祖龍の血を流す龍人 作:あんこ
悠久の時を生き、世界が終わるその日まで人類を見届ける。それが友との約束。
「やっと見つけましたね」
私は、目の前に横たわる巨大な機械のような生き物を見てそう呟く。
これで何百体目だろうか。私がこれを殺すのは。
竜騎兵……またの名をイコール・ドラゴン・ウェポン。
古代の人間が生んでしまったモノ。古代の文明の高さを表す象徴であり、人間の罪の象徴でもある。
竜騎兵とは人が造ってしまった生物である。今はもうこの製造法は残されていないが、昔……まだ私がただの人間だった頃に造られていたものである。その製造法とは、成体の竜を30体混ぜるというもの。今目の前にあるのはそれの生き残り。と言っても動くためのエネルギーは尽きていて何もできない。
「後何体残っているのでしょうか……」
もはや慣れた手つきで目の前の竜騎兵を殺してそう呟く。
もうこの地方の残りはこれで最後らしいので次の地方に向かうとする。
しかし何百体造ってしまったのだろうか。これまでも数百体を殺してきたが、まだ行っていない地方にはまだまだ残っているらしい。それだけ造ってしまったのだ。もちろん竜も数えきれないほど犠牲になっている。龍達が怒るのも当たり前だ。
「そろそろ行きますか」
犠牲になった竜達へのせめてもの償いとして竜騎兵を埋葬する。
次は最近人間が見つけた新大陸と呼んでいる大陸が一番近いようなのでそこに行くことにしようと思ったのだが、一度報告に帰ることにする。
「何百年ぶりでしょうか。久しぶりに会いますね。……っと」
ひらひらと桜の花びらが降ってきた。もうそんな時期かと思い、お土産に団子でも持って行こうかと一人でにやける。
では一度帰るとしよう。30キロは離れているであろうここからでも見えるほど天空にそびえ立つあの塔へ。
「お茶でも用意しておいてくれたらありがたいのですがね」
と、誰かに言うようにわざとらしく声に出す。実際私のことをずっと見ていて全てを聞いているのだろう。今頃弟達に急いでお茶を用意してもらっているのだろう。
少し早足で行くことにしようと足に龍脈を少しだけ吸い取る。ここからなら10分くらいで着くだろうと思い走り始める。足の調子も万全でこの調子なら10分もかからないかもしれない。
そういえば弟達に会うのも久しぶりだ。皆まだ人間を許せないのだろうな。私に対しても怒っているのだろう。着いたら姉様を待たせるとはどういうことだと怒ってきそうだ。あの子は怒ると長いからな。その辺ボレアスは食べ物をあげると機嫌が良くなるのでまだ扱いは楽だ。まだまだ子供だななんて考えていると大分塔に近づいて来たのか龍脈が急に濃くなる。ここまでの濃さはテスカト種クラスでも少し厳しいのではないだろうか。流石は全ての龍の祖である。こんなに龍脈が濃厚な所は同じ禁忌の5体か私くらいでないといられないだろう。
ぼーっと走っていると、雲すらも突き抜けるほど高い塔が目の前に見えて来た。そろそろ跳ぶかと足に力を入れて思いっきり地面を蹴った。すると私の視界は凄まじい速さで下方向に動いていった。直ぐに塔の頂に到着し、目の前に座って私を待っていたであろう子に手をあげる。
「こんにちは。久しぶりですね。何百年ぶりでしょうか」
「久しぶりだね! ざっと500と80年くらいじゃないかな?」
目の前にいるのは背の小さい子供。髪は透き通るように白く、肌には汚れなど今までついたことがないであろう綺麗さ。それに加えて整った可愛らしい顔に真紅の瞳。まるで天使を見たのかと目を疑うほどの神々しさを放っている。
「今回の旅もお疲れ様だったね! 流石にフルフルベビーに追いかけられてたのは笑っちゃったけど」
やはり見られていたらしい。正直それに関しては仕方ないのだ。あんな見た目のものが自分に引っ付いて来て血を吸うなど考えただけで気分が悪くなってしまう。
「正直あれはもう勘弁願いますね。では今回の報告をしますが……」
「?」
いつもはここに来たら報告だけして次の場所に向かっていたので、私の言葉に疑問を抱いている。どうやら弟達はいないようなので団子の数が少し多いが多分大丈夫だろうと思い団子を袋から出す。
「食べますよね?」
私が食べるかと聞くと、分かっていたようにお茶を用意しもちろんと笑顔で返してくれた。
少し談笑を交えながら本題の報告も済ませていく。話が終わる頃にはまだ真上にいた太陽も沈みかけていた。そろそろ行くかと思い立ち上がると、向こうも同じように立ち上がった。
「もう行くの? もうちょっとゆっくりしていけばいいのに」
「気持ちだけ受け取っておきますよ。私にはまだやることがありますからね」
最後に軽く挨拶だけして後ろを向く。次の目的地の方に足を向け力を入れる。ではと声をかけ、塔から飛び降りようとした時にまた声をかけられた。
「何もない時でも帰って来てね。行ってらっしゃい。ミラ」
「覚えておきますね。行ってきます。アンセス」
次の目的地は新大陸。今までにはいなかったような竜がいるのだろうとワクワクしながら向かうとしよう。