進撃の巨人 もしもこんな世界があったのならば   作:molte

9 / 9
新入生歓迎会と・・・。

9話です。

 

──────────────────────────

 

 

 今日は水曜日。待ちに待った新入生歓迎会当日。

 

 学生にとって至福である昼食の時間が終わり、現在は体育館に学年ごと並んで、右前方には生徒会関係者だろうか,生徒会顧問っぽい人の横に数人並んでいる。

 

 こうしてみるとウチの学校の人数が半端ない事に痛感させられる。

 

 この場にいる生徒、教師以外にも警備員や事務員、ホテル関係の人や銭湯管理人もいる。自分がまだ把握してない役職の人も居るだろう。

 我々生徒が正しい教育を受けて大人になるためとはいえ、こんなにも人が関わっているとなると、急に感謝しなければならない気持ちになってしまう。

 

「にしても少し寒いな」

 

 受付で貰った歓迎会のパンフレットを体育座りしている膝下に置いて、少し長い袖で手の甲を覆う世間一般で言う、萌え袖というやつにする。

 

 4月の中旬に差し掛かろうとしているにも関わらず、いまだ肌寒さは抜けない。体育館の床が微妙に嫌悪感を感じるくらいの冷たさだ。

 もしかして氷河期でも来るのだろうか。風邪はそんなに引いたことがないけど寒いのは嫌いだ。

 

「それではお時間になりましたので、新入生歓迎会を始めたいと思います」

 

 司会役の女生徒が一歩前に出て、綺麗なソプラノ声で開会の宣言をする(ちなみにこの女生徒風のアルミンネットワークによるところでは、2年で1番の人気があるらしい。名前は存じ上げないが)。

 

 開会宣言後、司会の声で生徒会顧問の隣にいた生徒会長らしき人が、挨拶の為に壇上へ上がった。

 

「新入生の皆さんご入学おめでとうございます。生徒会長のエルヴィン・スミスです。後ほど詳しく説明があると思いますが、この日を持って部活動の入部が許可されます。本校は部活動に力を入れておりますので、学業共々、皆様のご健闘をお祈りいたします」

 

 高身長で綺麗な顔立ち、そして貴族のような立ち振る舞い、言わずもがな彼がエルヴィン財閥の長男であるのは周知の事実だが、とても高校生とは思えない貫禄だった。

 なにせ、目を見張るようなはっきりとした所作が、貫禄というものを醸し出しているのだった。

 

 生徒会長が檀上から降りると司会役の女生徒が一歩前に出て…。

 

「ここで、部活動紹介の前に、今から昨年の体育祭の映像を流しますので、生徒の皆さんはしばらくお待ちください」

 

 男子が司会の人にメロメロになっている事はほっといて、新設校で今年で三年目って事は去年は1,2年さらに言えば一昨年は、一学年だけでやったいたのだろうか?

 

「なんだ~エレン。難しい顔して」

 ちょうど正面のスクリーンに体育祭の様子が映し出されたと同時に、隣に座っているユミルがニヤニヤしながら話しかけてきた。

 

「どうせアニの事でも考えてたんだろ」

 

「なんでそこでアニが出てくるんだよ」

 

 ユミルは最近、アニの事アニの事と、口を開けばそればっかり言ってくるが、もしかしてユミルはクリスタじゃなくてアニが好きなんだろうか。

 

「そういえばこの学校の体育祭フォークダンスあるらしいぞ。アニとペア組んだら?」

 

「ニヤニヤしながら言うなよ。たとえ誘ったとしても断られるかもしれないだろ」

 

 なにせ最近、アニとはちゃんと喋ってないしなぁ。ミカサとの一件があって以降、女子との距離のつかみ方が分からないでいる。

 

「まっ、それに関しては誘ってみないと分からないけどな」

 

「なんだよそれ…」

 

 ユミルって正直苦手なんだよな…。からかってくるし、その時の距離が結構近いし。

 

「そんな落ち込むなって」

 

 落ち込むことはないが、女子との会話は思ったよりも精神的に疲れるのだ。

 

「あ、そうそう」

 

 映像は綱引きや、リレーの様子を映し出している時にユミルが俺の肩をチョンチョンと指で叩いた。

 

 なんだろう。嫌な予感がする…すっごく怖いぞ。ユミルの目がニヤけすぎている。

 

「ミカサとキスしてたのは黙っといてやるよ」

 

 え……なんでそれを知っているんだ?

 

「なんでそれを知っているんだ?とも言いたげな顔してるな」

 

「…もしかして見てたのか?」

 

「まぁ、そうだな。正直、意外だった」

 

 お、終わった…。せめてもの弁明をするしか俺にはもう………。

 

「いや、あれは事故で…」

 

「嘘つけよ。お前の方から手ェ引いてたくせに」

 

 急に強張った表情で吐き捨てるようにユミルは言う。もしかして機嫌を損ねてしまったのだろうか。いやそれはそうか。そんな印象を与えてしまっているのなら、アニとのフォークダンスも断られてしまうだろうな。

 

「確かに俺から手を引いたのは事実だけど…ぶつかった位置が悪かっただけで」

 

「ま、からかうのもここまでにしとくか」

 

(なんなんだよ…。ユミルにしては意外にも早く引きやがって)

 

 強張った表情もみるみるうちに溶けていった。

 

「クリスタ泣かしたら許さないからな」

 

 今度はクリスタか…。やっぱりユミルはアニよりクリスタのことが好きなんだな。まぁ人それぞれの好みがあるし、とやかく言う必要はないか。

 

 兎にも角にもそんな下世話をしつつ、前に目を向けると体育祭の映像などとうに終えていて、現在は部活動に関しての動画が流れていた。

 

 映像と並行して流れる音楽にリズムをとりつつ、バスケ部の紹介はないかなと気長に待つ。

 

 もしかしてユミルと話している間に終わったっていうオチ?

 

「おっ、始まったか」

 

 そんな心配も杞憂で、画面に大きく男子バスケットボール部と映し出される。

 

 数秒後、普段の練習風景やこれまでの成績が2分ほど垂れ流される。どうやら凝った編集はせずにこれまでの部と同じような内容だった。

 

 個人的には軽音楽部も気になったが、高校はバスケ一筋でやるつもりなので兼部をするという選択肢は脳内から除外する。

 

 恋愛をするという選択もないことはないが、そればっかりに左右されるとどんな制裁があの人やキャプテンさん(後で知ることになるキャプテンのエルヴィン)から下るか分からない。 

 

 ただ、暑い男たちに囲まれて友情を育むのも良いかもしれないが、如何せん高校生としては華に欠ける。

 

 うーん。なにが正しいのかは分からないが、そんなことは未来の自分にでも放り投げておこう。

 

「パンフレットにもあるように今から今年の体育祭の色決めを行います。各学年の代表者は前へ」

 

 司会の人が代表者が出てくるように促す。てかパンフレットに『司会:ペトラ・ラル』って名前書いてあったわ。

 

 何やらミニゲームで色決めするらしく体育館の入り口から檀上手前まで障害物のような物が置かれている。その際、代表者以外の全校生徒は壁際に座っている。

 

 てか1年の代表ジャンかよ。2,3年は知らないけど登場した時の盛り上がりを見る限り、ムードメーカー的立ち位置なのだろう。

 

 1年のこのアウェー感はどの学校も同じだと思うが、入学してすぐのイベントでジャンがかわいそうだった。

 

 結果、1年赤組 2年黄組 3年青組となった。『果たして、ミニゲームなんてやる必要があるのか』ぜひこれを聞いてみたい。

 

 ちなみに最後の障害物である小麦粉アメ探しで、2年の人がなかなか見つけれなくてすごい微妙な空気なっていた。

 

 というか大前提に、半年も先にある行事に足突っ込むのって気が早すぎないか?もしかして俺だけなのかこの疑問抱えているのは。

 

 なんか後味が悪いが今に始まったことでもないか。

 

 

☆☆☆

 

 

 翌日の木曜日。悪天候の中でも屋外で受ける訳でもない限り授業は滞ることなく通常通り行われる。

 

 時刻は5限目の授業が始まる15分前。

 

 少しジメジメさも感じながら、先生に頼まれた教材配達をベルトルトとコニーと3人で資料室(2階)に取りに行く。

 

 階段を登る時に昨日の部活で蓄積された疲労が筋肉痛となって現れてしまい思わず顔を顰めたくなる。

 

 朝練を毎日やっているにも関わらずあんなにも部活がキツいとは思わなかった。

 

 隣にいる2人は既に満身創痍のようだが…。

 

「エレン…もう少しゆっくり」

 

 階段を登る最中、ベルトルトが視界から突然消えると同時に嘆いた。

 

 コニーもベルトルトも手すりを使わないと登ることが出来ないらしい。手ぶらなのに…教材を持って帰る時を想像したら…。

 

(無理そうだな…)

 

 仕方ないここは男気を見せてやるか。

 

「2人とも俺が教材持って行くから教室に戻っていてくれ」

 

「いや、流石に悪いだろ…」

 

 申し訳なさそうにコニーが言うが…そんなにふらついていたら怪我してしまうかもしれない。

 

「んじゃ、いってくる」

 

 有無を言わさず、階段を早足で登る。

 

 上級生の階に行くのは何だか気が引けるな。少しばかりの緊張感と言うか。空気感が違う。

 

 2年生クラスの廊下をヒソヒソと歩いていたら、なぜか女子の集団から奇妙な目で見られた。

 

 もしかしてチャック全開?それならめっちゃ恥ずいんだけど。

 

「あ、あのー」  

 

 突然、奇妙な目を向けていた女子生徒の集団の1人がこちらに来て話しかけてきた。

 

 もしかしてこのタイミングで全開ですよって言われるのか?まあまあの人の数なんですけど…。

 

「なにか?」

 

 ここは冷静に。仮に空いていたとしてもスマートに答えよう。

 

 彼女の容姿は薄褐色で黒髪のポニテ。顔立ちは…綺麗な方だと思う。ネクタイの色からしてもやっぱり2年生だ。

 

「えっとその…」

 

 む、なんか歯切れが悪いな。もしかして今まで見たこと無いほどの全開?

 

「2年の廊下をチャック全開で闊歩する1年生現る!?」なんて記事が新聞部から出回るかも知れない。

 

 ただ、このタイミングで確認なんて出来るはずが無い。目視ならまだしも手で確認なんて滑稽この上ない。

 

「ら、LINEとか貰えないかな?」

 

「LINE?」

 

 と、とりあえずは安堵した。彼女から発せられた言葉は予想外であったが。

 

「やっぱりダメだよね…」

 

 そんな悲しそうな顔されたら流石に断るわけには…。というかなんで俺のLINEが欲しいんだろう。

 

 まあLINEくらいならいっか。

 

「それくらいなら」

 

 そう答えると彼女は喜んでくれた。

 

「では」

 

 直ぐにLINEを交換して、短く返事をしてから別れた。

 

 その後、手配した人数の割に量の少ない教材を手に取り、教室に運んだ。

 

 ちなみにチャックはしっかりしまってた。

 

 

 

「じゃあ問題集やってろよ~」

 

 聞き馴染みのある呼出音が鳴り、呼ばれた張本人である、数学の授業を執っていた教師が教室から出て行った。

 

 5限目も始まって15分弱。

 

 難題の解説の途中で授業が途切れたので、多少の遣る瀬なさを感じるも、ずっと前から感じていた睡魔が、本格的に襲ってきたので、机に突っ伏した状態で目を瞑る。これは昨日の部活が響いているに違いない。

 

 静かだった教室は1人の生徒の発言によって、話し声が際立つように変わっていく。

 

 ここで機内モードにしていたはずのスマホから通知音が鳴る。その際、振動とバイブ音は、クラスメイトの喧噪によって掻き消された。

 

 画面にはついさっきLINE交換をした先輩の名前が表示されている。

 

 席が廊下側のため、通りすがりの先生に見られないよう注意しつつトーク画面を開くとスタンプと共に「よろしくお願いいたします」と丁寧に綴ってある。

 

 こっちは中断しているからいいものの、あちらは普通に授業しているはず…。

 

「こちらこそよろしくお願いします」となんの変哲もなく返しておいた。

 

『呼び捨てでいいかな?もちろん私のことは名前で呼んでね』

 

 数十秒ほど間が空いて返信が来た。

 

 またスマホを手に取って返信しようとしたが、ガラガラガラと音を立てて先生が教室に戻ってきた。

 

「ちょっと長引きそうだから今日は自習にするな~」とだけ伝えてまた出て行った。

 

 先生の一言に少々の盛り上がりを見せるも少数の範疇であった為、すぐに抑まった。

 

 この学校では入試の成績や、中学時代の頃の成績でクラスが決まるという。上からABC順に7クラス。

 

 ただ、最優秀のA組にも勉強が嫌いな人だっている。俺だってそんなに好きじゃ無い。

 

 自習なんて望んで手に入れられるならば、そんな物は願ったり叶ったりだろう。

 

 そんなことを考えている間に目が冴えてしまった。

 

「LINE返すか……あっ」

 

 先輩とのLINEが既読無視の状態まま5分経過。早く返さねばと、焦ってしまってスマホを落としてしまう。

 

 左手からこぼれた電子機器は、左隣の席に座る彼女の椅子の下に流れるようにして、飛び込んでいった。

 

「ん?」

 

 不思議そうにこちらへ顔を傾げる彼女の名前はクリスタ。

 

 真剣に問題集に取り組んでいる彼女に、申し訳ないなと思う。

 

 はやくスマホを取らなければならないが。女子が座る椅子の下に、なんの躊躇も無く手を伸ばせることは、到底出来ない。

 

 ここは本当に申し訳ないが、クリスタに取ってもらうしかないか。

 

「これエレンの?」

 

 持っていたシャーペンをノートの上に置き、トーク画面が上向きに照らされているスマホを拾い、持ち主確認をする。

 

「ごめんな。集中してたのに」

 

 頷いて、正直に謝った。

 

「アカリって人とLINEしてたんだ」

 

 スマホを返すと同時にクリスタは問いかけてきた。

 

「うん。丁度暇だったから」

 

 周りと同じように俺もクリスタと雑談を始める。

 

「同級生?」

 

「いや一つ上の先輩だ」

 

「好きなの?」

 

 なぜ?

 

 ほんの30分前に会った人好きになるって…余程な事が無い限り、有り得ない気がするけど。

 

 否定して、とりあえずは納得してもらったが、本当に理解されているのだろうか。

 

 その後、根掘り葉掘り聞かれたが、前の席にいるアルミンがちょっと不機嫌だった事はここに記しておく。

 

 ごめんアルミン。

 

 

☆☆☆

 

 

「かわいいランキング?」

 

 アルミンはコニーに携帯の画面を見せながら満足そうに頷く。

 

「匿名で投票出来るマリア高生限定のwebサイト。マリア高校の新聞部が運営しています。興味がある方は是非部室まで来てください?ってこんなサイトあんのかよ」

 

 部活が終わり、昼間の土砂降りの雨と打って変わって綺麗な夕日が雲の間から顔を覗いている頃。

 

 ジャンとマルコの姿は無い。彼らは寮で、部活で蓄積された疲労を癒やしている頃だろう。今日の下校は、シガンシナ中時代の4人とコニーがプラスされた、5人で帰路についている最中。

 

 アルミンが学校の公式サイトを見ているときに面白い物を見つけたらしく、さっそく5人の中で話題になった。

 

 高校の公式サイトの中には生徒が自由に閲覧、発信が可能な掲示板があって、そのサイトは全て新聞部の管轄内にある。

 

 アルミンが見つけたのは、昨日更新された生徒に人気のランキングサイト。

 

「1年は…ミカサが1位か」

 

 ライナーが自分のスマホで件のサイトを見てみると、ミカサが大々的に取り上げられていた。てかいつ撮った?この宣材写真。

 

 だが全校では、この間新入生歓迎会で司会役だった2年のペトラさんが1位だった。

 

「男子の方はどうなんだ?」

 

 コニーはこのランキングにかなりの興味を寄せているらしい。

 

「えっと…。学年1位は…」

 

「おぉ~」

 

「まあ分かってたよね」

 

 一同が画面から、呑気に鼻歌歌っているエレンに目を向ける。

 

 彼は学年部門でも全校部門でも1位。

 

 これならばナンパされて連絡先を聞かれるのも頷ける。

 

「羨ま憎いぞエレン」

 

「え、なに?」

 

 行き当たりのないライナーの嫉妬がエレンへ飛び火する。

 

「くそっ、いつみてもイケメンだなおい」

 

「え、なんだ急に、流石に引くぞ…」

 

 完全なホモ発言に、エレンのみならず他の3人がライナーから距離をとる。

 

 ただまぁ、エレンの容姿はアイドルの様な顔立ちにすらっとしたスタイルで高身長。男から見ても惚れると言う人も居るかも知れない。

 

 決してライナーをフォローしているわけではないぞ。

 

「この写真どこで撮ったの?」

 

 アルミンがエレンの宣材写真をスマホの画面に大きく映して詰め寄る。

 

「なんか写真部の人に連れ込まれて…」

 

 エレンはやや辟易して答える。

 

 エレンが言うには、写真部の部室に宣材写真を撮れるような撮影場所があるらしい。

 

 しかし依頼して撮影することは不可能で、写真部の部長が勝手に連れ去っていくらしい(ちなみに条件は分からないため学校七不思議の一つらしい)。    

 

「よくわからねーな。この学校」

 

 坊主頭が手を頭の後ろに組んで空を見ながら言う姿を、ライナーは今ハマっている大人の漫画(からみ○かり)に出てくる人物に当てはめていた(ついでにあいつは嫌いとブツブツ言っていたが、他のメンバーは歯牙にもかけなかった)。

 

「ねぇねぇ、5人の中でかわいいランキング作ってみようよ」

 

 やはり色恋沙汰は終わらない。思春期男子にとって恋愛というものは避けては通れない道なのである。

 そしてこれが1番盛り上がる。

 

「1位やっぱクリスタだろ。容姿はいうことなく抜群だし、性格もちょっと小悪魔でかわいいし」

 

 ライナーの熱弁激しく同意するアルミン。だがベルトルトは…。

 

「僕はクリスタより、ミカサやユミルみたいなクールビューティーな人がかわいいと思うな」

 

 しかしエレンはこのかわいいランキングに物申したい気分だった。だが決して口には出さなかった。なにせ…。

 

(かわいいの定義から決めないといけないし、そんなことからやってたら日が暮れそうだ)

 

『自分の感性を押しつけるのは良くない。誰かが必ず、妥協しなければならないから』なんて言葉を。自分の見える世界が、必ずしも人と同じとは限らないからと中学時代の恩師の顔を思い出しながらエレンはあきれた顔をして、4人を置いて帰路につくのであった。

 

 

 翌日(金)

 

「大丈夫なのかそれ」

 

「気をつけた方が良いよ」

 

(ん?なんだ?)

 

 教室の片隅を陣取る我がグループの女子メンバー。

 

 だがいつものほのぼのとした雰囲気はなく、どこか角が立っているような、または不安そうな雰囲気だった。

 

「エレンなにかあったのか」

 

「ん、ライナーか。どうした?」

 

 後ろから両手を俺の肩へ伸ばしズイッとライナーが近寄ってくる。

 

「いやエレンが女子を凝視するなんて珍しくて、ついな」

 

 あー、ばれてたのか。なんとなく俺がホモ扱いされるのかと思っていたが杞憂だったか。

 

「ミカサたちが思い詰めている様な顔をしててな」

 

 そういうとライナーはミカサたちの方へ視線をやる。

 

「うーん。俺たち男子が触れていい話題か分からんからな、大事になりそうなら俺らを頼ってくれるだろ」

 

(まあそれもそうか)

 

「取り返しがつかなくなる前に、なにもなければいいんだが」

 

「お前が言うとフラグにしかならん」

 

「は?なんでだよ」

 

「今まで俺たちがどれだけの困難を乗り越えたことか。主にお前の女性問題で」

 

 くそっ。ぐうの音も出ねえな。

 

「そういえばエレンの元カノここにいるんだろ?」

 

「えっ、それ本当なのか…」

 

「いやベルトルトが一昨日見たって」

 

 その話がマジだったら…。うかつに恋愛なんてしてられん。

 

 教室も早足で抜けだしてベルトルトを探す。背が高いから見つかるはずだが…。

 

 教室棟の1階にはその姿は見えない。中庭を挟んだ特別棟の方へと足を伸ばす。

 

「そうだ。あいつ何の役員だったっけ」

 

 やっぱり教室に戻ろうとして渡り廊下にでた俺は踵を返した。今思えばすぐにベルトルトを探す必要なんて無いと思った。

 

「あっ、ベルトル…ト?」

 

 2階へ続く階段から降りてきたのはベルトルトと元か…件の女性。目を疑った。

 

 その女性は以前の派手な金髪から黒髪のショートへとイメージ変化されている。着崩した様子も無く、交錯する群衆からも2人の姿はしっかりと確認できた。

 

 ふと彼らが降りてきた2階へ続く階段へ目をやると、ニヤッと不敵に笑うアカリ先輩の姿があった。

 

 その笑顔に囚われている間に彼らの姿は無くなっていた。

 

 謎だ……。

 

 ベルトルトと彼女が2人でいることもだが、それよりも俺には先輩の笑顔に大きな違和感覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。