Hero of Magical girl   作:迷子屋エンキド

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短いけど完結。


よくあるヒーロー達の放課後

「よし! 吹き飛んだ!」

 

 光線の爆発に、七海は声を上げた。

 黒魔術による反発射撃は、誘導性は無いがその分速度に勝る。本来は白魔術と併用して使うのが基本だが、今回は咄嗟の対応で余裕が無かった。

 反射神経に優れる自分の持ち味は、こういう咄嗟の射撃だ。魔法少女として何かが間違っている気がするが、大した問題ではないだろう。

 何にしても、これで魔法少女を脅かす諸悪の根源は粉々だ。大丈夫、魔法少女だからたとえ粉々でも魔法で何とかなる。治療費は貰うけど。

 一応警戒の構えは崩さず、土煙が覆う着弾点を注視する。そろそろ視界が確保出来る筈だ。

 晴れた。それは、土煙内から飛び出したものによる、予想とは違う展開だった。

 土煙より飛び出したもの、それは、

 

「――無傷!?」

 

 魔法少女の格好をした花岡・馨だ。彼は、飛び出した勢いそのままに隣のビルへと飛び移る。

 何故? まさか奴も魔法少女の技を会得したというのか。所長魔術ガッデム。

 その答えは、視界に過った完全に土煙の晴れた着弾点にあった。

 ビルの屋上は、面制圧の光線を受けたにもかかわらず、着弾を示す跡がない。これは、つまり、

 

赤雷雲(レッドスプライト)の能力ね!」

 

 彼は、おそらく磁力による反発を壁にしたのだ。衝撃を減衰は、こちらが引き撃ち(・・・・)したこともあるのだろう。その結果、一切の破壊を受け止められた。

 

「やるじゃない、まさかこの私がタイル一枚も破壊出来ないなんてね……!」

 

 ここで彼を仕留められなければ魔法少女の名が廃る。既に実力は見せつけられた。なら次は、こちらの番だ。

 

「最新式の魔術砲撃師(テクノ・ガンナー)一番槍(ライト・アロー)こと日高・七海! 私の速度と破壊から逃げられると思わないでよね!」

 

 加速した。向かうのは、魔法少女の格好をした超人(ヒーロー)だ。

 

      ●

 

 ――一瞬でも展開が遅れてたら抜かれてたなあ、アレ。

 冷や汗を掻きながら、馨はさきほどの砲撃を思い返していた。

 推進方向とは逆向きの砲撃だったことで、磁力壁の展開が間に合ったのだ。出力調整する暇が無かったので、広範囲な大きさになってしまった。そのせいで、光線にギリギリ抜かれかけた。

 次の砲撃が、もしちゃんとした態勢で行われていたら、あんな甘い防御なぞ軽々とぶち抜かれる。

 本来不本意な戦闘ではあるが、手を抜けば一気に食われる。

 

「ならば、やることは一つ!」

 

 ――全力で逃げ切る!

 相対とは、どちらかの優勢を決めるために互いに向き合うことだ。だが、必要に駆られていないならば、そもそも相対する必要はない。

 つまり、戦闘の理由が無い自分には、彼女に付き合って戦闘を継続する理由は無いのだ。

 そのために、手を抜かず、全力で出来ることは――!

 

「所長ォ――!」

『んぁ!? なに、なによなに、寝てないわよ、眠ってない……』

「後で牧原さんに報告しときますけど緊急事態です!」

『んー? ああ、花岡ね。一瞬、〝うわ、何この美少女、私!?〟とか思ったけど。何か用?』

「中盤聞き流しますけど、今、大変突発的な緊急事態でして、――魔法少女に追われてます」

『ごめん、よく解らないわ。いつから悪役(ヒーラー)になったのか知らないけど、一応言っとくと切っていい?』

「見捨てるの早っ!? もう少し逡巡しましょうよ! 今回自分、何も悪くないですからね!?」

『またまたー、どうせ無駄に鍛えた女子力で相手のプライド傷つけたんでしょ?』

「一応言っときますけど、自分は男です……!」

 

 追撃の誘導弾を避けつつ、装着式の通信器で所長と連絡を取り続けた。低速の誘導弾なら建物を壁にすれば躱しきるのは難しくない。

 貯水タンクが撃ち抜かれて派手に噴水を上げる。よく市民団体から〝街に被害を出すな〟と言われるが、各組織から〝諦めろ〟と返されるのがいつものパターンだ。修繕費などもヒーローの給料から天引きされるので半々だろう。

 この場合、どっちの負担になるんだろうか……、と考えたが、今はこれ以上被害を増やさないことに意識を集中せねば、主に自分の。

 

「そんなわけで、所長から〝過ぎ去る願い星(ワープ・シューター)〟の方へ連絡をお願いします! ――っとぉ!?」

『何か苦労してるっぽいね。私もだけど』

「後でお土産のシュークリームを」

『〝賑や菓子〟の一個五百円する奴ね、十分待ってなさい』

「展開早っ! 御願いします!」

 

 よし、これで後はこの戦闘を凌いで御土産持参で本社に戻ればいいだけだ! ……今月のお小遣い持つかな……。

 思わず、現実の負の面を直視しそうになったが、何とか前向き思考で耐えた。まだ自分は若い、未来は明るい筈だ。

 ヒーローなのに女装して魔法少女に追い掛けられる僕の未来って……?

 

「これならどう!?」

「なっ――!」

 

 高速飛行を保っている魔法少女が、いつもの間にか眼前に回り込んでいた。

 機殻箒での旋回には、長い航行距離が必要な筈、一体どうやって……!?

 答えは、機殻箒の先端部にあった。それは、先端部に癒着した水の帯だ。水の帯は直線だ。自分の真横から迫るそれがいつ用意されたものか、馨は気づいた。

 さっき撃ち抜いた貯水槽か!

 つまり、彼女は水を牽引帯として、強引なドリフトで回り込んで来たのだ。貯水槽の質量ならば、高速のドリフトに耐え切るだろう。だが、

 ――彼女自身に掛かる負荷は甚大な筈!

 実際、一瞬にして相当な負荷を耐えたためか、彼女の顔は歪んでいる。

 何故、そこまでして自分との戦闘に拘るのかは解らない。しかし、彼女は本気だ。

 ならば、こちらも本気で相対しなければならない。

 

「食らいなさいな!」

「くぅあああ――!?」

 

 脇腹に、水の帯を高速で叩き込まれた。

 

      ●

 

 やっと当てたわね……。

 こちらの高速飛行に対し、彼は障害物を用いることでの攪乱を行っていた。それでも、常人より遥かに速い。気を抜けば、一瞬で彼を見失いかねなかった。

 だからこそ、回り込んで彼の動きを止めなければならなかった。引きつける力は白魔術の本分だが、自分の腕では媒介の質に制限される。

 貯水槽に水が溜まっていたのは行幸だった。強引なドリフトで機殻箒とあばら骨が悲鳴を上げたが、彼を捉えることが出来たので良しとしよう。

 

「さあ、これで――!」

 

 止めの砲撃を加えるため、機殻箒を構える。

 砲撃は、放たれない。

 

「え――?」

 

 疑問を思考するより先に、変化があった。構えた機殻箒に、縦の亀裂が入ったのだ。

 驚愕と同時に、砲撃のためにセッティングした術式を解除した。このまま無理に撃ち出せば、機殻箒が完全に破損する。

 速度を落とさない強引のドリフトではあったが、着地のために途中から出力はカットしていた。こちらが出力を提供しなくても、円運動を利用すれば、逆に速度が上がるからだ。

 つまり、この破損は、

 

「やってくれるわね……!」

 

 見れば、高速の水圧を受けた彼は立ち上がりつつあった。薄い衣装が濡れ、素肌が透けて見える。下着は無い。当然だが。

 思っていると、彼が言った。

 

「自分にはこれ以上戦闘を続ける意思はありません! 攻撃を中止してください!」

「愛機を壊されて黙って引けると思う? 大体、何で戦闘してるかなんて私も忘れたわよ!」

「えええええ!?」

 

 驚愕する彼を見て、少し胸がスッとした。ざまあみろ。

 でもこれ、完全にこっちの言い掛かりよね。本当に何で私砲撃ぶっ放してたのかしら?

 困惑した表情の彼女、いや、彼? が、濡れた衣装の肩に掛け直していた。……なんかこう、エロい。男の子のくせに色気というかそういうのが。

 ……ああ、そうか。私は、こいつが魔法少女なのが違和感ないのが気に入らなかったのだった。うん、でも、やっぱりエロい。

 

「と、とにかく! これ以上の戦闘は無意味です!」

「そう、ならあんた、ちょっと服を脱ぎなさいよ」

「えっ」

「え? だって濡れてるでしょ? 着替えなきゃ駄目でしょ? だから、脱がなきゃ駄目でしょ?」

「いや、あの、なんか凄い嫌な予感がするので嫌です」

「いいから、戦闘やめるから、ちょっと脱がせなさいよ」

「うわあ――!? 所長ォ――! 早く何とかしてくださーい!!」

 

 ええい! 抵抗するんじゃないわよ! 興奮するでしょうが!

 涙目のかの……彼を抑えつけ、無理矢理衣装を脱がせていく。くっ、動悸が荒い。何かに目覚めてしまいそうだわ……!

 

「あ、そこはっ、そこは脱がしちゃダメえええ――――!!」

 

 ――こんな魔法少女が居てもいいかもしれないわね。

 

      ●

 

 あるときより、ヒーロー達の跋扈する街に一人の魔法少女が現れた。

 彼女が浴びせる電撃と、小さな菊の花から、街の人々他に、悪役からもファンが生まれた。

 その正体は一切明かされず、魔法少女が所属するヒーロー組織〝過ぎ去る願い星〟や〝何でも屋(エクスペンタブルズ)〟も、その詳細を知らないという。

 そんな謎に満ちた魔法少女は、いつしか魔法少女というジャンルの象徴となり、益々人気が上がった。

 しかし、その人気の影で、一人のヒーローが膝ついて人生挫けていることに気づいている者は、

 ――結構いる。




そんな感じで打ち切り気味なエンド。
特に山も落ちも無い感じです。
一万文字で整えてみましたが、いかがでしたか? ご指摘など御座いましたら宜しくお願いします。
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