ウルトラゼロファイトXD   作:火野ミライ

2 / 11
OP.DREAM FIGHTER
挿入歌.すすめ!ウルトラマンゼロ

宇宙怪獣 ベムラー
登場


Я2回目:零からの開始

………どうしてこうなった? かつては地面を舗装していたであろうコンクリートの塊を踏み砕きなら静かに溜息を溢す。私の心情など知りもしない目の前を歩く二つ影は無邪気な笑顔をこちらに向けて語りかけてきた。

 

「響さん!早く、早く!!」

 

「早くしないと日が暮れちゃうデスよー!」

 

「はいはい」

 

黒い髪をツインテールに結んだ調と金髪の前髪を緑のヘアピンでとめている切歌に急かされる私。彼女達に道案内されながら向かっているのは、彼女達が暮らす集落の【フィーネ】。どうやら私……と言うよりエーフと言う種族が彼女達にお気に召されたようだ。

 

知り合いのおじさんから死にそうなところを助けてくれた美しい少年だの、食料を分けたら山から魚を取ってきてくれた少女だったなど、様々な話を聞かされたらしい。童話の動物みたいな話ばかりなのは、子供に聞かせてもいい話を厳選したからだろう。

 

エーフの関する話が幼子ばかりなのは基本、幼児に内に殺されるか使いつぶされるから。だから私の年まで生きたエーフは珍しい。けど彼女達が私を気に入ったのは多分…………

 

「(言葉の)選択ミスった……」

 

と言うのも彼女達を追い払うために話した人外エピソードの数々。それを聞いた彼女達は純粋なのか、バカなのか、御伽話の勇者のように捉えてしまった。

 

『まぁ、そんな事言ってやるなよ! 可愛い子たちじゃねぇか』

 

「私としては関わりたくないんだけど」

 

小声で愚痴る私を励ますのか、切歌と調………キリシラコンビに折れろと言われているのか、どちらともとれるゼロの言葉。ちなみにゼロの声は同化した私にしか聞こえないようだ。テレパシーなんて習得してない私には周りの目も気にして会話しなきゃいけないから大変。

 

「着いたデスよ!」

 

結局最後までキリシラコンビを振り払えずに彼女達が住まう地へと来てしまった。なにかの工場を改修して使用しているようで、このご時世にしては立派な門や見張り台が視界に入る。

 

「ようこそ私達の集落、フィーネ」

 

両腕を広げて歓迎ムードのキリシラコンビ。二人から満面の笑みと共に紡がれた祝福の声を聞いていると独りでに門が開き、中から門番をやっていたであろう武装した女性が駆け寄ってくる。

 

「大丈夫? 切歌!調! みんなあなた達の向かった集落に怪獣が出てきたって話を聞いて、心配してたのよ」

 

「大丈夫」

 

黒い槍を手に持ち、短剣を腰に帯刀したピンク色に煌めく髪を一度頭の上で結んでいるにも関わらず腰に届くほどの長さを持つ女性がキリシラコンビを抱き寄せる。その顔は行方不明の子を見つけた母親のようだ。

 

『あの地球人、髪の色が………』

 

「この世界だと割と見る」

 

キリシラコンビの体温を感じホッと胸を下す彼女の髪色にゼロが驚く。無理もない、エーフや地球人に化けた宇宙人ならともかく、純粋な地球で地毛が染めた?と思う色合いだ。自分の髪色が茶色だった事もあり、私も初めて見た時は目を疑った。

 

「貴方は?」

 

「響、訳あって旅してる」

 

この世界の地球人の生態系(頭髪遺伝子)を知った当時の記憶に浸っていると、小さな再開の感動から現実に帰って来たピンク髪の女性が地味にキリシラコンビを背に隠しながら訪ねてきた。槍を握る力は僅かに増しており、警戒の色が薄っすらとなじみ出ている。

 

「響さんがアタシ達を助けてくれた命の恩人デェス!」

 

「……………そうなのね。私はマリア、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。この子達を救ってくれてありがとう」

 

「気にしないで、体が勝手に動いただけだし」

 

切歌の無垢な言葉を受け警戒を解いた【マリア】がお礼を言ってくる。けど私はその言葉を受け取れない。死のうとして突っ立ていたら偶々キリシラコンビが視界に入っただけだし、私自身が助けようとして助けた訳じゃ無い。

 

「今日はぜひ、家に泊まっていって。大したお礼もおもてなし出来ないけどもね」

 

「興味ないし、いらない」

 

「はい…………?」

 

「それじゃ」

 

簡潔に告げ背を向けて歩き出す。しかしその歩みは後ろから腕を掴まれた事で止まった。

 

「待って、しばらく泊っていって!」

 

「ダメならせめて今日だけでもお願いするデス!」

 

キリシラコンビがポケットに入れてた手を取ろうとしたからだ。

 

『随分と好かれているじゃねえか。ここまで言われたんだ、泊っていってやれよ』

 

そんな二人の様子にゼロが呟く、マリアはことの成り行きを見守っているのか何も言ってこない。どうやらこの場に私の味方はいないようだ。

 

「____はぁ、分かった」

 

「「やった(デェース)!」」

 

手と手を合わせ喜び合う二人の姿に何度目のため息を吐きながら体をフィーネへと向ける。静かに歩く私達をオレンジの空が見つめていた。

 


 

地球の軌道上。かつては人類が打ち上げた衛星やロケットの破片が散らばっていたが今やその姿は無く、代わりに様々な星の宇宙船がとどまっていた。色や形、使われている素材すら多種多様のこれら全てに乗っている者は皆、地球人が逃げ惑い滅びる姿を娯楽として楽しんでいる連中。

 

かつては日本と呼ばれていた土地の上空に浮かぶ一際巨大な宇宙船。その中の一室で種族問わず様々な星人が集っていた。彼らの視線の先には巨大なモニター、そこに映されていたのは動きずらそうに身体を動かしながらもジラースと戦闘を繰り広げるゼロの姿。

 

「おい、この宇宙人はどこのどいつだ!」

 

ゼロに指を刺しながら怒鳴り声をあげるのは【ナックル星人】。そんな彼に同意するかのように頷く者もいる。彼らにとって地球とは大した資源もなければ、化学力も無かった星。自分達の遊戯をする舞台の一つでしかなかったのだ。

 

つまりは大した敵もいないイージーな無双ゲーム。一方的に滅ぼす優越に浸っていたところに邪魔をするかのようにゼロが現れた。そんな彼に誰もが怒りを抱いてる。

 

「そ、それが未確認の種族のようでして…………」

 

「「「____ッ!?!?」」」

 

その空気に怯えながらも【ペダン星人】は報告する。内容を聞いた彼らは表情を怒りから驚愕へと変え、先程以上に張り詰めた空気感が場を支配した。

 

無理もないだろう、彼らが所属する組織はこの宇宙全体を支配していると言っても過言ではないほど強大で、その情報網には戦闘を得意とする種族はすべて乗っていると言っても良い。そんなデータバンクを駆使してもジラースと戦う巨人の情報は一切ない。これはかなり異常な事なのだ。

 

「考えられるのは別宇宙の存在」

 

「なに?」

 

「それもレベル3の…………」

 

ペダン星人の言葉を受け継ぐ形で新たにモニターに映し出された【チブル星人】が言葉を発する。彼から紡がれた言葉に反応し声を荒げるは【ザラブ星人】だった。

 

「バカな! マルチバースはレベル2でも越えられない!!」

 

「奴の目的はいったい…」

 

「___ふむ、試してみますか」

 

部屋の端に座る青い瞳が手刀でジラースを絶命させたゼロを見つめるのだった。

 


 

夕食までの待ち時間、私は適当な場所に腰を据え周りに聞こえないように注意を払いながらゼロと会話を広げていた。

 

『俺はとある力を使いこなすための修行中に強力な邪気を感じ、それが俺に因縁のあるものだった事もあり中断して調査をしていた。その調査の結果、邪気は小さな次元の穴の向こうに広がる別宇宙、それも可能性宇宙と呼ばれるレベル3のマルチバースから漏れ出ている事が分かったんだ』

 

ゼロと同化した時、腕に装着された銀色のブレスから聞こえるような気がするゼロの声。実際には脳裏に響くテレパシーなのだが……

 

『しっかしよ~、原因の元を判明してもここからが大変なんだよ。普通の別宇宙と言うと変かもしれないが、レベル2のマルチバースなら響の手についてるウルティメイトブレスの力でちょちょいのちょいで超えられるが、レベル3ともなるとそういう訳にはいかねぇ』

 

話題のないよはゼロがこちらに来るまでの過程。私に分かるように言葉を選んでいるのか、時々言葉に詰まりながらも説明を続けていくゼロ。

 

『過去には大地が生んだ赤き光の巨人・ウルトラマンガイアに選ばれた青年・高山我夢が一人に少年の願いによりレベル3のマルチバースを超え、戦いを繰り広げた事があったんだ』

 

スケールの大きな話に付いていくの背一杯だったが、気が付けばゼロの同族の様で違う戦士の話を始めた。曰くそこは私今いる世界とも前世の世界とも違い、ゼロの父親や【ガイア】を始めとする呼ばれる姿形が似て異なるウルトラマンがテレビの中のヒーロー番組として放映されている世界。

 

この世界では願いを叶える赤い球を巡った世界を救う少年少女の冒険譚であり、少年達の願いによってガイアと後二人のウルトラマンが駆け付けた。最終的に赤い球は最初に手にした少年により元から無かった事になったらしい。

 

『他にはウルトラマンメビウスが横浜で出会った不思議な赤い靴の少女によって、ガイアが行った宇宙とは違うウルトラマンが放送されている宇宙に行ったっけ』

 

続けて語られるのはゼロの故郷【ウルトラの星】の戦士、【ウルトラマンメビウス】が7人の勇者と呼ばれるウルトラマンに変身して地球を守った人達の【並行同位体】が共鳴現象で変身したウルトラマン達と共闘し、闇と戦う話。

 

『けど今回起きた次元の穴は偶発的に出来た物で、さっき話した二つの事件の様な越え方は参考にならなかったんだ。それに最近妙な動きがあり最悪、大きな戦いへと発展しそうな状況で今回の邪気の調査は打ち切りかと思っていたんだが、親父達の後押しもあって俺ひとりで調査を続けていたんだ』

 

時間にして30分弱、ゼロから流れてくるイメージ映像と共に語られる話。元の話から脱線している気がするが、意外に語り状なゼロの言葉に自然と聞き手に徹している私がいる。

 

『そうして調査を続けていたある日の事だった。突如として響、お前の波長を感じ取ったんだ。それからは俺らしくも無く、小さな針穴に糸を通すかのような細かい力の操作しお前にコンタクトを取ろうと色々試したんだぜ! 』

 

「そしてゼロは試合に勝って、勝負に負けた…」

 

『そうそう………って違う!』

 

「違わない。確かにゼロは私を目印にこっちの宇宙に来たのかもしれない。でもそのせいでゼロは思う存分、活動が出来ない。違う?」

 

『確かに響が言ってる事に違いはねぇ。けどな、俺達は種族的に元からこの星の環境と相性が悪い。だから正しい心を持ち勇敢な地球人と同化する事は少なくないいんだ。だからなんも問題ねぇ!』

 

「それならなおさら、私と同化した事はダメだった。実際に変なギブス……テクターギアだっけ? それが私の性でついてるんでしょ。だから私がゼロの足枷になってる」

 

『____お前、つくづく捻くれてるな』

 

きっと長い沈黙の中にゼロの様々な感情を飲み込んだのだろう。でもここでゼロが折れてくれなければ永遠に言い合いしていたのは目に見えている。

 

「そうかも。ホントごめん。色々とゼロの期待に答えられ無くて」

 

『響、勘違いしてるなら言っておくがな「皆、席についてね」って最後まで言わせろよ』

 

私らしくない言葉が無意識に紡がれた。たぶん、心のどこかでゼロの事を信頼しようとしている私がいる。そんな私の様子を感じ取ったのか、何かを伝えようとするゼロの言葉は優し気な少女の声によって妨げられた。

 

声の主へ視線を向ける。そこには古びた配膳台車を押す同年代ぐらいの少女【雪音クリス】の姿があった。ここフィーネででは一番の最年長の子供であり調理や警備など、大人同然の働きをしているそうだ。大らかな雰囲気を醸し出す彼女は湯けむりが上がる大皿を少年少女の前へと配膳を進めていく。

 

そんな彼女の後に続くように副菜などを乗せた皿とスプーン・フォークを置いていくのは、白髪の男性【ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス】。多くの人達から【ウェル博士】と親しまられる彼は宇宙人の侵略が始まるより以前は生物学を専攻する科学者だったようで現在は、フィーネに住まう子供達が栄養失調にならない献立を考えているそう。

 

「ひびっきさぁ~~~ん!!」

 

私を呼ぶ切歌の声、彼女のいる方向に視線を向けると調と共にこちらに駆けよって来る姿。中学生ぐらいの身長を持つ二人だが、その様は幼い子のようだ。

 

「私達の間に座って欲しい」

 

「お願いしますデス……」

 

彼女達の目的は夕食の席のようだ。先程までの笑みは失せ、不安げに私の手を握り上目遣いで見つめてる。子犬や兎を想起させる彼女達の瞳に内心[この目に私は勝てない]と良心が降伏したのを察し、ゆっくりと息を吐く。

 

「____分かった」

 

その一言を受け声には出さないけど嬉しそうに互いの手を握りはしゃぐキリシラコンビ。その純粋無垢な姿が今の私には眩しすぎて、逃げるようにクリス達の元へと赴き配膳の手伝いを始める。

 

「なんだよ響照れやがって、調と切歌からモテモテじゃん」

 

そんな私の姿を横目で見ていたのだろう、絶妙に勘違いしてるクリスの言葉に溜息がこぼれる。先程までの年下に怖がれ無いように拾った書籍で見たおしとやかな性格を演じてたのと違い、素の勝気な言葉をこっちに投げかけた。

 

「別に………」

 

フィーネにはいない同年代に対しちょっと羽目を外してる彼女、そんなクリスへの言葉は素っ気ない突き放すような言葉。それを不快と感じず、照れ隠しと受け取った彼女は意味ありげな笑みを向けてくる。

 

「響君、スプーンを持って行ってくれ」

 

「__ん」

 

クリスの様子を横目に配膳を進めているとウェルに頼まれスプーンを子供達の前に置いていく。その光景に男子学生時代のあの頃の記憶がふと蘇る。懐かしい記憶から逃れるように心を殺し無心で配り終え、約束通りキリシラコンビの間の席へと座った。

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

「_____いただきます」

 

こうやって掌を合わせ食前の挨拶をするのは何時ぶりなんだろう…………? 今日は心を乱される一日だ。

 

『へぇ~~、カレーか…! タイガの奴、元気にやってるかな~? ___っあ!響、残すなよ!! 俺はもうチビトラマンと呼ばれたくないからな!』

 

私と同じく過去に浸ってたゼロが急に声を荒げる。相当【チビトラマン】の蔑称?が心に応えているのだう。私の様に地球人ベースのエーフに取ってはゼロは大きい方なんだけど、300メートルを優に超える宇宙忍者がいる彼らの感覚ではゼロは小柄な方なのかも?

 

贅沢に好き嫌いを許された僕の頃と違い、今日を繋ぐため食料どころか水にあり着くのが難しい私が生まれたこの時代で食事残す事はありつけなかった者達への冒涜になるから無理でも食べきるから、ゼロがチビトラマンと呼ばれはしないだろう。たぶん………

 

「ジーーーーーーーィ…………」

 

さて、いい加減触れよう。先程から調がこちらを見つめてくる。あと実際に【ジー】ってセルフ効果音言うやつを始めてみた。

 

「響、今日の付け合わせは調が作ったんだよ」

 

「__なるほど」

 

困惑している私に正面に座るクリスが教えてくれた。調は自分が作った分の感想が欲しいと言うところだろう。そう言う訳でカレーより先に酢の物を口にする。

 

「どう……?」

 

「__うん、おいしい」

 

「良かったデスね、調!」

 

不安げに見つめてくる調に感想を伝えると切歌と共に笑みを浮かべる。 …………私が最後に笑ったのは何時だったかな?

 

あと、マリアとウェルはあり得ない者を見たかのような視線を向けないで。この付け合わせ、お酢が入りすぎてるのは分かってるから、クリスも頷いてるし…………

 

「…? なんでマリアもクリスも響さんを見つめてるの?」

 

「ウェル博士もどうしたデス?」

 

「「「なんでもないよ/わ/です」」」

 

「ほら、キリちゃんも食べよ」

 

それにしても、この子達に好かれちゃったな… ホント、やっかいだ。

 


 

夕食も食べ終え月が傾き始めた頃、キリシラコンビや他の子供が夢の中へ旅立ったのを他所に夜風に当たりに外へと出ていた。

 

「ふぅ~… あいつら、元気すぎ」

 

現在の情勢など関係ないと前世の記憶通り、下手をすればそれ以上にはしゃぐ子供達の相手に疲労を感じていた。

 

『良いじゃねぇか、生きる希望を捨てない良い目をしていたぜ!』

 

(___生きる希望)

「私には無いな………」

 

「なにがねぇんだよ」

 

誰に語り掛けた訳でもない小さな呟き。その言葉に答える影が一つ。後ろに振り返るとそこには声の主であるクリスがハンドガンやスナイパーライフルを武装して立っており、そのそばには車いすを押すマリアの姿が。

 

「クリス、それにマリアと確か…… ナスターシャ」

 

「__えぇ」

 

車いすに乗っているのはこのフィーネで一番偉い人【ナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤ】が座っている。大人から【ナスターシャ教授】』と子供からは【マム】と慕われる彼女の右目には眼帯をしてある。と言うのもナスターシャは元々アメリカの研究所で働いていたらしく、そこで怪獣に襲われた。

 

その時の怪我で下半身は動かなくなり、右目を失明すると言う致命傷だけで済んだ。その後は色々あったようで日本へと辿り着き、後にフィーネと呼ばれる集落となる場所で行き場を失った子供達を保護し始めたとのこと。その活動に賛同した人達が集まって今のフィーネが出来上がった。

 

「それで何が無いよ響?」

 

「___切歌達の元気」

 

「あぁ~~、あいつらは特別だ。まだ今の世界をよく知らないチビ達だからな」

 

「そんな事はありません」

 

人差し指で軽く髪を書きながらクリスが呟く。その言葉をナスターシャは静かに、されど力強く否定した。

 

「確かに調達はまだ、現実をよく見れてないところもあります。 ですが彼女達のあの無邪気な笑顔こそが未来その物なんです。それはデフォマンもエーフも変わりありません」

 

「___マム」

 

「そしてそれはあなた達だってそうなのですよ」

 

「いったいどういう事だよ教授?」

 

「あなた達一人一人が、運命を変える力を持っています。たとえ一人では弱くとも、一人ではちっぽけでも、諦めなければからなず未来は良い方向へと向かうはずです。私はそれを信じていますから」

 

ナスターシャの言葉を聞いた私達は何も言えずに固まる。夢物語、時代錯誤の語り、そう言った言葉で簡単には切り捨てれないナニかがそこにあったからだ。

 

「さてマリア、風にも十分に当たりましたし戻りましょう」

 

「はい」

 

私達の間に何とも言えない空気が流れるが、それを振り払うように少し芝居がかった声を出すナスターシャ。

 

「ではクリス、見張りの方をよろしくお願いしますね」

 

「__あぁ!」

 

「それでは響さん、おやすみなさい」

 

「おやすみなさい」

 

「おやすみなさい………」

 

ナスターシャとマリアの言葉に返答する私。おやすみなさいとか旅を始めてから初めて使った…

 

(それにしても、諦めないか………)

「なんか、ゼロみたいだね」

 

『__どこの宇宙にも、どんな絶望に撃ち負けず、最後まで諦めず立ち向かう連中はいるさ。そしてそんな奴らだけが、限界を超えた先に希望と言う光を詰めるのさ』

 

「ふ~~~ん………」

 

まるで実体験の様な言葉。いや、もしかしたら戦いの中でゼロはそういう場面に何度も遭遇したのかも知れない。だからなのだろう、なんとなくクリスが上った見晴らし台に跳び乗ったのは……

 

「うぉ! ビックリさせんなよ… て言うか、エーフってこの高さをジャンプで登れるのかよ…」

 

「まあね…」

 

跳び乗った衝撃で僅かに揺れる見晴らし台。その高さは地上から約10メートルぐらいだろうか? これぐらいの高さなら、ゼロと同化した影響で身体能力が上がって無くても優に跳び乗れる。

 

「___なぁ、響」

 

「___なに?」

 

「明日には………」

 

「ここを出るつもり」

 

「そうか………」

 

双眼鏡を覗き塀の先を見つめるクリスの言葉に、元から持つ常人離れな視力と暗闇の中でも見通せる目で当たらりを見渡しながら返す。

 

「寂しくなるな。 _____あたし響の事、嫌いじゃねぇよ」

 

「……ありがと」

 

「それにガキ達も…… だからさ、ここ(フィーネ)で暮らさないか? 雨風だってしのげるし」

 

「ごめん、気持ちだけ貰っとく」

 

「「…………」」

 

夜風と虫の鳴き声が周囲に響く中、月と星の輝きが私達を照らす。___こんなに他人のそばが温かいと思ったのは、何時ぶりだろうか…………

 


 

翌日の早朝、ソレはやって来た___

 

「ギャオォーーーン!」

 

空から隕石の如く落ちてきた青い球は地面を僅かに窪ませ、天高く舞い上がった土煙の中でその正体を現す。尻尾を揺らし、刺々した黒い体表が日の光反射、巨体を支える強靭な足とは真逆のひ弱そうな腕。

 

『奴はベムラー!』

 

ゼロの宇宙では【宇宙の悪魔】とも恐れられた【宇宙怪獣 ベムラー】が口から放つ青白い熱戦、【ペイル熱線】が集落を襲う。あちこちで火の手が上がる中、重火器を持つクリス達がベムラーに向けて発砲するも強固な皮膚に弾かれ効果が無し。

 

「うぇぇ~~~~ん!」

 

「大丈夫よ、私に捕まりなさい」

 

重火器を持たぬ大人達は子供達や身体が不自由な連中の避難を進める。それでもあちこちから嗚咽を零し蹲る子供の声は途絶える事は無く、ゼロと同化した事であがった身体能力をフルに使い救助活動に加わっているが効果は雀の涙程度。

 

「___っきゃ!」

 

「うわぁぁああああ~~ん!!」

 

「ごわ゙い゙よ゙ぉ゙ぉ゙~~お゙お゙っ!」

 

(全然手が足りない)

 

「響さん、そっちには怪獣が!」

 

フィーネの集落の外にある廃墟が爆発共に周囲に瓦礫の雨を降らす中、調の声を背にベムラーに向けて駆ける。そのまま人気の無い所に身を隠し、腕のウルティメイトブレスを通じて繋がってるゼロに話しかけた。

 

「………ねぇ、ゼロになればあいつ倒せる?」

 

『それは響しだいだぜ』

 

「___希望とか、諦めないとか、良く分からない …………けど、この暖かい場所を守りたい。この思いじゃ…… ダメ?」

 

「っへへ、上等だ! 守ろうぜ、俺達でこの場所を!!」

 

「うん」

 

左腕を前方へ一気に伸ばす。するとブレスのクリスタルから光が放たれゼロアイが浮かび上がって来た。ブレスの上で浮かび、僅かに回転しているソレを右手で掴み目元へ。放たれたエネルギーにより私の体は瞬く間に光へと変わった。身体がゼロへと変化する中、周囲に舞う2本の刃が頭部に装着され巨大化していく。

 


 

『シェッア!』

 

「ギャオォーーーン!?」

 

ベムラーの口元が熱を帯び、今まさに怯える子供達を背にするマリア達へと放たれようとしていたその時、上空より出現した光がベムラーを蹴り飛ばし着地。大地を響かせながら光のベールが解け、その姿を現す。

 

上半身は青を下半身は赤を基調としたツートンカラーの皮膚に走る銀色のライン、肩から胸にはプロテクターが装着されており、溝内より少し上には青く輝くクリスタル【カラータイマー】が日の光を背にするゼロの正面を照らす。

 

どことなく人の様な顔つきしており、一見鉄仮面の様に変化がなさそうな頭部。黄色に輝く瞳は鋭く、それでいて彼の内に秘める優しの様に温かな色を浮かべており、額のクリスタル【ビームランプ】が緑に輝く。頭部に装着された宇宙ブーメラン【ゼロスラッガー】が日の光を反射し、左腕のウルティメイトブレスが神秘の輝きを放つ。

 

「_____昨日の………巨人?」

 

「昨日の鎧は来てないですけど、足元は同じデス!」

 

立ち上がりベムラーへと振り返るその背を見つめながら調と切歌が言葉を零す。彼女達の脳裏に浮かぶテクターギアを装着し戦うゼロ姿。

 

「アレが…………」

 

「昨日現れた巨人」

 

「宇宙人のくせに、温かい感じがしやがる」

 

「あの佇まい… 話に聞いた通りまさしく英雄の様ですね」

 

『俺はゼロ、ウルトラマンゼロだ!』

 

腰を落とし左手は拳を握りしめ腰へ、右手は軽く開きベムラーへ向けて伸ばしファイティングポーズを構えた。その姿を見つめるマリア達が三者三様の反応を示す中、堂々と名乗りを上げる。その声が聞こえたのかは定かではないが切歌達よりも小さな子供が声を張った。

 

「頑張れ~~~!」

 

『シェア!』

 

次々と声援を上げる子供達の声を背にゼロは大地を踏みしめ一気に駆ける。ベムラーの胴体を掴み飛翔。しかしながら暴れるベムラーの抵抗により高度は徐々に下がっていき、やがて地面を滑りながら放たれた頭突きに怯んだゼロはベムラーから手を放して後退。それでも当初の目的通りにフィーネの中から追い出す事は成功していた。

 

『行くぜ!』

 

周囲を気にせず、廃墟軍の中でぶつかる両者。本能に身を任せ頭突きを始めとした打撃を繰り出すベムラー。対するゼロは放たれる一撃一撃を的確に捌いていきカウンターを決めていく。

 

ただでさえ戦いの才能を持つゼロが【宇宙憲法】と呼ばれる格闘技の心得を持つ事で文字通り、最強と呼ばれる領域へと達した。その彼の拳が理不尽を強いられる者達を守るために宇宙を超えて振るわれるのだ。並の相手など敵ではない。

 

「ギャオォーーーン!」

 

腹部に正拳突きを大きく後退したベムラー。開いた距離を利用し口からペイル熱線を放つが、ゼロが展開した半透明の障壁【ウルトラゼロディフェンサー】によって容易く防ぎ切った。自身の十八番を防がれたショックで目を大きく見開き固まるベムラー。

 

『これで終わりだ! ワイドゼロショット!』

 

その大きな隙を見逃すはずなく、今度はゼロ十八番の必殺技光線が放てる!

拳を握りしめた右手を腰に当て、指先を揃えた左手を地面と水平になるように真横へピンと伸ばす。全身にほとばしる光のエネルギーを腕に溜め、そのまま身体の右側でL字に組む事で放たれるオレンジ色の光線。腕全体から放たれる広範囲の一撃はベムラーの全身を貫き爆散!

 

「…………終わった、デスか?」

 

「____シェア!」

 

「「「やった~~~ッ!」」」

 

戦いを見守っていた子供達に頷き澄み切った青空へと両腕を広げ跳び去って行くゼロ。その姿が見なくなるまで見つめながらも喜びの声を荒げる者達。その中には切歌達の姿もあった。

 

「…………」

 

「どうしたの調ちゃん?」

 

当然そこには調の姿もあったのだが暗い表情を浮かべ俯いていた。そんな彼女の様子に隣で立っていたクリスが気づき声を掛ける。

 

「響さん…………」

 

「っあ! 忘れていたわ……………」

 

弱々しく紡がれた人の名。その言葉にマリアは自身の額に手を乗せ呟く。その声に先程まで歓喜の声が一斉に止み、不安げな言葉が辺りかしこで小さく零れ始めた。そんな空気を気にせずにマリアに言葉を投げかける者がいた。

 

「そうなんだマリア」

 

「えぇ…… いったい何処に行ったのかしら?」

 

「いやいや、マリア後ろ!後ろ!」

 

「なによ。へ…………?」

 

興味なさげに呟かれた問いに、後悔と心配の念が籠った言葉を発するマリア。そんなマリアに猫を被るのも忘れマリアの売りを指さし名が声を荒げるクリス。その様子に首をかしげながらも振り向いた先にいた人物に思わず狼狽えたマリア。

 

そこにいたのは茶色の髪を靡かせ、どこか近寄りがたい薄幸のオーラを放つ人物。そのスレンダーな身体は骨が浮かび上がっており、栄養が足りてない事を窺える。だが視線は鋭く、暗いグレーのパーカーも相まって他者との関わりを拒絶しているようにも見えなくはない。

 

しかし一方で左腕には日の光を反射して白銀に輝くブレスが装着されており、中央のクリスタルが青く輝いている。その曇りなき光は少女の中に眠る他者を労わる心その物であるかの様に。この少女こそが響だ。

 

「響さん! 大丈夫デスか?」

 

「大丈夫」

 

「全く、心配かけやがって!」

 

勢いよく抱き着いてきたキリシラコンビを優しく受け止める。一方クリスは攻め立てるように言葉を零すが、その表情は優し気な笑みを浮かべていた。そんな彼女達の様子に改めて生き残った喜びを分かち合う周囲に人々。そしてその様子を少し離れた所でナスターシャが穏やかな表情で見つめていた。

 


 

なんとか生活できるレベルまで復興を終え、少し遅めの朝食も食べ終えた響がフィーネの門に立っていた。今だ周囲を漂う何かが焦げた匂いを感じながら、振り返り後ろに集まった人々に視線を向けた響。

 

「世話になった」

 

「いえ、こちらこそ礼をするつもりが仮が増えただけだわよ。ほんと助かったわ、ありがとう」

 

響の礼に感謝を重ねるマリア。彼女から延ばされた手を握り握手に応じる響に今度はウェルとクリスが言葉を掛ける。

 

「私としてはエーフの血が欲しい所ではありますが…」

 

「おいこら博士!!」

 

「冗談ですよ。今度来た時はあなたの英雄談でも聞かせてください」

 

「こいつはぶれねぇな…… 響、まぁその、なんだ……… 元気でやって行けよ!」

 

「あぁ」

 

瞳にわずかに涙を溜め、猫を被る事無く活発な笑みを浮かべるクリス。その言葉に短く、そして力強く頷た。そんな響の前にマリア達と入れ替わるようにキリシラコンビがやって来る。

 

「「ぅ、うわぁぁああああ~~~~~~~んっ!」」

 

「切歌、調___」

 

大粒の涙を流しながら響へと抱き着く二人。いきなり抱き着いてきた彼女達を受け止めた響はなんて声を掛けて良いのか分からず、ただただ頬をかき困惑していた。そんな彼女に向け二人は言葉を掛ける。

 

「行かないで響さん………!」

 

「他は知らないデスけど、ここはエーフを受け入れる。ですからここに、フィーネに残ってください! お願いデス_____」

 

「……………」

 

嗚咽混じりに紡がれた思い。その声を聞き響は只々立ち尽くし、言葉を探す。その様子に誰も水を差さない。いや、周囲に集まった人々も心のどこかで彼女に残って欲しいと思っているのだ。そこにナスターシャが声を掛ける。

 

「泣くのはお止めなさい!」

 

「「……………マム」」

 

「__響さん、どうか貴方の旅にお二人を連れて行ってあげてください」

 

悲しむ二人の視線を受け、ナスターシャが響に頭を下げた。そして紡がれた言葉、それにより周囲の人々が驚き、あちこちで驚愕の言葉が口々に囁かれる。

 

「おい教授」

 

「流石にそれは………!」

 

「____確かに、いい機会かもしれませんね」

 

「博士まで!?」

 

考え直すようにナスターシャに近寄るクリスとマリアであったが、意外なところからの賛同の声。その声の主はウェル、顎に手を添え事の成り行きを見守っている。一方の本に達はと言うと…

 

「響さんと一緒に旅デスか?」

 

「そうすれば、これからも響さんと一緒に居られる……っ!」

 

互いの手を握りしめ、先程までの涙は引き笑みを浮かべていた。

 

「まだ私は良いと……」

 

「なんでデスか!? 一人より三人で旅をした方が楽しいデスよ!」

 

「切歌達が思ってるより、詰まらないよ」

 

「それでも、響さんと一緒が良い」

 

「切歌、調」

 

「「一緒!一緒!一緒!………」」

 

二人の同行を阻止せんとする響であったが、既に切歌と調は一緒に行く気の様で右腕に切歌、左腕に調が抱き着いて態度と言葉で離れないと宣言。そんな彼女達の様に周りは二人の意思を尊重し、響は静かに溜息を吐く。

 

「はぁ~~~~」

 

『あの教授。切歌と調の目を見てから、こうなる事を予想してたんだろう』

 

(この子達といると調子が狂う…)

 

荷造りの為に響の元を去ったキリシラコンビの背中を見つめ、額に手を当て再び溜息を零す響。しかしその口元は本人も周囲に人々も気が付かない程、小さくやわらかな微笑みを浮かべていた。

 

(___でも悪くないかな)

 

これまで人との関わりを極端に避けて来た響にとって切歌と調、そして集落フィーネの人々との交流は大きな変化の切っ掛けとなった。その事を本人が自覚するのはすべてが終わった事の話。




ウルトラマンゼロ


光の国の若き最強戦士と言われるほどの実力を持つ戦士。父のウルトラセブン譲りの光線技や武器に、師匠のウルトラマンレオとその弟であるアストラから鍛えられた宇宙憲法で戦う。

時を操る輝きの力を己のモノにする特訓の最中に感じ取った因縁の力を追い、可能性宇宙の先にいた本作のもう一人の主人公・響と同化。しかし後に戦う事となる究極生命体とは違い無理やり可能性宇宙を超えた結果、響の心理状態に左右される事に。もし戦士から託された力を使うには…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。