俺は今、教室で寝ている。否、寝ているふりをしている。
昨日家に帰った後、適当にメールの返信をし詳しく説明しなかったため多分聞かれるんだろうな~と思い、寝るふりをして昼休みまで持たせる計画である。実に完璧だ。休み時間にいちいち説明するなんてそんな面倒なことはしない。昼休みのあの雰囲気の中ご飯を食べながら話すことによって深くは追及されることはないだろうという算段である。というか普通に眠い。おやすみ。
さて、ばっちり授業まで寝てしまった俺であるがそんなことなどどうでもいい。今は昼休みである、俺は立ち上がって隼人たちの所に行って食事をとる。
「そーいえばさ、
いきなりですかこの女王様は
「なんでって平塚先生の頼みごとをきいてた」
嘘はいってない、多分。
「それって携帯使えない状況だったん?返信ぐらいしてよねー。あーしマジで心配したし」
そう、三浦優美子は見た目と言葉使いのせいで我儘な女王様のようにも見えるが意外と友達を気遣う所はある。いや、女王様なんだけどね。
「そうそう、俺らもマジ心配してたし!ね、葉山くん!」
そうオーバーに言ったのは金髪の戸部翔である。ああ、多分比企谷君が嫌いなのってこういう奴なのかな?と思えるほどチャラチャラしている。
「だな、シュウも今度からは連絡してくれよ」
そして俺をシュウと呼びこのグループのリーダー。葉山隼人である。ナイス、さすが人を纏める男。
「そうだな、今度からは連絡いれるようにするわ」
よし、終わった。計画通り。ってか海老名さん黙々とサンドウィッチ食べてるよ、いいなおいしそう。貰えるかな?やめとくか。そんなことを思いながら俺は飲み物を買いに行くために席を立つ
「あれ、周?どこ行くん?」
「飲み物買ってくる」
「ならついでにレモンティー買ってきてよ。あーし飲みたくなっちゃった」
「別にいいが金は払えよ。俺は、そんなに金があるわけじゃないんだ」
ここはハッキリ言っとかないと、そうしないとパシリ確定である。
「え~それぐらいいいじゃん?」
「嫌だ、絶対にだ」
念には念を入れてこう付け足す
「な、隼人もそう思うだろ?」
必殺、葉山隼人。そう優美子は隼人に恋してる、そこに付け入る。フッフッフ
「え、ああ、うん、確かにな。ゆみこ、ちゃんと払おうな」
「う~わかったし。それじゃあ周よろしく」
「はいよ」
そういって俺は廊下を歩いて行く。何事もはっきり言うことが大切である。
そして放課後。今日は隼人たちの部活があるため遊びはない。俺は奉仕部へと足を進める。そういえば比企谷君、今日来んのかな?
ん?部室から話声が、比企谷君来てるんだな。俺が部室の扉を開くとそこには、案の定二人の姿があった。
「こんちわー」
取りあえず無難な挨拶をしておく
「こんにちは。あなたは比企谷君と違ってちゃんと挨拶ができるようね。これがコミュニケーション能力の差なのかしら?」
「おい、さっそく俺を引き合いに出すのはやめろ。大体そんなもん確認するまでもなく解りきってるだろうが」
「比企谷君ドンマイ!」
あ、声に出してしまった。
「うるせえよ。同情すんな」
あ、意外とだいぶ打ち解けてきてる?
「すまんすまん。それでさっきは何を話してたの?」
「ああ、たった今こいつに友達がいないことが分かった」
ナンチュー会話してんだよ……。
「あら?それはあなたもでしょう?あなたの場合、目を見ただけでわかってしまうけどね」
「おい、やめろ。俺の目を苛めるな」
「まあ比企谷君の目については、いいとして違う話題はないのかい?」
「俺は、よくはないんだがな」
「そうね。もし仮に友達がいないとしてもそれで不利益が生じるわけではないわ」
あ、この人ムキになってるよ。俺の話聞いちゃいねー。
「あーそうねはいはい。ってかいて利益になんのかよ、おい、どーなんだよ?」
「そうね。あなたはいるようだし。あなたの意見を全て論破できたのならば私の言ったことが証明されるわ」
うわ、めんどいことになったな。逃げようか、まあ、逃げれんわな
「俺の主観の話になってしまうがいいか?」
「いいぞ」
「構わないわ」
なんでお前ら息ピッタリに俺を殺しに来てんだよこえーよ。
「まず、暇なときに時間を潰しやすい」
「そんなの一人で、できるっつうの猫をいじったりテレビ見たり」
「そうね、本でも読めばいいでしょうし」
早いよ、なんでスラスラ出てくんだよ
「二つ目、テストとかで山が張りやすくなる」
「それは普段勉強しない方が悪い」
「勉強とは毎日の積み重ねよ?そんな二週間やそこらでいい点を取れると思わないで」
お前らが異常なんだよ、大体の学生は二週間か一週間前にならないと勉強しないんだよ。
「じゃあ、三つ目。これはもう個人的な感想だ。楽しいから」
「一人でも楽しいことは、いっぱいあるぞ」
「そうね、それはあなたの感性だからすべては否定しないけれど、楽しいことばかりでもないでしょう?」
全くもってその通りである。ああ、やっぱりこいつらには勝てん。希望を持つなおれは平々凡々なんだぞ。
「負けだよ、何言っても論破されるのが関の山だ」
「はん。要するに友達などいらないと言うことだな。何年ぼっちやってると思ってんだよ。ぼっちマイスターなめんなよ」
「これで私が正しいことが証明されたわ。あなたは、いい調味料だったようね」
「おい、ほめてないだろ」
「そうよ、皮肉よ」
「っていうか俺は雪ノ下さんに友達がいないのが不思議なんだが」
「それ、俺も思った。なに?人から好意を寄せられてんのに、ぼっち名乗るとかなめてんの?」
比企谷君、なんだいそれは、自分がぼっち神だとでも言ってるようだぞ。
「短絡的な発想ね。脊髄の反射だけで生きてるのかしら。人に好かれるということがどういうことか理解している?……ああ、比企谷君にはそういう経験がなかったのよね。配慮が足りなかったわ。ごめんなさい」
「その言い方はひどいんじゃないか?ね、比企谷君」
「……。」
え?ないの、マジで?
「沈黙は肯定、ね」
比企谷君はそういわれるとせかすように言った。
「で?人に好かれるのがなんだって?」
比企谷君の質問に雪ノ下さんは少し考えるように目を閉じる。
おお、マジでこの人可愛いな。
だがしかし、毒舌である。やはりここは、三次元だなと俺は確認する。
「少し嫌な話になってしまうのだけれど」
「もう十分なってるから安心して話していいぞ」
雪ノ下さんの問いに比企谷君が自信満々にそう言った。
なんだか比企谷君がかっこよく見える……。気のせいか
「俺も聞いてみたいな」
そう俺も続ける、そして雪ノ下さんは息を整えるように深呼吸する。
「私って昔から可愛かったから、近づいてくる男子はたいてい私に好意を寄せていたわ」
おっと、いきなりなんてこと言ってんだよ。重量級だよこの発言。昔ってどんぐらい昔かな?それに俺は入ってないよね?
「小学校高学年ぐらいだったかしら。それ以来ずっと……」
はい、セーフ。その時は転校してる。
そう言った雪ノ下さんはやや陰鬱になっていた。俺は普通の人間であるからよく解らない。しかしずっと好意ある視線で見られ続けるのは俺には耐えられないだろう、それに答える素質が欠けている。多分何回もの告白を受けてきたのは言わなくてもわかる、そしてそのことで話題になる。無限ループなのだ、傍から見る分にはうらやましい限りである。俺なんてほとんどされたことないのに。いや、今は俺の事はいいだろう。
「まあ、嫌われまくるよりかは、いいだろう。甘えだ、甘え」
そう、比企谷君は言った。何を思っていったのかは彼自身にしかわからない。
「別に人に好かれたいだなんて思ったことはないのだけれど」
そう言って、また続けた。
「もしくは、本当に、誰からも好かれるならそれもそれで良かったのかもしれないわね」
消え入りそうな声だった。
そうか、俺には雪ノ下さんの言いたいことがわかってしまった。と、同時に彼女に同情してしまった。俺にされても邪魔になると解っていても
「あなたたちの友達で、常に女子に人気がある人がいたとしたらどう思うかしら?」
やはりビンゴだ。ここで嘘を言ってしまうと雪ノ下さんが話してくれたことを泥をかけるようなものだ。なので俺は中間点程度の答えを言っておこう、完全回答は比企谷君が言ってくれるはずである。
「俺なら、すげえなって思う。でも向こうから来ない限りあまり仲良くなれるとは思はない」
「俺には友達がいないからその心配はない」
おい比企谷君、空気よめ
「仮の話としてで構わないわ」
「殺す」
完全回答を亜音速でぶっちぎった回答だった。
しかし雪ノ下さんは満足したようにうんうんと頷く。
「ほら、そうなるでしょ?距離を置き排除しようとさえ考えるわよね。そういう理性のない獣のような、低能な、そういった行為でしか自分の存在意義を確かめられない哀れな人たちが私のいた学校にも多くいたのよ」
雪ノ下さんはそして鼻で笑った。
可愛すぎる女子、それに待ち構えている運命は二つ。周囲の反応に答え中心となる人物。そして自らを決して曲げないとても素直な女子。しかしその女がたどりつく道は女子に嫌われる女子。その道の女がどのような目にあうか、決して想像に難くない。
「小学生のころ、六十回ほど上履きをかくさせたことがあるのだけど、うち五十回は同級生の女子にやられたわ」
まて、そんなことあっただろうかそれとも俺が知らないだけか?いや、そんなことはない。ここはちゃんと思い出さなければいけないな。
「あとの十回が気になるな」
すいません。俺も気になってました。
「男子が隠したのが三回。教師が買い取ったのが二回。犬に隠されたのが五回よ」
「犬率たけぇよ」
ちょっと待て。なんだよ買い取ったって、え、マジ?あ、思い出した。
「犬は六回だぞ」
「視点がおかしいと思うのだけれど」
「「あえて聞き流したんだよ!」」
あ、ハモった。運命かんじない?
「それで六回とはどこから来たのかしら?」
「思い出したんだが、俺は犬が持ってた靴を取って戻したことがある。多分それも雪ノ下さんのだ」
「そうなの?なら、ちゃらにしてあげるわ?」
「チャラってなにさ?」
「ええ、あなたが下田さんや笹原さんの告白に『ごめん、好きな人いるから』って答えたことかしらね?」
「リア充死ね」
「まて、比企谷君。殺意を向きだすな、そして何で雪ノ下さんは知ってんだよ」
「その相手が私だと彼女らは判断したそうよ?その腹いせに隠されたこともあったわ」
「え?それって俺悪いの?」
「ええ、直接的には関係なくても『好きな人』の部分をはぐらかしたからそうなったのよ」
「あ、はい。すいません」
「いいのよ」
「んで、お前の好きな人は誰だったんだよ。まさか本当に雪ノ下だったのか?」
「いや、いないよ」
「「は?」」
空気が死んだ。え、そんなに驚くこと?
「じゃあ、なんであんなことを言ったのかしら?」
「無難な断り方だってテレビでやってたから……」
「は~~、そんな安直な考えで言ったのね。あなた、そうとうの馬鹿だったのね」
「信楽、お前ウザいな」
「誤解だ、俺もマスメディアに躍らされた被害者だ」
「そう、話を戻すわ」
「お願いします」
よしゃ、逃げれた。
「そうしたことがあって私は毎日上履きとリコーダーを持って帰るはめになったわ」
でた、小学生あるある。リコーダーぺろぺろ。あれキモいよな
「「大変だったんだな」」
あ、またハモった。こんどこそ運命かんじない?。感じないよねそうだよね。
「ええ、大変よ。私、可愛いから」
自嘲気味に言うなよ、なんも言えないだろ
「でも、それも仕方がないと思うわ。人はみな完璧ではないから。弱くて、心が醜くて、すぐに嫉妬し蹴落とそうとする。不思議なことに優れた人間ほど生きづらいのよ、この世界は。そんな世界おかしいじゃない。だから変えるのよ、人ごと、この世界を」
雪ノ下さんの目は明らかに本気の目だ。というか発想が二階級特進してんだろ。夜の神の考え方にすごく似てるよ。
「努力の方向性があさってにぶっ飛びすぎだろ……」
比企谷君の発言はもろに俺の考えと同じだった。
「そうかしら。それでも、比企谷君のようにぐだぐだ乾いて果てたり、信楽君のように希望を持たず努力をしないことよりかは、かなりマシだと思うけれど。あなたたちの……そうやって弱さを肯定してしまう部分、嫌いだわ」
そう言い切り雪ノ下さんはふいっと窓の外に目を向けてしまった。
ああ、実際その通りである。俺はこの事実を認めざるを得ない。しかし俺はここで止まる。俺は普通、平凡、平均を好む。しかし別にそれ以外を否定するつもりはない。
雪ノ下さんは品行方正、成績優秀、才色兼備と非の打ちどころがない完璧超人である。しかし真っ直ぐすぎである。きっと持つ者であるがゆえに、苦悩も人一倍多く抱えているのであろう。
それを隠して協調し周囲とうまくやりながら生活するのは難しいことではないはずである。大方の人間はそうして生きている、葉山隼人もそうであるように。
けれど雪ノ下雪乃はそれをしない。決して自らに嘘をつかない。誰よりも素直で真面目で優しい彼女はそれを認めない。世の中が嘘つきで捻くれていて残酷だから彼女はさぞ息苦しかろう。
しかし決してくじけない。
俺はそんな彼女をどう思っているのであろうか?その答えを探していると比企谷君が突然声を出した。
「なぁ、雪ノ下、信楽。なら、俺と友」
「ごめんなさい。それは無理」
「友達はなろうと言ったらなれるものじゃないよ」
俺は否定せず肯定せず。そう答えた。
「えーまだ最後まで言ってないのにー」
哀れ、比企谷八幡。二次元なら君は雪ノ下さんと友達になって付き合っていただろうさ。
しかしここは三次元である。
二次元で起こることが三次元で起こるはずがない。
だが、俺はこの『普通』という言葉に頼り切っているかもしれないな。と思うことはできた。取りあえず努力をしてみよう。出来る範囲で。
俺は希望を持たない、無駄な努力はしない。だから信楽周は信楽周でいられるのだ。
俺はそう、思った。
感想など頂けるととても嬉しいです。