ようこそ欲望至上主義の教室へ   作:白黒パーカー

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3話:説明と自己紹介とご褒美

 

 

櫛田(くしだ)が綾小路のことを好きだと知ってしばらく、担任の先生がやってきた。

その頃には櫛田も諦めたのか自分の席に戻っていったので、俺も席に着く。

 

「えー新入生諸君。私はDクラスを担当することになった茶柱佐枝(ちゃばしらさえ)だ。普段は日本史を担当している」

 

ポニーテールにスーツを着ているしっかりしていそうな印象のある先生だ。

けど、俺のグリード・アイに映っているのは軽井沢や櫛田たちにも劣らない()()()()

 

なにこの学校。ラノベだからって欲深い人多すぎじゃない。

頭脳戦やることは覚えてるけど、もしかしてみんな闇深系?

そんな俺の思考の最中も茶柱先生の説明は続いていた。

 

「この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前達全員と学ぶことになると思う。よろしく」

 

なるほど。頭脳戦もするしクラスは固定したほうが戦いやすいやつってことか。てことは個人戦ではなく集団戦。

しかも、メズールと3年間一緒にいられるとか最高じゃないかこの学校。

 

「今から配る学生証カード。それを使い、敷地内にあるすべての施設を利用したり、売店などで商品を購入することができるようになっている」

 

「このポイントは敷地内なら何でも購入可能だ」と妙な言い回しをする茶柱先生。

何でもってことは人とかもポイントで買えるの?

できるならメズールを買ってお持ち帰りしたいんですけど。

 

そして、茶柱先生の次に言った言葉でクラスがざわついた。

 

「ポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることになっている。既にお前達には10万ポイントが振り込まれているはずだ。1ポイントにつき1円相当の価値がある」

 

一月に10万円。それは高校生に上がり立ての生徒には十分すぎるほどのお小遣いだろう。

その言葉に反応するように周りから欲望の塊が膨らむ音が聞こえてくる。

 

タダでお金が貰えるというのは、簡単に人の欲望を満たすことができる道具だ。お金があれば好きなものが買えるし、好きなこともできる。

そして、一度味わった欲望はさらに大きく、もっと求めるようになる。

 

そういう意味ではこの学校を選択したのは正解だった。メズールの夢を叶えるための手間も省ける。軽井沢にセルメダルを投入したし、これならセルメダルも十分に稼げる。

 

なにより俺も楽しみたい。

彼らの欲望を味わいたいと俺の中のコアメダルも喜んでいる気がする。

 

「支給額の多さに驚いたか? この学校は実力で生徒を測る。入学を果たしたお前達には、それだけの価値と可能性がある。好きに使うといい。このポイントは卒業時には回収することになっている。何か質問はあるか?」

 

茶柱先生の言葉に反応を示す生徒はいない。みんな10万円というお金に心惹かれているのだろうか。

あ、いや、違った。メズールと俺の後ろの席のやつは確実にお金に興味を示してなかった。

 

振り返るとメズールはクラスの欲望が膨らむ様子を楽しそうに見てるし、確か高円寺ってやつはなんか爪研ぎしてる。

 

少なくとも誰も挙手をする様子が見えない。

別に俺も手を挙げることもないことはないが、この後のセルメダル集めのためにも、もう少しみんなの欲望を刺激しておこうか。

というわけで俺は手を挙げた。

 

「なんだ金城、言ってみろ」

「10万ポイント、それってもっと増やすことができないんですか?」

 

俺の発言にクラスのみんなが再びざわついた。

 

「あいつ、まだ欲しがってる」

「10万でも十分じゃないかな?」

「えー、でも増えるならいいなぁ」

「あら、カケル。またおバカなことをするのかしら?」

 

賛否両論ながらも、見える欲望の渦は刺激させれてるみたいだ。

否定的な意見なやつほどその渦は大きい。

というか最後。絶対メズールだろ。人のことバカにして。

 

「ほう」

 

茶柱先生は、先生でおもしろいものを見つけたような目で俺を見てくる。

なに?俺おもしろくないよ。ただ質問しただけじゃんか。

一瞬、笑みを浮かべるがすぐに元の表情に戻すと、茶柱先生は俺の質問に答えてくれた。

 

「そうだな。先ほども言った通りこの学校は実力で生徒を測る。つまり、10万ポイントが上がるかどうかはお前たちの頑張り次第ということだな」

 

なるほど。またなんとも抽象的な回答だな。

少なくとも俺たちが頑張れば、10万ポイント以上獲得できる。

逆に頑張らなければ10万ポイント以下になる可能性もあるかもしれない。

 

条件がなにかを聞こうかと思ったけど、聞くのはやめた。

これ以上は質問しないほうが後々楽しそうだし、どうせ10万ポイントのほとんどはメズールに貢ぐわけだ。リアル課金リアル課金。

 

 

 

 

 

 

俺以外に質問する生徒がいないこともあり、茶柱先生は教室から出て行った。

後に残ったのは10万円をもらってサツマイモみたいにホクホクした顔をするクラスのみんなだ。

 

知り合ったメンバーで10万円の使い道や学校が終わったらどこで遊ぶかを話し合ってる中、一人の男子生徒が立ち上がる。

 

「皆、少し話を聞いてもらってもいいかな?」

 

その生徒はこのクラスの良心、平田洋介だった。

このキャラは覚えてる。軽井沢と付き合ってイチャイチャしてたはず。

リア充だ。

 

「僕らは今日から同じクラスで過ごすことになる。だから今から自発的に自己紹介を行なって、1日でも早く友達になれたらと思うんだ」

 

ふむ、ありだと思う。

入学式まではまだ時間があるし、別に拒否する理由もない。一応、3年間このクラスで固定みたいだし、参加するだけでも利益はある。

 

そう考えて自己紹介に参加しようと思ってたら、俺のもとにメズールがやってきた。

 

「どしたの、愛?」

「カケル、どこか静かなところで話しましょ?」

「自己紹介はどうするんだよ」

「今は興味ないわ」

 

メズールにしては珍しい態度。どちらかと言えばグリードの中でも仲間の調和を大切にするほうなのに。

どうやら決意は固そうで、自己紹介には参加させてもらえないみたいだ。

 

「はいよ。屋上でいい?」

「人がいなければどこでもいいわよ」

 

屋上って階段登り続ければたぶんたどり着けるよね。

周りの視線を気にせずメズールが一人教室を出ていく。俺もそれに続くように教室を出る。

その前にみんなの方に向き直る。アフターケアは大切に、だ。

 

「あ、自己紹介参加できなくてごめんね。今出てった女の子が七海愛(ななみあい)で、俺は金城カケル。あの子自由人だけど悪い子じゃないから。これから3年間よろしくね」

「いや、いいよ。金城くんも教えてくれてありがとう。また落ち着いたときに2人には自己紹介させてもらうよ」

 

なに平田くん、超いい男じゃん。

こんな自由人に対しても優しく接してくれるなんて。俺、女の子だったら平田に惚れてたかも。いや、女の子でもメズールに惚れてたかな?

俺は平田に軽く手で謝りながら、メズールの後を追った。

 

 

屋上にたどり着くと当然人はいなかった。

まぁ、初日で入学式が始まる前だ。人がいないのは当たり前だろう。

メズールはすたすた歩くと柵にもたれかかり、グラウンドや街を見下ろしている。

俺はメズールの隣に並んだ。

 

「メズール、監視カメラがあるみたいだからあまり大きな声で話さないでね」

「そうみたいね。この学校あちこちに監視カメラが設置してあるわよ」

 

グリードだと人にバレてはいけない。集団生活の中で常にそれを警戒していたからこそ、この学校の監視カメラの多さにはすぐに気づいた。

やっぱり頭脳戦するだけに監視してるのかな?

どうやらメズールも気づいていたようで屋上に設置された監視カメラを見て、鼻で笑った。

 

「すごいわねここ。前にいた街よりも欲望が多くて、さらに大きいわ。こんなに欲望が多いと私の体が疼いちゃうわ」

「まぁ、この学校。3年間外出れないけど、さっきみたいに10万ポイント貰えるし、進学率、就職率100パーセントの学校だからそれを求めて来る生徒はたぶん欲深いのかな」

 

それにこの学校はラノベが舞台。当然、そんじょそこらの人間とは比べ物にならないだろう。

 

「ええ、ここは素敵なところね。あなたに賭けて良かったと初めて思えたわ」

「え、今までいいと思ってなかったの」

 

いや、確かに殺したいとか冷たいこと散々言われてきたけどさ。

ショックで肩がズーンと下がる。

メズールのほうは俺を見ておもしろそうにある話題を振ってきた。

 

「それよりもカケル。担任が来るまで私のほうチラチラ見てたでしょ?」

「そりゃ見るだろ。好きな人が他の男愛でようとしてたらさ」

 

櫛田と話している最中、メズールはずっと綾小路に構っていた。それは机が離れていても視界には入るのでよくわかる。

メズールこ悪い癖だ。

しかも愛でる相手が主人公の綾小路だ。もう一人の主人公である火野映司は仮面ライダーオーズだったこともあって、敵対するだけで終わってた。けど、綾小路は別に仮面ライダーでも害も与えてこない。

彼女にとってはちょうどいい欲を満たすための相手だ。

 

「あら、嫉妬?」

「嫉妬ですよーだ。どうせ、俺はメズールの嫌いな錬金術士の子孫ですからー」

 

まぁ、向こうは冴えないようで実は顔が整ってるし?

俺が膨れてそっぽを向いているとメズールがふふ、と微笑んだ。

 

「まだ結果は出てないけど、ちょっとしたご褒美ぐらいはあげてもいいわよ」

「なに?どうせ昔みたいに俺にセルメダル投入してヤミーのプレゼントとかでしょ」

 

メズールが近づいてきた。

それを胡散臭そうに見てると、彼女の顔が目前に迫ってくる。

チュッというリップ音とともに頬にぬくい感触が伝わった。

 

「は、め、メズール?」

「大丈夫よ。カメラには映らないようにしてあげたから」

「い、いや、そういう問題じゃなくて……」

「あら、顔を赤くするなんて可愛らしいわね」

 

今されたのってもしかして、キッス……。

 

「どう、頑張れそう?」

「…………あい」

 

この後の俺は入学式が終わるまでずっと放心状態になっていたと、メズールから教えてもらった。

 

 

 

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