狩人と舞う白銀の翼   作:睦月透火

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こんなに間が空いてしまいました……
モチベーション維持するのも大変だぉ。



前回からの続き。

猛毒により片目の視力を大きく損なうも、動き回れる程に元気を取り戻したシオン……
身を案じていたマサト達も一安心といった所だが、これ以上長居する訳には行かない事情が……

次なる地へ向かうべく奮闘する彼等、
今回はそんな旅立ちまでの一幕……



出立

 毒の後遺症で片目の視力を損なってしまったものの、シオンは元の調子を取り戻す。

 

 直接的、間接的にも多大な影響を及ぼした件の黒鋼龍はついぞ見つからず、アステラやセリエナにも以前の穏やかな日々が戻って来ていた。

 

 そんな折、ハンターギルドと古龍調査研究所の連名でアステラに書簡が届く……

 

 ……その内容は、新大陸外部から来た古龍の調査指令……

 そしてそれと共にあるハンター等の出頭命令であった。

 

──────────

 

「……やっぱ、来やがったな。まぁ、今まで遅くなったのは事態の収拾を優先させたかったからだろうが……もう放置は無理だな」

 

「ギルド本部に対して隠し事は通じん、我々がこれ以上庇う姿勢を見せれば、我々派遣人員の解任……或いは調査団全団の撤退指示もあるだろう……」

 

 グランの一言に、バンは頭を悩ませつつそう語る。

 

 彼らは曲がりなりにも調査団と共闘し、降り掛かる火の粉を払っていたに過ぎないし、新大陸や調査団の事情も此方へ到着後にようやく知ったようなもの……

 ハンター3人を乗せても単身で飛べるクシャルダオラ(マサト)とはいえ、向こうからここまでの長旅、そして先の戦闘によるダメージが重なり大きく疲弊している。それ故の温情もあって早々に追い出す事をしなかったが……それが却って悪手となってしまった。

 

「コイツを無視すりゃ、俺等ゃ全員新大陸の調査から降ろされるかもな」

 

「だが、彼等を我々の事情に巻き込む訳には行かん。どうにか……」

 

『……やはり、そうなりましたか。マサトさん達も、新大陸ではイレギュラーですものね』

 

「……なんだ、聞いてたのか」

 

 バンの対策云々辺りで突然会話に割って入ってきたのは、シオンだった。

 ……何となくだがシオンは事態の推移を予測していた様で、ため息と共にマサト達の存在をギルドにとって“イレギュラー”だと推察していた。

 

「お前さんは、最初からこの事態を想定してたってのか?」

 

『……あの方達が来て、黒ダオラが現れる少し前からです。私も調査団の事情は概ね把握してますし、この新大陸を一種の“特別保護区域”であるとすれば、対処するのも当然の事かと』

 

「……ふむ」

 

『……ですがそれはギルド側の思惑であって、マサトさん達には関係のない事。私個人としては、彼等を()()()()()()()()()()()()()()()方が良いと思います』

 

 ハンターを束ねる組織として、今回のギルドの対応は当然の事である……しかし、シオンはお互いに大恩ある相手となったマサト達を無情に突き出す事はせず、“猶予がある今の内に”自分達の傍から離れて貰う事を進言した。

 

「……猶予がある?」

 

『直接接触を行った調査団を、態々経由しての出頭指示……それはあの人達の出自や身元が、まだギルド側(あちら)には知られてないと思えます。なのでこちらからの情報を経由してギルド側に身元が割れる前に脱出して貰えば、いずれ明らかになる問題とはいえ、しばらくの間は有耶無耶にできる筈です』

 

 そう、今ならばまだギルド側には、マサトに同行するミラルダ達の身元や詳細等の情報がほとんどなく、身元判明からの名指しで追求されるまでにはまだ猶予がある。

 そうなる前に自分達から離れて貰えば、しばらくとはいえ追求も遠のくだろうとシオンは踏んでいるのだ。

 

「……時間との勝負だな。定期船は問題さえ無ければひと月毎に来る。次までに彼等が出立準備を整えられるならば良いが……」

 

「その程度なら俺らも手伝えるだろ? 装備のメンテや補給も、バレない程度に手伝ってやろうや」

 

 ならばとグランは、自分達の領分を崩さない程度でコッソリ手伝ってやれば良いと言い出した。グランも今回のギルドの方針には異を唱えたいと考えている。即答にも近いグランの言葉に、バンは少し呆れながらも、己と同じ想いであった事に口元を綻ばせつつ方針を固めた。

 

「……シオン。急で悪いが、橋渡しを頼めるかな?」

 

『それは勿論。マサトさん達にも(ギルド側の方針含め)“それとなく”伝えておきます』

 

 シオンは調査団と行動を共にしているとはいえ、対外的には古龍として独立した存在……ギルド側には単に“友好を示した古龍が居る”としか報告されていない。

 その為、少なくとも今回の指令で迂闊な事が出来なくなった調査団のハンター達とは違い、何の制約もなくマサト達と接する事ができる。

 

(私の事が(おおやけ)になってないのは意外だったけど……マサトさん達の件はさすがに黙秘よね、大混乱必至だもの)

 

 マサトは古龍にして、ハンターとはいえ女性を3人も囲うハーレム保持者……“恋愛”に関しては無知も良い所だが、妙な所で察しの良いシオンはマサト達の関係を“混乱の元”だと理解していた。

 

──────────

 

 所変わって古代樹の森……マサト達は崖のあるエリアに特別に拓かれたキャンプで、先の戦いの傷を癒している。

 

 その傷も大方は癒えた所ではあったが、訪ねてきたシオンからギルドの方針や調査団の置かれた立場を説明され、キャンプ内には重たい空気が立ち込めていた。

 

「……さすがにこの要請は断れないわ。ギルドナイトが来れば、私達は問答無用で連れ戻され……最悪、情報封鎖を兼ねて殺される可能性もある……」

 

「ギルドナイトは俺達よりも遥かに格上の装備と、あらゆる戦闘に長けた集団だ。“暗部の粛清部隊”なんて噂もあるぜ……」

 

 幾多のハンターが集う大都市……特に地方最大のドントルマは有名だ。

 ミラルダや天羅も、短い間とはいえ都市部で活動した事はあり、その間ギルドナイトの噂は確かに聞いていた。

 

 恐怖を煽る噂まで振りまかれると言われる、ギルド最強の部隊……さすがに彼らに出張られてしまえば、ハンターは全員、手も足も出ないだろう。

 

『何だか途轍もない事に発展してない? 大丈夫だよね私達……!?』

 

 ミラルダと天羅の話で、転生前の記憶と合わせ恐怖を感じ始めるマサト……シオンはその辺り全く感知していないが、()()()()()は頭の中にあった。

 

『そうならないよう、私が知らせに来たんです。本格的にギルド側の手が来ていない今の内にココを発つしか、皆さんを救う方法はありません……ままなりませんね』

 

 そう言ってシュンと下げたシオンの頭を、アミラは優しく撫でながら口を開いた。

 

「……いいえ、ありがとうございます。こうして私達に危険を知らせに来て下さっただけで、調査団の皆様の優しさも十分に伝わりましたわ」

 

「……だな。知らないままココに居て、突然ギルドナイトに連行されるよりかは遥かにマシだ」

 

「そうね。出来るだけ早くココを発てば、もう暫くは追及を逃れられる……それが分かっただけで十分よ」

 

『ありがとうシオン……調査団の皆さんは、この事は?』

 

『既に全員に知らされ、調査団としては“関与しない”事になっています……ですが、個人的に裏で何かしら動いている方もいらっしゃるかと』

 

『成る程……そういえば、何故私達の事が何でギルド本部に知られたんだろうか……今まではロクに噂も無い状況だったのに』

 

 マサトは、これまでと違いギルドに状況が知れた事に疑問を持っていた。マサトの口に出した疑問に、シオンは状況の推察から想定した流れを返す。

 

『……恐らくですが、私の事でギルドや龍歴院が情報に対して過敏になっていた所に、船乗り達の噂話を本気にした向こう側のハンターが報告を挙げたのではないかと思っています。……“人の口に戸は建てられません”から』

 

「……古い言い伝えですわね」

 

「……何はどうあれ、そろそろ私達も動かないと」

 

「……だな」

 

 この世界にも“慣用句”があるのか……と、マサトは感慨深くなったが、ミラルダ達が今後の為の行動に移った事で思考を止め、シオンに感謝した。

 

『もうお別れとは……淋しくなる。でも、いつかまた会える日を楽しみにしてるよ。今度はもっと、何の気兼ねも無くなっていると良いね』

 

 マサトの言葉に感情が昂ったシオン……自分の頭をマサトの胸に擦り付け『はい……次はもっと、ずっとお話出来る様に……』と震える声で応えるのだった。

 

 

 

 

 それから数日の内に、代わる代わるアステラのハンター達が人目を盗んではマサトたちに、旅で役に立ちそうなアイテムや食料等を少しずつ運んでくれたり、拠点防衛の時のお礼をしに現れた。

 

 そのお陰でマサト達の出立の準備も滞りなく進み、次の定期便の到着する予定日よりもずっと早く全ての準備が整ったのである──

 

『……いよいよ、お別れだね』

 

 海岸の高台で風を読みながら、マサトは眼下に広がるアステラと古代樹の森を見下ろしながらそう呟く。

 

 マサトの傍にはミラルダ達3人の女ハンター……彼女達はそれぞれ特別製のアイテムパックや己の武器を背負い、マサトの呟きに同意する。

 

「……また会えるわよ、約束もしたし」

 

「今度会う時は今よりもずっと強くなって、あいつらを驚かせようぜ」

 

「ええ、私達も……あの方たちに負けぬよう精進しなくては」

 

 3人の言葉を肯定するかのように、一際強い風がマサトの翼を撫でる。それは大陸へと流れる上空の大気の流れをマサトに教えてくれていた。

 

『……それじゃあ3人とも、しっかり掴まってて!』

 

 マサトの指示に3人は、特別製の鞍から伸びる手綱を掴む。これはアステラ工房の人達が特別に拵えてくれた物で、クシャルダオラの高い飛行能力を極力損なう事なく、ミラルダ達3人を運べる様に開発された苦心の賜物だ。

 

 主な素材は防具にも使われる軽量強靭な上級鉱石素材と、耐摩耗性に優れた飛竜種の皮や翼膜……親和性を高める為に古龍種の素材も贅沢に用いられ、下手な防具よりも硬いが“鞍”としての性能や利便性も妥協無しの逸品である。

 

 何となく普通にマサトの身体に乗っていた以前よりも格段に快適となったミラルダ達は当然ながら、マサト自身も背に乗せたミラルダ達の安否を細かく気にしなくて良くなった事で精神的負担も軽くなったハズ。

 

『さようなら、新大陸……』

 

 風を操る力と強靭な翼を併用した己の飛行能力により、あっという間に高度を上げていくクシャルダオラ(マサト)……

 

『……私も、彼を見習わなくちゃ』

 

 空の彼方へと飛び去っていくマサト達……集まって見送る事は出来ない為、各々任務や仕事の手を止めてアステラの空を見上げ、彼らを見送る調査団の面々。

 唯一、彼らを直接見送ったシオンはこの一言を胸に刻みつつ、雲間に消えるまでマサト達から視線を切ることなく空を見上げ続けていた。




少し駆け足気味でしたが、無事にマサト達は新大陸を脱出……
この顛末が向こうの本編に採用されるかは筆者さん次第です。

さて、次からはそろそろ本編にも進展アリな模様。
キーワードは「地震」です。

次回もお楽しみに!
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