咄嗟の行動で殲滅に成功……救援に駆け付けたハンターと合流できた。
しかし、彼等からもたらされた情報に……私達は再び焦る事になる。
「ようやく合流できたな……あんた等、全員無事か?」
『エイデンさん! 救援に来てくれたんですか!?』
「ああ、急いでお前達に伝えなきゃいけない事があってな……!」
緊急の要件? この状況で緊急を要する事態というなら……もしかして……
『……まさか……?!』
『……ッ?!』
いつになく神妙な面持ちでエイデンさんの口から出た言葉は……
「よく聞け……今、例の黒鋼龍がアステラを強襲している」
ついにその時が来てしまった……アイツはマリナさん達を下僕として従えようとしていたから、多分「戦力の拡充」をしていたのだろう。
それが済んだから、アステラを強襲……ん? ちょっと待って……何か見落としてる気が……
『エイデンさん、エリスさんは……?』
「あぁ、俺とは別行動でセリエナに救援を求めにな……それがどうかしたのか?」
悪い予感が当たってしまった……最近、こんな風に悪い予感ばかり当たってしまう。
恐らく、黒鋼龍はアステラだけでなくセリエナにも下僕を送り込んでいる筈だ……もし、それが自身と遜色ない強さの存在だったなら……?
『それは罠だ! アイツはセリエナにも下僕をやっているハズ……!』
マサトさんも同じ考えに行き着いていたらしく、罠だと看破した……もし、このままアステラとセリエナにそれぞれ別れたら、恐らく各個撃破され……アステラかセリエナに纏まって救援に向かったとしても、片側で手こずっている間に挟撃されるだろう。
『……私のせいだ……私がもう少し強くて、黒鋼龍をどうにか出来ていれば……!』
そう呟くと共に翼を広げ、風に乗ってアステラへと飛翔しようとするマサトさん……ミラルダさん達を置いて行く気なのか、普段は起こさない強風を纏った行動に、私達は身動きが取れず……飛び去るマサトさんを見送る事しか出来なかった。
『……マサトさん、焦ってる……? 黒鋼龍を抑えられなかったから、責任を感じて……』
「そんな?! 前もアイツは従わないマサトを殺そうとしてた……今アイツの前に出たら……!」
「そんな事をすれば、今度こそ確実に殺されるぞ……!」
「……ッ、マサトさん……!」
ミラルダさんの訴えに、残酷な結末を予想するレオンさんの言葉……それを聞いて悲痛な声を上げるアミラさん……私だって見殺しにはしたくないし、今すぐマサトさんを追って加勢してあげたい……でも、黒鋼龍はセリエナにも手を回しているはず……確実に苦戦を強いられているだろう。
(天秤に掛けるしかないというの……!?)
私にとっては、アステラもセリエナも、そしてマサトさんも同じくらい大切だ……そう簡単に天秤に掛ける事などしたくないし、する気もない……だが、状況はそれを許してくれない。
『……私は……どうしたら……』
ふと、零れた言葉……クリスやデュークさん、レオンさんも歯痒そうに拳を握っている……その時だった。
《……何じゃ、何をそんな穴ぐらで悔やんでおる? 早う此所まで上がって参れ》
古風な言い回しと、少し変わった響きの声……頭上から降り注いだ声に、私はすぐ相手を理解し、翼を広げ飛び上がった。
3期団の気球船が錨を下ろし、陸珊瑚の台地に空いた大穴へと鎖が降りている場所……大穴の縁で待っていたのは、この地を根城とする存在……激流のぬしとも呼ばれる古龍「ネロミェール」……スイレンさんだった。
『しばらくぶりじゃな、シオン……何じゃ? えらく思い詰めた顔をしおって……』
『……それは……』
私は言い淀んだ……この件に
『……うん? 何か勘違いをしておる様じゃが、妾は他ならぬ、お主を心配しておるのじゃ……お主の行動は長く退屈だった妾に、久しく忘れておった
そんなお主がそれほど深刻に悩む事じゃ、妾も無関心では
直接関わる事は少なかったとはいえ、スイレンさんは私の行動を初めからずっと見ており……それを楽しみにしていたという。
知らず知らず監視されていた事に驚きはしたものの、全く嫌な気持ちにはならなかった……多分、私の精神構造の一部はもう人間では無く……古龍「ゼノ・ジーヴァ」へと変質しているのかもしれない……
しかし、手前勝手な理由とはいえ「悩み事ならば話しなさい」と快く言い放ったスイレンさんにはもう感謝しかない……私は今までの経緯や、マサトさんと黒鋼龍との確執をスイレンさんに打ち明けたのだった。
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『成る程……黒鋼龍、か……何とまぁ、馬鹿な考えを持つ愚かな者よの……』
私の拙い説明をしっかりと理解し、スイレンさんはヤレヤレ、という風に黒鋼龍の野望を「愚か」と切って捨てた。
『この世の全てを治めるなど、単一の生命には過分に過ぎる……世は多くの生き物が支え合って初めて成り立つのじゃ、それを己のみで御せると思うなど……愚かの極みよのぅ』
『……どういう事ですか?』
『簡単な事じゃ、この世の
今あるこの流れは、それを
己の意識など単に「川に浮かぶ小舟」に等しきモノ……そして世界とは、永劫絶えぬ流れを湛える大河なのじゃ……故に、己が力のみで世を統べるなど、無駄な足掻きよ……』
小舟が大河を渡る事は出来ても、流れを変える事など出来ない……スイレンさんの持論は、聞いていた全員に納得できるものだった。
『……じゃが、それとコレとは別の話じゃ。妾の楽しみを間接的にとはいえ奪う……その黒鋼龍にはキツい灸を据えてやらねばならん』
『……は……ぇ?』
『セリエナとやらは妾に案がある……まぁ任せよ、お主はマサトを追うが良い……!』
言うが早いか、スイレンさんは翼を広げ飛び上がり……呆気に取られた私を見下ろしながらそう言い残して飛び去っていく……
スイレンさんが飛び去るのを、下から上がりつつ私の背中越しに見たクリス達も、何が何だか訳が分からない……という風な感じだった。
でも、私には……何だか、上手く行ったのではないか? という奇妙な確信が浮かんでいた。
何故かは分からないけど……あのスイレンさんが『妾に任せよ』とまで言ったのだ、悪い様にはならないと思う。
「……シオン、スイレンは何て……?」
『多分、セリエナはもう大丈夫……私達はアステラに向かいましょう! エイデンさんは、念のためセリエナにお願いします!』
「お、おぅ……分かった」
「俺もセリエナへ行こう……アステラには師匠も居るし、シオン達が行くなら心配要らないだろうからな」
「……シオン、私達を乗せて行けますか?」
ミラルダさんは懇願するように私に頼み込んでくる……最初からマサトさんには彼女達が必要なのは分かっている……嫌でも連れて行くつもりだったから、願ってもない事だ。
『勿論です! ミラルダさんは背中へ……天羅さんとアミラさんもコッチに!』
ミラルダさんを背中に乗せると、私はすぐに立ち上がり……天羅さんとアミラさんを前足で掴んで飛び上がる。
クリスは自分の小飛竜を口笛で呼んでスリンガーで掴まり、デュークさんは3期団のハンターと拠点へとレクスを移送する為その場に残る……
「……全員、無茶はするなよ? 片付いたらすぐに行くからな!」
レオンさんの激励を背に、私達はアステラとセリエナに別れ……共に迎撃へと向かうのであった。
スイレンの絡みがやや強引な気がしますが……
こうでもしないとセリエナを救えないので致し方無く。
一足先にアステラへと向かったマサトですが
相棒でもあるミラルダ達を欠いた状態であの黒鋼龍に対抗できるのか……
そして、自信満々なスイレンの案とは……
次回の白銀の翼はシリアス回……黒鋼龍の驚異、本格化。
黒鋼龍編の後は?
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バルファルクと関わる2つ目のコラボ
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アイスボーンシナリオ本編
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オリジナル閑話、または日常回