岩崎 花(♀):北枕は縁起がいいといった話を聞いて、とりあえず最初に方位磁針を用いて方角を調べ、彼女なりの北枕を試した。なお彼女の部屋の南の方角に当たる場所にはネオジム磁石がある。
上田 進(♂):今でこそ普段は落ち着きのあるやんちゃとはかけ離れた性格だが、小学生時代は『あの定規を使って相手の定規を机から落とすヤツ』で無類の強さを誇り、皇帝と呼ばれていた
「この世はウチか、ウチ以外か……って言葉があるけど、そもそもウチ以外は人間ですらないんじゃねぇかな」
「そもそも前提条件が入ってこない。人間らしい会話をしてくれ」
「ウチ人間だって。言葉も話せるし相手との会話もできるし……あと利きコンビニおにぎりとかできるし」
「全部AIにもできるんだが。何なら切り札っぽい最後のやつが一番高水準で」
「とにかく聞いてくれって、たぶんお前も人間じゃない」
「よくその物言いで聞いてくれると思ったな」
「でも自分が人間じゃないかもしれないって思って生きるのはイヤじゃん?話聞いとけ、んで話なんだけど――」
「押しの強さだけは横綱級かよ頭ん中は序の口のくせに」
「ウチどうしてもニンニクがダメでさ、風味というか」
「あぁ、まぁ確かに独特というか癖は強いしな」
「でしょ?んでこっからがメインなんだけど、割とニンニクって好きっていう人も多いじゃん?」
「だな」
「そこで自分なりに考えてみたんだよ。どうしてウチはニンニクが食べられないんだろうって」
「それはシンプルに好みの問題とかじゃないか?大なり小なり好き嫌いがあるってのは別に不思議でもないし」
「はぁ……やっぱダメだお前は。思考に向上心がねぇ」
「向上心ってのは意義が伴わないと明後日の方向への逃避行にしかならないぞ」
「意味あるってば。最初に言った通りこれは人間としての在り方を問うような問題なんだから」
「お前に考えられるくらいだったら、いっそ俺は人じゃない方が幸せな気もしてきたんだが」
「んでだ、色々考えた結果ある一つの結論に思い至ったってワケ」
「……その答えは?」
「『にんにく』と『じんにく』って似てるじゃん?」
「そうだな、『苦い』と『自害』くらい違うな」
「そりゃ全然違うだろ頭大丈夫か?」
「いつかマジでぶっ殺すぞホントお前」
「まぁそういう訳で『にんにく=人肉』の理論が成り立つ。そう考えるとウチがにんにくが苦手なのも説明がつくってこと」
「『似てる』から『同じ』になってるじゃん。なんだこのイカれたパラダイムシフトは」
「んで更にここからが重要」
「今までのどこに重要な部分があったんだ?」
「なんかの本かテレビでウチ見たんだよ。なんか人間ってのは人間の肉食ったら……なんかの病気になるって。だからなんか人間は人肉を食べられないって」
「『なんか』が多すぎる。もっと理論詰めてくれ」
「うっせぇな今日のお前。めちゃくちゃ突っかかってくるじゃん」
「そりゃ毎日うっせぇやつの話も聞いたらそうなるだろうよ」
「分かった。上田は人間じゃねぇからこんな風にコミュニケーションがおかしいんだ」
「その言葉そっくりそのままお前に返してやりたい気分だよ」
「なんだよ、ウチが人間じゃないって言いたいの?」
「そういう訳じゃないけど、お前の理論の突飛さはマジでたまに人間離れしてる気はする」
「マジで?ウチ人間離れしてんの?ホントに?」
「それで嬉しくなれる辺りは何というか人間らしい気はするよマジで」
「どっちなんだよ。ちなみにウチはにんにくは無理だけどホントに人間離れしてんの?ウチ」
「だからそれは関係ねぇよ。人間か否かって部分では」
「じゃあ何が人間を人間たらしめてんの?」
「急にクソムズ哲学ブッこんでくるな。にんにくじゃないのは確かだけど」
「となると何だ……?なぁ、上田からも意見出せよ~」
「不良のカツアゲか。まぁ……ありきたりだけど『学ぶこと』とかじゃない?」
「学びか……ウチには少し相性悪いかな」
「だろうな」
「あ、でもウチはちゃんと人間だから今日も学習はしたよ?」
「と言うと?」
「『ニンニクが食べれるか否かは、人間を人間たらしめる要因じゃない』ってことをな」
「今のお前物凄いAIっぽいぞ」
およそ2年半ぶりの投稿らしいです(恐怖)。大変長らくお待たせいたしました、この言葉が届く方がいらっしゃれば幸いに存じます。