進撃の巨人 もしもこんな世界があったのならば   作:molte

8 / 9
初恋の味?

 

8話です。

更新が空いたので前話の視聴を推奨します。

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 何もなかった……。

 

 いやマジで。本当に。

 

 スタート前はすっっごい嫌な予感したけど実際は何もなかった。

 

 アクシデントがないに超したことはないのだけれどいかにも何か起こるだろという雰囲気醸し出して、ない方が余計不気味だ。

 

「アニには秘密にしておくね」

 

 俺の隣にいる高身長美女は少し上機嫌に囁く。

 

「何でちょっと嬉そうなんだ…」

 

 ミカサとの縁がありすぎる今日。

 

 横の彼女は眩しいほどにニコニコしている……アレ以来。

 

 そうアレさえなければ今日のスケジュールにしこりが残ることはなかったんだ。

 

 メタいが少し特殊な入りをする必要もなかったんだ。

 

 それを説明するには時間を遡らなければならないのだが…。

 

 仕方ないか…。

 

 

~~~

 

 

 時刻は30分ほど前に戻る。

 

 

「昼なのに暗いね」

 

「まぁ日差しが通ってないからな。この辺」

 

 スタートして10分ほど。

 

 今歩いている場所は京都の裏路地を思い出させるような風情がある所。イメージで言うと。

 

 だが、風情とはなんら関係ない営業してない旅館や昔から住んでないような空き家ばっかりで。

 

 且つ、その建物たちが両サイドにそびえ立ち、太陽の光を遮る事により不気味な空間を創り出してしまった結果、風情というヤツはどこかへ飛んでいってしまった。

 

 不気味といえば同じ班の男三人衆の声が時折、後ろから聞こえる。トークで盛り上がってるっぽいがどんな話かはよく分からない。

 

「何かすごく楽しそうだね」

 

 後ろをチラリと脇見してミカサがそう言う。

 

「でも私、ああいうタイプは苦手かも…」

 

 数秒間を開けて呟く。過去に何かあったのだろうか。

 

 過去といえば…。

 

 どうも昔、俺はミカサと出会った事がある気がする。

 

 アルミンはそんな訳ないでしょ。と言ってたけど…なんだろう。別に確固たる根拠なんてないのだけど、どうも自分の直感がそう告げている。

 

 なんかこう清楚な雰囲気が昔のあの子と似てる気がするんだよなぁ。

 

「昔のエレンは突っ走っていくタイプだったよね」

 

 ??……今なんて

 

「変わったねぇエレンも…どしたの?」

 

「昔の俺?…やっぱり会った事あるよな?」

 

 もしかしたら聞き間違いかも知れな…あっ、頷いてくれた。

 

「BBQで聞いてきた時はびっくりしたよー」

 

 光が通らない空を見上げ、指を絡ませ、両手を前にして伸びをしながら告げる。

 

「じゃあ何であの時否定したんだ?」

 

「…でも気づいてくれて嬉かったよ?」

 

 問うた質問とは違う回答をするミカサ。なんか引っかかるなぁ。

 

 その後、何で分かったのと付随して聞かれたが、ミカサの雰囲気があの子と似ていた、ただそれに限ると答えた。

 

 でも何でこのタイミングで?もしかしたらミカサの嘘かも知れない。それにさっきの反応により余計…うーん混乱してきた。

 

「あっ、やっと路地から抜け出せるね」

 

 ミカサもこの景色に飽きていたのか前方の大通りが見えた瞬間、走り出していった。

 

 てか出会い頭に人とぶつかったらシャレにならないぞ。

 

 国道何号線かは忘れたが、人通りが多くて有名な道なのでよく渋滞が起きる。

 

 そのため自転車を利用する人が多く、サイクリング部なんて市内の学校ではメジャーな部活動としてあるくらいだ。

 

「嫌な予感満載なんだけど…」

 

 本人は恐らくこの地にチャリ通がたくさん居るなんて知らないだろう。長くこの地を離れていた…かもしれないし。

 

 勢いをつけたミカサが両足ジャンプして歩道に着地しようとしたとき。

 

「おっと、ごめんよ~姉ちゃん」

 

 丁度、そば配達のおっちゃんの姿が見えて…。

 

「ほら、言わんこっちゃな……」

 

 ぶつかると思って、危ないと思ってミカサの手を引いたら、まさかこっちに倒れて来ると思わなくて…。

 

 結果として

 

「んむっ!?」

 

 お互いの唇が触れてしまうことになった。

 

 

~~~

 

 

 話は冒頭に戻る。

 

 兎にも角にも、キスの件は誰にも見られてないと思う。周りに人居なかったし、路地だし。

 

 横にいるヤツがずっとご機嫌なのは未だに理解出来ないが…。

 

「エレンの唇柔らかかった…」

 

 思いっきり聞こえてるし、清楚とはかけ離れた言動してるよ彼女。

 

「お、エレン。もう帰っていたのか」

 

 ミカサの呟きを聞き流しているとジャンの班が帰ってきた。

 

 彼がミカサに好意を寄せている事はもちろん知っている。だが致し方なかったんだ。ごめん…ジャン…。

 

「なんか元気ねぇーな。何かあったのか?」

 

 なんでだろう。ジャンの優しい気遣いでこんなにも胸が痛くなるのは…。

 

 ある事なす事を話したら俺は大バッシングを受けるだろう。それだけは避けたい。

 

 入学直後、みんなの敵になるのは、学生生活において即ち死。

 

 大好きなバスケで全国制覇なんて夢のまた夢になってしまう。

 

 先ほどの件は胸の裡に閉まっておこう。

 

「いや、少し歩き疲れただけだよ」

 

「そうか。帰りのバスでしっかり休めよ」

 

 そう言って、帰ってきた事を先生に報告する為に、立ち去って行った。

 

 ジャンと話し終えた時に気づいたらミカサも居なくなってた。

 

 現在は、駅前近くの公園に一年生のほとんどが集まって雑談している状況下にある。

 

 時間的に大分巻いてしまったらしく、あと2班帰ってきたらバスで気持ち回り道をして学校に帰るらしい。

 

 なんて有難いのだろうか。寛大な先生方の施しでやっとゆっくり休めます。

 

 その後はまぁ、数分して全員揃ったのですぐにバスに乗って学校に着いた。

 

 

☆☆☆

 

 

【帰りのバスでの一幕】

 

 

「タバコ?それがどうかしたのか?」

 

 アルミンの問いかけにより、ここから長い長い議論が始まる。

 

「いやー、みんなが大人になったときに吸うのかなぁって」

 

「俺は吸わないな。体に悪いし」

 

 真っ先に答えたのは意外にもライナー。

 

 まぁ確かに彼の筋肉がタバコの影響で劣る可能性もあるかも知れない。どうでも良いけど。

 

 因みに話し合いに参加しているのは、エレンを除く男子メンバー6人。

 

 エレンは行きのバスで最後尾の角に陣取っていたが、一つ前の席で一人で座っていたコニーと代わって寝ている。

 

「えぇ~、でも一回くらいなら経験してみたくない?」

 

「その僅かな気持ちがベルトルトをヘビスモの道へ誘うんだよ」

 

 そんな略し方聞いたことはないが、ベルトルトはややタバコ肯定派みたいだ。

 

「ジャンはどうなんだよ」

 

 ここまで無言だったジャンにライナーが話を振った。

 

「俺は断然否定だな。タバコなんて体は壊れるし、迷惑はかかるし、費用だってバカにならないからな」

 

 どうやらジャンは過激な否定派のようだ。

 

「それに吸ってたら柄悪いし、蚊取り線香のように人なんて寄ってこなくなるぞ」

 

 ジャンの言い分は最もだと同調する様に全員が頷いた。

 

「じゃあ、お酒はどうよ。タバコより被害がないと思うぞ」

 

 コニーにより話は将来の飲酒事情へと変わった。

 

「因みにコニーはお酒飲む?」

 

 アルミンがすかさず、コニーに聞き返す。

 

「まぁ飲むかな。ほどほどにするけど」

 

「ま、それが普通よね」

 

 でも度数が低いのならいっぱい飲むかもと言っていたが、コニーよりもサシャの方がかなりの暴飲暴食気質があるので心配である。

 

「エレンとか絶対飲まなそう」

 

 マルコが偏見をぶちかました。

 

「酒飲んだら歌下手になるらしいよ」

 

 今のアルミンから雑学を聞いてジャンは一生、酒を飲まないと決めたらしい。

 

 何故か、それは行きのバスでエレンの歌声を聞いて練習することに決めたそうだ。

 

 意外と流されやすいタイプなのか、それともエレンに少し憧れを抱いているのか、彼の性格的に後者の方が可能性が高い。

 

「アルミンめっちゃ酒豪になりそう」

 

「え?なんでよ?」

 

 ベルトルトはそう言うが、酒豪という表現より酒は飲むが常に理性は保っているの方が適切である。

 

「俺は多分めっちゃ飲むわ」

 

 ライナーは自分自身を未来予知する。

 

「ライナーは仕事終わって帰ってきてビール一口飲んだ後にめっちゃ溜息長そう」

 

「ド偏見やないかい」

 

「それはすっごい分かる」

 

 マルコの偏見にライナーはツッコミをいれるものの、共感する者が多く、反論できないでいた。

 

「でもさ、酔ってダル絡みされて、ごめん覚えてなかったわーとか言われたらさ、一生ソイツと飲み行かなくない?」

 

「間違いないな」

 

 またまた共感出来る意見がしかもコニーから出てきてしまった。

 

「ごめんライナー。一人で飲みに行ってきて」

 

「ダル絡み前提かよ!」

 

 同郷がなせる技で笑いをとっていた。

 

「てかあれは……」

 

 

☆☆☆

 

 

 一年生を乗せるバスが学校に着くと同時にバス内での仮終礼が終わった。

 

 普通なら教室まで戻って終礼するだろうが、キース先生は意外と合理的主義のようだ。

 

 というかめちゃくちゃ寝てたな俺。腕にすっごい痕ついてる。

 

「おっ、エレンやっと起きたか」

 

「ん、おう」

 

 ジャンの顔が少し赤いがどうしたのだろうか。

 

 どうせライナー辺りにからかわれたのだろう。

 

「みんなはもう帰る?」

 

 突然、アルミンが問いかけてきた。

 

 この後の予定を聞いているように思うが、この発言の隠れた意はこの後エレンの家に行かない?と言わんばかりのニュアンス。

 

 ま、特段俺は用もないし、家に誰一人としていないので来てくれるとありがたい。

 

「わりっ、この後はサシャと帰る約束してるから」

 

 自慢するようでもなく、ほんの少しウキウキした声音で断りを入れるコニー。

 

「羨ましいな畜生…」

 

「小声だとガチ感出るからやめて」

 

 ライナーの妬ましい発言はコニーに聞こえていたみたいだ。 

 

「俺とマルコはなにもないぜ」

 

 この2人、一応寮生のはずなのにすんごいアグレッシブだな。

 

 そういえばウチの寮の仕組みってどうなっているんだろう。

 

 2人とも外出多めの印象が強いので、あまり詳しくないのだろうか。また今度聞いてみよ。

 

「僕とライナーも勿論お邪魔させてもらうよ」

 

 流石と言ったところか。ベルトルトにはアルミンの発言の意味に気づいていた。ライナーもその発言に異を唱える事はなかった。

 

「ん?どっか行くのか?」

 

「うん!楽しみにしててよ」

 

 あ、そういう隠していくスタンスなんですね。

 

 すると突然…。

 

「ブラウン!忘れ物がないか確認してくれ!」

 

 うおっ、びっくりした…。

 

 キース先生はたまにデカい声で頼み事をするんだよな。これは一生慣れる気がしない。

 

「どうかしたか、イェーガー」

 

「いえ、自分もライナーの手伝いをしようと…」

 

 俺の反応に気が触ったのか問い詰められかけたが、咄嗟に切り返したら特に咎められなかった。

 

 はぁ。全く、ヒヤヒヤさせてくれる…。

 

「エレン災難だね」

 

「うっせ」

 

「これからもっと災難が起こるかもよ」

 

「はっ?」

 

 もっと災難?…ちょっと理解できないのだけどアルミンのよくある戯言だとスルーしておこう。

 

 そのままアルミンはバスを降りていった。

 

「ん?何か落ちてるな」

 

 バス内には俺とライナーのみの状況で、前列の女性陣が座っていた場所に手紙のような物が落ちていた。

 

 恐らく女子の私物(?)なので、中身は気になるけど見ないでおこう。

 

「先に降りてるぞ」

 

 おう、という男らしい返事が耳に入った所で乗降口に足を掛けて降りる。

 

 ライナーは未だに黙々と真摯に最後尾の席から忘れ物の確認をしている。

 

 普段ははっちゃけた言動をしているが、こういう真面目な所を見せたらギャップがあって女子ウケが良い方向に進むと思うけどなぁ。

 

 少し大げさか。

 

 けどライナーはクラス委員の仕事やちょっと面倒くさい仕事を率先して手伝っている姿を昔からよく見る。

 

 彼の仲間思いな性格が俺は大好きなのだが、体には気をつけてもらいたい。

 

 バスを降りた矢先、一応先生を呼び止めて落とし物の手紙を渡しておく。

 

「む、忘れ物か。ありがとうなイェーガー」

 

 一応終礼も終わって解散なのだが、ライナーがまだバス内に残っているのと終礼は終えているもののキース先生の口から明確な解散の合図が出されてないからか、これって帰って良いの?っていう空気感が漂っている。

 

 しかも下手に行動に移すとキース先生に大目玉を食らうか、否かの賭けなので、誰も動けないでいた。

 

 まぁ、今から忘れ物についての確認をとると思うので残っていれば問題ないだろう。

 

「少し確認事項が増えたので、伝えるぞ」

 

 ライナーがバスから降りてきて先生に何もなかったと伝えると、ちょっといいかと挟んでキース先生は声を上げた。

 

「バスに手紙のような物が落ちていた。該当していると思う者は後で職員室まで来るように」

 

 容姿は強面であるもののプライベート事項は1対1とキチンと配慮しているので、俺としては非常に好感の持てる先生だ。

 

 当たり前の事かもしれないが、それをしない先生も勿論いる。ま、状況にもよるが…。

 

「最後に明後日の水曜日に行われる新入生歓迎会でお前たちは部活動に正式に所属する事が出来る」

 

 鼻からフンスッと蒸気が出そうな勢いだが、事前に伝えてくれるのは助かる。

 

「申請書は希望した部活の顧問の先生に頼めばもらえると思うから各々、先生方に言ってみるといい」

 

 以上だ。と言って先生は学校屋内の方へ足を向けた。

 

「じゃあ、帰るか~」

 

「今日は美味しいクレープ屋さんに行こう」

 

 アルミンの催促でクレープ屋に行くことに決定された。

 

「いいね!楽しみ~」

 

 美味しいクレープ屋さんか~。久々に食べるなぁ。

 

 ここから徒歩5分の駅前に構えるクレープ屋は癖のあるお店で、名前がまず"美味しいクレープ屋さん"と豪語しているだけの提供はしてくれるのだが、(ちなみに駅の名前はマリア高校前)更に、店長さんのテンションのアップダウンが人気で度々メディアに取り上げられることがあった。

 

 店長さんがお酒も提供してくれるらしく、昼はクレープ、夜はbarと年齢層に富んだ経営をしている為か、食べログは4.2以上をここ数年キープしていることから、市内でもトップクラスの人気店である。

 

 ただ、高校生のお小遣いでは払えないクレープもあったり、夜は20歳以上は入店不可(年齢確認必須)だったりする所がネックらしい。

 

 まぁ昼の方は仕方ないが、夜はお酒も回って変な客も来るという事があってかのトラブル対策だろう。なんとなくbarは静かでおしゃれなイメージだし。

 

 実際、ウチの父さんや母さんは1人で飲み行くことがあるらしい。本人的にも静かで落ち着くとか。

 

「一番高いの食べたいなー」

 

「2000円くらいするんだっけ?」

 

 ベルトルトの回答で、そんなすんの!?とジャンとマルコは驚いていた。2人は待ち合わせがないのかな。

 

 1番安いのでも500円くらいだった気がしたが…。

 

「安くて美味しいのもあるけど、男子高校生の腹が満たされるかと言ったら微妙かも」

 

 ベルトルトに続いて500円くらいだよ。とアルミンが言うと2人は安心したみたいだった。

 

「エレンはどうする?」

 

「ん〜、安定のバナナチョコホイップかな」

 

 たしか、お店のチラシに学生No.1人気って載ってた気がした。

 

 コストも味も学生にちょうど良いのだろう。

 

「エレンは昼も甘いデザート作って食べてたよな?甘いの好きなのか?」

 

 おっと、そういえばミカサとの料理対決でチョコケーキ作ったな。完全に忘れてたわ。

 

「甘いものに目がない訳ではないけど好きだな」

 

 エレンのチョコケーキ美味かったなぁー。とジャンは言うが、一応審査員票は3-1で負けてるからな。ちなみに、1票はアニだったお陰で、大分傷が癒えた

 

「で、結局罰ゲームはなんだったの?」

 

 興味本位で聞いてくるが、アルミンそれは爆弾だろう。ジャンが居ることに気づいてないのか?

 

 そういえばコイツよくスマブラでスネーク使うな。その影響なのか?

 

 ジャンもなんの話だ?みたいな顔してるぞ。

 

 コイツは罰ゲームの件、というか俺がミカサとペアになった経緯まで知らないんだぞ。いや俺も知らんけど。

 

「なんか保留って言われたぞ」

 

 言い方は違えど取り敢えず正直に答えておいた。ミカサは然るべき時にって言ってたが、果たしていつ来るのだろうか。

 

「こき使われないように…つってもミカサはそんなタイプじゃないか」

 

 ライナーが言うことが最もだと思う。マルコやベルトルトも頷いているし。

 

 俺としてはミカサの色んな面を見てしまったので、素直に頷くことは出来ないが…。

 

「エレンはどんな罰がいい?」

 

 出た。悪魔の尻尾を生やしたアルミン。

 

 大体、罰なんて好むヤツなんかいないだろ。隣で、マッチョが「クリスタになら〜」なんて言ってるから説得力は皆無だけど。

 

「罰を受けたくないのが本音だよ」

 

 ようやく視界に入った美味しいクレープ屋さんに目を向けつつ、気怠そうに答える。

 

「おいエレン。お前なんて羨ましいやつなんだよ…」

 

 目をウルウルさせながら縋り付いてくるジャン。アルミン曰く、その背中には哀愁漂ってたとか。

 

 今日の日本社会は、多くの場合で女性が強い立場になる傾向が高いんだぞ。(※個人の感想です)

 

「くっつくなよジャン!」

 

「先入ってるぞー」

 

 無視して入って行きやがったアイツら。

 

「クレープ食べて落ち着け。な?」

 

 渋々了承してくれたが…、てかここの描写いる?

 

 からんからんとTheおしゃれ感を象徴する音(?)が俺たちを迎えてくれた。

 

 はぁ〜。月曜日の憂鬱なんてクレープ食べて忘れよう。

 

「あ、そうそう エレンの奢りだよ今日は」

 

 開口一番にアルミンの口から確かにそう聞こえた。

 

「え?なんで?」

 

 皆目見当もつかない。なぜ高級クレープを俺が奢る羽目に…。

 

「今朝のこと 忘れてないよね」

 

 間といい、本心のない笑顔といい、アルミンはもしかしたら役者向きかもな。

 

 いやそんなことより、今朝のことってなんだ?今日一日衝撃的な事が起こりすぎて記憶を辿っても出てこない。

 

「もしかして忘れたの?」

 

「いや……思い出せない」

 

 アルミン以外が憐れんだ目で見てくるのがムカつく…。

 

「正直者で結構! けど勤めは果たしてもらうよ」

 

 店長あんたも何か言ってくれよ…。この件静観してるだけじゃねえか。

 

「グリシャの息子か!お前んとこの親父には世話になってるからな。お・ま・け しといてやるよ」

 

 ありがてぇ。なんて思っていた俺がバカだった。少し値引いてくれるのかなとか思ってたら、全員分の飲み物代が追加されていて1,000円オーバーしてた。

 

 ま、そんなのは冗談で、このお店キャッシュレスなので、恐らく俺のカードで払った代金は後で父さんのとこに請求されるのだろう。

 

 ウチとしてはこれからも親子構わず良い関係を築いていきたいと思っているので、変に不機嫌になることはない。

 

 ついでに落ち着ける個室に案内してくれたので、このお店が昼夜問わず人気なのは、店長さんの人柄もあるのだろう。

 

 そんなこんなありつつ特殊な日の終わりは落ち着いて有意義に過ごせた。

 

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タバコの件は正直書く必要はあまりなかったのですが、キャラの定着というか皆さんにキャラの印象を与えたかったんです。

次回はエレンたちが待ちに待った新入生歓迎会です。

お楽しみに…。


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