リバウの若鷲(ストライクウィッチーズ×大空のサムライ)   作:小山の少将

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第七話 軍馬を得る

 時は1939年12月末。

 人類は史上最大の戦乱に巻き込まれていた。

 敵は突如として人類に牙を剥いた異形ネウロイ。その恐るべき物量を前に人類は防戦一方であり、すでに欧州の過半が敵の手に落ちていた。

 扶桑皇国海軍の若きエース・ウィッチ、笹松一子中尉と台南航空隊は祖国から遠く離れた北欧の地でネウロイと対峙していた。

 彼女らが守るのは西欧諸国の生命線であるバルト海。ここを絶たれることは、即ち主戦線であるカールスラント戦線が干上がることを意味していた。

 技量・機材共に皇国の精鋭である台南航空隊は、参戦以来その名に恥じない働きを見せ、辣々たる戦果を上げていた。

 しかし、破局は着実に彼女らに忍び寄っていたのである。

 

『第七話』

 

―― 軍馬を得る ――

 

 突然のサイレンがリバウ基地を揺るがした。

『サルドゥス見張所より、敵ラロス型14機! 西南西方向に進撃中! 侵攻目標はリバウ市!!』

 スピーカーが敵情報を甲高く伝える。

 この頃頻発している敵部隊の浸透攻撃だった。

 敵の小部隊が極低空で進入して奇襲攻撃を仕掛けてくるのだ。低空のため見張所でも発見されづらく、往々にして目の前にまで迫られてしまう。

 サルドゥスはリバウからほとんど離れていない。飛行兵器の脚なら一瞬だ。

 兵舎でくつろいでいた美緒は、上着をひっ掴み格納庫へ駆けだした。

「まわせぇ!! まわせぇ!!」

 腕をブンブン振り回して戦闘脚の始動を急かす。

 格納庫の中では整備兵たちが慌ただしく行き交い、武器と弾薬が引き出される。

 美緒は手近な戦闘脚に両足を突っ込むと、手早く魔力を流し込んだ。整備兵たちが戦闘脚に差し込んだクランクを回して魔力の増幅を補助した。

 背筋を這い上がるムズ痒い感触の後、使い魔の尻尾と耳が生える。増幅された魔力が全身に行き渡り力が漲る。

 大の男二人がかりで運んできた機関銃を美緒は片手で軽々と掴み、魔導エンジンを低回転にしたタキシングの状態で滑走路に進入した。

 そこで一子と目があった。彼女は先に滑走路に入り、滑走を開始しようとしていた。

 一子はニカッと笑い、茶目っ気のある敬礼をして、弾かれたように発進した。白いマフラーが尾のように翻り、漏れだした魔力が光の軌跡を描く。

 上空には同じように急発進したウィッチが猛烈な勢いで高度を上げていた。接敵する前に少しでも高度を稼いで有利な条件を確保しようとしているのだ。

 敵が接近しすぎていて打って出る時間がない。よってリバウ市の直前で待ち構える事にしたのだった。

「敵発見!」

 ウィッチの一人が地を這うように進むネウロイを発見しバンクを振った。

 要撃に上がった7機のウィッチが猛然とラロスの編隊に食らいついた。

 美緒は手頃な一体に狙いを定め、九七式7.7㎜機関銃の引き金を引いた。軽い発射音と共に、数珠球のように連なった光弾がラロスに吸い込まれる。

 ラロスは機体を引き裂かれ、炎を吹き出して墜落する――――はずだった。

「何!?」

 美緒は目を剥いた。

 必殺の弾丸が火花を散らして弾かれたのだ。

「防弾板か!?」

 美緒の驚愕はまだ続いた。

 ラロスが増速する。九六艦戦を駆る美緒たちは徐々に引き離された。なんと、このラロスは九六艦戦よりも優速なのだ。

 それだけではない。

 今までなら、不意の一撃加えればネウロイは泡を食って逃げまどうか、勝算のない巴戦に打って出るのが常だった。

 それが、このラロスたちは美緒たちに目もくれず、優速にものを言わせて一直線にリバウの街を目指しているではないか。

「先行するラロスは私たちに任せて!」

 Bf109を駆るヴァルガと副官のハンナ・デュッケ少尉がラロスを追撃した。

 このラロスがいくら九六艦戦より優速とは言っても、技術のカールスラントが誇るBf109の高速ほどではなかった。

「坂本兵曹! 近接戦で片を付けるぞ!」

 一子が軍刀を抜き放ってラロスの一機を切り捨てた。

 魔力を通した扶桑刀は、小型飛行兵器に装備できる程度の装甲など物ともせずに引き裂いた。

「はい!」

 美緒も抜刀して彼女の脇を抜けようとしたラロスを両断した。

 美緒のこめかみに冷や汗が伝う。時速数百㎞の速度で突進してくるラロスを迎え撃つのは、たいへんな技量と精神力のいる業だった。

 これほどの技量を備えるウィッチは台南空にもそういなかった。

「愛子!」

 悲鳴が上がった。台南空のウィッチの一人が迎撃に失敗してラロスと正面衝突したのだ。

 数トンに達する金属塊と激突したウィッチは、悲鳴も上げずにラロスと縺れるように地上に落下していた。

 衝突の瞬間に散った血飛沫が、その悲惨さを物語っていた。

「くそぉ!」

 美緒は悪態をついてまた一機切り捨てた。

 重傷を負った戦友を助けに行きたくても、この場を離れるわけにはいかなかった。

 

 迎撃隊は悄然とした様子で基地に帰還した。

「愛子ぉ、愛子……!」

 指揮所の前で、白い布に覆われた戦友に彼女の僚機のウィッチが泣きついてた。

 その痛ましさに、隊の誰もが目を逸らしていた。彼女らを預かる斉藤大佐も例外ではなかった。

 ただ一人を除いては。

「報告!」

 一子が司令の前に立った。

「本日1400時、急速接近する敵部隊に対処するため、笹松一子中尉以下扶桑皇国海軍機械化航空歩兵5機、ならびにツァンバッハ中尉以下カールスラント空軍2機出撃」

 気丈に胸を張り、悲しみを堪えて。

「同08、接敵。しかし敵ラロス型に銃撃の効果薄く、即時近接戦に移行。これを撃滅……!」

 言葉が詰まった。

 それでも報告は止めなかった。それが彼女の義務であるから。

「戦果、敵ラロス型14機、全機撃墜。――――我が方の損害、軽傷2…………戦死、1……!!」

 とうとう一子の瞳から涙がこぼれ落ち、彼女はマフラーに顔を埋めた。

 

 * * *

 

 さめざめと涙を流した乙女たちを下げて、斉藤大佐は指揮所の椅子に座り込んだ。

 卓の上にあった灰皿を引き寄せ、煙草を銜える。副長の小園中佐がマッチを擦って斉藤大佐の煙草に火を着けた。

 紫煙を大きく吸い込み、深々と吐き出した。

 老齢に差し掛かろうという大佐の顔が、歳以上に老け込んで見えた。

「ついに……」

 斉藤大佐は、今着けたばかりの煙草を灰皿に押しつけた。

「ついに、我が隊からも戦死者がでてしまったか……」

「はい……」

 小園中佐も沈痛な面持ちで頷いた。

 己より遙かに若い――――それこそ孫ほども年の離れた幼い少女が、戦場の空で命を散らした。その事実が、ふたりの心に重くのし掛った。

「覚悟は、していたはずなんだがなぁ」

 斉藤大佐は呟いた。

 斉藤大佐は、彼の預かるウィッチたちを、本当の孫のように慈しんでいた。全員の名前と顔はもちろんのこと、その出身や好物まで全て把握していた。

 それ故に、悲しさが先立った。

 軍人としての責務を全うし、最後に涙を流した少女には、頭の下がる思いだった。

「これまでの我が隊の損害は?」

「市内の病院に入院中の者が2名。ブリタニア本土に後送された者が1名。そして今日の戦死1名です。全て今週に損害が集中しています」

 斉藤大佐は窓から格納庫の方を見た。

「九六艦戦は、もうだめか?」

「はい。敵は徐々に性能を上げています。今後、九六艦戦ではさらに厳しくなるかと」

「気は進まないが、やるしかないか」

 呟いて、斉藤大佐は電話に手を伸ばした。

 

 * * *

 

「機種転換、ですか?」

 いきなり隊長室に呼び出された一子は、オウム返しで聞き返した。

 斉藤大佐の傍らに立つ小園中佐が頷く。

「そうだ。新機材の名称は十二試艦上戦闘脚、九六艦戦の後継機だ」

「そんな! 前線で戦う我々に、正式採用されていないような試作機を配備するのですか!?」

 一子は猛然と食ってかかった。

 正式採用されていないということは、即ちその機材にどんな欠陥が潜んでいてもおかしくないということだ。

 ただでさえ新鋭機には故障や事故が多いというのに、ましてや試作機を前線で実戦配備するなど狂気の沙汰だ。

 信頼性の乏しい機材が原因の事故で、台南航空隊の優秀なウィッチが失われるなど、一子は断じて認めるわけにいかなかった。

 それは、斉藤大佐はじめ、隊長陣も重々承知の筈なのだ。

「落ち着きたまえ、笹松中尉」

「これが落ち着いていられますでしょうか! 直ちに再考をお願いします!!」

「貴様の気持ちは、わしらも痛いほどよく分かる。しかし、貴様もうすうすは感づいておるのだろう?」

「いいえ、分かりません。九六艦戦はまだまだ戦えます。例え速度で負け、武装で負けても、創意工夫で戦って見せます!」

 意固地になる一子に、斉藤大佐は宥めるように言った。

「それではとても間に合わんのだよ。カールスラントの主戦線や、北アフリカ戦線にはネウロイの新型が続々と現れてきておる。その中には、九六艦戦では到底太刀打ちできないような恐ろしい敵も含まれているのだ。そしてやつらは、必ずこのリバウの空にも現れるだろう」

「……ッ」

 一子は押し黙った。

 彼女も風の噂で聞いて事があるのだ。

 戦闘脚を履いたウィッチよりも高速で、針鼠のような対空砲と分厚い装甲を纏った超重爆や、戦艦のように巨大な空中要塞の存在を。

 この驚異のネウロイを前に、列強のウィッチが蹴散らされているのだ。

 そんなやつらを相手に、旧式の九六艦戦を装備する自分たちが勝利できる道理があるだろうか。

「貴様の心配する気持ちは、わしらも理解できる。新鋭機がどれほど心許ないものかも。だが、貴様たちにはより強力な武器が必要なのだ。新しい翼が必要なのだ。

 理解してくれ」

 脇に控えていた小園中佐が捕捉するように口を開いた。

「十二試艦戦は、すでに遣欧艦隊の航空隊に配備され、基地航空隊への配備が進んでいる。スオムスを始め、各地で戦闘にも参加しているのだ」

「……」

 一子は黙したまま静かに敬礼した。

 

 

 

 数日後、一子ら笹松小隊他の台南航空隊はブリタニアにいた。

 もちろんリバウを空にするわけにはいかないので留守番部隊は置いているが、過半は今回の機種転換訓練に参加するためにブリタニアに渡っていた。

「よもや凱旋でも戦傷でもなく、ましてや戦死でも無い理由で再びブリタニアの地を踏むことになろうとはな」

 広大な飛行場の片隅に駐機した輸送機から降り立ち、一子は空を見上げた。太陽が眩しく、手をかざす。

「笹松中尉でいらっしゃいますか?」

「いかにも」

 駆け寄ってきた皇国軍兵士が敬礼した。

「お待ちしておりました。すぐに士官宿舎にご案内します」

「いや、まずは我々が乗ることになる戦闘脚を見ておきたい」

 一子が確認するように振り返ると、屯していたウィッチたちが神妙に頷いた。

 彼女らも一子と同じで内心複雑であったが、良い意味でも悪い意味でも新機材に興味があることには変らなかった。

「了解しました。では、格納庫にご案内します」

 こうして、台南航空隊一行はまだ見ぬ十二試艦戦の待つ格納庫へ向った。

 

 案内された格納庫では、十二試艦戦の群が鈍い色を放ちながら鎮座していた。

「何だこれ?」

 一子は十二試艦戦の周りを歩いて睨め回した。

 十二試艦戦の第一印象は、よろしくなかった。先入観のある分、だいぶ悪い印象と言ってよいい。

 まず見た目が悪い。

 それまで海軍の飛行脚は、必ず決まって優美な銀色をしていたというのに、この十二試艦戦は濡れた鼠のような灰色をしていたのだ。

 また機体の形も、九六艦戦が研ぎ澄ました刃のようだったのに比べて、ひょろ長く猛々しさとは無縁のように見えた。

 大きさも九六艦戦よりも一回り以上大きく、これでは碌に旋回できないのではないかと不安にもなった。

「大丈夫なのかなぁ、あの飛行脚」

「絶対、九六の方が良いわよね」

 遠巻きに十二試艦戦を眺めていたウィッチたちも、口々に悪口を言っていた。

 美緒だけが、鋭い視線で十二試艦戦を見つめていた。

 

 翌日、一通りの座学を終えて、ついに十二試艦戦で初飛行する段になった。

 試作機とあって誰もが尻込みする中、機種転換部隊の隊長であった一子が最初の搭乗員に志願した。

 だが彼女も新機材が信用ならず、背に落下傘を背負って、九六艦戦を履かせた美緒を連れて上がるという念の入れようだった。

「圧搾!」

 脇に控えていた整備兵がふたりがかりで慣性起動機を回し、うなりと共に魔導エンジンに息が吹き込まれる。

 そのうなりが最高潮に達したとき、一子は魔力を魔導エンジンに叩き込んだ。

「点火!」

 パパッ……パパッ……という不規則なエンジン音。だがそれだけでも九六艦戦の寿四一型とは比べ物にならない野太さだ。

 排気管から漏れだした青白い魔力炎が、蛇の舌のようにチロチロと見え隠れした。

 やがて回転を安定させた栄一二型のエンジン音は、正しく爆音といって相違なかった。

「止め払え!」

 ウィッチを地上に縫い止めていた拘束が外され、十二試艦戦が解き放たれる。

 一子はタキシングをしながら滑走路の端に移動した。

 そこで徐々にエンジンの回転数を上げていく。

 エンジンの高鳴りと同期するように、地上に広がる魔法陣も大きさを増した。

 一子は癖のように左後ろを振り返り、そこにいる美緒の姿を見て安心したように微笑んだ。

 それからマフラーを引き上げ、鋭く前を睨みつけた。

「離陸する!」

 ブレーキが弛められ、一子の身体が弾かれたように前進する。

 数秒後には、彼女の身体は大空の上にあった。

 

 

 

「やはり私は九六の方が良いな」

「私もそう思います」

 上空を飛ぶ十二試艦戦を見ながら一子と醇子が話していた。

「確かにあの高速と航続距離の長さは魅力だがな……。それに、引き込み脚というのも不安だ。着陸の時に脚が出なかったらどうするのだ」

「それに格闘戦じゃ九六に手も足も出ませんでしたし、せっかくの20㎜機関銃もあんな漏斗弾じゃ当たる物も当たりませんし。よっぽど九六の足を長くした方が良かったんじゃないかと思いますね」

 ふたりが思い出すのは、つい先ほどまで戯れで行った九六艦戦対十二試艦戦の模擬空中戦だ。

 一子の駆る九六艦戦は、醇子の駆る十二試艦戦を苦もなくひねってしまった。

 ならばと、次は機材を交換して再戦してみれば、今度は真逆の結果が出た。

 何度繰り返しても結果は同じ。十二試艦戦を装備した方が負けた。

 十二試艦戦は九六艦戦の軽快な旋回に着いていけず、高速で振り切ろうにも引き離す前に冷静に照準されて撃墜された。

 いったい軍の上層部や設計者は何を考えてこんな弱い戦闘脚を作ったのか、ふたりにはまるで理解できなかった。

 やはり九六艦戦は素晴らしい戦闘脚なのだという結論に落ち着こうとしたとき、それに異議を唱える者が現れた。

 他ならない美緒だった。

「ふたりは間違っています。十二試艦戦が弱いのではなく、あなた達の使い方が間違っているのです」

「何?」

 一子はまじまじと美緒の顔を見た。

 あれだけボロ負けした十二試艦戦が弱くない? 間違っていたのは駆るウィッチの方だった?

 一子には美緒が理解不能の異国語を喋っているように思われた。

「じゃあ、貴様なら十二試艦戦で九六に勝てるというのか?」

「勿論です」

 美緒は自信満々に頷いた。

 

 当然のように、その後は模擬空戦に縺れ込んだ。

 もちろん九六艦戦を駆る一子と十二試艦戦を駆る美緒の対決である。

 同航から合図と共に空戦が始まる。

『開始!』

 審判役の醇子の声で、ふたりは左右に分かれた。

 一子はこれまでと同じように、直ぐに水平旋回して鈍重な十二試艦戦の後ろに着こうとした。

 しかし、そこに思い描いていた十二試艦戦の姿はなかった。

「待て坂本兵曹! 逃げるのか!?」

 美緒の十二試艦戦は、大馬力な新型魔導エンジンに物を言わせてぐんぐんと上昇していたのだ。

 一子も必死に追いかけたが、まるで歯が立たなかった。

 やがて九六艦戦の魔導エンジンが先に音を上げてしまい、上昇が止まった。仕方がないので一子は上昇を諦めた。

 すると、それを見計らっていたかのように美緒が急降下してきた。

 一子も急降下で逃げようとするが、十二試艦戦は九六艦戦よりも遙かに速かった。

「くそぉ!」

 一子は急旋回して美緒を巴戦に巻き込もうとした。

 だがここでも美緒は一子の予想を裏切った。

 美緒は巴戦を挑んでくるどころか急降下のまま下方に逃げていってしまったのだ。

 慌てて一子が追いかけようにも、元よりの高速に加えて急降下の速度を得た美緒に真瞬く間に引き離された。

「く……、追いつけない!」

 今までの戦い方が、まるで通用しなかった。

「こんな戦い、卑怯だ!」

 一子は叫んだ。

 その後も、一子は十二試艦戦の馬力と速度に物を言わせた美緒の戦いに終始翻弄され、へとへとになったところをあっさりと撃墜された。

 

 疲労困憊の体で飛行場の芝生に座り込む一子を、美緒は腕組みして見下ろした。

「どうです、分かりましたか? これが十二試艦戦の戦い方なのです」

 それを聞いた一子は、飛び起きて猛然と食って掛かった。

「あんなのズルいではないか! あれではウィッチの腕ではなく、機材の性能で勝ったようなものだ!」

「ズルくて何が悪のです!」

 美緒はピシャリと言いつけた。

 一子はグッと言葉に詰まる。

「戦場では勝たねばならないのです。美しい負けなど存在しないのです! それに、機材の性能を十全に引き出す戦いができる者こそ、真に強いウィッチと呼ばれるのです」

「……」

 美緒は厳しい口調を一転させ、優しく言った。

「これからのウィッチは、大馬力、重武装化が今まで以上に進むでしょう。十二試艦戦は九六に勝つために作られた戦闘脚ではないのです。敵はあくまでネウロイ。格闘戦だけが戦いではないことを、よく覚えておいて下さい」

 

 その次の日より、一子は猛烈な勢いで十二試艦戦の習熟に努めるようになった。

 

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