家庭科室は甘い匂いに包まれている。
雪ノ下さんがテキパキと準備を始めているからだ。ってか勝手に冷蔵庫の中身って使っていいのか?まぁ、雪ノ下さんの事だからうまく話を纏めれると思うけどね。
さて、俺の仕事は審判Bである。勝敗はどちらがより奉仕できるかで決まり、俺はそれを見届ける。しかし最終的には平塚先生の独断と偏見で決まるので俺がいる意味は大したないのである。先攻は雪ノ下さんだ。エプロン姿も可愛いね。やっぱり料理の腕もあるのだろう、さすが完璧超人。
「曲がってるわ。由比ヶ浜さん、エプロンもまともに着られないの?」
「ごめん、ありがとう。……えっ!?それぐらい出来るよっ!」
「そ、ならちゃんと着なさい。適当なことをしてるとだんだん目から腐っていってあの男のように……私からはこれ以上言えないわ……」
「おい、俺をダメ人間の慣れの果てみたいに言うな。大体、信楽もそんなに変わらんだろ」
「何を言うんだね。ゾンビ谷君」
「おいこら、お前まで俺に毒を吐くな、泣いちゃうぞ」
「どんな脅しだよ」
「二人ともうるさいは、静かにして」
「「へい」」
俺たちの様子をくすくすと結衣が笑って見ている。エプロンはだらしないままだが。
「まだ着ていないの?それともやっぱり着られないのかしら?……はぁ、結んであげるからこっちに来なさい」
ため息をついた後、呆れ顔で雪ノ下さんが結衣を手招きする。
「……いいの、かな」
結衣は自分の居場所を探すような子供のように躊躇してから呟いた。
「早く」
雪ノ下さんがそう言い放つ。やめたげて、結衣は要領が悪い子なの!。
「ごごごごめんなさい!」
結衣が雪ノ下さんの本へ走って行った。あれ?尻尾が見える、気のせいか。比企谷君が小さく子犬かよ…と呟いていた。あ、気のせいじゃないわ。
「なんか……雪ノ下さん、お姉ちゃんみたいだね」
「私の妹がこんなに出来が悪いわけがないけれどね」
ラノベのタイトルかよ、『私の妹がこんなに出来が悪いわけがない』って感じか?どうでもいいか。だが結衣の言ったことはあながち間違いじゃないと思う、片方出来が良いと片方は出来が悪いんだよね。おい、俺の話はいいだろ、しなくても。
「比企谷君、比企谷君」
「なんだよ」
「裸エプロンと制服エプロンどっちがいい?」
「制服エプロン」
「だよね」
やっぱりね、思った通りだよ俺も同意見さ。心が通じ合った出来事であった。
「あ、あのさ、ヒッキー……」
「な、なにかね?」
「か、家庭的な女の子って、どう思う?」
「別に嫌いじゃないぞ。男なら憧れるだろ、多分」
「そ、そっか……」
結衣は何かを納得したみたいだった。
「よーしっ!やるぞー」
ん?なんだろうこの違和感。ん~~~、もしかして結衣は比企谷君の事が好きなのではなかろうか?俺は鈍感系主人公ではない一般ピーポーなのでこういうのはよく解る。まぁ、結論はもう少し後ででもいいだろう。ぶっちゃけ俺になんも聞かれなかったのが寂しかったんだよ。おい、雪ノ下さん、憐みの目を向けんなこんちくしょう。
結衣は袖をまくり、テキパキと料理しているように見える。ただ、見えるだけである。
何で溶き卵に殻が入ってんねん。
何で小麦粉がダマになってんねん。
何でバターが個形のままやねん。
3ストライク 1アウト
何で砂糖と塩を間違って入れてんねん。
何でバニラエッセンスいっぱい入れてんねん。
何で牛乳タプタプしてんねん。
3ストライク 2アウト
さあ、ここで実況解説の二人を見てみましょう。か、完全に力尽きております!比企谷君は顔をヒクヒクさせて笑っており、雪ノ下さんに至っては青い顔して額を抑えております!
ちょっと、まだ言うのは我慢しよう。
「さて、と……」
なにがさてとなんだよ、俺たちを殺す準備かよ。そう結衣は言ってインスタントコーヒーを取り出した。
「コーヒーか。まぁ、飲み物があった方が食は進むもんな。気が利いてるじゃんか」
そうだったのか、ならコップを用意しないとな。
「はぁ?違うんですけど。これ隠し味だから。男子って甘いもの苦手な人多いじゃん?」
結衣は比企谷君と話しているため当然手元など見ていない。ドバアアこんな効果音が似合うんじゃないかと思うほどボウルにコーヒーが入って行く。ああ、黒い山がそびえ立ったな。
1ストライク
「全くもって隠れてねーぞ!」
俺も早く突っ込みたい……まだ我慢。
「え?あー。じゃあ砂糖を入れて調整するよ」
そういって今度は白い山が出来上がる。それに溶き卵投入。
一気に2ストライク よって3アウト
「ア、アウトオォォォ!!!!チェェェンジ!!」
「うわ!?どうしたの周くん!?」
「どうしたじゃねえよ結衣!」
「どうしたらそうなるんだよ!」
「ふぇ?え、ああ、量多くなっちゃったけど大丈夫。焼いたらなんとかなるから」
「お、おう」
もう何も言わん、ヘルプ比企谷君。俺は目でそう訴えたが『無理だ』と比企谷君の目がそう答えていた。使えん奴だ、なら雪ノ下さん!。お、おう俯いていらっしゃる。
こうして焼きあがったものは、全く安心できるものでなく俺たちの予想通りの物であった。断じてこれをクッキーとは呼ばない。絶対にだ。
「な、なんで?」
うん、逆になんで?
「理解ができないわ……。どうやったらあそこまでミスが重なるのかしら……」
よーやく、雪ノ下さんが口を開いた。
「食べてみないとわからないよね!」
「いや、わか」
解りきってるよという言葉は俺の携帯の着信で最後まで言えなかった。
「わるい、雪ノ下さん。電話出てくる」
「ええ、解ったわ、味見してくれる人は残るのだしね」
「雪ノ下、これは毒見と言うんだ」
確かにな、俺もそう思う。比企谷君が俺を憎しみに目で見ている。怖かったのでさっさと廊下に移動する。
「はい、信楽ですが」
『あ?遅いよ!なんでさっさと電話に出ないの!?』
「しるか、で、何のようだよ。
信楽彩華。苗字でわかるように我が信楽ファミリーの次女で末っ子、要するに俺の妹である。ただ今中学3年生で受験生でもある。名前はどう考えても『あやか』だか読み方は『いろは』なのだ。俺といい妹といい、絶対に初対面では間違えらえる。姉は普通なのに全くもって謎だ。
『それでね、今友達来てんだけどゲーム借りていい?』
「壊すなよ、ってかあの子か、何とかポイントちゃん」
会ったことがほとんどないので名前もうろ覚えになっている。確かあほ毛があったはずだ。
『そうそう、後はおにぃが知らない子、今の彩華的にポイント高いー』
「そうだねーってかもう使ってるだろ?音響いてんぞー」
『嘘!?まぁどんまい!』
「まぁいいけどよ、あんまりうるさくすんなよ、あとポイントちゃんの言葉パクんな」
『はいよーそれじゃね、あにき~』
キャラ忘れて素になってんじゃねーか。さーて、戻るか~
「どうだい~はかどってる?」
沈黙が支配していた。比企谷君は『最悪なタイミングで帰ってきたな』って顔してる。取りあえず状況を聞こう。
なるほどね、結衣の周囲に合わせるところが雪ノ下さんの逆鱗に触れた、と。んで現在か。なんか言おうにも何も言えない気がする。ここで冗句は多分、まずいのであろうな。結衣の目が潤んでいる。
「か……」
帰るって言うなよ、明日からせっしづらいから。
「かっこいい……」
「「「は?」」」
俺たち三人の声が重なった。あまりにも予想外すぎる。
「建前とか全然言わないんだ……。なんていうか、そういうのかっこいい……」
結衣は熱っぽい表情で雪ノ下さんを見つめている。雪ノ下さんの方は、こわばった表情で少し引いてた。
「な、何を言ってるのかしらこの子……。話聞いてた?結構きつく言ったつもりだったのだけれど」
まじかよ、雪ノ下さんが自分でも言い過ぎた的なこと言ってるよ。どんだけ強く言ったんだよ、多分おれなら泣いてるぞ。
「ううん!そんなことない!あ、いや確かに言葉はひどかったし、ぶちゃけ軽く引いたけど……」
でしょうね。でも雪ノ下さんって男女差別なく言うんだな。
「でも、本音って感じがするの。ヒッキーと話してるときも、ひどいことばっか言い合ってるけど……ちゃんと話してる。周くんは優美子や隼人くんたちにも本音で話してるし。あたし、人に合わせてばっかだったから、こういうの初めてで……」
由比ヶ浜結衣も実は真っ直ぐであった。俺は聞いてはいないがかなりボロクソ言われたのであろう、普通の女の子なら逃げている。
が、由比ヶ浜結衣は逃げなかったのだ。
「ごめん。次はちゃんとやる」
謝ってから雪ノ下さんの事を見る。雪ノ下さんは言葉を失ってるそうだ。俺の見た感じ雪ノ下さんが正論をぶつけて、ちゃんと受け止め、謝ってくれたのはこれが初体験なのだろう。
雪ノ下さんは視線を外したり髪を手櫛で払ったりして落ち着かないようだった。アドリブに弱いのがわかってしまった。
「……正しいやり方ってのを教えてやれよ」
比企谷君が空気を直すようにそう言った。
「結衣もな、ちゃんと言うことを聴くんだぞ」
俺もそれに続いてそう言った。
「一度お手本を見せるから、その通りにやってみて」
さて、俺たちはどーしますかね。
「比企谷君、ここにトランプがあります。どうしますか?」
「なんで持ってんだよ」
「いや、暇になるかなって」
「あっそ」
「それで、なにやる?」
「ん?ソリティア」
「それ、一人用じゃん」
「は?お前こそなに言ってんの?トランプって言ったらソリティア以外に何すんだよ」
「えーと、定番にババ抜きとか?」
「悪いな、俺たちの定番はソリティアなんだよ」
「お、おう」
俺は取りあえずトランプを比企谷君に渡す。まじかよ、本当にやり始めたよ黙々と。案外うまいな。比企谷君がソリティアをしている間にクッキーは順調に作られていく。雪ノ下さんお菓子作りいっぱやるのですか?明らかに手際が良すぎである。
あっという間に生地が作られハートや星などで切り抜かれていく。雪ノ下さんにハートや星か……可愛いはずなのに全く想像できない。これは俺、失礼なのか?いつの間にかオーブンに入れている。
しばらくするととてもいい匂いがしてきた。
出来上がったものはもうなんというかとても美しいものだった。
それを皿に入れてこちらに渡してくる。比企谷君はソリティアを止めというか終わらせてクッキーを食べる。
「うまっ!お前何色パティシエールだよ!?」
確かにめちゃうまかった。というか雪ノ下さんが作ったクッキーである。これってかなり価値あるんじゃね?売ったら儲かるだろーな。やらないけど。
「店に出せるレベルだな、めっちゃうまいよ」
「ほんとおいしい……雪ノ下さんすごい」
結衣も感想を言い、雪ノ下さんはにっこりと微笑んだ。
「でもね、レシピに忠実に作っただけなの。だから、由比ヶ浜さんにもきっと同じように作れるわ。むしろできない方が変だわ」
「もうこれ渡して終わりでいいんじゃねえの?」
飽きただろ、比企谷君。
「それじゃ意味がないでしょう。さ、由比ヶ浜さん。頑張りましょう」
「う、うん。あたしも雪ノ下さんみたいなクッキー作れる?」
「ええ。レシピ通りに作ればね」
しっかり釘を刺しておく雪ノ下さんであった。
さすがの雪ノ下さんといえど今回は難題だったようだ。なかなか面白いことになっている。俺はクッキーをちまちま食べている。
「……もっと円を描くように。円よ。円。わかる?」
「かき混ぜるときにちゃんとボウルを押さえて。ボウルごと回転してるから……」
「違うの、違うのよ。隠し味はいいの、桃缶とかは今度にしましょう。そんな水分いれたら生地が死ぬわ。死地になるわ」
それ面白いな。というか雪ノ下さんが、あの雪ノ下雪乃が混乱していた。そして疲弊していた。結衣が生地をオーブンに入れたときには肩で息をするぐらいであった。おお、クールさが欠けている。結衣!恐ろしい子!
「お疲れ様雪ノ下さん」
「ええ、とてつもなく大変よ。それにまだ終わっていないわ」
「そうだね」
オーブンをオープンすると似たようにいい匂いがした。オーブンをオープン……3点だな。
「なんか違う……」
結衣は食べてからしょんぼりと肩を落とす。雪ノ下さんのと比べているのだろう。
「結衣、大丈夫だぞーだいぶクッキーになったじゃないか」
「じゃあ、さっきのはなんだったの!?」
「炭もしくはダークマター、物体Xどれがいい?」
「全部嫌だよ!」
「……どう教えれば伝わるのかしら?」
どうやら結衣も雪ノ下さんもまだ納得していないようだ。
「なんでうまくうかないのかなぁ……」
二人は色々呟いている。
「あのさぁ、さっきから思ってたんだけど、なんでお前らうまいクッキー作ろうとしてんの?」
「はぁ?」
比企谷くんがなんか言い始めた。結衣の馬鹿にした言い方にイラっときたのか比企谷君は続けた。
「お前、ビッチのくせに何もわかってないんだな、バカなの?」
「だからビッチ言うなし!」
「男心がなんもわかってないのな、な、信楽」
「ごめん、俺もわからんわ」
「これだからリア充は」
俺は、比企谷君よりわかっていないらしい。
「し、仕方ないでしょ!付き合ったことなんてないんだから!そ、そりゃ友達に付き合ってる子はいるけどさ……合わせてきたらこうなってたし……」
「結衣って付き合ったことなかったんだ」
「あっ!」
お前俺の存在ちょいちょい忘れてるだろ?傷つくぞ。
「大丈夫だ、お前以外にもいっぱいいるから」
「あ、ありがとう……」
もうね、この子信じやすすぎ、お父さん心配だよ。
「別に由比ヶ浜さんの下半身事情はどうでもいいのだけれど、結局、比企谷君は何が言いたいの?」
下半身事情とかもう使わんでしょう。
比企谷君は十分にためた後なぜか勝ち誇ったように笑って言った。
「ふぅー、どうやらおたくらは『本当』のクッキーを食べたことがないようだな。十分後、ここへ来てください。俺が『本当』の手作りクッキーってやつを食べさせてやりますよ」
「なんですって……。上等よ!楽しみにしてるわ!」
そう少し怒ったように言って結衣は雪ノ下さんを引き連れて廊下へと出て行った。俺はどうしようかなー。
「比企谷君、俺はどーしたらいいかな?」
「いて欲しくはないがしょうがないだろ」
「ありがとう」
そして後攻へとバトンタッチ。さぞかし普通の俺では思いもつかない素敵なことをしてくれるんだろう。
しばらくして雪ノ下さんたちが家庭科室に帰ってきた。
「これが『本当の手作りクッキー』なの?形も悪いし、それにところどころ焦げているわね―――これって……」
「ぷはっ、大口叩いたわりにこれとかマジウケるっ!食べるまでもないわっ!」
結衣は爆笑している。ああ、真実を知った時の反応が楽しみだ。
「まぁ、食べてみてくださいよ」
比企谷君は必死に怒りをこらえてるようだ。
「そこまで言うのなら……」
結衣と雪ノ下さんがクッキーを口にする。
「別にたいしたおいしくない!時々ジャリッってするし!」
結衣は思った通りの感想を言った。
「そうか、おいしくないか。……頑張ったんだけどな」
演技力高いな比企谷君。
「―――あ、ごめん」
結衣が気まずそうに下を向いた。
「マズイならいらないよな、比企谷君どうする?」
俺も一枚かんでおこう。
「そうだな、捨てるか」
そういって比企谷君は皿を持って捨てようとする。
「待ちなさいよ」
結衣はそう言った後クッキーを口に放り込む。
「べ、別に捨てることないでしょ。……そんなにまずくなかったし」
「そうか。満足してくれたのか?」
比企谷君の言葉に結衣は無言でうなずく。顔が少し赤くなっている。
「まぁ、由比ヶ浜がさっき作ったやつなんだけどな」
「……は?。え?え?」
そりゃ、そーるわな。
「比企谷君、今の茶番になんの意味があったのかしら?」
「せっかくの手作りクッキーなんだ。手作りってのをアピールしなくてどうすんだよ」
「あれだね。不器用が不器用なりに頑張ったボロボロクッキー」
「そーいうこと、すこし悪い方がよかったりすんの」
「悪くてもいいの?」
「ああ、そうだ。うまくできなかったけど一生懸命作りました!ってのをアピールすると『俺のために頑張ってくれたんだ……』って勘違いする生き者なんだよ。男って」
「そんなに単純じゃないでしょ……」
「それが意外と単純なんだよ、雪ノ下さん」
そう俺が言った後比企谷君による自称友達の友達の話を始めた。ぶっちゃけマジでかわいそうな過去話、もといい、友達の友達の話だった。
結衣ですら比企谷君のことだと思うほどバレバレだった。本人は否定し続けるが。
「そもそも、友達のいない比企谷君が友達の友達って時点でダウトじゃない」
決定的な一言だった。
「つまりあれだ。男ってのは残念なぐらい単純なんだよ。話しかけられただけで勘違いするし、手作りクッキーってだけで喜ぶもんなんだよ」
そして結衣の方を向いて
「だから、別にたいしたおいしくない、ジャリッってするクッキーでもいいんだよ」
「~~っ!うるさい!」
結衣は怒って手近にあるものを比企谷君に投げている。優しいのは、当たってもいたくない物だけを投げていることだな。
「ヒッキーマジ腹立つ!もう帰る!」
「そーだ、結衣」
「どうしたの周くん」
「結衣の頑張ったって姿を見せれば男心は揺れるって覚えとけよー」
「周くんも揺れるの?」
「揺れるよ」
「……ヒッキーも?」
「あ?あー超揺れるね。優しくされたら好きになっちゃうレベル。っつーかヒッキーって呼ぶな」
「ふ、ふん」
「由比ヶ浜さん、依頼のほうはどうするの?」
「後は自分のやり方でやってみる!ありがとうね、雪ノ下さん」
「また明日ね!」
そう俺らに言って結衣は帰っていった。エプロン外して帰れよ。
「本当によかったのかしら」
「結衣自身が納得してるのに外野はなにも言えんだろう」
「私は自分を高めるのなら限界まで挑戦するべきだと思うの。それが最終的には彼女のためになるから」
向上心ね……。やめよう俺には関係ない単語だ。
「まぁ、正論だわな。努力は自分を裏切らない。夢を裏切ることはあるけどな」
「実に比企谷君らしい考えだね」
「うるせぇ、これが現実だ」
「どういうことかしら?」
「努力しても夢が叶うとは限らない。というかほとんどは叶わないことの方が多いだろ。でも頑張った事実があれば慰めになるだろ」
「自己満足ね」
「別に自分に対する裏切りじゃねぇさ」
「甘いのね……。気持ち悪い」
うわーまた始まったよ言い合い。俺は今のうちに帰るかー?どーするか。帰ろう。
「それじゃあ、お疲れ」
「お疲れ様」
「おう」
二人とも挨拶はしてくれるんだな。また言い合いは続いているが。
そして俺は考える。今回の勝負の軍配を。
んー雪ノ下さんがやる気にさせて比企谷君が繋いだって感じだから今回は引き分けだな。なかなか楽しかったな。そうして俺は帰路につく。
信楽 周
誕生日 9月18日
特技 特に無し、(しいていうなら)煙草の火付け
趣味 カラオケ、ボーリング
休日の過ごしかた 家でだらだら、友達と買い物、カラオケ、etc
容姿 黒に少し茶色がかった髪。ややイケメン。
出で立ち 少し緩んだネクタイ、ブレザーの代わりにグレーのカーディガンを着ることがある
家族構成 父 母 姉(七海) 俺(周) 妹(彩華)
ようやくこの部活内容がわかった。
要は生徒の相談をきいて解決の手伝いをする部活だということだ。しかし公にはあまりなっていないらしい。つまりここに来る生徒はすべて平塚先生の導きあってこそなのだ。
なるほど、ここは
しかし客は来ない。今日は開店休業状態である。比企谷君と雪ノ下さんは本を読んでいる。
しかし戸を叩く音が響く。
「やっはろー!」
この挨拶は結衣の挨拶である。
「よう、はろー」
「……何か?」
あ、雪ノ下さん面倒くさそうにしてる。
「え、なに。あんまり歓迎されてない……?ひょっとして雪ノ下さんってあたしのこと……嫌い?」
「別にきらいじゃないわ。……苦手、、かしら」
「それ、女子言葉じゃ嫌いと同じだからねっ!?」
「で、なにか用か?」
比企谷君が会話にまざる。
「や、あたし最近料理にはまってるじゃない?」
「じゃないって……初耳よ」
「で、こないだのお礼にクッキー作ってきたんだよねー」
「あんまり食欲がわかないから結構よ。お気持ちだけ頂いておくわ」
さすが雪ノ下さん、かわすのうまいな。
しかし結衣は気にせず可愛くラッピングされた物体Xを取り出している。
「いやーやってみると楽しいよね!お弁当とかもつくっちゃおうかなーあ、そうそうゆきのんお昼一緒に食べようよ」
おい、だれだよゆきのんって、そんな可愛い名前の奴いたか?
「いえ、私一人で食べるのが好きだから、それとゆきのんって気持ち悪いわ。やめてくれる」
「えー、寂しいしょ?ゆきのん、どこで食べてるの?」
「部室だけれど……私の話聞いてる?」
「あ、それでさ、あたしも暇だから部活手伝うね。これもお礼だから、全然気にしなくていいからね、ゆきのん」
「……話、聞いてる?」
すごい、結衣が雪ノ下さんを押している。あ、ゆきのんがこっち見てきた。キモいから俺は使うのやめよう。すかさず比企谷君に視線パス。
「お疲れさん」
そう言って彼は出て行った。俺も続くか?どうしよう。あ、結衣が追いかけて行った。ならまだいかない方がいいな。
「ゆきのん、ガンバ」
「気持ち悪いわ、今すぐ口を閉じなさい」
こ、こえーまじで怖かった。今年もっとも怖かった大賞決定ものだよ。
あ、結衣が帰ってきた。
「はい、周くんにも!手伝ってくれたから!」
「俺は全く何もやってないがな、まぁ、ありがとよ」
俺はそう言って部室を出て物体Xを食べる。
おお、気持ちが伝わってくる、まがまがしい気持ちが!嘘です。
まぁすぐには上手にならないってことで
なぜならここは三次元だからさ
早く葉山が依頼に来るやつやりたいです。