進撃の巨人 もしもこんな世界があったのならば   作:molte

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大事件!!

4話です

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 いよいよパーティー当日の日に近づいてきた。

 というよりもうすでに前日の放課後であるが、時が進むのが早すぎるとは思ってしまうのは無理もないと思うがそこに突っ込まないで欲しい。

 

 参加者は皆、楽しみで仕方ないようで授業中も浮き足立っている様子であった。

 ジャンがいろんな企画を考えてくれているらしく主催者(仮)のエレンも楽しみにしてた。

 

 ミカサが来て2日経った水曜日から雨足が強く、参加者の殆どが雨でパーティー中止にならないことを懸念していた。

 

 けどまぁ無理もないだろう。誰だって楽しみがある前日には嫌なことが起こらないように祈ってしまうものだ。

 

 まぁ当然明日は台風や何十年に一度の大雨が来るわけもなく雲ひとつない晴天ではあるが、それは神のみぞ知るというやつである。

 

 今日は、準備班の人達に集まってもらって(ミーナは用事があるという事で欠席)下準備を行う。

 

 エレンの家に着くとやはり、覚悟はしていたが想像以上の広大さにアニとクリスタは凍結してしまった。無理もないだろう。

 

 

 下準備としては、バーベキューグリルと炭の準備、一応着火確認をするので、火事にならないように水の準備をしておくだけのことだ。まぁ正直、やる意味があるのかはよくわからないが、これをしないとストーリーが良い方向に展開されないので、ある意味ここがパーティーよりも重要かもしれない。

 

「んっしょ、よいしょっと……はぁ、ふぅー」

 

 アルミンが大分重そうに炭を運んでいた。たった5キロくらいしかないのに…どんだけひ弱なんだよとエレンとアニは、アルミンを見て笑ってしまった。

 

「もう!2人とも!アルミンも頑張ってるんだから笑っちゃダメだよ!」

 

 その様子を見ていたクリスタは、アルミンを擁護するような立ち位置に回る。が、クリスタも苦笑しながら言っていたため、アルミンはショックだったみたいで、落ち込んだ顔色が炭の色と酷似していた。

 

 その顔を見てまたエレンとアニは爆笑してた。

 

 そんなこともありながら下準備は順調に進んでいき、後は着火の確認をするだけであった。

 

 エレンはグリルの下に炭を少し入れ、新聞紙を適当にバラして入れ、チャッカマンで火をつけた。

 

 取り敢えず火はつくことが確認できたので、準備してあるバケツの水をクリスタが少し重そうに持ってきた。

 

「よし。もう消していいぞ」

 

 そろそろ火も大きくなってきたので、クリスタにバケツの水をグリルにかけるようエレンは指示を出した。

 

(ちょっと高い炭を選んだからか、火がかなり勢いよく燃えてるな)

 

 炭を出す時に、パッケージを確認したら諭吉が3人分くらいのお値段だった、決して脱臭炭ではない。

 

 グリルを突き抜ける炎がチラホラ上がり、クリスタも少し怖気付いてしまっている。

 

「クリスタバシャッとやっていいから早く!」

 

 火事になるかもと思ってしまったアニはクリスタを急かすように声を荒上げてしまった。

 

 さっきまではチラホラ突き抜ける炎であったが、ほんの数秒で炎は完全にグリルを突き抜け、轟々と声をあげている。

 

「ッ!え、えぇい!!」

 

 クリスタがどうにでもなれとばかしに投げた水バケツは、綺麗な放物線を描き、それと同時に水も完璧に放出され火は完全に消された。

 

 それはそれで良かったのだが、エレンとアニはクリスタに代わって自分がバケツの水をかけようと近寄りに行っていたため、必然と放出された水のラインに自身が入ってしまいよって…

 

 バシャ!

 

 2人ともバケツの水を被ってしまい、全身ずぶ濡れになってしまった。

 

「な、ナイスシュート、、、」

 

 思わずアルミンが呟いてしまった言葉に、責める者はいるだろうか、いやいない。

 

 クリスタは2人に猛省していた。

 

 

 別に時間帯をずらして入ればいいのに、何故かエレンとアニはアルミンの(粋な?)計らいとさっき笑われた復讐として2人とも言いくるめられてしまい一緒に入ることになってしまった。

 

 エレンの家の風呂はなかなか趣のあるつくりで、ニ○コイの露天風呂の様な感じである。このようなつくりはどこの銭湯でも見たことがないので、恐ろしい財力だと改めて私は驚かされてしまった。

 

「悪いなアニ、アルミンのやつが熱心に言うもんだから」

 

 しきたりのある個人スペースのシャワー室に入りながら、エレンは私に申し訳なさそうに言った。

 

 特段私も気にしてないし、アルミンの説得ぶりには少し引いてしまったけど、クリスタアタック(水)をくらってしまい気持ち悪くて早くシャワー浴びたかったので、勢いで了承してしまった。

 

 けど冷静に考えてみると同級生、それも異性と一緒にお風呂に入るってかなり大胆なことをしてしまったと後悔している私がいる。

 

「い、いや、私は別に…」

 

 むしろ良かったと喉から出そうになる言葉を抑え、私もエレン同様にシャワー室に入る。

 

 エレンも私に気を遣ってくれたのか、五つあるシャワー室のうち入り口側から見て最奥のシャワー室に入っていった。

 

 何気ない優しさに私は惚れているのだろうと考えながらもその思考止め、体を洗う。

 

 けどどうしてもエレンがそばにいるとニヤけてしまう。

 

 中学生時代にあるキッカケで話をしてから、私とエレンは友達という関係になった。けどそれ以上無関係には発達しなかった。エレンが私のことをどう思っているかは知らないけれど私はエレンのことが多分…好き

 

 エレンは中学生時代、常勝校なのに優勝がいままでなかったシガンシナ中を全国優勝に導いた立役者のうちの1人でとっても凄い人だ。

 そのうえ、勉強もだけど色んなものに一生懸命で男子からも女子からも支持がすごくて、熱狂的なファンが多かったため、告白とかよくされるのを見てた。

 

 エレンは全ての告白(私が見た中で)を真剣に向き合って断っていた。なるべくその人が傷つかないように。

 色んないざこざもあったみたいで大変だったらしいけど、そこも乗り越えたのはエレンという人格が凄いのだと思う。

 

 それに…

 

「おーいアニ!そっちにシャンプーないか?」

 

 急にエレンから話しかけられて、深い思考に陥っていた私はハッと脳を現実に戻し、エレンにシャンプーがあると答える。

 

「今から取りに行くからついたての外に置いといてくれないか?」

 

「うん、わかった」

 

 急に話しかけられドキドキしてしまって、返答がおかしくなってないか不安だったけど、エレンの反応的に大丈夫だったと思うというか信じたい。

 

 ペタペタとエレンの足音が聞こえ、彼が近づいてくるのがわかる。

 

 私は置かれてあるシャンプーをついたての外側にそっと置き、椅子に座ろうと視線を床から上げた時、ちょうどエレンの姿が私の視界に入り…

 

 「うわっ!?」

 

 エレンが、急についたてから現れた私にびっくりしたのか足を滑らしてしまい、私の方へ倒れてきた。

 

「きゃっ!!」

 

 自分でもびっくりするぐらいの大きい声が出てしまい、というかそれよりも!

 

「ん、ちょっ、え、エレン」

 

「ご、ごめん!今すぐどくから!」

 

 エレンがびっくりして滑ってしまい、それに巻き添えをくらった私も滑り倒し私はエレンに床ドンされている状態になってしまったのだ。

 

 悠長に説明している暇もなく、ドタドタと荒々しい足音×2が聞こえ

 

「どうしたの2人とも!!」

 

 エレンが風呂に上がるまでリビングでゆっくりしててくれと言っていたけど、そのリビングにまで私の声が聞こえて来たことで、何か危険なことでもあったのかと心配になったクリスタとアルミンが走って風呂場まで来た。

 

 勢いよく扉を開けたクリスタは、エレンとアニの床ドン態勢を見てしまい、

 

「ご、ごゆっくり〜」

 

「誤解だぁぁぁぁーーー!!!!」

 

 エレンがそう叫んだ後、エレンも私もお互いに猛省して、すぐに風呂から上がった。

 大事な部分は見えなかったので大丈夫だったと言いたいが取り敢えずこの話はこれで終わろう。

 

 

 

 前日に濃い出来事が複数準備組ではあったことなどつゆ知らず、コニーやジャンはのほほんと食材調達を謳歌(?)していた。

 

 マルコの方は買い出しの材料をミカサやユミルと相談して、完璧に決めていたので、スムーズに買い出しが終了した。

 

 ちなみにエレアニの2人はというと、会話もできずにお互いが意識しあって、準備中指が触れただけで、お互いに顔真っ赤にしていた。

 

 そんな2人を見てアルミンはミーナと(アルミンが事情を説明したから)悪魔の笑みを浮かべていたのは言うまでも無い。

 ミーナはクリスタないす!と言って喜んでいたみたい(アルミンより)。

 

 

 買い出し班がエレンの家に到着すると初見のミカサとユミルは驚いていたが、固まるほどびっくりしなかった(サシャは固まっていた)ので、2人の家もそこそこの豪邸なのかなとアルミンは考察していたりする。

 

「準備も一通り終わったし、あとはゆっくりして11時半くらいからBBQ始めるかなー」

 

 意外とスムーズに準備が進行したので、時間は押すかと思っていたエレンは皆んなにゆっくりしてくれと指示を出して、飲み物取ってくるからと言ってみんな分の飲み物を取りに行った。

 

「ねぇアニ、手伝いに行ったら?」

 

「えっ?なにを?」

 

 ミーナがアニにエレンの手伝いに行くよう催促させるが、アニはミーナの意図が伝わらなかったのか何か手伝って欲しいことがあるの?と付随して聞いた。

 

「ううん、私じゃなくてエレンの。みんな分のコップもあるし大変でしょ?」

 

「…う、うん。わかったよ」

 

 アニはしぶしぶまだ姿が見えるエレンを追いかけて、部屋を抜けていった。

 

 

「ッ!?あ、アニか…どうしたんだ?」

 

「え、えっと、エレンが飲み物取り行くって言うからその手伝いをと思って…」

 

 ぱたぱたと足音を立て少し顔を俯き気味に俺の元へ来たのは昨日一悶着あったアニであった。その姿を見るだけで可愛いと思ってしまった。

 

 顔もスッゲー赤いし何かあったのか尋ねてみると、どうやらみんな分の飲み物の準備を手伝ってくれるらしい。

 

「そっか。ありがとう助かるよ」

 

 こんなにも優しい子をなぜ俺は押し倒してしまったのか、昨日の俺を殴りたい…。

 

 昨日の事があってからアニの顔がまともに見れねぇー!あぁどうしよう…けど完全に俺のせいだしなぁ…。

 

 ふとアニの方を向くと、可愛らしく首を傾げてどうしたのと言わんばかりの上目遣いで俺に視線をやる。

 

 そんな事をされると思わず大声でチャンカ○イの名言が出てきそうなので、思考を止め少し深呼吸をし、アニに邪険されない程度の早足で今日分の飲料が保存してある場所へと急いだ。

 

 

「ねぇエレン、やっぱ昨日の事怒ってる?」

 

 保存場所に着くや否や、アニはそう俺に尋ねてきた。

 

「へっ?…い、いや全然!むしろ、俺の方こそアニを怒らせてしまったとずっと思ってたから!」

 

 急も急で何の準備も(いや特に準備とか無いけど)してなかったので、変な日本語になってしまったが、どうにかなったようだ。

 

「そ、そっか。私も実はエレンがどう思ってるか気になってて…」

 

 えっ?どうってそりゃあ

 

「えっと、そのー、めっちゃ綺麗だった気がする」

 

「へっ!?……そ、そっかぁ」

 

 なにやら機嫌が良くなったがあの返答でよかったのだろうか。いやまずい気がする。もしかして俺今、アニの体のことを褒めた気が……。

 

「エレンって結構その…、変態さんなんだね///」

 

(終わったぁぁぁぁーーーー!!!!)

 

 変態扱いだけはされたく無いと切に!!願っていたのに…。くそぉ、ユミル達からはライナーと同じ扱いを受けてしまうではないか。それだけはなんとしても避けたい。

 

「い、いや別にそういうわけで言ったんじゃ…」

 

「ふふっ、それくらい分かってる。エレンって前からずっと純粋だから」

 

 アニは俺の慌てた反応を見て笑みを溢しそう答えた。

 

(アニにまでからかわれてしまった…。俺ってそんなにそういうおばかキャラなのか?うちのグループにはすでに2人いるはずなのに…)

 

 坊主チビとこの前キース先生に怒鳴られていたサシャの顔を思い出す。

 

「エレンってちょっと天然と言うか、一生懸命になりすぎて凄んでしまうから」 

 

 見透かしたように言われるが確かにそうだなと納得してしまう。それだけアニは俺を見てくているんだと少し嬉しく感じた。

 

「けどそれが欠点だと高校生になって思ったんだ。…アルミンみたいな冷静な姿勢が羨ましいし、ジャンやマルコのリーダーシップ力だってすごい。コニーもいつもあんな感じだけど小さな気遣いができてそれだけでいい奴なんだなって分かる。みんなそれぞれいい個性を持ってる。けど俺は…」

 

「エレンには突出した多彩な才能があるでしょ?誰にでも欲しいものをエレンは持ってると私は思うなそれに人間誰にだって苦手なところがあると思うよ?」

 

 少し自分の本心を曝け出してしまったが、それでもアニは真剣に答えてくれた。アルミン以外初めてかもしれない、自分語りをするタイプじゃ無いと思っていたのに…、何でだろうと疑問に思う。

 

『僕も彼女とか作って青春してみたいよ』

 

 登校初日のアルミンの一言を思い出し、俺は少なからずアニの事を意識しているのだと理解してしまう。

 

 それが良い事なのか悪い事なのかはよく分からないが、そういう事を経験するのも悪く無いぞと祖父も言っていたし、少しは良いのかなと思ってしまう。

 

 けどやはり、今後の人間関係なども考慮してしまったりする。

 もし仮に、俺とアニがそういう関係になったとして、他の俺の周りにいる人はどうなる?

 

 今までのようにいるのか、それとも気を遣ってそっとしておいてくれるのか、はたまた虐げられるのか、最後のは極端だが可能性の一部ではある。

 

 それに恋人関係になったとしてもいつか別れるかも知れない…。それによって少なからずその時の人間関係に支障は出るだろう。

 

(うーーん、難しい)

 

 これ以上考えても無駄なので、現実へと自分を引き戻す。

 

「と、とりあえずこれ運ぼっか」

 

 微妙な雰囲気になったのを気を遣ってアニは俺に促してくれた。

 

 けどこれじゃあ気まずいままだ。どうしたら…。

 

「エレン」

 

「ん?」

 

 唐突にアニが俺の名前を呼んだ。それは今まで通りごく普通に名前を呼んでくれる時と少し違和感を感じた。

 まるでこう昔出会った子供同士がお互いの再会を分かち合うようでもなく、今生の別れ際に呼ぶわけでもなく、ごく自然にアニは俺の名前を呼んだ。

 

「ゆっくり考えていけばいいよ?エレンには素敵な仲間がいるんだから」

 

 アニは微笑んでジュースの入った段ボール箱を持っていった。


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