狩人と舞う白銀の翼   作:睦月透火

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バルファルクについて、シオンはほぼ無知……というか、新大陸生まれですから知らなくて当然。
ですが、龍脈図書館(ワールドライブラリ)による検索くらいはできます。

なので今回、シオンは……


閑話:赫星、空を切り裂いて

 バルファルクの本能……

 

 そう聞いたのだが、私には何が何だかさっぱりだった。

 生き物には個々が生きる為に持っている「本能」があるけど、セツナさんが口にした「本能」は、それとは決定的に違う……そんな気がしたのだ。

 

『んじゃ、一足先にドンパチやってくるわ』

 

 そう言い残して、セツラさんは森の奥へと消えていった。

 一抹の不安は残るが、ほとんど戦闘経験の無い私が一緒に行っても足手まといだ……ならばせめて、彼の立てた作戦を成功させるしかない。

 

(その為にも、セツラさん……バルファルクについて、少しでも知っておかないと)

 

 そう決めた私は、意識を集中……大地に流れる僅かなエネルギーの流れを辿り、大いなる力の流れ【龍脈】へとアクセスし、自身の固有能力として自覚した「龍脈図書館」(ワールドライブラリ)を使う。

 

 

 この「龍脈図書館」(ワールドライブラリ)は、私の種族「ゼノ・ジーヴァ」が持つ龍脈エネルギー操作能力の裏技みたいなもので、龍脈エネルギーの源泉に遺された【生命の記憶】……かつて何処かの誰かが経験した記憶を呼び出し、閲覧・把握する事を可能にする能力だ。

 言ってしまえば、過去を知る能力とも呼べるし……断片化はしていても事実しかないんだから、誰かの死因やら、隠された真実を知る事も出来る……でも、ノーリスクとは行かず、過去を遡るほど精神力をゴリゴリ削られるし、より詳細な情報を知る為には深くアクセスする必要があるので、能力行使の最中は完全に無防備になってしまう。

 

 だから、今はあまり深くは潜れないけど……とりあえず、バルファルクという種族について下調べをしなくては。

 

 

 軽く下調べ、というハズだったのに……私は()()()()()()()()()()()()のだろうか……

 

『……天を貫く、銀翼の凶星……』

 

 たった数分の能力行使……だが、その間に私が閲覧したものは単なる情報ではなく……天彗龍バルファルクという種族が持つ記憶、バルファルクと戦った数多のハンター達の記憶……そして、以前にアステラの老竜人達から教わった『特殊個体』という枠に当て嵌まる存在……

 

 奇しき赫妖のバルファルクの記憶……

 

(……これが過去に起きた事なら、セツラさんもいずれ()()なる……?)

 

 奇しき赫妖のバルファルクの成り立ちもあの時、頭に詰め込まれている……それは間違いなく、長生きする古龍にとって避けられない事……セツラさんはそれを意図的に起こそうとしているのではないか?

 

『……もしそうなら、私はどうすれば……?!』

 

「シオン、探したぞ?! 急に出ていくなんて……何があったんだ?」

 

 声を掛けてきたのはアステラで活動するハンターさん達だった……どうやらさっきの咆哮やら戦闘の痕跡で異変を察知し、私が森へ行った事を聞いて探し回っていたとの事。

 

『飢餓状態のイビルジョーです、アレが再びこの地に……。でも、銀翼の凶星……私の様に話の通じるバルファルクが奴の相手をしてて……』

 

 飢餓ジョーとバルファルク……この2体が来ている事を聞き、ハンター達はざわつく。

 飢餓ジョーは2回目だが、過去にアステラやセリエナを襲撃されて手痛い損害を被った経験があるため、ハンター達の顔が露骨に歪む……だが、それに加えて新大陸には居なかった筈の既存古龍種……しかも伝説に名を残す凶星が現れたとなると、驚くのも無理はない。

 

「イビルジョーに……銀翼の凶星……だと?!」

 

「何て事だ……」

 

 私は彼等に、バルファルクの二つ名を伝えた事に少し後悔する……古龍種として有名であるバルファルクの二つ名【銀翼の凶星】、この名が示すのは違う事なき「凶兆」。

 未知のモンスターと生死を掛けて戦う事も多いハンター達は、殊更(げん)担ぎなど「運」や「吉凶」に関わる事に敏感だ……その中でも最悪の部類に入る事態に、ハンター達は動揺を隠せない。だが……

 

「落ち着け! ココで狼狽えても何も変わらん!」

 

 後を追って来たのか、バンさんが小飛竜で駆け付け、場の雰囲気を一喝して納めた。

 

「シオン、そのバルファルクは敵では無いのだな?」

 

『……はい、少なくとも私と意志疎通が出来る内は……』

 

「……? どういう事だ?」

 

 含めていた疑問に気付き、バンさんは私に問い掛けてきた。

 私はバルファルクの情報を検索した時に見せられた『奇しき赫妖のバルファルク』の事を伝える……同時に、(セツラさん)がそうなった場合の危険性も……

 

「むぅ……そんな事が……」

 

『ですから、彼と意志疎通が出来ない場合は……倒すしかありません、ココの生態系の為にも』

 

 マサトさんと同じ、転生古龍……奇跡にも等しいこの出会いを、ろくに何も出来ないまま涙で閉じたくはない。私はずっとそう思っている……マサトさんの時も、ミラルダさんを失うかもしれない危機に、私は必死で抵抗した。

 

 ちゃんと助かったとは言え……あんな事は、あんな思いをするのは……二度とゴメンだ。

 

 その時だった……

 

 私は遠目に、天へと昇る……赫き星の輝きを見つけ、焦燥に駆られながら彼の下へと飛び出すのだった。

 

──────────

 

 ……天彗龍バルファルクの出現に、新大陸の生き物達は少なからず影響を受けていた。

 

 あるものは天を薙いだ赫き恐怖に恐れ、泥底に沈み……

 あるものはその轟音に恐怖を掻き立てられ、狂った様に走り続ける……

 

 また、あるものは……騒ぎの元凶を断とうと爪を研ぎ……

 あるものは野次馬の如く、空から地を見下ろしていた。

 

『……全く、あの子を見ていると飽きぬのぅ……』

 

 雷鳴響く、ほの暗い珊瑚の山から……彼の龍は、ヒトと共に苦難に立ち向かう、銀色の子龍を見つめているのだった。




ココで、シオンの固有能力である「龍脈図書館」(ワールドライブラリ)について解説。

この能力はまず該当の単語や事象の検索に始まり、該当する事柄を認識可能……
ココまでなら、仮面ライダーWの主人公左 翔太郎(ひだり しょうたろう)の相棒であるフィリップ君こと園崎来人(そのざきらいと)の能力『星の本棚』に近いものになりますが、この「龍脈図書館」に格納されているのは単なる情報だけではなく『生命そのものが生涯を掛けて辿り着いた真実』に基づく『記憶』そのものまで内包しているため、確定情報だけではなく過去における竜や龍に関連する事件や出来事の真実を()()()()()()する事も可能です。

今回は「バルファルク」というキーワードで検索した為、忌むべき『竜大戦』等の情報には触れなかったものの……語り継がれるバルファルクの伝説の元になった過去の惨劇や、奇跡の廻り合わせで相対した際の双方の記憶……そして、特殊個体となる存在が生きていた際の記憶という生の情報を強制的に頭に詰め込まれる事に。

現代風に言えば、バルファルクの生態やら、ストーリー仕立てになったハンターとバルファルクの対決なんかをYouTube動画みたいな形式にして、時間が止まってる間に強制的に見せられた……と言ったら分かるかな? 頭痛くなりそう……


もし、検索対象が「バルファルク」ではなく「ババコンガ」だったら……
「絶対に笑ってはいけない〇〇」と化してしまう……w

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