不思議な銀色の龍を、アステラへと招き入れたまでは良かった……が、私とはまた違う未知の存在の出現に研究者達はどよめき、我先に『研究の為』と称して見るからに不穏な道具を持ち出し突撃しようと躍起になる。
レクスや他のハンター達が、暴走する研究者達の突撃を何とか防ぐ中、総司令やソードマスター『ヤマト』さん達は協議を重ねていた。
「あの龍、やはり古龍としか思えんな……そうでなければ説明も付かん」
確かに、今までに出逢った古龍達もそれぞれが非常識をその身で体現しており、ヒトなど足元にも及ばない程の生命力と戦闘力を兼ね備え……更に高度な知性を併せ持っていた。
彼もまた、普通という枠に収まらない……突出した能力を持っているに違いない……大半の人達は未知の龍の持つ力に、ある種の恐れを抱いているのだろう。
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『何か……ありましたか?』
銀の龍が何だか悩ましい雰囲気を出していたので、私は思いきって声を掛けた。
気付いて振り向いた彼……今度はマジマジと私の姿を見ている、そんなに珍しいものなんてないのに……それとも何か吟味されているのかな?
『そう言えば自己紹介がまだだったな、俺は…………セツラだ』
たっぷり1分以上はあろうかという溜めの後に、彼は自分の名を告げた。
可能性はあまり無いだろうけど忘れてた、のかもしれない……もしくは今考えた……とか?
とりあえず、名前としてはなかなか良い響きだったので素直に誉める。
彼は『ホントに良い名前を貰ったもんだよ』と、懐かしさを思い出しているようだった……
『あ~、そんで……ゼノさんの事は何て呼べば…………あっ』
『……ゼノさん?』
その直後、彼の顔にコミカルな変化が起きた……私もゼノさん、とか呼ばれたの初めてだわ。
基本的に古龍同士は互いの種族名をフルネームで呼び合う事が多い。
ただし、スイレンやマサトさん達の様な固有名持ちが相手だと、だいたいは固有名で呼ぶ。
彼……セツラさんの、種族の名を略した呼び方は何というか……新鮮だった。
でも彼は、何か禁忌でも犯したかの様な反応になり『ナシナシ! 今の忘れて!』とリアクション付きで誤魔化そうと必死だった……ホント、どうしたんでしょうかね。
『……落ち着きましたか?』
あまりに必死なジェスチャー込みの全力否定だったので、私は心の中だけに留めて置く事にした……
『すまない、変な姿を見せてしまったな……』
うん、まぁ……必死こいて訂正しようとしたのは分かったよ。
……別に否定しなくても良かったんだけどね?(´・ω・)
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その後、私も自身の……『シオン』の名を伝え、かねてからの疑問を私は彼に問う。
『アナタは……古龍、なのですか?』
彼がどの様な種族なのか……純粋な興味もある、だがそれ以外にも『知っておかなければならない』……そんな予感がしていた。
そして彼の返答は、ある意味予想外であった。
『そう……だな。
……
初めて聞く
『……まぁ、確認される事そのものが滅多に無い種族なんでな』
確認される事例が極端に少ない存在……となると、伝承や伝説で語り継がれている様な種族なのかもしれない。
確かに、文献を漁っていた時にそんな事が書かれた物は幾つもあった……
『……そう言えば、君が会った事のある古龍はどれくらいなんだ?』
彼の質問に、私は過去の出逢いを思い出す……
初めて会ったのは、陸珊瑚の台地で興味を持たれ……万能会話法「龍の言霊」を教わった
彼女には度々お世話になったし、今でも私を娘のように気に掛けてくれている。
次に会ったのは……女性のハンターを3人も連れ、同じ転生古龍として共闘もした
3体目は変わり者、
彼は……何だろうね? 上手く表現できないけど、ヒトと仲良くは出来そうだった……
最後は
最初は近寄り難い雰囲気だったけど、あの天然っぷりは意外だったし、私は彼女を「お姉さま」と呼んでいる……密かに彼女は、私の憧れだ。
4体の先輩古龍との出会いを彼に教えると、彼は「ふむ……」と少し思案していた。
『ネロにハザク、イヴェル、そんでクシャルさんか……』
彼の口から出たのはまた未知の単語……時折出てくるこの単語は、彼によると
「シオン、ココだったか……んで、お前さんが一緒に戦ってくれた古龍か?」
『おう、俺はセツラだ。よろしく』
レクスが私を見つけて声を掛けてきた、当然隣にセツラが居るので彼にも声を掛けるし、セツラさんの返答にも普通に返している。
以前のマサトさんの一件もあるので、もうバンさんやレクス達は、古龍が普通に人語で話しても驚かなくなっている……もしかしたら、他の古龍も私が絡むと喋れる様になるとか思われてるのかもしれない。
いや、セツラさんは初対面の時点で話してますから……
突然、セツラさんが翼……翼脚を動かし始める。
ガシュンガシュン、と金属音に似た独特な音がアステラに響く……耳慣れない音に、バンさんやヤマトさんまで集まってきた。
『……って、龍氣不足か』
え? 龍気って……地脈エネルギーから抽出する古龍の特殊能力の源……だったよね?
私は彼の口から発した言葉に、違和感を感じていた……どうも、ニュアンスというか……似て非なるモノ的な感じがしたからだ。
『……少し待っててくれ、龍氣を補充するからよ』
そう言って彼は四肢を踏ん張り、翼脚を翼の様に広げる……まるで今から飛び立とうという風なポーズだが、その四肢は大地をしっかりと掴み……まるで上昇気流に逆らうかの様にしがみ付いていた。
『百聞は一見に
彼はそう言うと、深呼吸の様に息を吸い込み始めた……
キィィィィィィィィィィ……!!
その直後から響き始めたのは、形容し難い程の凄まじく甲高い鳴き声の如き呼吸音……
同時に私が見たのは……呼吸と共に吸い込まれていく大気のエネルギーと、セツラさんの胸……甲殻の隙間に覗く赤い発光、そして翼脚の先端から体外へと漏れ出ている赤い光だった。
彼はある程度空気を取り込んだあと、力を抜き体勢を元に戻した……先程まで赤い光を発していた胸部の甲殻も、今は元通りに戻っている。
『……今のは、何なのですか?』
『ん? あぁ、そういえば龍氣に関して説明してなかったな』
彼はそう言うと私達へ龍氣について説明してくれた……
私の使う地脈エネルギーから抽出した龍気と、バルファルクが操る龍氣は完全に別モノらしい……なんでも、“龍氣”とはバルファルクが体内で生成するエネルギー物質であり、極めて強力な龍属性を帯びているとの事……あの奇妙な気配の原因もそれだと仮定すると、確かに納得がいく。
「つまり、キミはその龍氣が力の源なのかね?」
研究者の一人がセツラへ問いかけ、セツラは肯定の意を示す頷きをする。
未だ発見されていなかった
『……だが、この龍氣は
セツラは溜め息を一つした後、とある古い伝承について語り始めた……それは『赤い彗星』の伝承……その彗星が現れた時の詳細な情報だった。
1000年に一度、赤く光る星が空を駆ける時……一つの予言あり。
それは決して抗えぬ運命のあかし、日ならず大地を絶望に染め上げる凶兆……
絶望は千変万化の大翼を持つ、神速の龍となって人々の前に降り立たん。
『……とまぁ、そういうことだ』
セツラは伝承を語り終えると、突然軽く首を回し四肢を一つずつ伸ばしたり縮めたりするなど、まるで人間が行う"準備運動"のような行為をし始めたのだ。
『…………何処に行くのですか?』
私はセツラへ問う……レクスや大団長らも問おうとした質問を敢えて私がしたのには理由があった。
それは……
「おいおい……なんて殺気だ」
グランさんが冗談抜きで言うほどの凄まじい殺気が、アステラ中へ流れ込んで来ているのだ……それはちょうど、セツラさんが準備体操を始めた直後から。
『う〜ん、ここからだとだいぶ奥っぽいな。
あんのゴーヤ野郎…………よりにもよってテメーかよ』
小言のような声が聞こえたが、聞き取り難かったからスルーするとして……セツラさんは準備運動を終えると、アステラの出口へと向かい始める。
まさか、戦うというのか? これだけの殺気を持つ存在に……
「オイ、お前……奴と戦いに行くのか?」
レクスが驚愕の声色で彼へ声を掛けた……セツラは当然だと言わんばかりに頷くと、翼脚を広げ姿勢を屈める。
翼脚の後ろにある六つの穴からは赤い光が漏れ出ており、もう飛ぶ準備は出来ていた……
『……私も、行きます……!』
「シオン……お前まで?!」
勿論、下手をすれば逆に彼の足手まといだ……でも、私だって古龍の端くれ。
自身の力の制御もだいぶ上手くなったと自負している。
……それに、ブレスでなら彼の援護くらいはできるハズだ。
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セツラさんは私の同行に了承してくれた……
レクスやアステラ常駐のハンター達も行くつもりだったが、セツラさんは『来るのは構わねぇが……自己責任だ、下手すりゃ死ぬからな』と釘を刺していた。
でも、レクスだけは間違いなく来る……あの人が私を放って置かないのはいつもの事だから。
『ただ、相手が相手だからなぁ……』
セツラさんは道すがら、この濃密な殺気を放つ相手の正体を教えてくれた……
『この殺気を放ってるのはイビルジョー……その
その名を聞いて私はかつての戦いを思い出す……私とマサトさん、そしてレクス達ハンター4人の総当たりで何とか追い詰め、全員がボロボロになってようやく倒せた……怒り喰らうイビルジョーとの決戦を。
『アイツのブレスは龍属性だ……と言っても、俺には耐性があるから、俺が前で戦う。
シオンはゴーヤと一戦交えただけだろ? そこでだ……』
彼からイビルジョー戦に関して気を付けるべきポイント……遠距離での基本的は立ち回りを教わりながら、古代樹の森の奥深くへと向かうのだった。
う~ん、またしてもイビルジョー……
私、ゴーヤ嫌いなんですけど?
とはいえ、バルファルクとの共闘なのであまり苦労はしないかも?
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