ARIA The PIACERE 2 そのシンデレラの行く先は・・・   作:neo venetiatti

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第25話

アリスは会場の入り口で、オレンジぷらねっとのスタッフを見つけると、一緒に関係者入口を入っていった。

あちこちで忙しそうに動き回る人たちが通路に溢れていた。

本番が近づいている証拠だった。

スタッフに連れられて奥へと進んで行くと、ある部屋のドアの前に立ち止まった。

スタッフがノックした。

すると中から返事が帰ってきた。

アリスはその声に、うれしさと懐かしさを感じた。

ドアを開けると、部屋の中の様子が目に飛び込んできた。

真っ白なドレス。肩から胸元にかけて大きく開いていて、褐色の肌とのコントラストがとても鮮やかだった。胸元には白い花飾りがあしらわれていた。

正面にある鏡から視線を移した表情は驚きに満ちていた。

「アリスちゃん、どうしてここに?」

大きく目を見開いたアテナは、ドアのところに立っているアリスに目を奪われた。

「あ、あの、ちょっとそこまで用事がありまして、寄ってみた次第です」

「えっ、そうなの?」

「はい。いわゆる陣中見舞いというやつです」

「陣中・・・見舞い?」

「そういうことです」

「そうなんだ」

噛み合ってるのかどうか微妙な感じの、いつもの会話だった。

「でもアリスちゃん、うれしいわ。わざわざ来てくれて。忙しいでしょ?」

「はい。会社がたくさんお仕事を入れるので、とても忙しいです」

「そうなの・・・」

アテナは苦笑した。

「それじゃあ無理して来なくても良かったのに」

「あ、いえ、実は大事な用がありまして」

「何?大事な用って」

アリスはたすき掛けにしていたポーチの蓋を開けた。

そして、中から大事そうに銀色に輝くブローチを取り出した。

「アリスちゃん、それ・・・」

「先日、アテナ先輩からお預かりしたブローチです」

「それはアリスちゃんが、映画祭のプレゼンターをするときに使ってもらおうと渡したものよ」

「はい、わかっています。でもこれは、今日アテナ先輩が着けるのが一番相応しいと思ったんです」

「どういうこと?」

アリスは自身のドレスの試着の時に、アメリア部長から聞いたブローチにまつわる話をアテナに話した。

「そうだったの」

「アテナ先輩を応援されていた方が、もしご健在だったら、アテナ先輩なら今日これを着けてステージに立っていたはずだと思ったんです」

アリスのまっすぐな眼差しに、アテナは感動していた。

「アリスちゃん、そこまで考えてくれていたのね」

アリスは少し照れたようにうつむいた。

「私のスケジュールが決まった後で、アテナ先輩の出演が決まったようだったので。ここは是非、アテナ先輩につけて欲しくて。いえ、先輩が着けるべきだと思って持ってきました」

「そうね。確かにアリスちゃんの言う通りかもしれない。そのブローチは、私にとってとても大切なものであることに間違いないわ。それを着けてステージに立つことは、私にとってとても意味のあることだから」

そう言ってアテナは立ち上がって、アリスのそばに近づいた。

「アテナ先輩、どうぞ」

広げた両手の上にのせたブローチを、アリスは大事そうにアテナに差し出した。

アテナは、そのアリスの両手を包み込むように、下から自分の両手を添えた。

「ありがとう、アリスちゃん」

アテナは優しさに溢れた眼差しでアリスを見つめた。

アリスはそのアテナの眼差しに、頬を赤らめて見つめ返した。

 

「実はその話しには、続きがあるんです」

「何?どういうこと?」

ARIAカンパニーのカウンターの前で、藍華はアローナの方にグッと顔をつきだした。

「どうしようかなぁ」

「ちょっと!そこまでしゃべっておいて、どういうことですか?」

「だって、これはこれでネタですからね」

「ネタって、アローナさんは、アリシアさんのお陰で取材ができてるようなもんでしょ?」

「それを言われると」

「へぇ~そうだったんだぁ」

灯里が二人の会話に割って入ってきた。

「あのねぇ、灯里。あんたは、いつも、そうやって、なんで、マイ、ペース、なの、よ!」

藍華はカウンター越しに、灯里のほっぺをつまんで、引っ張ったり戻したりを繰り返した。

「れも、このきひ、ひいよへぇ~」

灯里は手に持っていた新聞をカウンターの上に置いた。

「ありがとう、灯里さん」

「わかるの?」

「いい記事ですねぇって。そうですよね?」

「そうだよ」

「はぁ~。灯里、あんたの人生はこういうことよね?」

「どういうこと?」

「別にいいの!それより、どうしてこんな記事が書けるの?まるでその場にいたみたいよね」

「ええ、いましたから。そこに」

「えっ、いたの?そこに?」

「厳密には後から聞いた部分も結構ありますが」

 

アテナが映画祭のスペシャルゲストとしてステージに上がる直前、アリスが楽屋を訪ねてブローチを渡したときの様子が、特別に出された号外の記事になっていた。

もちろん、その記事はアローナが書いたものだった。

水の三大妖精と称えられたアテナと、その後輩であり、映画祭の授賞式のプレゼンターに抜擢されたアリスとの感動的なエピソード。

このエピソードは、水先案内業界のみならず、映画祭のトピックスとしても扱われた。

本来はアテナのステージがメインの記事として出された号外であったが、それと共に大きな反響を呼んでいた。

そしてこのエピソードの後、アローナが言った通り、その続きとなる話があった。

映画祭のスペシャルステージとして行われたアテナのライブは大盛況のうちに幕を閉じた。

アテナのドレスの胸元には、最初着けられていた花飾りがなくなり、アリスが届けたブローチが輝いていた。

関係者席から観ることができたアリスは、ライブ中、感動でウルウルが止まらなかった。

そしてその余韻のまま、アテナの楽屋に向かった。

楽屋の中はさながら花畑のように、お祝いの花でいっぱいだった。

その中でアリスが来るのを待っていたアテナは、ドレス姿のまま、アリスにブローチを手渡した。

「今度はアリスちゃんが、これを着けてね」

アリスは目を潤ませながら、そのブローチを大事そうに受け取った。

 

「なんでそれを書かないわけ?」

藍華は納得いかないといった感じでアローナに言った。

「これは感なんですけど、まだ何かありそうな予感がしてるんですよ」

「予感?なんかもったいぶってるわねぇ」

「でもその場面、見たかったなぁ」

「まあ確かに灯里の言う通りだわね」

「でもまだですよ、本番は。何て言ったてアンジェロ・レオーネのご加護を受けたんですから、アリスさんは」

「な、何?そのアンジェロなんとかっていうのは?」

「まだ、内緒です」

「えぇ~何それぇ~。知りたい~」

「あんたってほんとに・・・」

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