ARIA The PIACERE 2 そのシンデレラの行く先は・・・   作:neo venetiatti

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第23話

屋台が立ち並ぶ市場は人で溢れていた。

アローナは、アトラから聞いた話がどうしても気になっていた。

そして話の様子から、まだブローチは見つかっていないこともわかった。

「ねえ、ちょっと聞きたいことあるんだけど」

アローナはあちこちの屋台に聞いて回ってみた。

だが、どの屋台の人も、ブローチに関しては聞いたことすらないという返事だった。

もし落としたとしたら、気づきにくい市場が有力だと踏んでいたが、なかなかそれらしい話は聞けそうになかった。

「あんた、久し振りだね」

果物屋のおばちゃんだった。情報通として知られていて、アローナもちょくちょく通っていた。映画祭に関して、オレンジぷらねっとの動きが怪しいと最初に教えてくれたのも、このおばちゃんだった。

「そうだ、おばちゃん。この辺でブローチの落とし物見なかった?」

「ブローチ?そんなしゃれたもん見なかったねえ」

「そうか」

アローナが諦めて行こうとした。

「そういえば」

「何?なんかあった?」

「いやね、なんか最近へんなうわさ話を耳にすることがあってね」

「どういう話?」

「あくまでもうわさだからね」

「わかったから」

アローナは待ちきれないように苛立ちを隠せないでいた。

「なんかね、見るんだって。女の人」

「それってつまり、幽霊か何かってこと?」

「そこまではわかんないんだけど、子供たちが言うんだよ」

「それって都市伝説か何かなの?」

「だから細かいことまではわかんないんだって。だけど、大人は見た人はいないのよ。子供ばかり」

「へぇ~。ちなみにどんな感じなの、その幽霊」

「金色の髪を長~く伸ばしてるらしいんだけど」

「ちょ、ちょっと待って。その話ほんと?」

「だからうわさだって」

 

アローナは屋台のおばちゃんから聞いた、その話の出どころらしき子供たちを捜し回った。

ネオ・ヴェネチアの土地勘には自信があった。

路地を通り抜けた先の狭い広場で、早速そこで遊ぶ子供たちに遭遇した。

「ねえ、君たち、金色の長い髪の女の人のこと、聞きたいんだけど、知ってる?」

「おばちゃん、知ってるの?」

「お、おばちゃん?」

〈この子たちには、あの屋台のおばちゃんも、自分のことも、同じおばちゃんにみえてるのか・・・〉

アローナは、さすがにショックを隠しきれないでいた。

「ハハハハ、おばちゃんも聞いたことはあるんだけど、良くはしらないんだよね」

ひきつった顔で、なんとか笑顔を作ろうとしていた。

「いつもいるわけじゃないんだ。この時期になると時々見かける」

「この時期って、つまり映画祭をやってるこの時期ということ?」

「そうだよ」

「映画の人」

「映画の人?どういうこと?」

「わかんない」

子供たちはそれぞれに印象を語った。だが、つかみどころのないものばかりだった。

「その人と話したことはないの?」

「う~ん、ないと思うけど・・・」

「でもあのおねえちゃん、いつもニコニコしてた」

「うん、なんか楽しそう」

アローナは確信した。

ネオ・ヴェネチア国際映画祭の時期になると、いつしか現れるようになった女性。

その話は結構前から耳にしていた。

その内容には、決まって金色の長い髪の女性が登場する。

だがもうひとつ、共通点があった。

それは、子供にしか見えないということ。

大人の目撃証言は希にしかなく、ほとんどが子供たちから聞くものだった。

だから、最初は誰も相手にしていなかった。

だが、あまりにも目撃証言が繰り返されたため、いつしか都市伝説のような話として定着していった。

しかし、何のために現れるのか。

結局誰にもその理由がわからないため、少しずつこの話は風化していくこととなった。

アローナはネオ・ヴェネチアを詳しく調べていた時期に、このうわさ話に遭遇していた。

いったいこれは何を意味しているのか?

その時、アローナは漠然と、このネオ・ヴェネチアの守り神である金の獅子をイメージしていた。

ネオ・ヴェネチア国際映画祭の時期にだけ現れる存在。

そして、金色の長い髪の女性。

もし、そんな存在が本当にいるのなら、ブローチのことを何か知っているかもしれない。

何の根拠もなかったが、きっとそうに違いないとアローナは確信していた。

その時だった。

「いたよ!」

路地の少し先にいた少年がアローナの方に向かって呼び掛けた。

「どこ?どこなの?」

アローナはその少年のいる方に走り出していた。

 

午前の予定を終えたアリスは、事前に会社に申し出ていた通り、午後から休暇を取った。

もちろん、体調がすぐれないことが理由ではなく、本当の理由はブローチを捜すことだった。アテナのステージがある今日の夕刻までに、絶対見つける覚悟でいた。

そして、昨晩、灯里や藍華たちと捜した市場を再び探そうとしていた。

夜とは違い、人の多さには覚悟していたが、さすがにこの状況では大変そうだと、思わずため息をついた。

「ウンディーネさん、なにが要るんだい?」

屋台のおばちゃんが話しかけてきた。

「いえ、特に要るものはありません」

アリスの返答に、おばちゃんは不思議そうな顔をしていた。

〈そんな顔になるの、無理もないでしょう〉

そんなことに構ってられないとばかりに、アリスは屋台から屋台へとくまなく探し歩いた。

「すみません。この辺にブローチは落ちてませんでしたか?」

一軒一軒お店の人に聞きながら、その上で探すのはなかなか骨の折れる作業だった。

その時、路地の方から何か叫んでる声が聞こえてきた。

「なんだろう・・・」

アリスはその路地の方に何故か引かれるように向かっていた。

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