岩崎 花(♀):今作で何か常に文句言ってる人。袋に入ったスナック菓子を開ける時は今でも四、五回に一回は外にバラ撒いている。
上田 進(♂):今作で岩崎の何の身にもならない話を延々と聞かされる可哀そうな人。たまに先生ですら彼を介して岩崎とコミュニケーションを取ることがある。日本語で日本語の通訳って何なんだろうね。
「バイトって何だよ……」
「どうした、勤労意欲が負の方向に限界突破したのか?」
「いや、そうじゃなくてバイトって何なんだろうって思ってさ……こう、響きが」
「だから働きたくないからその響きが嫌なんだろ?」
「上田のウチに対する評価の期待値ってなんでそんなに低いん?」
「そりゃ経験と実績だよ」
「そんなもん覚えがねーよ」
「覚えが無いから一層タチが悪いんだよ」
「何だよそれ、ウチにはどうしようもないじゃん。もういいや、ウチが言いたいのはバイトっていう言葉の略し方が変だと思うんだよ」
「何も話は片付いてないんだが……そんで略し方? なんだそりゃ」
「いやバイトって元々アルバイトって言葉じゃん? それならいっそアルバって略すべきだと思うんだよね」
「何だその知名度の低い海外ブランドみたいな横文字」
「だって普通言葉略す時って前の方かその途中を持って来るもんじゃん、スマートフォンでスマホとか、ポテトチップスでポテチとかさ。それなのに何なんだよバイトって」
「知らんよ、何となく響きが良いからそんな風になってんじゃねえの?」
「だってその理論だったらサングラスはグラスになるし、エンドレスはドレスになるんだよ? もう別のものじゃん」
「別にそれらの言葉略す必要ないだろ。てかエンドレスは前から略してもエンドでどっちにしろダメダメじゃねぇか」
「そんなのウチが知ったこっちゃないよ、上田が勝手に言ったことじゃん」
「まんまそれを俺は毎度毎度お前に言ってんだけどな」
「とにかくウチは横文字を略す時は前の方の言葉からやっていくべきだと思うんだよ」
「そんなこと言っても今ある言葉はもう浸透してるし無理だろ」
「それならウチ一人だけでもその悪しき文化に抗ってやる」
「そんな風に世界を敵に回すヤツ初めて見たわ。RPGの魔王でももうちょっと理に適ってるぞ」
「そんな感じで今から略語は前の方の言葉を使ってやるゲームスタートね」
「一昔前の英語禁止ボウリングみたいなクセに何だその妙な難易度設定。もう勝手にやってろよ」
「そういえば昨日ウチの好きなタレントのウェロ見てたんだけどさ、それで——」
「ちょっと待ていきなり未知の単語が出て来たぞ。何? 好きなタレントのベロ見てたの?」
「ベロって何だよ、んな悪趣味なの上田くらいだろ」
「名誉棄損で訴えるぞ、んでさっき言ってたの何だよ、その……ベロみたいなやつ」
「ベロ……? ああ、もしかしてウェロ? ウェブログのことだよ、あれも略して後ろのとこばっか取ってるからウチが正しく略してあげただけだだよ」
「うぇぶろぐ……? 後ろ……ってブログのことかよ? 何だその便宜を図れない略し方。響きも汚ぇし」
「そう言われてもウチはルールに従っただけだし」
「そのルールがもう間違ってんだよ。何だよ好きなタレントのウェロって」
「だからそれはさっき言ったじゃん」
「だから分かりにくいんだっての、もう普通の言葉使えってば」
「そもそも普通の言葉っていうのがおかしいよ、それぞれもっと自由な言葉を使うべきじゃん」
「その理論の結果お前の言ってることがまかり通ったら大変なんだよ。お前言葉の無法地帯だし。まぁちょっと俺はトイレ行ってくるからその間に頭でも冷やしとけ」
「無法地帯って……そ、それなら上田だってたまによく分からないこと言ってんじゃん! アニションの話とかで」
「は?」
「だからアニションだって、上田好きでしょ?」
「……二度とアニメのことそう呼ぶなよ。てかもうアニメでいいだろ呼び方」
「何でさ、アニメーションだから合ってるじゃん。スマホと同じ略し方だし」
「俺がトイレに行こうとしてるタイミングだから尚更だよ」