1話:メズールと告白とクロスオーバー
問い・メズールはかわいいか否か?
これは議論の余地もないことだが、とりあえずメズールという存在がなにかを伝えておこう。
彼女はグリード。
仮面ライダーオーズの世界にいる幹部級の怪人の一人。
約800年前に王の命を受けた錬金術士たちが『欲望の渦』から作り上げた人工生命体だ。
本来は10枚ずつのコアメダルでしかなかった。
しかし、そのコアメダルから一枚のメダルを抜き取ったことで『欠けた存在』、すなわち足りないがゆえに満たしたいという欲望が産まれ、自立するだけの意志を獲得したというわけだ。
セルメダルを使うことで人の欲望からヤミーを作り出すこともできるし、人間に変異することもできる。
では、メズールがかわいいかどうかの話に戻るが、その答えはもちろんかわいい一択に決まってるだろう。
まず彼女の容姿だ。人間態の彼女は少女らしさと大人っぽさを掛けたような美少女だ。
慎ましやかな胸は変態を呼び、黒ニーソと短パンによって生み出されたむっちりとした絶対領域はヤミーどころか変態を作り出してしまうことだろう。
もちろん怪人態も捨てられない。怪人といえばただ怖さや不気味さをメインにしたデザインが多い。
けれど、メズールは怪人らしさの中にも色っぽさがあった。
そもそもウナギとタコが体にあるんだ。エロくないほうがおかしい。
そして、彼女の内面も素敵で愛情や母性の欲求が強く、メダルより仲間の調和を優先させたり、仲間のグリードの内輪揉めに介入して争いを仲裁するなどまとめ役を担うなど面倒見の良さがいい。
グリードゆえの裏切りやプライドの高さ、仲間以外の他者の事は見下しているなどダメな部分もあるけれど、好きになればそこがかわいらしくも見えてくる。
総じて、メズールがかわいいというのは絶対普遍の真理であり、俺がメズールに惚れてしまうのは時間の問題でしかないのだった。
もしメズールのために生きれるのなら、俺はきっと自分の人生を賭けてまで彼女のために尽くすだろう。
★
4月と言えば新しい生活の始まり。学校のビッグイベントとして挙げられるのは入学式だろう。
この世界に転生してしばらく、俺も高校生にまで成長したけど、本当に前世とは比べらものにならない程濃い人生になったなぁ。
そして、高校生に上がった俺は今日から、高度育成高等学校に入学することになっている。
そう、ライトノベル『ようこそ実力至上主義の教室へ』。俺が転生した世界の舞台だ。
転生させたやつが封印したせいでストーリーとか全然思い出せないけど、たしかものすごい頭脳戦とかやってた気がする。あと赤点取ったら退学するとか。
だが、今この瞬間に限りそんなことは些細なことでどうでもいい。
これから俺がするのは一世一代の愛の告白。年頃の子どもたちなら脳内ピンク色の狂い咲きモードに突入している。
まだ朝早くだからかバス停の周りには人気がない。
いるのは同じ赤色の制服を着込んだ俺と彼女だけだ。
春風が吹くたびに、周りに咲く桜の花びらが散っていく。
彼女の髪が風に揺れるたびに髪をかきあげる仕草には色気があって、俺のお胸はもうドキドキ、ポッピーピポパポ。
すなわち告白の時!
そう好きな人への愛の告白だ。
「——
目の前にいる彼女、いやグリードであるメズールに。
俺はグリードである彼女に恋をしてしまったのだ。
理由なんてない。ただの一目惚れである。
いや、仮面ライダーオーズをテレビで見てたから二目惚れ以上なんだけどそこはそれ。
とにかく今の俺は彼女にハートを撃ち抜かれてしまったただ一人の男だ。
手を伸ばして頭を下げる。彼女の顔は見れない。
そして告白の返答は、
「あら、ありがとうオレンジの坊や。けどあなたとは絶対に付き合わないわ。たとえ私のコアメダルが粉々に砕けてしまっても、ね」
その言葉を聞いた瞬間、俺は力なく膝から崩れ落ちた。地に手をついて涙が溢れる。
見事に振られちゃったよ。しかも完膚無きまでの玉砕。
顔を見上げればメズールの笑顔が見える。
見てよあの笑顔。笑ってるのに目がまったく笑ってない。
「なんで!」
「なんでって、あなたこれで何回目の告白よ。百回以上も告白されたら私じゃなくてもウンザリするわよ」
腕を組み、蔑んだように見下ろしてくるメズール。
俺は悪くない。メズールが魅力的でかわいいのがいけない。
「それに私たちをこんな中途半端なまま産まれさせた錬金術士の子孫ってだけで、今すぐにでも殺したいぐらいよ」
殺気の篭った目で見てくるメズール。そんな彼女を見てもときめいてしまう自分はもしかしたら無限の先を超えているのかもしれない。
彼女の言う通り、俺は錬金術士の子孫だ。
しかも800年前の王に命を受けてコアメダルを製作した錬金術士たちのリーダー格。劇場版を見た人ならわかるが、その映画のらラスボスとして登場していたガラ。あれの子孫が俺なのだ。
彼女からしたら俺は殺す対象になるのだろう。欲望を満たしたくても満たせない生命として創り出されたあげく、た800年前のオーズのせいで封印されたのだ。
彼女からしたら踏んだり蹴ったりの人生だ。
子孫で直接関係ないとはいえ、メズールの態度が水のように冷たいのは当然の帰結。さすが水属性。なんならまだ初対面の頃の方が優しかったまである変化だ。もうちょっと昔みたいに俺のこと愛でてくれてもいいのに。
どれだけ殺したい対象だとしても、俺はメズールが好きなのだ。
……それにしてもこの体勢、色々と際どい。今のままだと俺が彼女を見上げる形になる。
つまり、人間態メズールの黒ニーソとスカートによってできたムチムチの
「ふん!」
「ふべしっ!」
パンツの色を確認しようとしたら、メズールの蹴りが飛んできた。
もろ顔面に直撃。ポタポタと鼻から血が出てきたし、ズキズキして痛いかも。
「なんで蹴るんだよ」
「別に人に見られてないからどうでもいいでしょ。それにあなた、前から私に蹴られるの喜んでいたじゃない。そういうの、どえむ?って言うんでしょ」
どMって、どこで覚えたんだよ。
あとドMについては否定させてもらう。あくまでメズールが蹴るから好きなのであって、そこらの美人美少女美幼女に蹴られて喜ぶ変態じゃないの。
「それに私、あなたに告白されたせいでイライラしてるのよ」
「ちょ、メズール!ここで怪人態なるのダメ!」
俺の制止を無視して、メズールが変身した。人間態の体を包むようにセルメダルが溢れかえっていき、次に姿を現したときは怪人態。シャチの頭に海の生物を思わせるシルエット、グリードとしての姿だ。
いや、周りに人がいないからってそんな軽々と怪人になっちゃダメだよ。オーズが現れたらどうするのさ、確実にメズールが攻撃されちゃう。場合によってはカザリたちといったグリードに狙わてしまう。
「ハッ!」
内心、オーズにバレないかで慌てている俺の気持ちなんていざ知らず、メズールは手をこちらに突き出し、俺に向かって大量の水を放ってくる。
俺はサイドステップを刻んだり、彼女から距離を取ることでなんとか躱していく。
「おいメズール!制服びちょびちょになったら俺この後すごい困るんだけど⁉︎今日入学式なんだから後のこと考えろよな!」
「うふふ!文句があるなら自力で止めてみなさい」
こんにゃろう。
俺の文句を流して水による攻撃を再開するメズール。
冗談抜きで俺がびしょびしょになるまでやり続ける気か。
「このおバカメズール。言ったこと後悔すんなよ」
そっちがその気にならこっちも容赦しないんだからな。
メズールからの攻撃を躱しながら俺は体内に意識を向ける。
胸元に手を置けば、体内の奥にある3つのメダル、
「——ウォオオオオオオオオオオオオオ‼︎」
全身が変化する痛みに耐えながら、声を荒らげる。
メズールと同じように体からセルメダルが溢れたと思えば、全身を覆われる。
メダルによって閉じた視界が広がったときにはさっきよりも濁った世界が待っていた。聞こえる音も
きっと傍から見れば爬虫類を思わせるような化け物に変化しているだろう。
代々家に伝わる家宝がコアメダルとか。たまたま見つけた俺は運がいいのか、転生特典なのかはわからないが、メズールの隣に立てるならどっちでもいい。
怪人になった足で地面を強く踏みしめる。骨が軋む音が鈍く聞こえるが気にしない。
「オラッ!」
「くっ!」
筋肉が引きちぎれるのも無視して、俺は無理やり体を動かし加速させる。
爬虫類のコアメダルの効果は超再生能力。
肉体が高速で再生するから多少は酷使できる。
そして、無理矢理な特攻のおかげでメズールの水鉄砲をくぐり抜け、俺は彼女の手首を掴みあげることに成功した。
怪人態のメズールの顔が間近にある。
「すごいわね。ちゃんとしたグリードでもないのにここまでの力を引き出せるなんて」
「これでもメズールたちを創り出した錬金術士、そのうちの一人ガラの子孫だからな。これぐらい余裕余裕」
感心するメズールに俺は表情は変えられないが、笑みを浮かべる。
嫌われてても好きな人にこうやって褒められるだけで舞い上がってしまうのだ。もしかしたら俺はチョロい男かもしれない。
「もういいわ。手を離してちょうだい」
もう気が済んだのかメズールが抵抗しない。
けれど、俺としてはもう少しだけ繋いでおきたい気持ちもある。
「もうちょっとだけ掴んでてもいい?」
「殺すわよ」
うわ、こわっ。
手首を離してお互い怪人態から人間の姿へと戻る。
メズールとは手を繋げなかったから残念だけど、安堵からかため息が漏れてしまう。
ほんと今の戦闘がオーズたちや他のグリードたちに見つからなくてよかった。せっかく今日から彼女との幸せな学園生活が始まるのに、見つかってたら血みどろなコアメダル争奪戦の生活に逆戻りだ。
それはヤダ。メズールが死ぬ可能性は少しでも根絶しないと。
「顔のケガはもう治ったのね」
ふと気づいたら、メズールが俺の頬に手を添えていた。
どうやら俺の顔を蹴った時の傷が治っているから興味が湧いたのだろう。
触れた手は冷たいのに俺の顔はどんどん熱くなっていく。心臓の鼓動の音が速くなるのがわかる。
もう、そういう仕草が俺のハートを掴んで離さないんだから。いい加減自覚してよね!
メズールには男たらしの才能がありそうで、不安になる。
「相変わらずその回復能力はすごいわね。頑丈なガメルと戦えるわけね」
「まぁ、俺が使ってるコアメダルの一番の強みだからな」
錬金術士ガラきよって産み出されたこのコアメダルがあったからこそ今の俺がある。
これがなかったらメズールとの取り合いでぶつかったガメルにも負けていただろう。やっぱり男同士の勝負は熱いのに限る。
まぁ、Dr.真木や映司とは違って俺のはインチキ。完全なグリード化はしないよう錬金術で調整はしてるから。その分力は弱くなる。メリットだけではない。
「ねぇ、カケル。私との契約は忘れてないわよね?」
そんなことを考えていると、頬から手を離さずにメズールが真剣な表情で尋ねてくる。いたずら心でちょっとからかってみようかと思ったけどやめた。
見つめてくる彼女の目は嘘や冗談では済まさないと言外に物語っていたからだ。
——契約。
そうメズールと契約したからこそ殺したいほど嫌いな俺と一緒にいる。俺から持ちかけた賭け。
俺は制服に着いた汚れを少しはらってから居住まいを正し、あのときと同じ約束を口にする。
「もちろん覚えてるよ。俺は錬金術とこのコアメダルを使って、メズールの欲望。……いや、夢を叶える」
「そうよ。そして私は、あなたと一緒に高度育成高等学校とか言うところに入学して、3年間学園生活をして無事卒業する」
それがメズールとの契約内容。
頬から手を離したメズールがまた腕を組む。
「私が言うのもなんだけどあなたの契約内容、本当にそれでいいのかしら?」
「もちのろん」
イエスと頷いてみたが、メズールの顔はどこか納得していないみたい。私、不満です。
え、なにやっぱり錬金術士の子孫じゃ頼りない感じ?今さらになって後ろから、ごとき氏のように腕突っ込まれるやつ?
「そんな複雑そうな顔してなに?やっぱ契約内容が不満?」
「そういうわけじゃないけど……。私はてっきり私と付き合いたいだとか、自分のモノになれって言うと思ってたから……。なんだか拍子抜けしたのよ」
あぁ、そんなことか。
欲望だけを追い求めるグリードからしたら、俺の欲望が小さく見えたのかもしれない。
もちろんメズールのことは好き好き大好きだし、本音を言ってしまえば今すぐにでも自分の
けど、何事も順序が大切。それに俺はそこらの人とは違って平凡出身の転生者なのだ。
そんな燃えるような度胸俺にはない。
「それともこれがちきんって言うものかしら?」
「チキンて、いや合ってるけど。本当にどこで覚えたんだよ」
本当にどこで覚えてきたのか不安になってくる。
メズールの偏った知識に呆れていると 俺たちが待っていたバスがやってきた。あれに乗れば次にたどり着くのはラノベの舞台。
この世界には2つの物語がある。
すでに火野映司の物語が始まっている。きっと大切ななにかを掴むために仮面ライダーオーズとして活躍するのだろう。
でも、
俺たちが行くのはこれから始める物語。綾小路清隆の物語だ。そして、その端で欲望を満たす俺たちの物語でもある。
今さらだけどこの世界、よう実と仮面ライダーオーズのクロスオーバー世界とか、いくらなんでも設定の盛りすぎだろ。世界観的にも属性過多がすぎる。
まぁ、閉鎖された空間でメズールとラブラブ(?)な学園生活を送れるから、いちゃもんとか付けないけどさ。
転生者にして錬金術士ガラの子孫、
「ねぇ、やっぱ手だけでも繋いじゃダメ?」
「あなたのコアメダル全て私にくれたら考えてあげるわ」
うーん、やっぱり女の子にモテるためにはコアメダルもといお金が必要なのか。もしくは顔。
あとコアメダルはあげません。
ようこそ実力至上主義の教室へと仮面ライダーオーズのクロスオーバー。
ただメズールヒロインの作品が書きたかっただけなんです。メズールかわいいですよね。
あと、主人公の名前はカケルって言うんですけど、よう実にもCクラスに龍園翔って同じ名前のキャラがいるんですよね。
きっと2人仲良くベストマッチするに違いない。