狩人と舞う白銀の翼   作:睦月透火

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皆さん、お待ちかねぇ~!!
ついに今回、あのモンスターが姿を表します!



冰龍

 マサトさんの修行から戻り、セリエナで武器のメンテを終えた後……アステラで異常事態が起きていると聞いた私達は、季節風に逆らうルートでアステラへと戻った。

 

『……何でしょう、何か違和感が……』

 

 何かがいつもと違う……こう、いつも見ている景色が少しだけ変わっている様な……

 

『……そうかな? 特に変わった様子は見られないけど』

 

「シオンちゃんは、何か違うと思ってるの?」

 

『それが何なのかは分かりません、ですがこう……違和感を感じるんです』

 

「私らは、この森をそんな見慣れて無いからな……何が何だかサッパリだ」

 

 さすがにミラルダさん達は森の様子に詳しくないので気付かなくて当然だ……だけど私の感じた危惧は、思ったよりも深刻な事態だった。

 

──────────

 

「最近、ジャグラス達の動きが鈍いんだ……」

 

「君達はプケプケを見なかったかい?」

 

「アプトノスの数が目に見えて減っているんだ」

 

「特産キノコが……見つからないっ!!」

 

 定期的に森へ出るハンター達の多くは、拠点で消費する食糧の調達や偵察……住み着いている特定個体のモンスターの生態調査を行う者がほとんどだ。

 森の様子に変わった事が無いかと聞いたところ……ほぼ全員が何かしら今までと違うと感じていた。

 

『一体、何が起こっているのでしょう……』

 

「さぁな……だが、このままじゃ食材の補給が出来ねぇ……この事態が続くんじゃメニューを見直す必要も出てくる」

 

 調理ネコ達も一様に悲壮感を漂わせており、アステラの料理長を務めるディランさんの言葉に、意気消沈の鳴き声を上げた。

 

『思ってたよりもかなり深刻じゃないですか……!』

 

 原因は不明ながら、古代樹の森の生き物達が活動を鈍らせたり、環境の変化で姿を消して食糧の確保が難しくなっている……これはさすがにかなりマズい事態だ。

 

『おや? レクスさんは?』

 

 この異常事態に不在のレクス……マサトさんが気付いて問う。

 

「数日前、例のヤツ(黒ダオラ)が陸珊瑚の台地で目撃されてな……彼はその調査に向かわせている」

 

 事態が急変したのはレクスが出立した後の事だったので、彼はこの事態を知らないとの事……しかし、黒ダオラの動向を掴む事が出来れば、ハンター総出で消耗を狙い、彼を止められる可能性も出てくる……

 

 総司令バンさんは重要度を鑑みた末……黒ダオラの動向調査をレクスに一任する事とし、敢えて呼び戻さなかった様だ。

 

『そうですか……仕方ありませんね、エイデンさんに同行をお願いしましょう』

 

 エイデンさんは、レクスと同じ5期団のハンター……本土ではなかなか名の通った人らしく、ドントルマやミナガルデ出身のハンター達は彼を知っている人も多かった。

 

「あのシオンちゃんが、同行に俺をご指名とは……モテ期かな?」

 

「……馬鹿な事言う暇があるなら、この荷物を運ぶの手伝いなさい!」

 

「おお怖っ」

 

 エイデンさんの、この悪癖さえ無ければ人気ありそうなんだけどなぁ……パートナーの編纂者「エリス」さんの気苦労が絶えないのには同情する。

 

──────────

 

 森の調査は私達だけでも良かったのだが、マサトさん達も「今までのお礼」として手伝ってくれる事となった……これぞ『持つべき物は友達』という事ですね。

 

『古龍の気配が微かにします、二手に分かれましょう……マサトさん達は海岸沿いの方をお願いします、私達は古代樹の周辺から』

 

『分かった、キミ達も気を付けるんだよ?』

 

「ええ、そちらも……危険を感じたら、スリンガーで救難信号を……すぐに向かうわ」

 

「美人さん達の頼みなら、何を置いても駆けつ『ドゴッ』ガフッ……!」

 

 エリスさんは心配して言ってるのに、エイデンさんの茶々で台無しだ……エリスさん、次は私が頭を咥えますよ……こう、上からこめかみ部分を挟み上げて『締め上げる』感じで。

 

 

 先程まで茶々を入れていたエイデンさんだったけど……調査を開始した直後から、その顔付きや態度は一変していた。

 

「……コイツは、凍ってるな……生物の痕跡にしちゃ珍しい……というか有り得なくないか?」

 

 至る所に散見される『凍った足跡』……生物が物を凍らせる事など通常ではあり得ない。

 生物とは基本的に熱を発しながら生きている……火竜リオレウスの様に燃やせても、凍らせるなど不可能なのだ。

 

『……凍る……ベリオロスとはまた違う痕跡ですよね……一体誰の痕跡なのでしょうか?』

 

「う~ん、私にもサッパリ分かりません……」

 

「取り敢えず、痕跡を調査して……情報を集めましょ、もしかしたら新種かも」

 

 エリスさんの提案に乗り、3人で周辺の痕跡から僅かな情報を収集する……そういえば、マサトさん達は大丈夫なのだろうか……

 

──────────

 

 その頃、マサト達は……

 

 ガァァァァオォァォォンッ!!

 

『さすがに2体同時は勘弁して~っ!!』

 

 ヴォォォアァァァッ!!

 

「縄張り争いの真っ只中に出るとかマジであり得ないわ! どんな確率よ?!」

 

『取り敢えず撤退ぃぃぃ!!』

 

 ……事の発端はこの数分前に遡る。

 

 海岸沿いの調査のため、降り立ったキャンプ地から樹木の間をすり抜けてエリア1へと出ると、目の前でナルガクルガとディノバルドが壮絶な縄張り争いの真っ只中……しかも、避けた先でマサトがうっかり光虫を潰してしまい、放たれた強烈な閃光がディノバルドとナルガクルガへ命中……更にその影響で2体とも()()()()へと移行して闇雲に暴れ始めてしまい、どんどん収拾が付かなくなっていく……

 トドメにディノバルドの刃尾が叩き付けられた直後にナルガクルガがその真上に移動、ディノバルドが刃尾を上に振り上げる動作にナルガクルガが捲き込まれ、まるでピタゴラスイッチの如くディノバルドとナルガクルガは、お互いの行動が切っ掛けでダメージを蓄積させつつ延々と互いを無意識の内に煽り続け……ようやく閃光の影響が収まった直後に2体が視認してしまったのは、何故かマサトの姿……

 

「ちょ……やばっ!!」

 

 天羅が次に何が起こるか気付くも、時既に遅し……

 

『『てめぇのしわざかァァァァァァ!!』』※意訳です

 

 慌ててキャンプに逃げ戻ったマサト達……その後ディノバルドとナルガクルガが去るまで、ろくに動く事すら出来ずにいたのである。

 

──────────

 

 森での調査を終えた後……再びセリエナで驚くべきモノが発見されたとの事で、トンボ返りの如くセリエナへと向かった私達に見せられたのは……完全に芯まで凍ってしまったアンジャナフの死体だった。

 

「ああ、お前達か……見てくれ……

 あのアンジャナフが完全に凍結しちまってる……しかも、皮膚片や細胞組織の状態から、凍結した直後までは生きていたらしい」

 

『そんな……?!』

 

『嘘でしょ?!』

 

 セリエナの冷気がいくら強くても、たった数分でアンジャナフを凍結させる事など不可能だ。

 ……現にアンジャナフは、セリエナの外で元気に活動しているのを何度も目撃されているし、況してや生きている生物をそのまま凍らせる事などあり得ない……通常の凍死なら、先に寒さで命を落とした生き物が凍るという順番なので、生きたまま凍るなど自然界では起こり得ない筈なのだから。

 

「……もしかして、これが今回の現象の大元……?」

 

 ミラルダさんは何かに気付いた様だ……古代樹の森の異常な寒冷化に始まり、残された痕跡……その痕跡は、他の地域に出向いたハンター達からも発見の報が寄せられており、各地で発見されていた。

 そしてここに来て、凍ったアンジャナフの発見……元凶は明らかに移動しているのだ。

 

「成る程……確かにこれが、仮に生物の仕業だとすれば、移動しているのは納得だが……」

 

『そんな生物が、存在しているのでしょうか……?』

 

 仮に生物……古龍だとしても、何の目的があって移動しているのか……何故、今になって活動しているのか……大まかに分からない事は2つあった。

 

「兎に角だ……元凶が古龍なら、捜索方針を一部変えなくちゃならない……

 

 エイデンはシオンを連れて、古龍の目撃情報が多い龍結晶の地を調査してくれ……ミラルダさん……貴女達が部外者であるのは承知の上だが、今一度協力をお願いしたい」

 

 レオンさんの指示にエイデンさんは頷き、早速準備に取り掛かる……

 協力要請を受けたミラルダさん達も「ここまで付き合った訳だし、最後まで見届けたいわ」と快諾してくれた。

 

──────────

 

 同時刻……龍結晶の地に、1体の古龍が舞い降りる。

 

 その全身から放たれる極低温の冷気は、古龍の足元から大地に伝播していき……至る所で瞬く間に霜柱が発生、更に加速度的に大気温は下がっていく。

 

『……彼の龍は、一体何を画策しているのでしょうか……

 もし、(わたくし)の妨げになるのでしたら……覚悟して頂きますわ……!』

 

──────────

 

 一方、マサトは龍結晶の地に赴く前……1期団のフィールドマスター「カルラ」さんと話をしていた。

 

「アンタが噂のクシャルダオラ……マサトって言うんだっけ? アタシはカルラ、調査団の1期メンバーでフィールドマスターをやってるわ」

 

『え、あ……どうもです、クシャルダオラやってますマサトです』

 

 突然話し掛けられたマサトの反応に苦笑するカルラだったが、すぐに切り替え話を切り出す……

 

「アンタ達は確か、この地に居るっていう古龍に会いに来たって言ってたわね?」

 

『ええ、確か……イヴェルカーナって……』

 

 マサトが名を出した瞬間、カルラさんの表情が急変しマサトの襟元へと踏み寄る。

 

「そいつは口伝にのみ残る伝説の古龍よ、その名はどこで知ったの?」

 

『え、それは……あの、和の国にいる……ナルハタタヒメとイブシマキヒコっていう2体の古龍から……』

 

 和の国……正確にはシキ国と呼ばれる、三日月型の島国に存在するカムラの里……そこにのみ出現するという1対の古龍……それが、ナルハタタヒメとイブシマキヒコであった。

 

「……知恵ある古龍達はお互いを認識し合い、秩序の輪を描く……あの人の言っていた通りね……!」

 

 カルラさんはマサトの情報にブツブツと考察を深め、やがてひとつの結論に達した。

 

「アタシも同行するわ……アンタ達だけじゃ、イヴェルカーナを探すのは骨が折れるわよ?」

 

『えぇっ?! 本気ですか!?』

 

 イキナリ同行すると言い出すカルラ……マサトは驚くが、どうやらイヴェルカーナの捜索にアテがあるらしい……

 

 

『カルラさんも来るんですか?』

 

 私はマサトさんの後ろから回り込んできたカルラさんの姿に気付く……背負った荷物を見る限り、絶対に付いて行くぞという気概がアリアリと見える……これはマサトさんが何かヤラカシタのかも知れない。

 

『……分かりました、カルラさんはクリスと私の背中に……マサトさん?』

 

 マサトさんの方を見ると、ミラルダさん達が鬼気迫る形相でじゃんけんをしていた……背に乗る枠というか……同行する際の方法を()()で決めているらしい。

 

 ……ぶっちゃけ、最初ココに来た時に3人とも乗っけてたんだからそうすればいいのに。

 

──────────

 

 道中は何事もなく、龍結晶の地にある初期キャンプのエリアへと降り立つ全員……だが、降り立つ前から私とマサトさんだけは警戒を強めていた。

 

『シオン……あの先だ、かなり強い気配がする』

 

『はい、私もしっかりと感じています……間違いなく古龍ですね』

 

 キャンプ地からすぐ地下へと降りる洞窟の入口から、物凄い威圧感が漂っていた……新大陸で歴戦の猛者であるレクスなら、同じく真っ先に警戒しているであろう。

 ミラルダさん達もマサトさんの様子から察していた様で、万が一を考慮し持ち込んだアイテムを確認したりしている。

 

「……シオン、あの下には古龍が居るんだな?」

 

『えぇ、まず間違いなく……強さは私なんかよりも遥かに上の相手です』

 

『そういうシオンも、実際は結構強いと思うんだけどねぇ……』

 

 エイデンさんも珍しく真面目モードだ、マサトさんが私の自己評価の低さを疑問視しているが、今は置いておく。

 ハンター4人と編纂者2人……そしてフィールドマスターに古龍2体という大人数で、初期キャンプからすぐ地下へと伸びる道を進み……エリア8へと降りていく。

 

「これは……」

 

「前に来た時より、随分と涼しいわね……」

 

「おばさま、ここにも例の痕跡が!」

 

 エイデンさんがこの場の違和感に気付き、エリスさんが気温の変動を口にする……クリスが駆け出し、カルラさんに見せた痕跡は……完全に凍った植物と、それを踏み付けて残った足跡であった。

 

「……この痕跡、どこかで……」

 

 カルラさんはクリスと考察に入り、エイデンさんとミラルダさん達はハンターらしく周囲の警戒へと移行……私もマサトさんと二手に分かれて警戒しつつ、周囲を探索する。

 

 ふと、そこへ風が吹き込んできた……しかし、溶岩流が流れ込んだりするエリアが近いのに、吹き込んでくるこの風は()()()()()()……いや、これは涼しいというレベルじゃない。

 

『……っ!? 皆さん警戒を、来ます!!』

 

 私の声に反応した全員が一斉にコチラを向く……その直後、奥のエリアへと続く通路の方から()()()()が凄まじい速度で放たれ……それはクリスの頭上を通過し、壁面を一瞬にして凍結させて巨大な氷の塊を生成した。

 

「……構えろ! 奴が突っ込んできたぞ!」

 

 クルルゥゥアァァァァァッ!!

 

 独特な鳴き声と共に滑空攻撃を仕掛けてきた白い大きな影……狙われたのはマサトさんだったが、マサトさんは得意の暴風壁を展開して自身は上空へと退避、白い影は暴風へと突っ込むが大したダメージにはなっていない様だ。

 

『イキナリな挨拶だね……短気なのは損だよ?』

 

『マサトさん、油断しないで! あの白いのは……!』

 

 暴風の渦から更に白い液体が風を切り裂いて放たれ、今度は私の足元へと着弾……先ほどと同じく、一瞬で氷塊を生成していく。

 

(間違いない……この速度で物を凍らせるなら、『過冷却水』!)

 

 過冷却水とは、液体が()()()()()()()()()()()でなお()()()()()()()()水の事で、何らかの刺激を与えるとその瞬間からガチガチに凍ってしまう。

 あの生物は口から過冷却水を吐いてこの現象を引き起こしているのだ……生物にとって、凍傷がもたらすダメージは火傷よりも遥かに酷く、僅かなダメージでも致命傷になりかねない。

 

『あのブレスは絶対に避けて! おそらく当たったら即死は免れない……!』

 

 全員に一瞬だけ戦慄が走る……だが、常に命の危険と隣り合わせの世界に生きるハンターは、その程度では止まらない。

 

「俺が援護する、美人さん達は無理しない様に……深追いせず、一撃離脱で構わないから」

 

「了解!」

「見たこともない相手ね、久々に腕がなるわ!」

「私も、二方向から攻め立てます!!」

 

 アミラさんの矢を皮切りに戦闘が開始される……クリスやカルラさん達をフィールドの入り口まで下がらせ、私も援護しに戻ろうとした時、カルラさんから衝撃の一言が飛び出た。

 

「待ちなさいアンタ達! ソイツこそが口伝に残る伝説の古龍……アンタ達の探してた『イヴェルカーナ』よ?!」

 

 ……え、マジっすか……?




本小説で取り上げるMH世界の国や地域の位置関係などは、
下記リンク(youtube)の考察動画を参考にしています。
https://www.youtube.com/watch?v=MrLB2pQapxA

また、ナンバリングタイトルや各シリーズと、RiseやWorld・ICEBONEの時間軸は
シオンの誕生からマサトの到着までの期間を考慮し

World → Rise → ICEBONE という事になっていますのであしからず。

登場に期待している(ラスボス系)キャラクターは?

  • ネルギガンテ(オリジナル二つ名持ち)
  • アン・イシュワルダ
  • ムフェト・ジーヴァ
  • アルバトリオン
  • ミラボレアス
  • その他過去作のラスボス級モンスター
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