Aクラスのリーダーが有能だから何も起こらないんだなと思いながら迎えた6日目。
やはり6日間も無人島にいると、慣れというのが生じてしまうようで、皆の足取りが初日よりも確実に良くなっている。
そのおかげで、日に日に取れる食料が多くなっているのが目に見えて分かる。
日が暮れて夜になると、無人島生活最後の夕飯となる。
今までは女子が炊事をやっていたが、今日は俺がすることになっている。
食材を準備していると、神室がこちらに近づいてくる。
「ひとりじゃ大変そうだから手伝うけど」
(あのとげとげしい神室からこんな優しい言葉が出てくるとは...)
そう思って顔を上げると、神室が期待の眼差しでこちらを見ていた。
それを見て全てを察する。
(前のシフォンケーキを作ったときに懐柔してしまったのか...。それで、今回もおいしいのが出てくると思って、少しでも多く貰えるように手伝うなんて言ったのか...ちょっと感動した俺が馬鹿だった)
「すまんが、今回は他の人と変わらないと思うぞ」
「チッ」
あからさまに舌打ちをした神室は、いつも通りに戻ってどこかへ行ってしまった。
(今度何か作ってあげよ...)
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「おいしい~」
「このそうめんかぼちゃと魚を使った汁物が体に染みる・・・・・・」
「新感覚な感じがまたいい」
どうやら、謎にいっぱいあったそうめんかぼちゃを使って、魚介類からとったダシに入れた汁物は好評なようだ。
(遠くから睨んでくる神室は無視するとしよう)
「黒瀬くんって料理できるんだね」
「私もそれ思った」
「今度、私に料理教えてー」
「私もお願いー」
料理ができるのが意外だったのか、周りに女子が集まってくる。
(この状況をハーレムというのか。とりあえずこの状況から抜け出したい)
そんな中、俺に救世主ではなく、爆弾魔がやって来る。
「黒瀬は私を一発(黒瀬が作ったシフォンケーキ)で堕としたんだから、当然よ」
あまりにも勘違いが起こりそうな言葉をこちらに来た神室が言う。
(言葉は合ってるかもしれないけど、知らないやつが聞いたら確実に違う方を思い浮かべるから...。それに、顔を少し赤らめて言うんじゃない...)
神室の言葉に反応した女子と男子。
女子からは羨ましいなーという声が飛んでくるが、男子からは当たり前のように殺意が飛んでくる。
「つんつんな神室が顔を赤らめてるぞ!」
「あの神室ちゃんを堕としただと・・・・・・そんなことがあっていいわけがない!」
「そうだ!そうだ!俺の推しを取るなー!」
(やばい!やばい!神室ファンがいるとは思っていたが、ここまでとは...!ここは神室に誤解を解いてもらわないと)
そう思って神室にアイコンタクトで頼んでみる。
意味が分かったのか首を縦に振る。
「私は(黒瀬が作った料理に)ぞっこんしてるから・・・・・・」
段々と声量が小さくなっていったせいで、感じが恋する乙女のようになっている。
(今日の神室はポンコツすぎる...。いや、俺があの時に手伝わせていたら、こんなことに...いや、なってる、なっちゃうな...)
頭を抱えていると、数人の男子がこちらによって来る。
「貴様をここで断罪する!」
「俺の推しを良くも!」
「ちなみに黒瀬は昨日、一之瀬を押し倒しやがったぞー」
新たな爆弾を橋本に投下される。そのせいで、更に殺意が膨れ上がる。
「我らの高嶺の花が貴様ごときに押し倒されただと!ぶ○してやる!お前ら、さっさと片付けるぞ!」
「「「オオォーー!!」」」
こちらに男子たちが血相を変えて来る。
それはまるで、鬼が人間を追いかけるよう。
俺はそんな奴らに捕まりたくないので、森の中に入って、点呼が始まるまで逃げることにした。
一方その頃、残っている女子たちは・・・・・・
「神室さんも案外乙女ね〜」
「そうそう、クラスのほとんどがいる中で、ぞっこんなんて言えないわよ」
それらを聞いて神室は首を傾げる。
「私が言っていたのは料理のこと。黒瀬の料理について話していたから、省いたけど」
「そうだったんだ・・・・・・」
「そうよね・・・・・・あたしらがバカだったよ」
神室の解答にこの場にいた人は納得するが、同時にこうも思う。
(((それにしても、重要な部分を抜きすぎなんじゃ...)))
「一応確認するけど、黒瀬くんのことはどう思ってる?」
1人の女子が気になったのか、神室に質問をする。
神室は少し考える仕草をして答える。
「人使いが荒いけど、それに見合った報酬が貰えるから悪い人間とは思ってない。性格を直したら、満点なんじゃない?」
「確かに黒瀬くんは性格がね・・・・・・」
「ミステリアスすぎると言うか・・・・・・」
皆もどうやら思い当たる節があるようで、首を縦に振っている。
「俺がもし女だったら、黒瀬に告白してるぜ」
黒瀬を追いかけずに、残っていた橋本が話に入ってくる。
「あんたの場合、1番Aクラスに行きそうな人の近くに居たいだけでしょ」
「バレちまったか」
「バレバレよ」
今の神室と橋本のやり取りを見ていた女子たちは、
「神室さんってもしかして!」
「橋本くんが好きだったりして!」
「それはない」
橋本と同じく残っていた里中が一蹴する。それに疑問を抱く女子たち。
「神室の目を見てみれば分かる」
「あ、確かに」
「面倒くさそうにしてる・・・・・・」
里中の言葉で納得したのであった。
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点呼の時間となり拠点へと戻ると、先生がいるせいで睨むことしか出来ない男子が俺を見ている。
そして点呼が終わり、また森の中に入る。
(ここで捕まるのはごめんだし、リーダー当ての方もしないと!)
そう思って走っていると、ポケットに入れていた無線機が鳴る。
(この無線機は、龍園に持たされたもので情報交換の時に使うとか)
とりあえず、無線機に出ることにした。
『今から落ち合いたいんだが、お前らが所有しているスポットの前でいいか?』
「別にどこでもいいが」
『なら決まりだ。早く来いよ』
はっきりと場所を聞いていないが、スポットがあるところを全て行けばいいと思い、1つずつまわっていく。
だいたい4つ目のスポット(森の中)となったところで、龍園を発見する。
「久しぶりだな」
「そうだな。それより、情報はあるんだろうな?」
龍園の鋭い眼差しが俺を見てくる。
「正直に言うと忘れていた。今から探るところだ」
これに関しては本当で、この6日間は他クラスの情報をあまり入手していない。
「なら、情報は提供しない。せいぜい残りの時間で頑張るだな」
そう言って、森の中に龍園は消えていった。
(見るとしたら、Bのみだな。Cはあいつで確定だし、Dは恐らくCのスパイが少し見えたから、あいつがリーダーをやるはずだ。Dに関しては、少し心配だが大丈夫だろう)
リーダーを当てるためにBクラスの拠点へと行く。
そして、全員が就寝したころにリーダーを探す。
(慎重になって、一之瀬と神崎がやることはないと言える。そうなると、1番怪しいのは、柴田か白波のどちらかだ。そこから、ハンモックで寝ている柴田を除外すれば、白波がリーダーの可能性が高い。とりあえず、テントに侵入するか)
こっそりとテントの中に入り、白波の近くまで行って、ゆっくりと白波のポケットをしゃがんで探る。
すると、四角い形のようなものを探し当てる。
(感触的にキーカードだな。名前の部分の凹凸があって、シラナミチサトと書いてある。一応言っておくが、服の上からだからな。流石にポケットに手を突っ込んで、見つかりたくない)
リーダーが分かったので出ようとしたら、誰かに腰の辺りを抱きつかれる。
(これは終わったパターンかな...?)
おそるおそる誰が抱きついてきたのか確認すると、七詩だった。
規則正しい息が聞こえるので、恐らく寝ている。
「・・・・・・私初めてだから・・・・・・ゆっくりー・・・・・・」
(どんな夢か知らないけど、危ない臭いが...)
「・・・・・・怖いー・・・・・・そんなに速いと・・・・・・」
(何かに乗っている?少し気になるな)
「・・・・・・私の王子様・・・・・・私の初恋・・・・・・」
今の言葉で何を夢見ていたのか、俺はだいたい把握する。
(王子と恋、なるほどね。視点を変えたら、最後の王子と初恋以外の言っている内容も理解できるし)
俺はゆっくりと七詩を引き離して、頭を撫でてあげる。
「王子様に思いが届くといいな」
そう言い残して、Bクラスの拠点を後にした。
黒瀬がBクラスの拠点を離れてから少しして、七詩が目を覚ます。
「誰かに撫でられたような・・・・・・それより明日に備えて寝ないと」
そう独り言を言って、もう一度眠りについた。
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俺はAクラスの拠点に戻って、お願いをするために鬼頭を起こす。
「鬼頭、起きてるか?」
「どうかしたのか?」
どうやら起きていたようで、すぐに返事が来た。
「お前に頼みたいことがある」
「俺にできることがあるのなら、力を貸そう」
(鬼頭なら運動系はほとんど出来るから、かなりできることは多いだろうな)
「今から説明する通りに動いてくれ────」
それから、日が昇る前に俺は、体調不良によってリタイアした。