オーバーロードRTA 王国救済の裏技   作:星デルタ

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第六話の裏技

 強くなれる理由を知って進むRTA、はーじまーるよー。

 嫌な事件だったね…。ガバが見つかったんだろう?(富竹) いやー、前回は驚きの連続でしたね。『魔性の貌』の効果を甘く見ていました。推測する限り、きっとラナーちゃんの好感度を稼ぎすぎてしまったのでしょう。原作ではクライム君に向けられていた彼女の一途な愛情(婉曲表現)がホモ君に向けられてしまっています。非常に、非常に残念ですがもうこの先クライム君が登場することは無いと考えるべきでしょう。やばいですね。

 クライム君という外付け制御装置を失った彼女は生きる核地雷みたいなもんです。一応最高級ホモ君のおかげで歪みは抑えられているでしょうが、それも怪しいもんです。これもうパンジャンドラムだろ……。そんな彼女をどこまで制御できるかが私の腕の見せ所さんと言えるでしょうね。この後にメンヘラ骨も控えてるってマジ? 辞めたくなりますよ部活~~(意味不明)。

 

>イズエルク領の新たな当主となったあなたは、大規模な人材の入れ替えを行った。八本指と繋がっていた者たちを降格させ、民間試験から役人を自ら選んで穴埋めとした。幼い自分が主導した急激な改革だが、領民たちの反発は意外にも少なかった。今までの活動が実を結んだのだろうか。

 

>父のことを思い出す。彼は悪人ではない、ただ弱いだけだった。心の弱さを八本指に付け込まれたのだ。八本指と繋がっていた役人たちをあなたは集め、もう一度自分の下で働いてほしいと頭を下げた。一部の者は自ら辞めていったが、多くの人は再び熱意を取り戻して働いているようだ。

 

 ケッ……。正義マシーンとして完成したホモ君なら、汚職した奴を全員処刑して財産没収できたんですけどね。今のホモ君ではその選択肢が出て来ませんでした。ペッ、甘ちゃんがよ。カルマ値が高いと人々に信頼されやすくなりますが、このようにあくどい行動が取れなくなります。父親を殺して下がったカルマでちょうど0、完全な中立になるように調整していたんですが無駄になりましたね。

 

>今までは父がやっていた他の貴族との折衝も、これからは自分ひとりでやっていかねばならない。あなたはイズエルク領当主としての自覚を新たにした。

>『外交』コマンドが解放された!

>『接触する』コマンドで出会える人物が増加した!

 

>あなたの名声は多くの人々の興味をよぶ……

>『接触する』コマンドで出会える人物がさらに増加した!

 

 イズエルク領を手にしたことでコマンドが解放されましたね。これによって他領と交易したり、一定の立場が無いと会えない派閥の長と出会うことが出来るようになります。パーティー? 参加しませんよあんなもん。八本指に目を付けられるリスクはある上に大して名誉値も稼げないカスイベです。パリピと親しくなってもいい事なんてありません。まだ幼いホモ君はいいカモに見えるので大量にパーティーの誘いが届いていますが、全部燃やしておきましょう。

 

 それではこれからの行動を説明していきましょう。イズエルク領内で色々するのはもう終わり、今回からは王国を改革するために様々な陣営に接触していきましょう。

 イズエルク領を掌握して地盤は確立されました。次は今まで稼いだ名誉値をじゃんじゃん利用して王国を復活させる準備をしていきます。名誉値が一定以上ないと権力者には会えませんからね。仕方ないね。

 

 まず王国の現状を説明しましょうか。実は王国ってポテンシャルだけなら諸外国一なんですよね。土地は豊かで侵攻してくる亜人たちもいないという素晴らしい立地に、膨大な徴兵を可能にする国民の数。本当なら隣の帝国にジワジワ追い詰められてるのがおかしいレベルなんですよね。

 じゃあなんでこんなにカスなのかと言われれば、それはやはり上層部が無能ぞろいだからとしか言いようがありません。全員選民意識に脳が凝り固まった頭スポンジどもです。彼らが重税を課して八本指にジャンジャカ資金をつぎ込んでいるため、王国は貧しく人材もろくに育たない訳ですね。眠れる獅子なんて良いもんじゃありません、もう内臓全部ぶちまけちゃってる獅子って感じです。

 

 そんな王国をどうやって救うのか? 今にも死にそうなこの国家を救うには並大抵のことでは無理です。彼らは無能の中でもさらに質の悪い、歴史ある無能ですからね。革命によって新王朝を打ち立てられればそれが一番いいのですが、今回の目的『救国の英雄』の称号はそれでは得られません。抜け道が無い事はないんですが、『救国の英雄』を得るにはエンディング時に王国が現在の形を保っている必要があります。ではどうするのか。

 ここは偉大なる骨、アインズ様の手法を真似しましょう。つまり――

 

 

>父のように苦しんでいる人を助けたい。あなたは王国を救うため、今まで考えていた計画を実行に移すことにした。

>最初に連絡を取る人物はもう決めている。エリアス・ブラント・デイル・レエブン侯。今や一大派閥の長となった王国簒奪を目論む彼こそ、最初の交渉相手にふさわしい。

 

 ――王国も法国も全部巻き込んだ超巨大マッチポンプです。

 

 

 

 

>「君の名前は良く知っているよ、ホールド卿。わずか7歳で父親の不正を暴き、イズエルク領の当主となった若き神童。君から手紙をくれて嬉しかったね、君とはゆっくり話したいと思っていたんだ」

 優雅に椅子に腰かけながらそう語る姿は、自分の能力に裏打ちされた絶対的な自信に満ちていた。レエブン侯。おそらく王国で最も優秀な貴族の一人だ。

 

 レエブン侯! まだ息子が産まれてないから野心バリバリなレエブン侯じゃないか!

 彼は王国内No.1の貴族、レエブン侯です。王国簒奪の野望に燃えているため大変手を組みやすく、またあと8年後には息子が産まれて超安定志向の子煩悩になってくれると大変扱いやすいキャラです。骨の髄までしゃぶらせてもらいましょう。

 

>ラナーほどではないが、彼との会話もまた打てば響く楽しいものだった。お互いに核心の縁を撫でるような会話を続けたあと、ついに彼が切り込んできた。

>「イズエルク領は今や周辺貴族からただのカモとしか思われていない。幼い領主に、よく肥えた領地。格好の獲物だ。君もそれが分かっているね? 私のもとに来た選択は正しいよ。―――私の派閥に入りなさい。私は君の能力を買っている。厚遇を約束しようじゃないか」

 

 うーんこの褒め殺しムーブ……。口ではなんだかんだ言っても、確実に下に見られてますね。これはいけません。今のホモ君は王国を救うために燃えているのです。派閥闘争に身を投じている場合じゃありません。

 

>あなたは持ち込んだ鞄から一束の書類を取り出して、彼に見せた。エ・レエブルで行われた様々な犯罪行為の記録がそこには記されている。イジャニーヤの彼女に他領への偵察をさせるのは非常に骨が折れた。

 

 ここは彼の犯罪すれすれの取引記録を見せてやりましょう。交渉の場で一発かますのは基本って古事記にも書いてありますからね。オラッくらえっ!

 

>「ほう、私の部下がこんな汚職に手を染めていたとはね……。残念だよ。良い事を教えてくれてありがとう。お返しに私も何か情報を差し上げようか。そうだね、君の父親がどこに逃亡したのか知りたくはないかい?」

 

 うげーっ、『お前も父親かくまってるやろ知っとんぞオラ』とカウンター食らいました。だから殺しとけって言ったろうが! あんなやつ身内の恥ですよ恥! ま、まあいいでしょう。これで百戦錬磨のレエブン侯にマウント取れるなんてはなから思ってません。これはただの有能アピールです。向こうにも自分の意図は伝わっているでしょう。

 

>張り詰めた空気を溶かすように、レエブン侯はふっと笑って言った。

「なんてね、冗談さ。王族に楯突くのは私だって怖い。侮っていたつもりは無かったが、君は随分優秀な諜報員を雇っているらしいね。……それで? わざわざ私の情報を集めて、どんな話をしたかったのかな」

>少しは自分のことを認めてもらえたのだろうか。不敵に笑うレエブン侯はどこか楽しそうだった。

あなたは意を決して、彼に『ラナーの派閥に入ってほしい』と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前の相手を見据えながら、私は獰猛な笑いを抑えきれなかった。ホールド卿との会話は実にストレスが掛からない楽しいもので、彼の知性が噂通りのものだという事がよく分かった。私の弱みを堂々と握ろうとする胆力も良い。さらに父親という致命的な弱点を抱えているとなれば部下として申し分なしだ。

 

「ほう、ラナー様の派閥? しかし言っては悪いが、彼女はスペアのスペア、派閥と言えるものは無かったはずだが?」

「ええ、その通りです。だから僕と貴方で新しくつくるんですよ」

 

 彼からの提案を受けて考え込む。ラナー王女? あの美しいだけのお飾りにつくメリットが全くないように思える。……話の筋が見えないな。会話の主導権は渡さないようにしなければ。

 

「私にそんな沈む船に乗れと? 貴族閥に属する人間に対しての言動とは思えないな」

 

 彼女に惚れでもしたか。欲望を制御できない人間はどんなに能力が高くても二流だ。彼もまたその一人だという事だろうか。そう残念に思っていた私の頭は、次の瞬間凍り付いた。

 

「あなたの目的にも関わる話です。王座を狙っているのでしょう?」

 

 私の秘めたる野望。もっとも優れた貴族である私が、玉座を奪うという大それた欲望。それは派閥の誰にも言っていなかったはずだ。ましてや、つい半年前に当主になったようなガキに。……これは、話次第では生かしてはおけないな。妖しい魅力を放つ少年は私の後ろをちらと見てこう続けた。

 

「ここから先は、二人じゃないと恥ずかしくて話せません。彼には席を外してもらえますか?」

「……ああ、もちろんだとも」

 

 隠し部屋に潜ませていた子飼いの元冒険者に『隙を見て殺せ』と指示を出そうとして、何の反応も返ってこないことに気づく。優秀なレンジャーだったはずの彼はすでに部屋のどこにもいなくなっていた。ホールドによって排除された、と考えるべきだろう。今のはそれを教えるためにわざと言ったのか。随分優秀な人材が手元にいるようだ。白々しくお礼を言う彼の顔を睨みつける。

 

「優秀な配下だね。大事にするといい」

「はは……時々言うことを聞かなくて困ってるんですけどね」

「それで? 話の続きだ。ラナー王女の派閥に入ったらなにか良い事があるのかい? ホールド家の特産品がついてくるのかな?」

 

 つくづく、こんな時に自分の本性と言うものを実感する。楽しくて仕方がない。目の前にいるのは怪物だ。彼をどんな風に打ち倒すか、もしくは利用するかを考えるだけで笑みがこぼれてくる。どうも私は乗り越える壁が高ければ高いほど快感を得る人種らしい。

 

「僕が彼女を推す理由は単純に、彼女が今の王族の中で最も王の資質があるからです。今は信じられないかもしれませんが、きっとすぐに分かってもらえると思います」

「いつか利益がでるから、今投資しておけと? 詐欺師の論法だな」

「ふふっ、だとしたら随分優しい詐欺師ですね。手付金としてこんなものまで差し上げるんですから」

 

 そう言って彼はドサドサと大量の紙束を置いた。

 

「あなたの敵対派閥の後ろ暗い犯罪行為の記録です。読んでいいですよ? まずは僕のことを信じて欲しいですから」

 

 そう言われるままに渡された資料をめくる。当然情報の裏取りは必要だが、どれも告発されれば処罰は免れないものばかりが証拠付きで載っている。しかし、こんなものをどうやって? いくら優秀な諜報員がいたって不可能だ。

 

「先にアタリをつけておけばいいんです。僕が流した情報の伝達速度、不自然な金の流れ……。そういったものを考えれば、自然とこの貴族はこんな悪事に手を染めているな、じゃあきっと証拠はこのあたりに保管しているだろうなっていうのが分かるんです。ラナーならもっとこういうのは上手いんですけどね、僕はいまいちです」

 

 そういって照れるように少年は笑う。あまりに信じがたいが、真偽は後からでも確認できる。裏付けの算段を頭の中で整えながら、喜びを抑えて口を開く。

 

「……君が産まれたことは、私にとってきっと一番の幸運だ。もちろんいいさ。これらの情報がもし本当であれば、私は六大貴族の一員にだってなれる。そうしたら君に協力すると約束しようじゃないか。ラナー王女を王にしたいのだろう? 私と君が組めば敵などいない。私達だけになった王国で、どちらが王になるかの潰し合いをしようじゃないか」

 

 ああ、楽しみだ。心躍る敵がいることのなんと嬉しいことか。全身に覇気がみなぎる。それを笑顔でいなしながら、目の前の怪物は笑って言った。

 

「潰したりなんてしませんよ。僕としては、あなたには宰相あたりになって欲しいんですから」

 

 お優しく、なんとも傲慢なことを言う。彼もまた高揚しているのだろう、私に合わせてくれているのが分かる。ホールド・モルデラ・デイル・イズエルク。民衆いわく、太陽の御子。組むに値しないと判断すればさっさと殺してしまおう。そう考えながら、私と彼は心からの笑顔で握手を交わした。

 

 

 




レエブン候、きっと若い時はイケイケであってほしいという願いは…きっと、間違いなんかじゃないんだから……!

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