岩崎 花(♀):今作で何か常に文句言ってる人。彼女が家の皿洗いを担当してから、一週間で十枚くらいの皿が蒸発したらしい。
上田 進(♂):今作で岩崎の何の身にもならない話を延々と聞かされる可哀そうな人。一昔前に受けた手相診断で彼の受難を予想した人がいた。知らない方がいいことってあるもんだね。
「あっぢぃ……どうにかしてくれ上田」
「液体窒素にでも入りゃ何とかなるだろ」
「そんなのウチがどうにかなっちまうよ……暑いと言えばさ、ウチ普段はエアコン点けて寝てるんだけど昨日何故かエアコンのリモコンが見つかんなかったんだよね」
「あー、たまにリモコン失くすことあるかもな」
「それでさ、ウチ前々から思ってたんだけど、リモコンって割と思いもつかない場所で見つかることってあるじゃん?」
「それは確かに分かるかも」
「それこそ風呂場の湯船の中とか、屋根裏とか」
「それは分からない」
「だからさ、そういう時って実はリモコンって自分で動いて見つかんないように隠れてんじゃないかと思うんだよね」
「いや流石にそれはないだろ」
「でもマジであり得る話だとは思うんだよ。『ぜってーこんな所にあるわけないじゃん』って思った場所にあったりすることあんじゃん?」
「それは確かにあるけど実際は自分が忘れてるってだけだろ」
「何でお前はそんなに自分に自信がないんだ?」
「何でお前はそんなに自分に対して自信に溢れてんだよ」
「そりゃそう思ってないとやり切れんこともあるからな。だからウチは今ここで『リモコン自走式論』を提唱したいと思うんだ」
「なんだその学者の風上にも置けなさそうな学説」
「でもそうでも思わないとマジで説明つかないことあったもん。ほら、これ見て」
「……何で学校カバンの中にテレビのリモコン入ってんだよ」
「いやこれマジでウチの記憶の中では覚えがないんだよ。コイツが自分から動いてない限りはこんなこと起こり得る訳がないんだってば。何でこんな所にあるんだよ上田ァ!?」
「知る訳ねぇだろボリューム上げんな。何をどう思って俺がそれを知ってるかもしれないって思ったんだよ」
「じゃあやっぱり自分で動いてるんだってば! そうとでも思わないとウチはウチとして生きていく自信が無くなりそうなんだ!」
「強情な割にアイデンティティ激弱かよ。別にモノ置いた場所忘れることは珍しいでもないだろ」
「しかし学校にコイツを持ってきてしまうとは不覚だった。珍しいことでもないならまだ少しは安心できるが」
「いやさすがにそのレアケースは守備範囲外だわ。普通学校には持ってこねーよんなもん」
「……もしかしたらリモコンがウチに対する愛着を我慢し切れずについて来たのか?」
「お前現実を見る眼を失ったの? うっかり持って来ちまっただけだろ」
「……それとも誰かがリモコンを操縦してでウチのカバンの中に……?」
「聞く耳も失ったんかお前。リモコンのリモコンって何なんだよ」
「でも後者の関してはそんなことする動機が見つかんないんだよな……」
「あたかも前者にもっともらしい理由があるみたいに語ってんなお前。どこまで想像力と被害妄想力豊かなんだよ」
「でもリモコンが愛着持ってウチから離れたくないって思ったのなら……ウチはそれを受け止めようと思うんだ」
「もうマジで勝手にしてくれ……」
「でもそれなら普段リモコンが失くなるってことがおかしいんだよ……むしろ出てきてくれるはずなのに……それってやっぱり……」
「ようやく自分がおかしいことを言ってたのに気づいてくれたか、それでも十分に遅いが――」
「……照れ屋なヤツだなぁ、コイツめ~」
「もう付き合いきれねぇよ……」