リタイアして船の部屋へと戻った俺は、シャワーを浴びて新しい服に着替える。
そして1度睡眠を取り、正午の少し前に坂柳のいる部屋へと行く。
扉を開けると、坂柳がこちらを向く。
「あら、帰りが早いですね」
「今回は俺がリーダーをしていたからな」
「影から操ってそうな人の口からリーダーという言葉を聞いて、少しびっくりしてます」
坂柳はこちらに向かって微笑んでくるが、びっくりしている感じでは無い。
「今回あなたがリーダーをしたということは、こちらにいい影響が出るでしょう」
「リーダー格が2人いる、だが争っているわけではなく共存している。それだけで少しはプラスになるか」
「今回みたいに私が参加出来ない場合でも、私と同じぐらいの能力を持つあなたなら代わりになりますからね。ですがデメリットとして、派閥内で分裂する可能性が出てきます」
それを聞いて確かにと言う。
(坂柳の言っている分裂の可能性に関しては有り得る話である。
それは元々坂柳も葛城もリーダーに相応しくないと思っている人たちが俺のところに来るということは、坂柳派に入るということ。そして俺がリーダーをする回数はそこまでないと思われるので、坂柳がリーダーになることが多いはずだ。
そうなれば、俺のところに来たやつが派閥内でいがみ合いをしたり、最悪の場合クラスポイントが減ってしまうことも考えられる。どうしたものか...)
少し悩んでいると坂柳にあることを提案される。
「あなたの派閥を作るのはどうでしょう?そうすれば、分裂の可能性はなくなります」
「いやそれだと・・・・・・」
「それに、あなたは私と敵対する気はないでしょうし、私もあなたに敵対する気はありません」
それを言われて理解する。
「派閥は分かれていてもそれは表面上のみ、ということか」
「そういうことです。私は派閥内の人数を増やしたい訳でなく、葛城くんところの人数が増えるのを防ぎたいだけなので」
どうやら葛城派の人数が増えることを防ぎたいだけのようで、俺が派閥を作ったとしてもお咎めはなしのようだ。
「それなら作った方が良さそうだな」
「そう言ってくれて嬉しいです」
そう言って坂柳は微笑んでくる。
俺はそれを横目で流して、ドアノブに手をかける。
「そろそろ結果発表の時間だろう。俺は甲板に行くが来るか?」
「ご一緒します」
坂柳は杖をつきながらこちらに来る。
俺はそんな坂柳の速度に合わせて、歩き始める。
甲板に出て無人島の方を見ると、無人島試験を終えた生徒たちが砂浜に集まっていた。
キィン、と拡声器のスイッチが入る音が砂浜に走ると、真嶋先生が姿を現す。
「そのままリラックスしていて構わない。既に試験は終了している。今は夏休みの1部のようなものだ、つかの間ではあるが自由にしていて構わない」
それを聞いた生徒たちは少し気が楽になっただが、未だに緊張が走っている。
「この1週間、我々教員はじっくりと君たちの特別試験への取り組みうぃ見せてもらった。真正面から試験に挑んだ者。工夫し試験に挑んだ者。様々だったが、総じて素晴らしい試験結果だったと思っている。ご苦労だった」
真嶋先生からの褒め言葉に安堵が漏れる生徒たち。
「ではこれより、端的にではあるが特別試験の結果を発表をしたいと思う。なお、結果に関する質問は一切受け付けていない。自分たちで結果を受け止め、分析し次の試験へと活かしてもらいたい」
「ではこれより特別試験の順位を発表する────最下位はCクラスの0ポイント」
それを聞いた龍園は目を見開いている。
俺はそれを見て、
「ダミーを残さなかったのが仇となったな」
と言う。
そこに俺が言ったのを聞いた坂柳が質問してくる。
「ダミーですか?」
「ああ。だがその前に、結果発表を聞いてからその問いに答える」
「分かりました。結果発表が終わったあとに色々と聞かせてもらいます」
色々聞くのかよと思いながら、視線を真嶋先生に向ける。
「続いて3位はBクラスの90ポイント。2位はDクラスの105ポイントだ」
一拍あけて1位のクラスの結果を言う。
「そして1位のAクラスは740ポイントとなった。以上で結果発表を終わる」
(残っているポイントは280ポイント、スポット20ヶ所を17回更新で、340ポイント、B,C,Dのリーダーを当てて150ポイント。計770ポイント。そこにリタイア分を抜いて、740ポイント。
正直Dクラスのリーダーが綾小路であることは直感だったが、当たっていて良かった...)
予想通りに動いたことに安堵のため息をつく。
「では聞かせてもらいましょうか」
そう言ってにっこりしているが、内心笑ってなさそうで少し怖い。
「ああ。まず龍園だが、あいつとは契約を結んだんだ。その内容は、Cクラスの100ポイントを物資としてこちらに譲渡、毎月Aクラスが龍園に40万ポイントを払う、そしてAクラスとCクラスで情報交換というのだ。そこでCクラスはポイントを吐き出す行為をすると仮定して考えたら、遊ぶという可能性が1番高いと思い、全員リタイアというのが思いついた」
静かに聞いている坂柳を横目で見て、話を続ける。
「物資が届いた時、龍園から無線機を貰い、そこで龍園と接触した時に誰が居たのか確認することにした。その後他クラスの偵察に行くと、Cクラスのスパイがいた」
「スパイですか・・・・・・龍園くんらしいですね」
「そうだな。俺はそいつらは利用させてもらい、最終日の前日、龍園から連絡を貰い接触した。その時に誰もいなかったので龍園がリーダーというのが分かった」
それを聞いた坂柳は少し考え、答えを導き出す。
「そういうことですか・・・・・・ダミーについては分かりました。では次にAクラスが何故こんなにポイントが取れたのか聞かせてください」
俺はこちらがおそらく本題だと思う。
「単純に契約によって残った270ポイントスポットを大量に占領した。そして、Cクラスのスパイによって俺と同じようにリーダーを変えたDクラス、CクラスとBクラスのリーダーを当てて740ポイントというわけだ」
「かなり気になるところはありますが、こんなにポイントが取れたことは凄いことです。もし黒瀬くんがDクラスにいたら良い敵となったことでしょう」
誰かに褒められることが久しぶりだったので、少し照れてしまう。
それを見た坂柳が、
「あなたのそんな顔を見れて良かったです」
と言われたので、首を横に振っていつも通りに戻す。
坂柳はじっと1連の動作を見て、何かの答えにたどり着いたのかあることを聞いてくる。
「あなたはもしかして、ホワイトルーム出身の方ですか?」
俺はその単語に僅かに反応する。
「それをどこで聞いた?」
「先に答えてください。そしたら答えます」
それを聞いた俺は、この問いは坂柳にとって重要であることに気付く。
「俺はホワイトルームを知っているが、出身では無い」
「そうですか・・・・・・ということは生まれつきの────」
「それでもない。俺は天才として産まれることのできなかった不良品だ」
俺は坂柳の言葉を遮り、自分のことを言う。この手の話はあまり好きではない。
「この話はもう終わりだ。これ以上言いたくもない」
「分かりました」
坂柳もこちらの意を感じ取ってくれたようだ。といっても、感じ取ってもらわないと困るんだがな。
「めんどくさいことが起こりそうだから部屋に戻る」
そう言って俺は船の中に戻る。
(おそらく坂柳は何らかの理由があって、ホワイトルーム出身ではないかと俺を疑った。その理由は俺には分からない。
とりあえず今回のことで言えることは、坂柳に何かしらの変化を与えたことだろう。それが悪い方向にいかなければいいが)
「めんどくさいことが起こりそうだから部屋に戻る」
そう言い残した彼の言う通り、その5分後にAクラスの人たちが彼を探していました。
おそらく、今回の立役者である彼に色々と聞きたかったのだろう。
私は彼から聞いたことを皆に言い、彼が独立したことも言いました。
それを聞いたほとんどの人が驚いていました。
ですが私にとってはどうでもいいこと。
(あの時見せた表情。口角が上がっていましたが、自傷のようなもの。そして、不良品という言葉に込められた憎悪。彼の過去に関係するものでしょう。
ホワイトルーム出身ではないがそれと似た存在。彼がどのような存在か暴いてみせます)