オーバーロードRTA 王国救済の裏技   作:星デルタ

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やる気がみなぎる……投稿するなら今のうち……。


第四話の裏技

 駆逐してやる…一匹残らず…! なRTA、はーじまーるよー。

 

>『あなたの活躍、王都にまで届いていますよ』

>『周りに振り回されて疲れていませんか? また王宮に遊びに来てください』

>『お返事お待ちしてます』

>『第三王女の側近という立場に興味はないですか?』

>『どうして返事してくれないんですか?』

>『私が拗ねちゃったら大変ですよ』

>『早く返事してください』

>『ねえ』

>『早く』

>『早く』

>『早く』

 

 

>『覚えておいてくださいね』

 

 ヒエッ…。突然のホラー描写、大変失礼しました。メンヘラ彼女からのラインじゃないですよ、ラナー王女からの手紙です。どうしてこんなに小分けにして送ってくるんでしょうか? 人の心が分からない彼女が、恐怖を与える手法にだけは詳しくなっていて嬉しい限りですね(震え声)。

 しかしおかしいですね……。ホモ君は年月が経ちすでに7歳になりました。二歳下であるラナー王女はもう5歳、そろそろクライム君を見つけておかしくない年齢です。彼を制御弁として扱えるかどうかでラナーちゃんの御しやすさは天と地ほどに違ってくるのですが……。まあ今は良いでしょう。あんまり好感度を稼ぎすぎるとガバに繋がるのですが、今回の対八本指ではラナー王女の王族としての力が必要になります。手紙を出さざるを得ません。ついでに一緒に孤児院巡りツアーでも行ったらどうです? 今ならクライム君がついて大変お得!(カス)

 

>あなたはラナーに近況報告の手紙を書いた。領地改革にやり甲斐を感じていること、改革の際に起こった様々な出来事、その中で自分を認めてくれた大人たちのこと…。それらを綴るあなたの手がふと止まった。

>八本指について、ラナーに相談してみてはどうだろうか? もちろん自分の力で何とかする気ではいたが、彼女の頭脳なら何か思いつくかもしれない。あなたは領地の八本指対策について悩んでいることをしたため、手紙を書き終えた。

 

 手紙の書き方にも一々気を遣うのが怖いですね……。このままでは走者の胃がストレスでやられてしまいそうです。クライムーッ! 早く来てくれーッ!

 

 ところで八本指について知らない方もいると思いますので、説明しておこうと思います。

 八本指というのは原作に登場する超巨大な闇組織のことです。王国全体に勢力を伸ばし、貴族と癒着して利権を得ています。原作ではアインズ様にゴミ掃除の様に気軽に片付けられて忠誠を誓っており、正直カマセ犬のイメージが強い彼らですが、それはプレイヤーという神の視点から見たらそうなるだけ。六腕という超級の武力も抱える八本指という組織は、現地人視点では逆らう気も起きないような大勢力です。

 

 今回ホモ君が属するイズエルク領も彼らの手に落ちており、スラムには怪しげな売人がのさばり、代官は汚職に手を染めて税をちょろまかしています。ホモ君によって少し豊かになったイズエルク領ですが、その分彼らに良い獲物として狙われてしまったようです。そのせいで民の暮らしは全く豊かになっていません。なんてひどい……許せませんね(建前)、名誉値早く下さい(本音)。

 

 こちらも彼らのことは名を上げるための獲物としか見ていない訳ですが、八本指と繋がっている下っ端役人をいくらしょっ引いた所で何の意味もありません。代わりが来てすぐにまた汚職に手を染めるようになるだけです。

 八本指勢力を領地から完全に根絶するためには、親玉、つまり汚職の根本を潰す必要があります。一番太いパイプを失えば八本指はもう入ってこれなくなるので、あとは残党狩りをすればいいだけとなります。

 

 そしてその汚職の根本が誰かと言うと……なんとびっくり、ホモ君の父親です。

 

 イズエルクの当主が八本指とズブズブなんて最悪ですね。何回目の汚職だよ行き過ぎにも限度あり しかしその欲望誉れ高い(tntn亭)。

 しかしこれはありがたい事で、父親を排除すると自動的に一人息子のホモ君がイズエルク領の当主となります。名誉値も爆上がりですし、ゲーム的には悪徳領主を成敗したのでなんとカルマも上がります。いやー、なんて美味しいイベントでしょうか。色々な領地衰退イベントの中でも、八本指を引けたのは幸運でしたね! 他の原因だとイズエルクの権力を握るのにもう少し手間がかかってしまいます。

 

 さて、走者はメタ知識で父親の汚職に気づいていますが、曲がりなりにもここは法治国家。すぐに殺すことはできません。ホモ君の超優秀な頭脳だととっくに気づいていてもおかしくないんですが、身内の情が判断を鈍らせていますね。当主の粛清には大義名分も必要ですし、どちらにしろ決定的な証拠が必要になります。

 

 ということでまずはイジャニーヤに接触しに行きましょう。このような情報収集の際、よその貴族は冒険者を使っています。ですが今回の相手は八本指。潜入に向いていない冒険者ではどうしても見つかってしまい、普通に殺されるだけで全く意味がありません。蛇の道は蛇、闇組織である八本指の情報を効率よく集めるには、どうしても同格の闇組織の力が必要になります。

 

>ラナーにもしもの時の助力を求める手紙を書き終え、あなたは改めて決意を固めた。何の罪もない人々を苦しめる八本指を、これ以上許すわけにはいかない。リスクを承知で、自分も虎穴に入る時が来たようだ。

 

>あなた一人で王国に長年寄生してきた巨大組織を完全に滅ぼせるはずはない。このイズエルク領の癒着の大本を突き止め、そちら側を潰すべきだろう。そのためには諜報に長けたものを雇わなくてはいけない。八本指の情報を得られるほどの手練れで、なおかつ王国最大の組織である八本指の息がかかっていないもの達。そんな都合のいい存在が果たしているだろうか……。

>『叡智の人』があなたの思考を研ぎ澄ます…!

>あなたは帝国を中心に活動するイジャニーヤと呼ばれる組織を思い出した。彼らと何とか接触を取れないだろうか。

>ふと頭をよぎった『自分の父は何も八本指対策をしていないのだろうか』という疑問を振り払い、あなたは足早に部屋を出て行った……。

 

 因みにイジャニーヤの情報は最高レベルの教育係じゃないと教えてくれません。この世界、踏んだら一発で死ぬ地雷が大量にあるのにそれを知るのにすら苦労するっていうのが本当に嫌ですね…。ちなみにホモ君は帝国や法国についても一定の知識はあります。誇り高い王国貴族として当たり前だよなぁ!? 他の貴族が無能すぎるだけってそれ一番言われてるから。もっと勉強して♡

 いやー、しかしホモ君の思考は7歳児のものとは思えませんね。王国最高峰の教育に世界一の才能が合わさっているので当然とも言えますが、一人で暗殺組織に接触しようなんて思える度胸も大したものです。私のチャート構築能力の賜物ですね(隙あらばイキリ)。

 

>イジャニーヤの情報について集めること数日。独立した犯罪組織である八本指と違い、彼らは依頼を受けて動く暗殺集団である。そのためだろうか、あなたは驚くほど簡単に情報を集めることが出来た。

>狙われたら誰も逃れられないと言われる凄腕の暗殺者たち。しかし、向こうから指定された場所へ向かうあなたの足に恐れは無かった。自分は正しい道を進んでいるという思いが、あなたに力を与えているのだ。

 

 傷ついた体でも勇気が湧いてくる…「正しいことの白」の中におれはいるッ!(ポルナレフ感)。

 ちなみにこの会談でティア・ティナネキと接触することはできません。彼女たちはイジャニーヤの中でもトップの腕前を持つので、こんな木っ端依頼では動いてくれません。残念です…。

 

>会談場所は薄暗い酒場だった。わずかな照明の中、テーブルで黒い外套を纏った人物が一人佇んでいるのが見える…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分は帝国の貧民層に生まれ落ちた。帝国は王国に比べれば豊かな国だが、どこの国にだって弱者は存在する。自分はそんな掃いて捨てられる弱者の一人だったというだけだ。だからだろうか。イジャニーヤに流れ着いた今では薄まったが、貴族階級に対する苦手意識は未だに存在する。

(余計な事は考えなくていい…。自分は一つの道具、思考は足枷になるだけ)

 内心でそんなことを思いながら、依頼を受けた女暗殺者は約束の酒場へと出向いた。薄暗い酒場で待機し、依頼主の事を想像する。わずか7歳で暗殺組織に依頼するような少年。よっぽど悪意に満ちた人生を送ってきたのだろう。そう同情していると、テーブルの前に一人の少年がやってくるのが見えた。

 

「こんにちは。今日はいい天気ですね?」

 

 太陽が落ちてきたのだと思った。

 ホールド・モルデラ・デイル・イズエルク。イズエルク領の鬼才。情報はすでに聞いていたが、どうやら漏れがあったらしい。こんなにも明るく、人を引き込む魔力に満ちた存在だったとは聞いていなかった。

 

「……いいえ、今は寒いです」

「ああ、そうでしたか。では奥でシチューでもいかがです?」

 

 取り決めておいた符牒を交わし、マスターに目配せをして奥の部屋へと案内してもらう。人払いと盗聴対策がなされた特別な部屋だ。

「改めまして、依頼主のホールドです。今回の依頼について説明しますね」

 そう言って少年は話を進めていく。事前に首領からある程度の話は聞いていたが、求める情報の種類や現地の事など、細かい部分を詰めていく。淀みなく話す様子はまるで熟練の交渉人のようで、見た目の幼さとは不釣り合いだった。

「なので、彼らの親玉を抑えるためにも、隠密性を重視してもらえると助かります」

 彼は危険を感じていないのだろうか? 依頼主とはいえ、暗殺組織と接触するのだ。最近のイズエルク領の改革は全て彼主導のものだと聞いている。何がそこまで彼を突き動かすのだろうか?

 ……気に入らない、と思ってしまった。何も苦労を知らない、世の中の醜い部分を見たことがないような顔が癇に障る。刺々しい思いが自分の中を満たした。

 

「……一つ、質問したい」

「何ですか?」

 

 気づけば、自分は口を開いていた。唐突な質問にも関わらず、相手は全てを見透かすような優しい顔をしている。

 

「あなたは、領民のためにしなくてもいい苦労をしている。そう思ったことは無い?」

 今、自分は依頼に関係のない話をしている。暗殺者は機械に徹するべき。この話は即刻切り上げなければならない。そう思っても、勝手に動く自分の口は止まる気配を見せなかった。

 

「あなたは間違っている。貴族ならもっと自分の欲望のままに動くべき」

 例えば、民に重税を課した故郷の貴族たちの様に。

 

「あなたに助けられた人は、あなたが思っているほど感謝してくれないかもしれない。助ける価値のある人間じゃないかもしれない。そんな奴らを相手にするのは愚か」

 例えば、裏切って自分を売ったスラムの大人の様に。世の中には救いようのないクズがいるのだ。それは、そう―――例えば、環境に耐えかねて人を殺した、自分の様に。

 

 悪意に満ちた自分の言葉を聞いて、ホールドは驚いたようだった。彼はしばらく悩むそぶりを見せた後、悲しそうに微笑んでこう言った。

 

「何か、辛いことがあったんですか?」

 

 思わず固まる自分を見つめながら、少年は続ける。

 

「僕は、自分のことを大した人間とは思っていません。自分の欲望に従って動いていますよ。人は周囲の環境によって善にも悪にもなります。助ける価値のない人間なんていませんよ。人は皆幸福になる力を持っている。それをちょっと手助けするのが、僕の幸せなんです」

 

 だから、あなたもその手助けをしてくれませんか?

 そう言ってにっこりと笑った。人々を照らす、太陽のような明るい笑顔だった。

 なんて純粋で、穢れが無く、美しいのだろう。

 現実を知らない理想論だ。そう言うことは簡単だったが、既にその気も失せた。

 暗殺者に意思はいらない。ただ動く機械に徹するべき。ちょっと会話をしたぐらいで依頼人に絆されるなんてもっての他である。だがしかし、善人に好感を抱くことは当然のことだ。だから、自分の顔が赤くなっているのもしょうがない事なのだ。

 誰に言い訳するでもなくそう考えながら、ふと今ならティナの趣味も分かる気がすると、そう思った。

 

 




ラナー(ビキビキ)
日刊ランキング入りありがとナス! 自分の文章が読みやすく書けてるか気になるのでアンケート作りました。どうぞよろしくお願いします。

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