セカンドールマスターー育成者とドールのイロモノシリーズー 作:御舘雅盛
荒い息遣いが俺の耳を打つ。
幼い頃から一緒に過ごしてきた仲間――アメジスト色の瞳と金色の髪の天使の息遣いが。
こいつの白磁を思わせる肌が桜色に染まっている。肌にも玉のような汗が浮かんでいる。
『そろそろかな……』
そう思い、
「……ティア……ティアイエル……」
囁くように名前を呼んでみる。
「キ、キャスバル……」
俺を蕩けさせる、水晶が触れ合うような声。
だが、その声もどこか浮つき、限界が近い事を窺わせた。
こいつの虚ろがちな瞳が切なさを湛える。
吐く息も熱く激しい。
「……俺……もう……」
我ながら、情けない声が出た。
「だ、だめっ! もう少し、もう少しだから……!」
短めの美しい金髪が額に張り付いている。
哀願に近い声。この声に俺は逆らえない……。
少しの無茶なら利いてしまいたくなる。
……主もこいつには甘いが、その気持ちは理解できる。
『くそっ……』
思わず心の中で悪態を吐く。
そんな挫けそうな意志とは裏腹に、俺の身体はその動きを止めなかった。
むしろ、激しさを増したように感じる。
こいつと一緒にヤルといつもこうだ……。
『やれやれ……俺は淡白な方だと思ってたんだけどな』
そう考え、思わず苦笑が浮かぶ。
「…………キ、キャスバル……」
朱に染まり、上気したこいつの顔。
こいつのこんな顔を見る事になるなんて思いもしなかった。
「……キャスバル……一緒……一緒に……」
『今回も何とか持ったか。さすがに男が先に果てるのは格好悪いしな』
そう考えると安堵が込み上げてくる。
「あぁ。最後まで……一緒、だ……!」
言いながら、ラストスパートをかける。
そろそろ限界か……!
意識が遠のいていく……。
「はぁ……あぁっ……」
激しい表情のあいつ。
「いくぞ! ティアイエル……!!」
「キャスバル!!」
あいつの苦しげな顔が目の前に広がる。
その瞬間、目の前で光が爆発した。
「……キャスバル……凄かったわ……」
俺の肩にもたれながら、こいつが呟く。
「俺はヤル時はヤル男だからな」
ニヤリと笑いながら答えてやる。
「私に内緒で、誰かと練習してるの?」
あいつが拗ねたように言う。
でも目は笑っていない。
いつもタレ目がちな目が少し釣りあがっている。
何を疑っているのやら……。
「何言ってんだよ……」
取りあえず笑って誤魔化す。
「しのぶ様と練習しているんじゃないかって思ったの」
やれやれ……相変わらずのやきもち焼きか。
「馬鹿だな……。そんなことするわけないだろう?」
耳元で囁く。最近気付いたこいつの弱点。
途端に頬を赤く染めるこいつ。
「きゃっ! もう、すぐそういう事するんだから。まぁ良いわ……その代わりまた今度……ね?」
悪戯気な微笑み。
『またかよ……』
そう思ったが、
「ま……まぁ、考えとくよ……」
取りあえずそう応える。
……尤も俺の気持ちは既に固まっている。
俺の気持ち、それは――。
『冗談じゃない……くそ暑い真夏のこの時期、真昼間から走り込みだなんて、そう何度も付き合えるもんかよ……』
<FIN>