やはり普通の俺には普通の学校生活しか送れない。   作:佐羅田

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長くなっちゃいました。


葉山隼人はいい奴である

 

 

 

 

「無理ね」

 

雪ノ下さんが比企谷君の言葉を一蹴した。

なんでも、比企谷君は戸塚からテニス部に誘われたらしい。それを理由にして奉仕部をやめようとしている。それを雪ノ下さんに伝え先ほどのような感じになったのだ。

 

「と、いうか。比企谷君集団行動できるのー?」

 

「そうね。信楽くんの言った通りあなたに集団行動ができるはずがないし、まず他の部員に受け入れられないわ」

 

「うぐっ……」

 

「つくづく集団心理が理解できてない人ね。ボッチの達人ね」

 

「お前が言うな」

 

「もっとも、あなたという共通の敵を得て一致団結することはあるかもしれないわね」

 

「でも、それじゃあ排除の努力はしても強くなろうとはしないんじゃない?」

 

「ええ、そうよ。ソースは私」

 

「実体験かよ……」

 

まさかの実体験でしたか。

 

「ええ。私、中学のとき海外からこっちへ戻ってきたの。当然転入という形になるのだけど、そのクラスの女子、いえ学校中の女子は私を排除しようと躍起になったわ。誰一人として私に負けないように自分を高める努力をした人間はいなかった……あの低能ども……」

 

なんか殺意の炎が後ろから見えるんですけどー。ちょー怖い。

 

「ま、まぁなんだ。その、お前みたいな可愛い子がきたらそうなるんじゃね?なぁ?」

 

ん?話を振られたようだ。

 

「あ、ああ、そうだね。俺も女子から色々聞いたりするけどやっぱりね、そーいうのはあるらしいな。しかも雪ノ下さんの場合完璧超人だからよけい嫉妬しちゃうんじゃない?」

 

「……っ。え、ええ、まぁそうでしょうね。彼女たちと比較して私の顔だちはやはりずば抜けていたといっていいし、そこでへりくだって卑屈になるほどこの精神はやわではないから、ある意味当然の帰結といってもいいでしょう。とはいえ、山下さんや島村さんも可愛いほうではあったのよ?男子から……」

 

長い長い!長いよ!雪ノ下さんは照れると隠すように言葉を並べるらしい。まだ自分を褒めてるし……。

 

「……あまり変なこと言わないでくれる?怖じ気がが走るわ」

 

「ああ、やっぱりお前全然可愛くねーわ」

 

あ、比企谷君も少し照れてて可愛いと思ったのかな?

 

「戸塚のためにもなんとかテニス部強くならんもんかね」

 

「珍しい……。誰かの心配をするようなだったのかしら?」

 

「しかもまだ知り合ってからそんなに日にちたってないのにね。どうしたんだい比企谷君」

 

「やーほら。誰かに相談されたのって初めてだったんでついなー」

 

「私はよく恋愛相談とかされたけどね」

 

うわー俺この話のオチわかっちゃったよ。

 

「……っていっても、女子の恋愛相談って基本的には牽制のために行われるのよね」

 

だと思ったよ……。俺この真実を中学生のときに聞いて以来女子はめっちゃ怖い生き物ってイメージがやばかったなー。

 

「は?どういうこと?」

 

さすが、知らないようだ。

 

「まー簡単に言っちゃえば大義名分ができるってこと。自分の好きな人を言っておいてそいつがその人に手を出したら泥棒女扱いになり、いじめる大義名分ができるってこと」

 

「それだけじゃないわ。あっちから告白してきても外されたりいじめられたりするのよ?なんであそこまで言われなきゃいけないのかしら……」

 

また殺意の炎が煌めいていらっしゃる。

そう言った後自嘲気味にふっと笑っていた。

 

「女子ってそんなに怖いもんだったんだな」

 

「そうね。要するに、何でもかんでも聞いてあげて力を貸すばかりがいいとは限らないということね」

 

「へいへい」

 

「もし、依頼されたら雪ノ下さんならどうする?」

 

「全員死ぬまで走らせてから死ぬまで素振り、死ぬまで練習、かしら」

 

「冗談きついぜ……」

 

少し微笑みながらなのが余計に怖かったです。

 

「やっはろー!」

 

そう言って結衣が元気よく入ってきた。って後ろに誰かいるっぽいぞ。

 

「あ……比企谷くんっ!」

 

な、俺よりやつの方が先に名前を呼ばれるだと……。ありえるのか……。

 

「よー戸塚ー依頼かー?」

 

「あ、信楽くん」

 

存在すらやつより後だと……。

 

「へっへっへー!今日は依頼人を連れてきたの!」

 

結衣さん俺が確認とったの忘れてませんか?

 

「やー、ほらなんてーの?あたしも奉仕部の一員じゃん?だから、ちょっとは働こうと思ったわけ。そんでさいちゃんが悩んでる風だったから連れてきたの」

 

「由比ヶ浜さん」

 

「ゆきのん、お礼とかそういうの全然いいから。部員として当たり前のことをしただけだから」

 

「由比ヶ浜さん、別にあなたは部員ではないのだけれど……」

 

「違うんだっ!?」

 

違うんかいっ!もうてっきり部員だと思っちゃってたよ。

 

「ええ。入部届をもらっていないし、顧問の承認もないから部員ではないわね」

 

マニュアル人間かよ。

 

「書くよ!入部届くらい何枚でも書くよっ!」

 

ほぼ涙目になりながら結衣はルーズリーフに可愛らしい字で『にゅうぶとどけ』と書いていた。いや、入部届の紙って貰うもんだし。というか漢字でかきなさい。

 

「で、戸塚彩加君、だったかしら?何かご用かしら?」

 

「あ、あの……、テニスを強く、してくれる、んだよ、ね?」

 

なんというか雪ノ下さんに圧倒されて小鹿みたいになっていた。

 

「由比ヶ浜さんがどんな説明をしたのか知らないけれど奉仕部は強くなる手伝いをし自立を促すだけ。その後はあなた次第よ」

 

そうだよね。うちって確かなんでも屋じゃなかったよね。

 

しょんぼりした様子の戸塚だった。多分結衣が調子のいいことを言ったのだろう。本人はハンコを探してるようだが。俺の視線に気づき結衣が顔をあげる。

 

「へ?何?」

 

「何じゃないよ……。結衣が調子のいいことだけ言ったから戸塚の希望が打ち砕かれたよ……」

 

「ん?んんっ?でもさー、ゆきのんたちならなんとかできるしょ?」

 

お前はやらんのかい……。というかそんな小馬鹿にした言い方だったら一人そういうのに以上に反応する人が飛びついちゃうよ。

 

「……ふぅん、あなたも言うようになったわね、由比ヶ浜さん。私を試すような発言をするなんて」

 

雪ノ下さんが不敵に笑った。あーあ、変なスイッチ入っちゃたよ……。

 

「いいでじょう。戸塚君、あなたの依頼受けるわ。あなたのテニスの技術向上を助ければいいのよね?」

 

「は、はい、そうです。ぼくがうまくなれば、みんなも一緒に頑張ってくれる、と思う」

 

そう言った戸塚は比企谷君の後ろから顔を出して話をしている。

懐かれすぎじゃね?

 

「んで、雪ノ下さん。依頼を受けたはいいがどうするの?」

 

「信楽君。記憶力に自信がないならメモをとることをお勧めするわ」

 

「いや、覚えてるけど。え?マジで?」

 

その言葉の返答はにっこりとし微笑みだった。まじでその顔こえーよ。

 

「戸塚……生きろよ」

 

俺にはそれしか言えなかった。そう言うと戸塚は小刻みに震えていた。

 

「大丈夫だ。戸塚は俺が守るから」

 

そう比企谷君は言っていた。それって言ってみたいセリフベスト三じゃん……。ちなみに俺の憧れは『ここは俺に構わず先に行け!』だ。どうでもいいか。

 

その後も色々話していたが雪ノ下さんが打ち切り昼休みに行うことが決定された。俺は当分隼人たちとは昼休みを取れなさそうだ……。

 

 

翌日の昼休み。俺はさっさとご飯を食べてしばらく昼休みは用事があるということを隼人に伝えた。そしてジャージに着替えてテニスコートを目指す。

俺の学年のジャージはかなりダサいのである。無駄に蛍光色の淡いブルーとその色合いにより大方の生徒から大不評なのだ。

俺がテニスコートに着いた時にはもうすでに雪ノ下さんと結衣がいた。なにやら二人で昼飯を食べてるようだ。

 

「あ、周くんやっはろー」

 

「どーも、比企谷君たちはまだみたいだね」

 

「そうらしいわね」

 

簡単に挨拶をすませて二人はまた食べ始めた。なんというか和む光景である。二人が食べ終わってからすぐに比企谷君と戸塚が来た。なんか知らない人も一緒だが。

 

「ん?信楽某!なぜ貴様がここにいるぅ!」

 

初対面で喧嘩を売られた。なんで?

 

「えーと、どなた?」

 

「あー、安心しろこいつは材木座ってやつだ。この前の依頼主でもある」

 

「なるほど。で、なんで最初っからあんなに敵意むき出しなの?」

 

「あいつは、あれだ。ボッチだからお前らみたいのが憎いんだよ」

 

「いや、意味わかんないんだけど。ともかく友好的にいってみる」

 

「おう。ガンバ」

 

「えーと、材木座君。俺も奉仕部の部員なんだわ、だからよろしく頼むよ」

 

「はっ!そんな罠でこの材木座義輝を騙せると思ったか!甘いわ!」

 

ウザ、この人ウザイな、あと多分中二病も入ってる気がする。多分だけど。

 

「それがマジなんだわ、なんだったら比企谷君にでも確認とってくれよ」

 

ちょっとイラだった言い方をしてしまった。

 

「はっ!何を言いだすかと思えばそんなことを……え?八幡、本当なの?」

 

「ああ、本当だぞ材木座」

 

「茶番はそこまでにしてもらえるかしら。さっさと依頼の方に移りたいのだけれど」

 

「ど、どうぞ」

 

俺たちのやり取りを雪ノ下さんが無理やり終わらせた。

 

「では、始めましょうか」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

雪ノ下さんに向かって、戸塚がぺこりと一礼する。

 

「まず、戸塚君に致命的に足りてない筋力を上げていきましょう。上腕二頭筋、三角筋……」

 

と、言うかたちでテキパキと雪ノ下さんがメニューを言っていく。方針は死ぬ一歩前までやって超回復で短期間で強くなる。というジャンプもビックリな修行、もとい練習であった。

結衣は出てくる単語が難しかったのかたまに頭を傾げたりしていた。

そして比企谷君と中二だが腕立て伏せをしている戸塚をみて穏やかな気分だーとか言っている。ぶっちゃけ気持ち悪い。まぁ結衣の事を見ていた俺が言うのもなんだがな。

 

「……あなたたちも運動してその煩悩を振り払ったら?」

 

雪ノ下さんが二人に蔑みの目で話しかけていた。

すると二人は焦ったのように言い訳をして腕立て伏せを始めた。その様子を見てから雪ノ下さんが一言。

 

「そうやってると、斬新な土下座に見えないこともないわね」

 

と言ってくすっと笑っていた。じゃあ、俺は……足腰鍛えますか。なんだかんだで俺も筋トレに参加したのであった。

 

 

そんなこんなで日々が過ぎ、自主練は第二フェイズに突入していた。

まぁ、簡単に言うと基礎練習を終えて、ボールとラケットを使った練習に入ったのだ。

そう言っても使って練習しているのは戸塚だけだが。

戸塚は雪ノ下さんのもと、真剣に壁打ちをしている。雪ノ下さんは木陰で本を読みながら時々戸塚に檄を飛ばしている。その横で寝たりしているのが結衣だ。俺は結衣が起きてるときは話をして時間を潰し、寝ているときは戸塚の練習風景をボーっと眺めている。中二は中二病らしく魔球開発や名前などを付けて遊び、比企谷君はアリの観察をしている。楽しいのだろうか?

 

「親父ぃ―――っ!!」

 

ボーっとしていたらいきなり比企谷君が叫びだしその横では中二が誇らしげに魔球の説明をしている。ぶっちゃけ状況がつかめん……。まぁいいか。

そんなやり取りを見ていたら結衣が起きてたみたいで雪ノ下さんと何かを話した後ボールをかごに乗せて運んでいた。

 

「由比ヶ浜さん、もっとあの辺とかこの辺とか厳しいコースに投げなさい。じゃないと練習にならないわ」

 

そう言ってボールを投げていく。コースがなかなかエグイがなんとか戸塚も食らいついていた。

何球か二人が投げていたら戸塚がずざーっと転んだ。

 

「うわ、さいちゃんだいじょうぶ!?」

 

結衣が戸塚に駆け寄っていた。戸塚は足を擦りむいたようだがにっこりと笑って無事をアピールしていた。

 

「大丈夫だから、続けて」

 

だがその言葉をきいて雪ノ下さんは顔をしかめてた。

 

「まだ、やるつもりなの?」

 

「うん……、みんな付き合ってくれるから、もう少し頑張りたい」

 

「……そ。じゃあ、由比ヶ浜さん。後は頼むわね」

 

そう言って雪ノ下さんは校舎のほうへと消えて行ってしまった。

 

「な、なんか怒らせるようなこと、言っちゃった、かな?」

 

「いや、あいつはいつもあんなもんだ。むしろ、罵倒がないぶん、機嫌がいいかもしれん」

 

「たしかにねー俺たちなら低能とかそういうの言われるしねー」

 

「それ言われてるの二人だけじゃないの?」

 

え?そうなの?ってか結衣も言われてる気がするんだけどなー。

 

「もしかしたら、呆れられちゃったの、かな?……」

 

「それはないと思うよー。ゆきのん、頼ってくる人を見捨てたりしないもん」

 

手の中でボールを転がしながら、結衣がいった。

 

「まぁ、そうだよな。由比ヶ浜の料理に付き合うぐらいだ。だったらまだ見込みがありそうな戸塚のことを見捨てはしないだろうな」

 

「どういう意味だっ!?」

 

残念ながらそのままの意味だよ……。

 

「まぁ、そのうち戻ってくるだろう。続きしようかー」

 

「……うん!」

 

戸塚は弱音や泣き言は言わない。本当は強い子なのだ。

 

「もう疲れた~、ヒッキー交代してよ」

 

そう言われた比企谷君はあっさりと受け入れる。だいぶ暇だったのだろう。

結衣がにこにこしながら戻ってくるがいきなり表情が曇った、どうしたんだろう?

 

「あ、テニスしてんじゃん、テニス!」

 

はー、この声は女王様じゃないですか。なるほどね。振り返ると中二をスルーしたあたりで向こうも俺たちに気が付いたらしい。

 

「あ……。ユイたちだったんだ……」

 

海老名さんがそう呟いた。

 

「ね、戸塚ー。あーしらもここで遊んでいい?」

 

「三浦さん、ぼくは別に、遊んでるわけじゃ、なくて…練習を…」

 

「え?何?聞こえなんだけど」

 

戸塚も女王様が怖いのだろう。それでも勇気を振り絞って再び言う。

 

「練習だから……」

 

だがそれでは折れないのが女王様だ。

 

「ふーん、でもさ、部外者混ざってるじゃん。ってことは別に男テニだけでコート使ってるわけでもないんでしょ?」

 

うん、なかなかのツッコミ所だ。ってなんで女王様を褒めてんねん。

 

「それは、そう、だけ、ど……」

 

「じゃ、別にあーしら使ってもよくない?」

 

「……だけど」

 

いつもは俺もあっちのほうだからなー、ある意味新鮮だ。

 

「あー、悪いんだけど、このコートは戸塚がお願いして使わしてもらってるもんだから他は無理なんだ」

 

比企谷君がそう言った。

 

「は?だから?あんただって使ってんじゃん」

 

「え、いや、練習に付き合ってるわけでなんていうかアウトソーシングなんだよ」

 

「はぁ?何意味わかんないこと言ってんの?キモいんだけど」

 

ストレート!ってか喧嘩とかめんどいから黙ってたけどそろそろ俺もなんか言ってやるかー。

 

「まぁまぁ、みんなでやったほうが楽しいしさ。あんま喧嘩腰になんないでさ」

 

「みんなって誰だよ……。かーちゃんに『みんな持ってるよ!』って言うときのみんなかよ……。誰だよそいつら……。友達いないからそんなのしらねぇよ……」

 

俺が言う前に比企谷君の鬱が発動した。

 

「あ、いや。そういうつもりじゃなかったんだ。……なんか、ごめんな?悩んでるなら俺でよければ相談に乗るからさ」

 

そしてすんごい慰められていた。やはり隼人はいいやつである。

 

「さて、そろそろ練習に戻りたいんだが、いいか?」

 

俺は何もなかったようにそう切り出す。

 

「は?周、あーしの話聞いてた?」

 

「聞いてたよ、優美子。じゃあ逆に隼人から何も聞いてないのかい?」

 

「いや、それは聞いたけど、テニスやるとは言ってなかったし」

 

「そりゃー俺は平塚先生の頼みごとしかいってないけど別にテニスはやらないなんて言ってないよな?ね、隼人」

 

「た、確かにそうだな」

 

「なら、なんか問題ある?」

 

「で、でもユイとかもやってんじゃん、それはいいわけ?」

 

あーそこねー。ぶっちゃけノープランだわ。

 

「さっきも言ったけど戸塚に頼まれてやってることだから」

 

「んー。じゃこうしよう。部外者同士で勝負。勝ったほうが今後昼休みにテニスコート使えるってことで。もちろん、戸塚の練習にも付き合う。強い奴と練習したほうが戸塚のためにもなるし。みんなも楽しめる」

 

うまいな……。俺は部外者じゃないってことで通したからこれには反論できんし……はぁめんど。

 

「テニス勝負?……なにそれ?超楽しそう」

 

うわーやっぱり乗ってきたし、ってか女王様はテニスくそうまいじゃん。

女王様の言葉に取り巻きが反応し人がちらちらと集まってきた。というかさすが隼人、応援人数半端ない。

 

「HA・YA・TO!フゥ!HA・YA・TOフゥ!」

 

戸部がめっちゃ叫んでる。うっせーよ。視線がさっきから痛いし中には隼人くんと信楽くん喧嘩したの?とか葉山先輩といつも一緒にいる人どうしたんだろーなどと聞こえてくる。はーめんどくさい。本当にめんどくさい。

 

「ね、どうするの?」

 

「俺は出れないし多分比企谷君しか出るのいないと思うんだけど……大丈夫?」

 

「大丈夫なわけないだろう……」

 

色々話してると女王様が苛立ってきた。

 

「ねぇ、早くしてくんない?」

 

「あれ?優美子やんの?隼人じゃなくて?」

 

「あーしがテニスやりたいって言ったんだからあーしがやる」

 

「でもこっちでるの男子だし、優美子出るならちょいきついぞーこっちが」

 

「そうだよ、優美子。たぶん向こうはヒキタニくんが出てくるし、ちょっと……」

 

でた、ヒキタニくん(笑)

 

「あ、なら男女混合ダブルスでよくない?あーしマジ頭いいんだけど。っつっても、ヒキタニくんと組んでくれる子いんの?とかマジウケる」

 

事実、そんな人はいない!やっばー不戦敗じゃん。

 

「八幡。これはまずいぞ。お前には女子の友達は皆無。見知らぬ生徒に頼むのも絶対にむりであろう。どうする?」

 

中二がまともというか事実を言っていた。

 

「うるせーよ」

 

「それで?マジどーするよ、この人数だし今更なしでーはできんぞ」

 

「……」

 

「比企谷くん。ごめんね。ぼく、女の子だったらよかったんだけど……」

 

「……気にすんな」

 

そう言って比企谷君が戸塚の頭をぽんと叩いた。なんかカップルっぽい。

ってかいちよ釘さしとこっか。

 

「結衣、お前は無理に出るとか言うなよ」

 

そう言うとぴくっと肩を震わせて、申し訳なさそうに唇をかんでいる。こんな表情は見たくない。結衣も俺も分類としてはあっちだし、結衣が参加するとなると女王様は怒るであろう。

なぜか比企谷君がコートに向けて一人で歩き出した。

 

「…………る」

 

結衣が何かを言ったようだが聞こえなかった。

 

「なんて言った?結衣」

 

「あたし、出るよ!」

 

この発言には比企谷君も足を止めて戻ってくる。

 

「由比ヶ浜?バカ。ばっかお前、やめとけっつーの。それとも俺のこと好きなの?」

 

「は、……はぁ?な、何言ってんのバカじゃん。バァーーーカ!」

 

結衣は顔を真っ赤にさせながらラケットを振り回して比企谷君にバカを連発している。

 

「すすすすみませんでしたっ!」

 

比企谷君が避けながら謝っている。冗談のつもりだっただろうに……。

 

「じゃあ?なんで?」

 

「……やー、なんてーの?あたしも奉仕部入ったし……、ならやるでしょ普通。……居場所だし」

 

「いや、落ち着け?空気読め?お前の居場所ってここだけじゃないだろう?ほら、お前のグループの女子、お前のことガン見じゃん」

 

「え?うそマジ?」

 

ほんとだよ……。というかそんなにも気に入っていたのか。雪ノ下さんを、比企谷君を、そして奉仕部を。ならばできる範囲で俺は協力しよう。そこに俺が入っていなくとも……。

 

「しゃーない。なんかあったら俺が上手くまとめてみるよ。あいつらも俺が言ったら多少は信じるだろう」

 

「お前は葉山と仲良いしな」

 

「周くん、ありがとう」

 

「ああ、問題ない」

 

そう俺が小さく二人に言った。しかし二人の会話は普通に声が大きかったので優美子が敵意をむき出しにしていた。

 

「ユイー、あんたさぁ、そっち側につくってことはあーしらとやるってことなんだけど、そーいうことでいいわけ?」

 

「優美子ー」

 

「なにさ周?」

 

「優美子も不戦勝じゃつまんないっしょ?だからあれは結衣なりの考えなんだよ。別にそーいうわけじゃないから安心しろー」

 

「へー、……そーなん。……着替え、女テニの借りるから、ユイも来れば?」

 

これは優美子の優しさだ。やっぱりただの不器用である。しかし成長したな。

そう言われた結衣は少しためらったがその後について行っていた。

 

「あのさー、ヒキタニくん」

 

そう言って隼人がこっちにくる。

 

「どーしたよ、隼人」

 

「ちょっとね、ルールの確認を」

 

「なるほどね」

 

「俺、テニスのルールよくわかんないんだよね。しかもダブルスだし。だから適当でもいいかな?」

 

「……まぁ、素人テニスだしな。単純な打ち合いでいいんじゃねぇか。バレーボールみたいな感じで」

 

「あ、わかりやすくていいね」

 

そうこう二人が話してるうちに結衣たちが帰ってきた。わお、めっちゃいいね!思わずサムズアップしてしまった。その後二人は作戦がどうこう話してコートに入って行った。

俺は……また審判Bだな。

 

 

なんというか以外に形にはなっていた。ギャラリーの声援もあってなんかプロのっぽかった。でもやはり女王様は群を抜いてうまい。

比企谷君も頑張っているが、多分あんまりやったことがないのか結衣はぶっちゃけ下手だ。

戸塚の言った通り比企谷君はうまい、コースもちゃんとついてるし。

結衣が返した球を優美子が思いっきり打って結衣の頬をかすめた。

 

「優美子ー性格悪いぞー、勝負でもちゃんと安全安心を考えろー」

 

「な!違うし!試合ならこんなの普通だし!わざとじゃないし!」

 

俺の言葉に女王様は焦ってように反応していた。その後も隼人たちが色々言ってじゃれ合いをして笑っていた。……はっ!いかんいかん、俺は今は結衣たちチームだ。いつも通りじゃあっちの内輪ネタになってしまう。慎むべし慎むべし。

その後、結衣は立ち上がったがすぐにまた座ってしまった。ん?どうしたのかな?俺はそう思いタイムと言って結衣の下に行った。

 

「結衣、どうした?」

 

「ちょっと筋やっちゃったかも」

 

えへへーっと笑っていたが目に涙が溜まっていた。

 

「結衣、いいから休め。いざとなったら俺が土下座すれば絶対に収まる、多分だが」

 

「お前、そこまでするのか。俺なら本気になれば余裕でできるけどお前はそういうのしなさそうだけどな」

 

「俺だっていやだが背に腹は変えられん」

 

「いやいや、周くんにそこまでさせれないって!」

 

「……結衣、少しは俺にも頼ってくれていいんだぞ」

 

「そうだ、思いついた!」

 

そう言って結衣はギャラリーを掻き分けて消えていく。

 

「どうしたん?見捨てられちゃった?」

 

優美子がそう笑いながら言ってきた。

 

「いざとなったら実行するぞ」

 

「あ?わかってるよ」

 

本当はやりたくないけど、隼人は優しいやつだからこれをやってしまえば上手く終わらせてくれるだろう。

 

「この馬鹿騒ぎは何?」

 

現れたのはギャラリーをモーゼのように割って不機嫌に優雅に歩いてきた雪ノ下さんだった。

そして体操服とスコート姿であった。

 

「後は頑張って」

 

俺はそう言ってコートを出て行った。

その後三人でなんやかんや話した結果、結衣の代わりに雪ノ下さん出るらしい。

まぁ、なんというか、なかなか面白い。

お嬢様VS女王様になった。優美子がめっちゃ睨んでいる、これで意識は全部雪ノ下さんが持って行ってくれた。結衣がこの後言われる心配もないだろう。

その後の快進撃はものすごかった。雪ノ下さんはほとんどの球を返すし、おまけにジャンプサーブまで決めて見せた。

 

「これ、いけんじゃね?」

 

俺の呟きに雪ノ下さんが答える。

 

「私、昔からなんでもできたけれど。……体力だけは自信がないの」

 

「比企谷君!後はすべて君にかかってる!」

 

俺はノリで叫んでいた。

 

「お前ら、そんな聞こえる声で……」

 

まずった。女王様が目をギラギラ輝かせている。あれは獲物を見つけたときの目だ……。

 

「聞こえてんですけど?」

 

そう女王様は言ってあっけなく雪ノ下さんたちから点数を奪っていき同点になってしまった。

そしてむかえるデュース。

 

「なんかしゃしゃってくれたけどー、さすがにもう終わりでしょ?」

 

女王様はもう勝った気でおられる。と、いうかギャラリーの方もそんな雰囲気が出ている。

 

「ま、お互いよく頑張ったってことで引き分けにしない?」

 

「ちょ隼人、何言ってんの?試合だからマジでカタ付けないとまずいっしょ」

 

「少し黙ってもらえるかしら」

 

雪ノ下さんがそう不機嫌な声で言った。

 

「この男が試合を決めるからおとなしく敗北しなさい」

 

その言葉に全員が比企谷君を注目した。俺は取りあえず目があったのでサムズアップしておいた。

 

 

不自然なまでの静けさの中、比企谷君がトントンとボールを地面に打ちつけていた。何かを待つかのように。

いきなり比企谷君が打った球はとても弱弱しく緩やかなものであった。これ、終わったしょ。

 

「っしゃぁ!」

 

女王様が勝ち誇ったようにそう言って球を打とうとしたがいきなりコースがずれコートの恥を打った。しかしそこには隼人が走りこんでいき打とうとする。がまたもやコースがずれポトンと落ちて転がっていた。なんというか魔球である。そんな二次元は起こらないと知っているが。

女王様も隼人もありえないとかやられたと言っている。ちなみにギャラリーは中二の言った技の名前みたいたもので盛り上がっている。

そして二球目、これが決まれば勝ちである。

 

「っ!セーシュンのばかやろおぉーーーーーっ!」

 

「何その掛け声ーーー!」

 

比企谷君の掛け声に思わずつっこんでしまった。

ボールは大きく上に飛んでいき速度を上げて落ちてくる。あれは取れないしめっちゃ危ない。

 

「な、なにそれ」

 

女王様が空を見上げて呆然と呟いている。隼人もまぶしそうだ。

 

「優美子下がれ!」

 

唖然とした女王様に何かを気付いた隼人が叫ぶ。うっわー比企谷君めっちゃ悪役の顔してるよ……。

ボールが着弾し大きくはねてフェンスのほうへ向かっていく。このまま女王様が追いかけると多分フェンスにぶつかってしまうであろう。

 

「くっ!」

 

隼人はラケットを投げ捨て駆け出した勢いで走り出す。

砂煙の中、皆の視界から二人が消える。

そして一瞬の静寂の後に二人の姿が見えた。

隼人は金網に背をぶつけ、フェンスから女王様を守るように抱きかかえていた。当然、女王様の顔は赤い。そして控えめに隼人の胸元をちんまりと握っている。なんか急に可愛く見えてきた……。

瞬間、ギャラリーは溢れんばかりの大歓声と割れんばかりの拍手を二人に送る。

すごいなこれは、皆さんスタンディングオベーションじゃないですか。

最後に隼人はよしよしと頭をなで一層女王様の顔が赤くなった。その光景を見てさらに歓声が増す。そして昼休みを終えるチャイムがなった。そのまま二人は胴上げをされながら校舎のほうに消えて行った。

 

 

「なんというか試合にかって勝負に負けたってのを始めて見た気がするよ……」

 

「あたしも……」

 

「馬鹿言え。俺たちとあいつらじゃ、端っから勝負になんてならないんだよ」

 

比企谷君がそう卑屈に言った。確かにあいつらは主役だったな。

 

「そういえば、周くんあたしがゆきのん呼びに行く前なんて言ったー?」

 

あの言葉は聞こえていなかったらしい。

 

「ん?いや、なんでもないよ。それより、怪我大丈夫か?」

 

「うん…」

 

「ならよかった」

 

「ありがとね、じゃ、あたしゆきのんの所に行ってくる」

 

そう言って結衣は雪ノ下さんと話しながら校舎に入って行った。もう男しかいない。俺が頑張って言った言葉が聞こえていなかったとは……これは、あれだ。おれも比企谷君にならおう。

 

 

「三次元のばかやろおぉーーーーーっ!」

 

 

 

 

 

 




やっと一巻が終わりました。
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