狩人と舞う白銀の翼   作:睦月透火

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前回、龍脈にアクセスして真実を知ったシオン……
そのあまりの内容故に一時は酷く落ち込んでいたが、タマやセリエナで働くアイルー達に励まされ、以前と同様……とまでは行かないが、元気を取り戻した。

その後、古代樹の森で奇妙な痕跡が見つかっている……と、定期便を護衛するハンターから聞いたレクスとクリスは、調査団リーダーの指示もあり、オトモのタマとシオンを引き連れて調査に赴く……

大変長らくお待たせ致しました、第10話デース!


コラボストーリー「風と共に翔ぶ」
異変


「……古代樹の森に、異変……ですか?」

 

「そうだ、本来居なかった何者かが森を縄張りにした可能性がある……5期団は至急、古代樹の森の異変を調査してくれ」

 

 セリエナを仕切る新大陸生まれのハンターにして、調査団の若きリーダー「レオン」が指示を出す。

 目的は「古代樹の森の異変の調査」……

 

 何でも、古代樹の森に「以前にはなかった特殊な痕跡」が散見されるようになった、それに加えて森に生息していた一部のモンスター達が縄張りを追われたり、奇妙な死骸が数多く発見されるようになったのである。

 

「一体何が原因なのでしょうか……」

 

「分からん、だから今回の調査が発せられたんだろ……シオンはどうしてる?」

 

 レクスはクリスとの会話中も防具を身に付ける手を止めず、シオンの居場所を尋ねる。

 

「今、外でタマと打ち合わせ(?)してるみたいですよ?」

 

「タマと? ……なら、今回の事はもう伝わってるみたいだな」

 

 セリエナから古代樹の森に行くには、一度アステラまで戻らなければならない……

 海を横断するのが最短だが、季節風は(セリエナ)方向にしか吹かないので、戻るには海岸線や陸地に沿って飛ぶしかなく、更に少飛竜では何日も掛かりルートも遠回りになってしまう。

 

 だが、シオンなら楽にレクス達2人を運べる上、少飛竜とは比べ物にならない程のパワーとスタミナがあるので、海を渡る最短距離を一気に戻れるのである……その為、レクスはシオンに移動を頼もうと思っていたが、先にタマが話をしに行ってくれていた様だ。

 

『……あ、と……レクス、事情は聞きました……準備ができ次第、出発しましょう』

 

 マイルームを出て、タマとシオンが待っていた入り口へと出てくるレクス……やはりタマが先に話を付けてくれていた様で、シオンから同行を切り出してきた……物資補給所で消耗品を揃えたらすぐに向かおう、レクスは応えた。

 

──────────

 

 道中の空の旅は想定通りに順調すぎたので割愛……そして再び舞い降りた古代樹の森。

 

 ここで「奇妙な痕跡」が発見されたのはつい最近らしい……私は龍気を張り巡らせ、索敵と状況把握に努める。

 

「シオン、気の乱れや異変は感じるか?」

 

『……今は至って普通の状態ですね……特異な存在らしい存在も感じられません』

 

 レクスの問い掛けに、すぐさま私は龍気の感知度を高め……特に異変がないのを確認し答える。

 ()()()()以降……私の龍気制御力はどういう訳か格段にアップしており、こうやって薄く龍気を広げるだけで狩場の生物や植物の反応を感知……()()()()()()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()様になっていた。

 なお、最大知覚範囲は古代樹の森だと「初期キャンプ」から北にある「エリア9」の崖の辺りまで……森の中央にある「エリア2」の北端辺りからなら、ほぼ半分以上を知覚範囲に納められる……

 さらに言うなら円柱状に上空まで龍気を展開できる様になったので、空中を飛ぶ飛竜までしっかりと把握可能だ。

 

「そうか……なら、いつも通り導蟲(しるべむし)に痕跡を追わせよう……シオンは場所を変えて、上空からも探索してみてくれ」

 

 レクスの指示を受け、私は2人と別れ森の上空に上がって再び『龍気感知』を試してみる……

 ほんの僅かだが、いつもと違う反応を捉えた……あまりにも小さいので、この反応は痕跡だろう……既にレクスも気付いてすぐ近くに来ている。

 

 もう少し森の中央付近へ行ってから試してみよう……

 

──────────

 

 森の上空……リオ夫婦が仲睦まじく遊覧飛行しているのを脇目で確認しながら、古代樹の中腹辺りの高度で、再び薄く龍気を展開……場所的にはエリア2北端に程近い空の上、ここならばエリアの端でない限り感知できる筈だ。

 

(……ハンター達も見た事の無い痕跡、何かしらの手掛かりを掴めれば良いのだけど……)

 

 感知を続ける中、レクス達の反応は遠目だがハッキリと分かる……ちなみに龍気感知の感覚で見た人間は、暗闇に浮かぶ小さな光点だ。

 当人の気質にも()るが、龍気感知に映る人間の反応は、だいたいは遠目からでもしっかりと分かる強くて小さい光……現代風に言うなら「発光ダイオード」のようなもの……逆に古龍種や飛竜種は、光の輪郭はぼやけているものの基本的に光そのものが大きく、光の量も個体の強さで強弱が変わる……相対表現なら「白熱球」と言えば良いだろう。

 

(……ッ……居た……場所は……、エリア5から6へ移動してるのね……)

 

 先程とは違い、知覚範囲の外縁辺りをゆっくりと移動する大きな白熱球の様な反応を感知。

 場所は南西のキャンプからは遠く離れたエリア5の付近……それならば最初の感知に掛からなかったのも納得だ。

 

「……? 他にも反応が……」

 

 もう一つの反応には覚えがある……アンジャナフだ。

 古龍種よりかは小さめだが人よりは遥かに大きくて明るく、地上を我が物顔で歩き回る暴れん坊……程よく狂暴で狡猾さも併せ持ち、古龍種が相手でも退かずに縄張り争いを仕掛けるという。

 

(行き先は12から6へ? 例の相手と鉢合わせするわね……少し近付いて見ようかしら?)

 

 どうやら、謎のモンスターとアンジャナフはエリア6で鉢合わせる様だ……レクス達はまだエリア4から11へ移動中……先に行って、様子を見に行ってみよう。

 

 

 ヴォォォォォ……ッ!!

 

 ズンッ!!

 

 グォォオァァァァァッ!!

 

 オォォォォォォ……!!

 

 エリア11へと降り立った直後からアンジャナフの暴れる音に混じって、独特な鳴き声が響き渡る……およそ聴いたことの無い音……鳴き声と言うより、呻き声に近い……

 

『何、この感覚……寒気? セリエナでも感じた事無かったのに』

 

 普段は暖かな森なのに……今は寒気というか、奇妙な悪寒を感じる……

 心なしか風に乗って生温い()()が流れてきていた……ん? ()()

 

『……ッ?! まさか……』

 

 問題の奴が通ったルートへ近付いて、そこにあった痕跡を詳しく調べる……足跡には僅かな腐食の跡と、瘴気の残り香が感じられた。

 その痕跡を辿って来たレクス達が合流してきたのと、私が相手の正体に思い至ったのはほぼ同時。

 

 そして、異変の正体が姿を現す……

 

「む、シオンか……先に来てたんだな」

 

『やっぱり……この痕跡は、()()()の……』

 

「「……えっ?」」

 

 直後、周囲を撫でる風が吹く……争う音は、いつの間にか聞こえなくなっていた。

 風に乗って、周囲に漂っていた瘴気の残り香が全て奴の元へと集まっていく……

 

 風が止み、普段なら聞こえるはずの虫の鳴き声や、鳥の声すら聞こえない静寂の中……静かに響いてくるのは巨大な生物の足音……

 

『……レクス、クリス……音を立てないで下さい、アレは音に反応してきます……今はやり過ごしましょう』

 

 いつもの言葉では、奴に聞こえてしまう可能性がある……私は咄嗟に2人を掴み、思念を身体伝いに送っていた。

 どうやらしっかり認識できたようで、2人とも私の方を振り向いて頷いてくれた。

 

 そして、足音が直近まで近づき……僅かな風の流れと大量の瘴気が渦巻く身体が岩陰から姿を見せた。

 

 フォォォォォ……ッ……!

 

 その身体には幾重にも瘴気の対流と、カビの塊の様なもの……()()()()が纏わり付いていた……

 そして、生きている筈の無い程欠けている様に見える頭や、身体全体が一際濃い瘴気と胞子の塊で覆われている……それは纏う()()との共生関係……

 

 腐敗し朽ちた筈の()()()()()()()()()()()()……そんな外見をしていた。

 

(間違いない……アレが瘴気の谷の王、死を纏うヴァルハザク……!)

 

 掴んだままの私の前足を通じて、私の思念がレクス達にも伝わる……同時に、2人の驚愕と畏怖の念もまた私へと逆流してきていた。

 

(……あんな奴がココに来てるとか……最悪だ! 今の装備じゃ、手も足も出せねぇぞ……)

 

(あ、圧倒的過ぎる……今まで感じた恐怖さえ生温いこの感覚……身体の震えが、止まらない……ッ!?)

 

 その姿は、まさに『動く死そのもの』……

 ただゆっくりと歩くだけなのに、足元から死の恐怖が迫る様な感覚に襲われる……古龍である私に触れていた為か、辛うじて恐怖に打ち勝ったレクスとクリス……ヴァルハザクが去った後の地面には、チリチリと焦げる様に僅かな侵食を見せる痕跡だけが残されていた。

 

──────────

 

「なん……だと……?!」

 

「ヴァルハザクの特殊個体?! 大事にならんと良いが……」

 

「凶兆の先触れでなければ良いのだが、まさか……な」

 

 アステラの古龍研究員達が一様に驚愕に包まれる……ヴァルハザク自体は、以前にレクスが発見し調査が進められていたのだが、この個体はその時とは掛け離れた厄介さを持っていた。

 

「奴は瘴気を常に纏っている様だったな……恐らく、通常個体とは違う瘴気だろう」

 

『ええ、そして……あの瘴気は他の生物にも伝播する上、ヴァルハザクが瘴気を吸収する時……冒された生物は体力を奪われるんです』

 

 アステラで行われた緊急対策会議……その最中に私は、新たに会得した『龍脈の叡智』を使い、死を纏うヴァルハザクの情報を紐解いた……

 

 この『龍脈の叡智』とは、簡単に言うならゲームの攻略本のようなものだ。

 対象の名前・特徴・能力など、様々な情報の断片から相手の詳細な情報や敵対した時の対処法を導き出す……所謂、検索能力を持っている。

 

 会得した直後は、フィ◯ップ君の『◯の本棚』みたいな事が出来る!? とかなり驚愕したが……冷静に考えると転生チートじゃないかな?

 実際、現在から可能な限り遡れる過去のヴァルハザクの情報なんて皆無に等しいし、検索結果を語る毎にどよめきやら何やら色々と声が上がるんだもの。

 

「……瘴気の対処法は?」

 

『ウチケシの実で一応の対処は可能な様です……後は、奴の素材を用いた防具……ですかね』

 

 この『龍脈の叡智』によれば、死を纏うヴァルハザクの素材で造られた防具には『瘴気に冒されない』という特殊能力(スキル)があるらしい……だが、素材が件のヴァルハザクである以上、卵が先か鶏が先か……といった所だ。

 なので必然的に、ウチケシの実による対処に限定されてしまう……

 

「兎も角、奴の対処は入念な準備が必要不可欠だろう……5期団は奴の行動範囲の特定を頼む、瘴気対策も忘れるなよ?」

 

──────────

 

 死を纏うヴァルハザクの出現以降、古代樹の森は不気味なほどの静けさに包まれたもののその影響はさほど大きいものでは無かった。

 

 そして、再び古代樹の森へヴァルハザクの調査へと赴いた、私達の前に現れたのは……

 

『……まさか、貴方は……?!』

 

 全身を鈍く光る甲殻で覆った、輝ける()()()だった。




なんと、古代樹の森に現れたのは
死を纏うヴァルハザクと、()()1()()……!!

鈍く光る甲殻に覆われた「輝ける鋼の龍」とは?
そして、古代樹の森の生態系はどうなってしまうのか……

次回、『同類』。
果たして彼女(シオン)達の運命や如何に……?!

実はアイツも転生者!? 転生者として登場させてみたいキャラクターは?

  • リオレウス
  • クシャルダオラ
  • ティガレックス
  • ナルガクルガ
  • ジンオウガ
  • ラギアクルス
  • ブラキディオス
  • ゴア・マガラ
  • セルレギオス
  • ディノバルド
  • バルファルク
  • ネルギガンテ
  • アイルー系統
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