やはり普通の俺には普通の学校生活しか送れない。   作:佐羅田

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戸塚彩加は男である

 

 

 

 

 

『ねぇ、転校生くん』

 

『いい加減に転校生はやめろ』

 

『だって、慣れちゃったんだもん』

 

『はぁ……そうかい』

 

『僕たち来年から中学生だよ』

 

『そうだね』

 

『ねぇ、中学生になったら――――』

 

 

何だか懐かしい夢を見てしまった。多分あいつのそっくりさんをこの前見てしまったからだろう。

俺はあれを、他人のそら似だと結論づけた。それ以上は考えないことにしていた。

 

「取りあえず、朝飯食べるかー」

 

俺はそう呟いて階段を下りていく。

下に降りると妹の彩華がトーストを食べながら何かしらの雑誌を読んでいた。

 

「おはよーさん。朝から何読んでんの?」

 

「あ、あにきおはよー。これは今中学女子の間で超絶人気ファッション誌なんだー」

 

「なるほどね」

 

「でも、よくわかんないねー。なにさ『激モテアイテム』って、持ってたら可愛くなんのかね」

 

俺はコーヒーを飲みながら話を聞いていた。

 

「俺にもよく解らん。多分そう言っとけば必死に買うやからがいるから儲かっていいんだろ」

 

「だよねー。こんなん付けたって努力なしには可愛くなんないよね、あと素材」

 

「それは、事実だけど。あんまりそういうこと言うなよ」

 

「いやいや、そこらへんは空気読んで言ってないよ」

 

「さすが、ってかじゃあ、何で買ったんだよ」

 

「買ったというか貰ったんだよ」

 

「誰に?」

 

「小町」

 

「誰だよ、名前言われてもわかんないってーの」

 

「いやいや、あれだよ。あにきがポイントちゃんって言ってる子」

 

「あ~そういえばそんな名前だった気もしないでもない」

 

「まぁ、あにきは人の名前とか覚えるの苦手だしね」

 

「うっせーよ、ってかそろそろ支度しろよ」

 

「うわ、確かに」

 

「あと、ジャムついてるぞー」

 

「嘘?ジャムってる?」

 

「は?なに訳の解らんこと言ってんだよ」

 

「いや、小町が言ってたんだけど口にジャムがついてることをジャムってるって言うんだって」

 

「あの子は頭が悪いのか」

 

「まぁ、それもあるけど、なんというか女子力が高い?」

 

「それって女子力なの?」

 

「わかんない」

 

「まぁ、いいや。取りあえず支度しろー」

 

「はいよー」

 

そう言って服を脱いで着替え始める。

なんで妹の下着を見ながら飯を食っているんだよ、俺は。

そこらへんに脱いだ服が散らばっている。これで生徒会役員を務められているのだから謎である。多分クラスでも何不自由ない位置にいるのであろう。

妹というものは不思議なもので、どれだけ可愛いくても全く感じないものである。下着をみても何も感じないし、どんなことがあろうがドキっとしたりはしないのだ。

 

「行ってきまーす」

 

着替えを終えた妹が学校に向かったようだ。まぁ一緒に登校するなんてあまりないことなので別に何とも思わない。俺はコーヒーを飲み終え着替えを始める。

財布などを確認しカーディガンを着る、今日はグレーである。やはりこれが一番しっくりくるのだからしょうがない。そして鞄を持ち外に出て鍵を閉め、俺も学校に足を進めるのであった。

 

 

月が替わると、体育の種目も変わる。

我が学校の体育は三クラス合同で、男子総勢六十名を二つの種目に分けて行う。

この前まではバレーと陸上であった。どうでもいいか。

今回はテニス選択者が多かったが俺たちは全員じゃんけんで勝つことができテニスに残留できた。これが葉山隼人の力なのかーとか思っちゃったりもしていた。ちなみに比企谷君もテニスである。

準備体操をして教師の厚木先生が一通りレクチャーをしてくれる。それが終わるとみんなを集めて指示を出す。

 

「うし、じゃあお前ら打ってみろや。二人一組で端と端に散れ」

 

さて、俺たちは五人だが、どうしようか。

 

「シュウ、俺とやらない?」

 

「ん?ああ、いいよ。よろしく」

 

考えが終わるまでもなくペアが決まってしまった。ごめんね、戸部に大岡に大和よ……。

まぁコートはあるので俺たち五人の一人休みでやることになった。

最初の休みは大岡である。

 

「それじゃあ、いきますよっ!」

 

戸部が調子に乗ってジャンプサーブをするも全く関係ないところに飛んでいく。

 

「ちゃんと、ボールよこせー」

 

俺はそう言ってふつーにサーブをする。なかなかテニスって難しいね。大体ラリーが続いたのでバトンタッチ。今度は俺が休みのターン。

さて、暇だし比企谷君の所にでも行こうか。なんで壁打ちしてんだろう?

 

「比企谷君~、あーそーぼ」

 

「お前はカツオの友達かよ……」

 

「ん?まあいいや。んで何してんの?」

 

「見たらわかんだろ、壁打ちだ壁打ち」

 

「いや、それは解るんだけどね、なんで壁打ちしてるのかなーって」

 

「お前らは楽かもしれんが俺はまずペアを作るだけでもう無理なんだよ」

 

「お、なんかごめんね」

 

「同情すんな、余計みじめになっから」

 

「別にしてないんだけどな~」

 

「で、なんで前来なかったんだよ、依頼来たんだぞ。変な小説読まされてほとんど寝れなかったし」

 

「いや~あの時は買い物行ってたんだよね」

 

「審判やるんじゃなかったのかよ……」

 

「まぁ、俺は補助だし」

 

「ああ、そうかい」

 

「んじゃ、俺戻るわ」

 

そう言って俺は隼人の所に戻る。

戻ると戸部がスラーイス!!とか言ってボールを大きく飛ばしていた。と、いうか比企谷君の所に飛ばしていた。

 

「あ、信楽くんお帰り。えっと、ひ?ヒキタニくん?ヒキタニくん、ボールとってくんない?」

 

誰だよ。ヒキタニくんって(笑)まぁ、面白いしそのままにしとこ。

ヒキタニくん、じゃなくて比企谷君は少し嫌な顔をした後無言でボールを投げ返してきた。

 

「ありがとうー」

 

隼人が光る笑顔でお礼を言っている。どうやったら笑顔にエフェクトがつくのだろう?謎だ。

 

「さて、次は俺の番だねー」

 

俺はそう言ってコートに入って行く。今日も変わらず楽しい体育であった。

 

 

昼休み。

俺はいつも通りの昼飯をすませ、暇になったので飲み物でも買ってこよーと思い自販機に向けて足を進ませていた。

今日はいい感じの晴れ具合である。

購買まで行き外を見るとなんと結衣がいるではないか、というか比企谷君と話していた。取りあえず俺も行ってみようか?でも、なんだか行きづらい。んー、どうしたものか。

なんか、事故とかあの子とか言ってるぞ。なんだよ、何があったんだよ、ちょー聞きてー。

まて、何で俺が空気を読んでいるんだ?おいおい、おかしんじゃないの?俺。よし行ってみよー。

 

「おーす、ヒキタニくんー」

 

俺の声を聞いて比企谷君は、こっちを見て嫌そうな顔をしてくる。

 

「おい、お前。わかってて人の名前間違えんじゃねーよ」

 

「あ、周くんだー」

 

「はろー」

 

「ごめん、ごめん。ってか比企谷君ってここで食べてるんだね」

 

「悪いかよ」

 

「いやいや、そんなとこないって」

 

比企谷君は機嫌が悪いらしい。どーすっかなーと考えてると練習が終わったのかコートから人が出てきた。

 

「おーい、さいちゃーん!」

 

結衣が手を振って戸塚を呼んでいた。

 

「おー戸塚ー、練習お疲れさん」

 

「さいちゃん、おつかれー」

 

「ありがとう。うちの部、すっごい弱いからお昼も練習しないと……。ずっとお願いしてやっとお昼もOK出たんだ。信楽くんたちはなにしてるの?」

 

「んー特には。飲みもの買いに来ただけ」

 

「あたしは何もー」

 

結衣は比企谷君にだよね?って確認とっている。君たち本当は何があったんだよ!

 

「さいちゃん、授業でもテニスやってるのに昼練もしてるんだ。大変だねー」

 

「ほんとさ、よく頑張ってるよ」

 

「ううん。好きでやってることだし。あ、そういえば比企谷くん、テニスうまいよね」

 

へーそうなんだ。壁打ち達人。ってか比企谷君は誰?って顔すんなよ、同じクラスでしょーが。

 

「ちなみにどこら辺が?」

 

「うん、フォームがとっても綺麗なんだよ」

 

「いやー照れるなーはっはっはっ」

 

「比企谷君、言っとくけど同じクラスの戸塚彩加だからな」

 

「え?マジ?」

 

「っはあぁっ!?なんで名前覚えてないの!?クラスも体育も一緒なのに信じられない!?」

 

めっちゃ驚いてますな結衣さんよ。

 

「ばっかお前、超覚えてるよ!あれだよ、うっかり忘れちゃったんだよ!ってか体育は男女別だろ!」

 

え?こいつ、性別間違えてね?まぁ俺も最初間違えそうになったけどさ。

 

「あ、あはは。やっぱりぼくの名前覚えてないよね……。改めまして、同じクラスの戸塚彩加です」

 

「いや、悪い。クラス替えからあんまたってないから、つい、ね」

 

「去年も同じクラスだったんだけどな……。えへへ、ぼく影薄いから……」

 

「やーそんなことないぞ。俺があんまりクラスで関わりとかないからね、なんならこいつの本名知らないし」

 

そう言って比企谷君は結衣を指で指す。

 

「いい加減覚えろっ!」

 

結衣が比企谷君の頭をべしっと叩く。

 

「由比ヶ浜さんとは仲良いんだね……」

 

え?俺は?

 

「え、ええっ!?ぜ、ぜんっぜん仲良くないよ!?ほんと殺意しかない!ヒッキー殺してあたしも死ぬとかそんな感じだよ!?」

 

「そーそーって怖いよお前!心中とか愛が重い!」

 

え?愛なの!?くっそー羨ましい!……え?

 

「は!?ば、バカじゃないの!?そんな意味で使ってないから!」

 

「と、いう具合に二人は仲がいいんだ」

 

「ほんとに仲いいんだね……」

 

「おい、信楽。纏めんな意味わかんないし、女の子にそういうこと言うなよ」

 

「ぼく、男なんだけどなぁ……。そんなに弱そうに見えるかな?」

 

はい、イエス。

案の定比企谷君は固まってしまっている。もうちょっと後からでも良かったんだけどなーネタバレ。

 

「……証拠、見せてもいいよ?」

 

そう言って戸塚はハーパンに手をかけている。待つんだ、それはやっちゃーいけんでしょ。

 

「とにかく、だ。悪かったよ。知らなかったとはいえ、やな思いさせて」

 

そう比企谷君がいうとぱあぁっと顔を笑顔にさせていた。あなたもエフェクト出るんだ……。

 

「ううん、別にいいよ」

 

「にしても戸塚。よく俺の名前知ってたな」

 

「え、あ、うん。だって比企谷くん、目立つもん」

 

「「えぇ!、なんで!?」」

 

俺と結衣の声がハモった。

 

「ばっかお前ら、俺とか目立つっつーの。クラスの誰よりも超目立つっつーの」

 

「どこが?」

 

俺も全く同意見である。

 

「……ひ、独りぼっちで教室の片隅とかいたら逆に目立つだろうが」

 

「あーなるほどね」

 

「それは確かに目立……あ、なんかごめん」

 

俺は納得のあまり謝るのを忘れてしまっていた。

 

なんか、空気が重くなってしまった。

 

「それよりさ、比企谷くんテニスうまいよね。もしかして経験者?」

 

戸塚の言葉でだいぶ軽くなった。

 

「いや、小学生のときにゲームでやったきりだ。リアルではやったことない」

 

ゲームってなんだろう?あれかな、キノコ食って大きくなるやつ系かな?

 

「あれ、楽しいよね。皆で振ったりして、ダブルスとか超楽しい」

 

あー、そっちか。やっぱ最新の方か。

 

「俺か一人でしかやってなかったけどな。あと、振るんじゃなくて俺は四角いほうだ」

 

「おー、やっぱりキューブ」

 

「何?由比ヶ浜。お前俺の心の地雷処理班なの?いちいちトラウマ掘り返すお仕事なの?」

 

「ヒッキーが爆弾抱え込みすぎなんでしょ!」

 

「と、いうか完全に踏み抜いてるよね」

 

俺たちのやり取りを戸塚は楽しそうに笑って見ている。

すると、昼休み終了のチャイムが鳴った。

 

「戻るかー」

 

俺がそう言い結衣や戸塚も後に続いてくる。しかし、比企谷君は少し立ち止まってるようだ。その様子を見て結衣が声をかけた。

 

「ヒッキー?なにしてんの?」

 

少し間が開いた後比企谷君が答える。

 

「お前、ジュースのパシリはいいの?」

 

「はぁ?――――あっ!」

 

え?今度は雪ノ下さんにパシられてんの?

 

 

 

数日の時を置いて、またもや体育の授業である。

俺はいつも通りのメンバーでラリーを回している。最初に比べたら上手くなったなと自分でもわかるぐらいには成長した。

戸部は相変わらずうるさくしてるし。それにみんな乗って楽しくやっている。ちなみに俺もその一人だ。そういえば今回がラリー練習の最後の日だとか言ってた気がする。そして試合に入るらしい。地味に楽しみである。

そういえば比企谷君は何してるんだろう?今日も壁打ちかな?と探していたが見当たらない。コートの方を見たらなんの戸塚と打ってるではないか。しかもラリーめっちゃ続いてるし。あ、休憩してる。二人は何か話してるな、ってか距離近いね。もしかして比企谷君はあっち系なのだろうか?んな訳ないか。

俺は二人を片目にラリーを隼人に打ち返す。んーなんか、依頼人が来そうな予感がするな……。

あと、比企谷君。顔ニヤけてますよー。

 

 

 




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