアの首を狙い、懐に入って近接特殊ブレード《椿姫》を振るった―――が、それは彼女にとって意外なモノで防がれる。
「なんだと……」
「あなたのお兄さんを相手にするんですのよ。これくらいの備えをして当然ですわ」
―――インターセプター
ブルー・ティアーズに搭載されている唯一の近接武装。入学当初、彼女はまだこの武装を自在に出す事ができなかった。しかし武との戦いを経て一つ学んだ事がある。それは一切の妥協を許してはいけないという事だ。
手加減はもちろんの事、一切の慢心すら許されない敵―――それが篠ノ之武。正直彼女にしてみれば、未だに彼を否定する人間がいる方が不思議なくらいだ。そして今日、彼女は武の双子の妹が専用機を持つという事がどれだけ驚異的かという事かを理解した。突然の事で彼女は自身のメイン武器である《スターライトMk-Ⅲ》を手放しており、ここからの反撃はただ一つ。
逃げようとする箒。しかしそれよりも早く彼女の頭をレーザーで撃たれた。
【皐月、シールドエネルギー0】
そのアナウンスが鳴り響く。会場は敵を一人倒したことで湧く。だがセシリアはすぐに《スターライトMk-Ⅲ》を再展開して武を攻撃した。だが武はその攻撃を撃ち落とし、鈴音からも距離を取る。
「流石は専用機持ちコンビと言ったところか」
セシリアは側面から援護射撃を、そして鈴音は近接攻撃と衝撃砲による攻撃を武に仕掛ける。その雰囲気は優勢であるはずなのに切羽詰まっている。
「この二人、あそこまで動けるのか?」
VIP席にいるラウラが驚きを露わにする。その言葉を聞いた零司も驚いていた。
「……確かに彼女たちの成長は予想外だ。ここまで伸びるとは思わなかったよ」
「ならば、いくらあの男とは言え、流石にマズいのでは?」
クラリッサの言葉に零司は静かに笑い、断言した。
「……それはないよ」
「何故そう言い切れるのですか?」
「……武は対複数の方が慣れている」
零司のその言葉通りだった。武はすぐさま笑みを浮かべ、《ヴァリアブルシューター》のカバーバレルを引き上げてボタンを押す。
【End of Charge, Sonic Shot】
緑色の高速の弾丸が発射され、衝撃砲を発射する
「ウソッ!?」
「まだまだ行くぜ」
武はさらにボタンを押す。
【End of Charge, Random Shot】
今度は違う音声が響き、武は引き金を引くと黄色の光弾がいくつも発射された。さらにその弾丸は不規則に曲がって鈴音だけじゃなくセシリアにも飛ぶ。
「ビットが!?」
「これ以上やらせるか!!」
鈴音が腕部から衝撃砲を発射した。それを目ざとく見つけた武は《リヒトブリッツ》で撃ち抜く。
「そこ!!」
セシリアが武のウイングスラスターを狙って狙撃する。今度はそれを撃ち抜いた。だがそれがまずかったと言える。武はすぐさまもう一丁《リヒトブリッツ》を展開して前後に接続して高出力化させたビームをセシリアの頭に直撃させた。箒との戦いでかなり消耗していたこともあり、シールドエネルギーがごっそりと削られて50を切った。
「アタシもいるわよ!!」
そう言ったのは既に武との距離がない状況。その時、銃姫の脚部が光を放ち、その場で機体を回転させた武。その理由がわかった時、甲龍のシールドエネルギーがなくなった。
【甲龍、シールドエネルギー0】
武は《リヒトブリッツ》同士の接続を解除し、二丁状態に構えて使用可能の《サーヴァントシューター》をすべて展開した。
「認めてやろう。お前たちは強くなった」
ブルー・ティアーズのハイパーセンサーに表示されるいくつものロックオン警報。セシリアも負けじとビットを飛ばそうとするが、その尽くが落とされる。
「だが、それでも俺には及ばない」
すべてのロックが完了する。その間にセシリアも負けじと撃っていたが、発射されると同時に撃ち落とされる。
(発射されるタイミングで離脱を―――)
武が引き金を引くと同時にセシリアは移動した。確かに彼女の読み通り攻撃は外れた。だがそれは―――二本のみ。
(ロックオンが残って―――)
彼女は気が付いた。一斉射撃はブラフであることを。本命のビットはブラフを撃つ際に遠隔展開されていたことを。すべて自身に狙いを定めている事に気付いたセシリアはさらに抗おうとする前に攻撃された。
【ブルー・ティアーズ、シールドエネルギー0。よって優勝は篠ノ之武、篠ノ之箒ペア】
今ここに、IS学園第一学年の学年別トーナメントが終了した。
■■■
ピットに戻った俺は早速ベンチに寝転がる。
「おい、どうした武」
「……どうしたも何も、疲れた」
と言うか地味に疲労が酷い。ここまで暴れたのは久々だし、何より本能のままに暴れないかと心の中でブレーキを止めるのに疲れた。
「あとは表彰式だけだぞ」
「出ないとダメ?」
「当たり前だ。全く。日頃からあれだけ余裕そうにしていてこれか。鍛錬が足りんぞ」
と言ってくるが、幸か不幸か専用機たちが成長してくれている事に安堵している。まぁ、後々の事を考えれば今は専用機持ちのレベルアップが必要だしな。ぶっちゃけると一般生徒のレベルアップなんて二の次で十分だと思っている。今後の事を考えて、これから起こる戦闘で一番誰が参戦するかと言われれば専用機持ち。教員部隊は信用できない。
「あのなぁ、そう言うがこっちは専用機持ちと激しい戦いと損傷した機体を急ピッチで仕上げたんだから少しぐらい労ってくれても良いじゃないか。妹ならもう少しそこらへん気を遣ってもらいたいね。そんなんだから三か月経っても織斑と何の進展もないんだよ。その胸使って迫るくらいしろよ」
「き、貴様は……またそれか!! 少しは自重しようと思わんのか!?」
「はぁ? 子孫を残すのに重要な項目でしょうが、性欲は。お前ら女は「不要だ」「汚らわしい」とか言っているけどさ。じゃあどうやって子孫残すの? 機械でしようと思えばできるけど、それを積極的に止めたのはどっちかと言うとそっちの言い分じゃなかったっけ?」
とやや喧嘩腰になっていると、入り口の方から殺気が飛んできたので対人用《ヴァリアブルシューター》を展開してそちらに向ける。
「そこまでにしろ。武、お前は武器をしまえ」
「……何だ、アンタか」
「教師には敬語を使え」
「んで、何の用だ?」
命令を無視して尋ねると、千冬はため息を吐いた。
「そろそろ閉会式が始まる。場所はそのままここでやることになった。お前たちにはそれぞれスピーチをしてもらう事になっている。くれぐれもきちんとしたスピーチをしろという事だ」
あー。なるほどな。箒はともかく俺は明らかに喧嘩を売るだろう。その為の予防策という事か。
「はいはい。向こうが喧嘩を売らなければそうしますよ」
と答えておく。いやまぁ、向こうが喧嘩を売らなければ良いことだしね。だがまぁ、それはやはり来てしまった。
「では最後に今年度優勝者であるお二人から一言もらいましょう」
司会者がそう言い、一人が近づいてきて箒にマイクを向ける前に言った。
「篠ノ之箒さん、コネでもらった専用機で優勝した感想はどうでしょうか?」
途端に全員が沈黙する。中には面白がってこれからの感想を待っている者もいる。織斑が起こって何かを言おうとしていたが、それをうまい具合に先回りしていた千冬が止めていた。
「そ、それは―――」
「そこから先はこちらから説明させていただくとしよう」
と、マイクを取り上げて説明する。
「第一学年の諸君。我が妹、箒の為の経験値としての役割、またはそいつらの経験値としての役割、ご苦労だった。おかげで無事にこいつ用の第三世代機「皐月」の一次移行と第三世代兵器の行使まで実現できた」
千冬がそれを聞いて弟に「な? 不要だろう?」と納得させている。あの女、最初から諦めていたな。
「さて、今回この妹が専用機を持って現れた事に不満を募らせている者は多数いると思う。当然と言えば当然だろう。こいつは確かに剣しか取り柄のない雑魚だ。女としては贔屓目なしに良い具合に育っているが、これに関しては遺伝だ。思えば母も姉も大きい方だからな。姉の胸で窒息しかけた俺が言うんだ。膜もおそらく姉妹揃って破けていないだろう。というか姉のはおもちゃで遊びすぎない限りたぶんないしそろそろ気持ち悪くなってきたので話を変えよう」
というか姉妹の貞操とかぶっちゃけどうでも良いし大体の人は吐き気を催すと思う。
「既に知っている事だろうが、俺とこいつはインフィニット・ストラトスを生み出した篠ノ之束の弟妹だ。その為、小五の時から日本中を転々とし、中学に上がる頃には家族バラバラにされて監視生活を送ることになった。そういう状況に置かれたが、コイツは自衛する手段がないため、俺の独断で専用機を支給することにした。つまりは、本来持つべき者に支給したに過ぎない。考えてみて欲しい。もしこの女が人質に取られた場合、コアの製作方法を含めあらゆる技術が奪われる。それが世界に害悪な組織に渡ると面倒になる為……というのは建前だ」
全員からさらに注目が集まる気がしたが、知るか。何で俺が遠慮しなければいけないんだっての。
「ハッキリ言おう。お前ら雑魚に何で機体を配らなければいけないんだ。推しキャラの宝〇レベルを最大にして聖〇を与えるのとはわけが違う。こいつは篠ノ之家最弱だがそれでも剣道で全中取っているし、少なくともこいつは搭乗中に限りだが、銃弾を剣で弾けている。それほどまでの実力がお前らにあるのか? ましてやここ数か月で既に面倒事が起こっている。俺の目の前で起これば多少はマシになるが、敵もそれなりに頭を作ってくる。陽動とかな。そんな状況で使える人間を増やしておくのは当然の措置だ。大体、コイツは姉のお気にいりでいずれ貰える。専用機が渡されるのが遅くなったか早くなったかの違いなだけ。それぐらいの差でごちゃごちゃ抜かすな。ズルいと思うなら手に入れればいい。実力を示せばいい。そうすればそこにいる無駄に歳くっていざと言う時に全然動けなかった、インフィニット・ストラトスを兵器として扱いやがった自称偉い人達も認めるだろうよ」
言いたいことを言えてすっきりした俺は満足気にマイクを投げ渡す。零司と悠夜、楓からサムズアップスタンプが押された。織斑姉弟だが、姉の方は頭を抱え、弟の方は口をパクパクさせていた。
そういえば、甲龍ってブルー・ティアーズの偏向射撃みたいな特殊能力ってないんですよね。もしかしたら逃しているだけかもしれないで、知っている人いたら教えてください。