東方クロスでオリ展開の分、解説しないといけない事が多すぎて困る
クロスなしの原作改変二次なら色々はしょれて読む方も楽だったのに
オリ要素盛り込みすぎの作者が悪いよ作者ガー
「さて、話の続きっていうか、まだ聞きたい事があるんだけど。いいか?」
現状に対する理解度の差から、会話はどうしても一刀が萃香に教えを乞う形になる。
一刀とて自分で考える努力を放棄したわけではない。
だが今回のは完全なオカルト案件。専門家でもない自分があれこれ悩むより、オカルトな存在に話を聞くのが一番確実であると一刀は判断していた。
「まったく一刀は知りたがりだねぇ」
揶揄するように言って、萃香はニヤニヤと微笑う。
偽悪的な態度だが、内心では一刀に頼られて悪い気はしていなかった。
「で? 何を聞きたいの?」
小悪魔的な萃香の貌に一瞬、引き込まれていた一刀はハッと正気に返る。
「あ、ああ。そもそもの話なんだが――」
動揺によって声が上擦らないよう気をつけながら尋ねる一刀。
しかし心の中ではこれから切り出そうとする話題とは全く関係のない事を考えていた。
(やっぱ笑うと可愛いな萃香……いや笑わなくても普通に美少女だけど。これだけ可愛いと鬼でもいいやって思えてくるのが不思議だな……。ロリコンに走る奴の気持ちがちょっと解った気がする)
生意気盛りの妹がいるせいか、一刀は年下の異性にそれほど関心がない。
だがこちらに来てより、一刀の性癖は下方向へと歪みつつあった。
もっとも萃香の外見はともかく、年齢は一刀よりはるかに上なのだが。
「萃香がここにいるのは、俺が角を所持していたからなんだろ? 具体的には角が原因で『召喚された』んじゃないか?」
体の一部分でしかない角が萃香本人に置き換わった理由。一刀が知りたいのはそこだ。
なお一刀の推測は萃香のこれまでの言動を鑑みてのものであり、そもそも『召喚された』とは本人の弁である。ゆえに確度は高い。
なので実質、事実確認のような質問だった。
「そうだよ」
特に隠す気はないのか、一刀の推測を萃香はあっさりと認めた。
「転移させられた時に角が触媒となって私が召喚された。それは間違いないけど、どんな力が働いてそうなったのかまでは私にも分からないよ」
「……そうか」
「ついでに言うと元の世界に戻る方法も分からない。残念だけどね」
やれやれといった表情で、萃香はお手上げとばかりに肩をすくめる。
「元の世界……か。なあ萃香。ずっと気になってたけど、
「異世界だね。私は外つ国の事はよく知らないけど、日ノ本と地続きの世界じゃないって事はわかるよ」
「マジかぁ……」
確固たる口調で断言する萃香。
一刀は苦渋に満ちた声で呟くと、顔に手を当て天を仰いだ。
(薄々そうじゃないかと思ってはいたが……異世界転移か。ははっ、どうやら俺はいつの間にかなろう系主人公になってしまっていたようだ……なんて現実逃避している場合じゃないな。これからどうしよう……)
当たって欲しくなかった予想が的中し、内心で途方に暮れる一刀。
もっとも、脳内とはいえ冗談を言えるだけの余裕はあるようだ。
しばらく黄昏れていた一刀だったが、気を取り直して萃香に話しかける。
「そういや、萃香の言葉を疑うつもりはないんだが、ここが異世界だっていう何らかの根拠や証拠ってあるのか?」
疑うつもりはないと言いつつ証拠があるのか? と聞くのは矛盾した発言である。
おためごかしとも取れる台詞だが、嘘を見抜ける萃香には一刀の意図が齟齬なく伝わっていた。
「もちろんあるよ? この世界のどこにも私の本体の存在を感じない。霊的経路も途絶している。つまりそれは本体とは時空的に断絶した場所に私がいるという事に他ならない。まぁ本体が強力な結界などで封印ないし隔離されてるって可能性もないではないけど、それだと私という分霊が召喚された事実と矛盾するからねぇ」
立て板に水の如くすらすらと「根拠」らしき話を解説する萃香。
しかしながら聞いてる一刀としては、結界だの分霊だのとオカルト用語全開で語られても理解に難がある。
それでも単語のニュアンスと文脈から、萃香の言いたい事は察したが。
「ええっと、つまりこういう事か? ここにいるのは日本在住の萃香とは別の、いわば分身のような存在。で、本体との繋がりが完全に途絶えているからここが異世界だと判断したと」
「うん、その理解で合ってるよ」
「なるほど……」
新たに判明した情報を咀嚼するため、一刀は考えを巡らす。
(ここにいる萃香が分霊だって事には驚いたけど……見た感じ活動に支障はなさそうだし、あまり突っ込まない方がいいかもな。それにしても分霊であの強さなら、本体はどんだけヤバイんだ……)
一刀は想像する。
もしかしたら自衛隊のような現代の軍隊が相手でも、単身で挑んで勝ってしまうかもしれない。まさにワンマンアーミー。
そんな暴力と理不尽の権化である鬼を討伐した昔の武士とか陰陽師すごい。
日本の先人に、一刀は密かに尊敬の念を抱いた。
会話が途切れた事で一刀の疑問は解消できたと判断したのだろう。萃香が話題を変える。
「ところで一刀。話もいいけどそろそろ移動しない? 死体からの剥ぎ取りも終わったしさー」
「ん? ああ、そうだな。いつまでもここにいてもしょうがないもんな……」
やや憂鬱そうに言って、一刀は周囲を見渡す。
そこには相変わらず死屍累々といった光景が広がっている。
少し前までそこで萃香の分身たちが遺品回収を行っていたが、今はもう姿を消している。
作業を終えた分身が霞となって消えていく様を、一刀は会話の途中で何度も目撃していた。
(まさに夢幻の如くなり……ってか。風流を語るにはちょっと血生臭すぎるけど。それにしても分身できると作業効率が凄いな)
なんせ死体の数は百体以上もありそうだったのだ。人手が一刀と萃香の二人だけだったら、日が暮れるまで作業しても終わらなかったかもしれない。
これなら野盗たち全ての遺体を埋葬する事も可能だな、という考えが一刀の脳裏を掠める。
たとえ悪人でも死んだ後はみな仏、という日本人らしい良識の発露。
しかし一刀は野盗への悪感情と萃香に頼む難易度を考慮し、必要ないなと結論付けた。
(あれ、そういえば……)
ふと、一刀の頭にある疑問が浮かぶ。
「なあ萃香。野盗から回収した物品ってどうなったんだ? 萃香が持ってるようには見えないけど」
遺品回収していた分身たちは誰一人として萃香本体には接触しなかった。
という事は、手に入れた戦利品は萃香の手に渡っていないと判断できる。
本体と分身に何らかの超常的な繋がりがあって手渡しする必要がない、という可能性も考えられたが、だとしても萃香の身の周りに何の変化がないのはいかにもおかしかった。
「ああ、心配しなくともきっちり全部しまってあるよ。ほら」
得意げな顔で答えた萃香が一刀へと右手を差し出す。しかしながらその小さな手のひらの上には何も載ってはいない。
何事かと訝しみつつ一刀が注視していると、萃香の掌の上で靄のようなものが発生し、一瞬のうちに収束し明確な形を成した。
まるで手品か魔法のように出現した品物を見て、一刀は目を瞠る。
「ちょ、まさかこれ……俺のボディバッグか!?」
多分に見覚えのあるそれは、一刀が愛用し修学旅行中も身に着けていたワンショルダータイプのボディバッグだった。
「ぼでぃばっぐ? これは気絶していた一刀の側に落ちてた物だよ。私の角はここに入れてたんだよね? その時は一刀が元凶だと思ってたからとりあえず押収しておいたんだけど」
とりあえずで他人の持ち物と思しき品を拾って隠し持っていたあたり、萃香は意外と手癖が悪いのかもしれないと一刀は思った。
ちなみに出会った直後、一刀に詰め寄った萃香が言っていた「証拠」とはこれの事だったりする。
「もう一刀の疑いは晴れたし返すよ。はい」
「あ、ああ……ありがとう」
萃香からバッグを受け取り、そのまま装着する一刀。
その場でバッグの中身を検めないのは一刀なりの配慮だ。萃香を信用しているという遠回しなアピールでもある。
「それにしても驚いた。萃香ってこんな事もできたんだな」
原理は不明だが、萃香は自在に物を収納し取り出すことが可能なのだろう。
つまり野盗からの戦利品もその能力でしまってあるのだと一刀は理解した。
(アイテムボックスめいた能力まであるって、どう考えても俺より萃香の方がなろう系主人公っぽいよなぁ……。その場合俺は何だろ、事件に巻き込まれたモブA? それともまさかのヒロイン枠? まあ妥当なところで相棒役かな)
一刀が感心した様子で言うと、萃香は満更でもなさそうな表情で笑う。
「あはは、私の能力は応用が効くからねぇ。何でもは無理でも結構いろんな事ができるのさ」
「ほんと便利だよなその能力。分身したり物を出し入れできたり。ちなみにどんな物でも入るのか? 容量は?」
「いんや、生物は入らない。私のコレは物体を極小の粒子に分解圧縮して保持するって方法だからねぇ。生き物に使ったら死ぬし、そもそも生物は魂魄と霊力が能力の浸透を妨害するから分解しにくい。まぁ死体とか植物ならいけるけどね。許容量は……いっぱい? 山一つ分くらいならいけるよ」
(分解して圧縮……なるほどSFの量子変換格納みたいな技術か。昔なんかの小説で読んだな。容量も山一つ分入るとか、それ個人レベルで使う分にはほぼ無限倉庫……うーん、この)
「まさしくアイテムボックスだよなあ」
「あいてむぼっくす?」
「ああいや、こっちの話」
愛想笑いで誤魔化す一刀。
それから表情を一転させ、真剣な顔つきで口を開く。
「萃香のその能力さ。旅ではかなり有用だと思うんだ。もし萃香が今後も俺と一緒に行動してくれるなら、当てにさせてもらってもいいか? もちろん便利使いされるのが嫌なら無理にとは言わないけど。どうかな?」
「んー、元から一刀にはしばらく付き合うつもりだったから多少の荷物を預かるのは構わないよ。ただそれ以上の場合は応相談だねぇ」
「そっか。ありがとう、助かる」
鬼に荷物持ちさせるなんて! と激怒される可能性も考えていた一刀。
しかし予想以上に寛容かつ好意的に依頼を受けてくれたため、安堵すると共に萃香への好感度が急上昇。同時に一刀の恋愛対象ベクトルもさらに下方向へと進行した。
「ああでも、
言って、一刀は親指を立てた右手で背中を指差す。
なお一刀のボディバッグにはそれほど多くの物は入っていない。財布やスマートフォンなどの貴重品と、ペットボトルの飲料水や絆創膏などの小物が少々といった程度だ。空き容量的には嵩張る物でなければまだまだ入れられる余地がある。
「それと萃香、俺にして欲しい事があれば遠慮なく言ってくれ。頼ってばっかじゃ悪いしさ。もっとも、今の状況で俺にできる事ってあんまりなさそうなのが我ながら情けないけどな」
やや自嘲気味に言って、ハハッと苦笑する一刀。
「確かにねぇ。たぶん、私がいなければ一刀は生きてけないよ、ここだと。だから付いて行くんだけどさぁ」
「……ソウダネ」
自分から言い出した事とはいえ、己の至らなさを完全肯定されるとそれはそれで複雑というか、気分が落ち込む一刀である。
とはいえ、萃香の言うことは厳しいが正しい。
一刀はまだこの世界についてほとんど何も知らないが、日本とは比較にならないほど危険な場所であるという認識は持っている。
そして萃香がいなければ自分は今頃、野盗にあっさり殺されていただろう事も弁えていた。
自分が情けなくとも、今はプライドを捨て萃香に頼るしか道はない。
現状の厳しさを改めて自覚した一刀は心の中でそう割り切った。
「まぁ大船に乗った気で安心していなよ。一緒にいる間は護衛だけじゃなくて生活の面倒も見てあげるからさ。一刀に死なれちゃ困るからね」
「あっはい。よろしくお願いします……」
腰に手を当てて仁王立ちする萃香に頭を下げながら、一刀は思う。
(背伸び系姉御幼女もアリだな)
果たして、一刀の旅(と性癖)はどんな結末を迎えるのか。
今はまだ、誰も知らない。
作者も知りません(行き当たりばったり並感
長くなりそうなので後書き続きは活動報告にて