岩崎 花(♀):今作で何か常に文句言ってる人。一日平均で四回ほど家の中でスマホを置いた場所を忘れて、その度に喚いている。
上田 進(♂):今作で岩崎の何の身にもならない話を延々と聞かされる可哀そうな人。彼ほどクレーム処理能力の高い人材をコールセンターは求めているのかもしれない。
「はぁ……ウチはこれからもこうやって虚しく生きていくのかなぁ、まるでパンダじゃん」
「パンダって。自分の価値を実際以上に計上すんな、なに一人粉飾決済してんだよ」
「粉飾決済は企業ぐるみでするもんだろ、別に一人ですることじゃねーし」
「論点がズレてんだよ、何で粉飾決済の方受け入れちゃったんだよ」
「そんなことはどうでもいいんだっての」
「そう言われてホントにどうでもいいって思うこと普通はあんまりないがマジでどうでもいいな、うん」
「ウチが言いたいのは人の人生ってパンダと同じじゃんって思ってさ」
「何言ってるかも分からないし別に分かりたくもないからこの話終わりでいいか?」
「ダメに決まってんだろ。まだ何も話してねぇよ」
「いやでもこれだけじゃあウチの話が上田の思ってるような意味のないモノとは限らないじゃん!」
「それこそパンダの体色以上に白黒ハッキリしてると思うがな」
「それならパンダの尻尾の色は何色か知ってんのか?」
「さぁ、まぁ白か黒かどっちかだろ」
「めちゃくちゃ曖昧じゃん。何が白黒ハッキリだよ」
「いや別に俺にとってはどっちでもいいしだから今からのお前の話もどうでもいい」
「どうでもいいなら別に聞くことも構わんだろ? それでさウチら人って『客寄せパンダ』って言葉使うじゃん?」
「強引に押し切ったな……まぁ確かに聞く言葉ではあるな」
「いやさ、ウチら人間だって基本的に誰かを喜ばせるために生きていかなきゃならない存在じゃん? それってつまり人生において人間は全て客寄せパンダだと思うんだよ」
「なんか嫌な話だなそれ……別にそんなに思い詰めることも——」
「てかそもそも客寄せパンダって言葉は何なんだよ。動物園にいるパンダだってその日を一生懸命に生きてるのにそれをあたかも見世物のように言うとかヒドくないか? パンダは客を寄せるために生きてるんじゃないんだぞ!? なぁそう思わねえか!?」
「そうやって何かにキレてる途中で怒りのターゲット変更するのやめろ、どうやって適当に処理するか考えてたのにそこの標的変えられたらこっちも手の打ちようがねぇんだよ」
「お前今まで適当にウチの話処理してたのか?」
「あー……そんな訳ないじゃん、たまたま今回だけ今回だけ」
「そうなのか? ……まぁそれならいいが次回以降は気をつけてくれよ」
「おう、気をつけるようにはするからこの話はもう終わりな」
「まだ何も解決してねぇよ。とにかくウチは懸命に生きるパンダを『客寄せパンダ』って言葉で形容させて見世物でバカにする感じにしてるのが人間の驕り高ぶった感じがして嫌なんだよ。」
「そもそも動物園で飼育されてる動物は言い方悪いが基本見世物って感じだろ」
「いいや違うね! 動物園は動物たちが必死に生きてる様子にウチらが畏敬の念を示すことで初めて動物園として成立するんだよ」
「その考え方動物園であるならもうその手のドキュメンタリー番組必要なくなるじゃねえか。そんな重い気持ちで動物園の動物見ようとは思わねえよ。普通に動物を見てそれに癒されるでいいじゃん」
「そうやってヒトが上に立ってる体で動物を見るとかそんなの間違ってるよ!」
「じゃあお前は動物園に行ってパンダ見た時も『かわいい』とかそう言った感情を持たずに『こいつ、一生懸命だな……』みたいな体で見るの?」
「もちろんそうだけど?」
「それもう工事現場でオッサンが休憩時間に缶コーヒー飲んでるの見てる時と同じリアクションじゃねぇか。もう工事現場見てろよ」
「でもそれとはまた話が違うじゃん」
「どう違うんだよ」
「それは……なんか動物園はずーっと見てられるけど、工事現場は違うって言うか」
「そりゃ動物園はZooっと見る場所だろうな。じゃあそもそもその根底にある違いって何なんだよ、結局お前も動物園の動物を普通に愛玩の対象で見てるだけなんだろ?」
「そ、それだけじゃないし!」
「じゃあお前はさっき言ったパンダを動物園で見てどういう所に一生懸命だなって思ってんだよ?」
「そりゃあもう……飯食ってる時とか……まぁその辺?」
「随分ささやかだな。対象が人でも同じじゃねぇか」
「パンダはそうやってるだけでもいいんだよ!」
「結局お前完全にパンダに寄せられる側のゴリゴリの人間サイドじゃねぇか」