狩人と舞う白銀の翼   作:睦月透火

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黒鋼龍・アギトがアステラを急襲。
迎撃に出るハンター達と共闘するマサトだったが、アギトとの能力的な相性で大ダメージを負ってしまう……
シオン達も追い付き、総力戦になるがアギトはハンター達の動きを読み切り、更にシオンすらも手玉に取っていく……
そしてシオンの隙を突き、放たれた黒鋼龍の攻撃から身を呈してシオンを庇ったのは……

……マサトを看ていた筈のミラルダであった。



兆候

 目の前で風弾の直撃を受け、吹き飛ぶ人影……私の隙を突いて放たれた攻撃は、私の首を狙ったものだった。

 

『……う……そ……ミラルダ……さん……?』

 

 まるでスローモーションの様に見えるその光景に、人影の正体を知ってしまった私……驚愕と絶望に声が上手く出ない……それでも声を上げなきゃ、身体を動かさなきゃと焦る。

 

『……ハッ、人間が自らノコノコ喰らいに来るとは……』

 

 そう言いながらもアギトは私を嘲笑うかのように風弾を乱射してくるが、地脈を通して炸裂させたエネルギーで相殺し、すぐさまミラルダさんの側に駆け寄る。

 吹き飛んだミラルダさんの身体は辛うじて呼吸をしているが、それも虫の息であり、呼吸音に混じって聞こえてはいけない様なヒューヒューという雑音がしていた……人体構造の把握はしているが、明らかに不味い……肺に骨が刺さっている上に動脈からも出血しており、喉に血が逆流していて呼吸を妨害している、更に全身の骨や筋組織、神経までもズタズタに引き裂かれ、もはや回復薬や秘薬ですらほんの僅かな延命にしかならない程の致命傷だった。

 

『……ぁ……あぁ……やだ……だめだよ……ミラルダ、さん……』

 

 想像するに難くない「人の死」という現象……身近な存在が、命の灯火を消されようとしている……私はやるせない怒りと、それを上回る哀しみに全身を揺さぶられ……頭の中は、己の声無き慟哭で一杯になっていた。

 

『マサトさん……と、旅を……続けなきゃ……貴女達……2人は、こんな所で終わっちゃ……ダメなのに……!』

 

 頭が急激に冷え、胸の奥が焼け付く様に熱い……哀しみに捕らわれ、私の心は冷静さを失っているのに……身体が突き動かされる……ミラルダさんの身体にそっと触れ、今にも消えてしまいそうな灯火を感じる。

 

 私の心は、この灯火を消してはいけない……と強く願った。

 

──────────

 

side:マサト

 

 それはスローモーションに見えた……何かの間違いだ。

 

 吹き飛ぶ彼女の身体……私の側に居た筈の温もりが、私の小さな同胞を守る為に駆け出し……その盾となった。

 

『……ハッ、人間が自らノコノコと喰らいに来るとは……』

 

 目の前の黒い同類……この騒ぎの元凶、そして……私の大切な存在を踏みにじった、敵。

 

 

《……哀しいか……?》

 

(誰かの声が聞こえる)

 

《だが、コレはお前の選んだ選択だ》

 

(……分かってるさ、そんな事は……! でも……)

 

《あまりにも残酷、か?》

 

(…………)

 

《……こぉらっ! そんな言い方ダメでしょ?!》

 

《む、済まん……癖でな》

 

(……?!)

 

 私は今、時の止まった色の無い空間で、2つの()()と対峙している……

 片方は黒……まるで全てを塗り潰す、漆黒……

 

《……我は元々こういう性分なのだ、許せ》

 

 漆黒が声を発し、その実像が徐々に露になっていく……

 

 彼の姿は厄災の化身、全ての頂点にして絶望……黒龍ミラボレアス。

 

《……まったく、この子はいっつもこんな調子で……ごめんね、悪気はないのよ》

 

 もう片方は白……何物にも侵されぬ、純白……声と共に実像を帯び、ミラボレアスと良く似た体躯の龍が顕れる。

 彼の姿は数多の龍の祖、全ての始まりにして希望……祖龍ミラルーツ。

 

《……ココは龍脈の中の、世界の隙間……と言えば良いか? 今、貴様は我々の干渉を受け、意識のみでこの場に存在しているのだ》

 

《現実の時間とは切り離された場所……といっても停止してる訳じゃないから、手短に言うね。

 ……キミは、()()()()()()()()()()()絶対に守りたいモノ……ある?》

 

(……ある……!)

 

 2体の禁忌が放つ異様な雰囲気に押されっぱなしではあるけど、私は負けじと問いに答えた……掛け替えの無い伴侶たち(ミラルダ・天羅・アミラの3人)共に生きる大勢の命(私を受け入れてくれた人たち)、そして……同じ境遇の仲間(転生古龍のシオン)

 

(私は皆を失いたくない……!)

 

 凶悪な顔してるクセに、その雰囲気は実に穏やかなミラルーツ……私の返事がよほど嬉しかったのか、ニヤニヤと隣のミラボレアスを肘で小突く……対するミラボレアスは小突かれてかなり嫌そうな雰囲気……でもそれは一瞬で、咳払いと共に私に向き直る時にはもう威厳のある雰囲気でこう言った。

 

《……ならば、抗って見せろ……その為の「力」は既に貴様の内にある》

 

(……え……っ?)

 

 疑問だらけのままなのに実像が霞み始め、視界が白く塗り潰されていく中……声だけが響いてきた。

 

《……覚醒のキッカケ位はくれてやろう、後は貴様次第だ……》

 

《フフッ、頑張ってね♪》

 

 

──────────

 

 ほんの一瞬の事だった……禁忌古龍2体との邂逅は、夢の様なものだ。

 

(でも……夢じゃない)

 

 あの直後からだろうか、身体中が熱に溢れている……全身はボロボロでマトモに動けなかった筈なのに、動けている……

 

『……ん? フンッ、まだ死んでないか……まぁ良い、どうせあのままでは助からん……どうだマサト、こんな脆弱な奴等を生かす理由は無い。

 お前も自然の摂理に』

 

 『黙れッ!!』

 

 私は身体中に溢れるエネルギーを感情のままに解き放ち……目の前の()にただ一言をぶつけた。

 

side out……

 

 突然巻き起こった黄金の竜巻が、黒鋼龍の纏う風と共に薄暗く曇っていた空を切り裂いて行く……それと同時に、私はその風から3つの力を感じた。

 

『……な……何だ……この風は……その力は……?!』

 

 黒鋼龍もその力に驚いたのか……声に明らかな動揺が現れていた。




次回、ついに【刃耀を繰りしモノ】が目覚める……

真の強者とは、力に溺れず、悲しみを知る者である。

覚醒と聞いて想像するシーンは?

  • 孫悟空(スーパーサイヤ人・初)
  • 激昂したラージャン(闘気硬化)
  • ウルトラマンティガ(グリッター化)
  • ドモン・カッシュ(明鏡止水)
  • 黒龍ミラボレアス(MHW:IB)
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