岩崎 花(♀):今作で何か常に文句言ってる人。図書館に行って目を瞑ってランダムに本を取ってくるというゲームをして彼女が手にした本は『バカの壁』だった。うん、いっぺん読んでみな。
上田 進(♂):今作で岩崎の何の身にもならない話を延々と聞かされる可哀そうな人。隣のクラスにまで『あの宇宙人と会話ができるヤツ』としてその名はそれなりに広まっており、本人の知らない所で学校内での知名度は高い。
「うわぁ……今日の運マジ凶運だよ」
「何だその逆に革新的なダジャレ。」
「いやさ、ウチ毎日一日一粒飴玉学校に持って行ってるんだけどさ、今日バタバタしてたから何味か見ないまま持って来ちゃったんだよ」
「ほう」
「んでさっき何味か確認したんだけど、それがグレープフルーツ味だったんだよね」
「それがどうした? 特に何かありそうだとは思わんが」
「だってグレープフルーツ味ってあんまり美味しくないし……」
「あぁ何だ、そっちの好みの話か」
「いやまぁそれもあるんだけどさ、グレープフルーツってなんかムカつくんだよ」
「何にムカついてんだよ、どうせそれも理不尽な苛立ちだろ」
「いいや、ウチにとっちゃ真っ当な主張だね。」
「今までのそれもお前の中で『だけ』はそうだったがな」
「まぁとにかく聞いてくれよ、グレープフルーツって名前はこんなだけど実際の本家大本のグレープと全然違うじゃん。」
「何だ本家大本のグレープって。どんな概念なんだよ」
「上田だってグレープフルーツよりもグレープの方が馴染みあるでしょ?」
「まぁ確かにそりゃそうかも知れないけど……」
「だからグレープフルーツってヤツは割と果物の中でもポピュラーなグレープにあやかってこういう名前で売り出してるってワケだ」
「果物を新人アイドルみたいに言うな。売り出し中って特売日かよ。あと一々ブドウのことをグレープって呼称すんな」
「これってインドネシアとインドみたいなもんじゃん? インドよりもインドネシアの方が人口多いけど、インドネシアもインドを冠するようにしてそういう風に見せつけてるわけだし」
「別にそういう訳でもないし、そんな優劣とか付ける必要もないだろ」
「オーストラリアとオーストリアもオーストラリアみたいに、めっちゃでっかい国の名前とほとんど同じにしてオーストリアもデカいって思わせてるんだよ、やり方が良くないよコレ」
「何の意味があるんだよその見せつけ。ってかお前にとっての優劣の基準デカさと多さだけかよ。まぁそうは言ってもインドネシアも日本よりは人口多いけどな」
「え? マジ?」
「ああ、倍くらい違ったと思うぞ」
「そんな……じゃあ日本は所詮イッポンなのか」
「そこハーフサイズにしなくてもいいだろ」
「もしくは半ジャパン?」
「半チャーハンみたいな言い方すんな。何でインドネシアが基準の物差しになってんだ」
「だって……もうそれなら日本も名前的に人口多い感じにしちゃおう」
「その言動の一貫性の無さだけは一丁前だよな。散々文句言われたグレープフルーツも不満隠せないだろ」
「それならハーフインドネシアとか?」
「何でインドからインドネシアにもう一つ矢印付いちゃったんだよ」
「……あっ」
「どうした?」
「よく考えたらウチのやろうとしてることグレープとグレープフルーツ理論のマネじゃん……知らないうちにこんな落とし穴に引っかかってたとは……」
「自分が仕掛けた見え見えの穴に自分が落ちただけだろ。誰も引っかからないんだよ普通その穴には」
「と、とにかくウチはグレープフルーツのそういう乗っかり方が気に入らないってこと!」
「だからそんな目的無いだろ。それじゃあどうすればお前は納得するんだ?」
「そりゃまぁ名前を変えるとかだけど」
「じゃあどんな風にするんだよ?」
「だからグレープフルーツからグレープを除けて……フルーツ?」
「正気か?」