岩崎 花(♀):今作で何か常に文句言ってる人。虫歯になった事実を認めたくなかったらしく、最終的に彼女の中で『これは葉の成長痛だから終わった頃には一皮剝けたモンに生まれ変わってる』と結論付けた翌日歯医者に連れてかれた。
上田 進(♂):今作で岩崎の何の身にもならない話を延々と聞かされる可哀そうな人。風邪で学校を休む時はちょっとした特別感や負い目よりも、岩崎に会わずに済む解放感を一番に感じているらしい。
「はぁぁ……昨日の課題地味に長いしめんどくさかったな」
「今日は珍しくやって来たんだな」
「そりゃもう、先生に『次の宿題忘れてきたら、もう恥も外聞を捨ててでもお前にキレ散らかすと思う』って言われたからね。正直大の大人がそうなってるのを見たい気もしたけど、それ以上に身の危険を感じたし」
「どんだけお前に抱え込まされてんだよあの先生……」
「まぁまぁ、今日はちゃんとやって来たわけだしさ。にしても久々に家でちゃんとシャーペン握った気がするわ」
「お前の家古代文明で生きてんの?」
「んな訳ねぇよ現代だわ、古代文明にうちの家みたいな固定電話っていうハイテク器具無いだろうし」
「今のこのご時世ではもう家に固定電話置いてない所もあるらしいがな」
「マジ? じゃあうちの家のダイヤル式のあれも? 結構イマドキかと思ったんだけどなぁ」
「そのレベルならもう普通に古代文明だよ」
「んなことないって、てか今ウチが言いたいのはそんなことじゃなくてシンプルに課題の量多かったから疲れたってことよ。あんなに文字書いてたらもうヒザがパンパンだよ」
「ん? ヒザじゃなくてヒジじゃない?」
「え? あぁ、ホントだ、普通に間違えたわ」
「まぁ確かに紛らわしいよなヒザとヒジって。たまに間違えそうになるし」
「そう? あんなの普通は間違えないでしょ」
「五秒前の自分に嘘を吐くなよ」
「なんかそれ売れないバンドの曲の歌詞にありそうだな。あとさ、ウチの家勉強机ないから基本は居間で床に座って勉強する形になるんだよね」
「まぁ確かに勉強机要らないだろうな」
「それはひょっとしてウチが普段勉強をしないからっていう意味じゃないだろうな?」
「ひょっとしなくてもそうだよ」
「失礼だな。それで色々な座り方試してみたんだけどやっぱ椅子欲しいよね。ちょっと変な座り方試してみたけど結局ヒジ痛いし……あっ」
「座ってたんならそっちはヒザじゃね?」
「あぁもう気付いてたんだしいちいち言わなくてもいいじゃん!」
「うわっ、ビックリした。まぁそれはゴメンて」
「……」
「どうして急に黙りこくって――」
「だぁぁぁぁ! うっぜぇぇぇぇ!」
「うわっ! 急にデカい声出すなよ、一回目でもう全部吐き出せって、二段階でキレるな!」
「だってさぁ!? おかしくね? 絶対『ヒザ』と『ヒジ』って名前つけたヤツって、後世でウチみたいな人間がこんな感じのブービートラップに引っかかることも織り込み済みでこの名前つけてんじゃん」
「いや知らんよ、何で自分本位の世界の中でお前が罠に掛かってんだ」
「誰だこれ考えたヤツ! 絶対ソイツ地獄に送ってやるからな!」
「どこに行ったかはともかくもう既にこの世の者じゃないだろ」
「クッソ! 勝ち逃げしたつもりかぁ!? 地獄に落ちてたとしたらそこでもまたウチが地獄の中の地獄見せてやるかんな!?」
「お前地獄に落ちてんじゃんそれ。それでいいのかよ」
「そんなこと知ったこっちゃねぇ! そいつにウチ渾身の飛び膝蹴りとラリアットお見舞いしてやる。こんな紛らわしい名前つけたんなら後々それを冠した罰受けても文句は言えないもんな」
「ひっでえ言い掛かりだな……ペテン師の考え方じゃん」
「ペテン師とは失礼だな、ウチは信頼できる人間だよ? 巷で噂の『独壇場で頼りになる花』とはウチのことだからな!」
「ホントに信頼できる人間は自分のこと信頼できるって言わないんだよなぁ。ってかそれ独壇場じゃなくて土壇場だろ」
「……は?」
「あっ……いや、岩崎、今のは忘れてくれていいからな? 別に今調べなくてもいいだろ?ほらとっとと携帯しまえって——」
「だぁぁぁぁぁ! よく考えたらこいつらも漢字一文字しか違わねぇじゃねぇか! ぁんだこの言葉作ったヤツ!? ウチが直々にとっちめてやるわ畜生!」
「いつ終わるんだよコレ……」