何者か判った人も、判らなかった人も
答え合わせ行きましょう、第5話!
天候不良な陸珊瑚の丘で……レクス達一行は採取活動をしながらゆっくりと丘を移動していた
『……不思議な丘ね、珊瑚って海の中の植物なんでしょ?』
「ああ、だがここの珊瑚は陸地に生息してる……異常と言えば異常だよな」
初見であるシオンの質問に答えを返すレクス、そこにクリスは少し違った目線の意見を述べた
「ここの陸珊瑚達は、恐らく遥か昔……新大陸がまだ海中にあった頃からこの場所に有ったのだと思います……地殻変動によってこの台地ごと浮上し、今までの永い年月を経て陸への適応能力を身に付け、この下にある瘴気の谷から養分を吸い上げる事で、現在の状態まで進化し成長してきたのでしょう……」
永い目線で見た、生物の進化という点に着目した意見……移ろいゆく生命の営みの中で、自らを世界に合わせるのが生命の進化の形だ……さすがは推薦組、と私も感心したが……
『……どんなに食い意地が張っていても、クリスは歴とした編纂者……という事ですか』
「ちょっとシオン?! 私の事をそんな風に思ってたんですか!?」
『私の前では、何かを食べている事の方が多かったですから……ねぇ?』
「……何故そこで俺を見る?」
ふと思った事を書いてしまい、それに衝撃を受けるクリス……「食い意地が張っている」のは嘘ではないと、私はレクスに同意を求める意図で視線を向けた。
……だがレクスには伝わらなかった様だ
「……ニャ、厳選ツボアワビ見つけたニャ~♪」
タマは我関せず、といった具合で採取活動をしてるし……
ヤレヤレと肩を落とし、採取の手伝いをするため籠をタマの近くに咥えて持って行こうとすると、感じていた違和感が強くなっているのに気付く……
先ほどよりも濃密で重苦しい雰囲気……いや、コレはもう現実に息苦しい。
どうしようもなく不安になり、慌ててレクスの装備の背中を咥えてしまった……籠の代わりに
「……お、おい? 何なんだ……?」
「シオン? 何だか、慌てているようですが……」
クリスがいち早く私の不安に気付き、首筋を撫でて落ち着かせようとしてくれる
レクスもクリスの言葉に気配を読み、何かが近付いて来るのに気付いた
「何かが……来る……!」
「え、何がです?」
「タマ! 籠はクリスに!」
「ニャ! ご主人、足元が……!?」
タマの声に促され、全員が足元を見ると……陸のど真ん中だというのに、もう人の足首ほどまで水に浸かっていた
「なっ?! 水が……!」
「ニャ~!? 肉球に嫌な感触ニャ~!!」
『タマ、私の背中に……』
何処からともなく流れてくる大量の水……水に浸かるのが嫌いな猫……もといタマを背中に登らせ、私は段々と強くなる息苦しさに耐えながらレクスの方を向く
レクスは何者かの気配に気付いたらしく、丘の頂上の方から空中に現れたシルエットをじっと見つめていた……
「この気配……コイツは……!?」
オタオタしている内にもう目と鼻の先までシルエットは近付き、軽い地響きのような着地音を立てて降りてきたのは……まるで海月の様に目まぐるしく色の変わる幾つものラインを光らせ、尻尾まで繋がった巨大な翼を持つ生き物の影だった
『……ほぅ、初めて感じる気配……ヌシは龍か? それが何故ヒトと共に在る……?』
頭に直接響く声に私は驚きを隠せない……その事を察したのか、影はこう言葉を続けながら暗がりだった着地点から明るい場所へと歩み寄って来た
『ふむ……ヌシは他の龍と逢うのも初めてか? 良い良い、何も取って喰う訳ではない……もの珍しさ故の事よ』
シルエットはそのままに、声の主はゆっくりと明るみに歩み出てくる
如何様にも変色するラインは、主に海月の傘の様にも思える巨大な翼の内側にあり……肉食魚類を思わせる顔付きにナマズの様な長い顎髭……4足に大きな翼を持つ、私に近い体型……だがまるで違う様相を持つ生き物だった
「このモンスター……まさか古龍?!」
他に類を見ない特徴に、深い知性を感じる眼差し、
『古龍、か……ヌシらニンゲンは我等を
スイレン、と自称する初見の生き物……どことなく水棲生物の様な外観をした古龍は、おっかなびっくりで立ち竦む
(……相棒、この古龍は……)
(襲われる心配はないようだが……興味がある、と言っていたな)
どうやら、私だけでなくレクス達にも
油断せず構えを解かないレクスと、私にしがみついて離れないクリス、タマは水を避けて私の背中で威嚇を繰り返している。
『……? おヌシ、言葉が話せぬのか? 我らが
『えっ? ……あ……』
重苦しい気配と雰囲気に飲まれ、沈黙していた私にスイレンは優しく語り掛けてきた……その雰囲気の変化に戸惑い、私は奇妙な応答で声を上げでしまった。
『なんじゃ、話せるではないか……おヌシ、最近生まれたばかりのようじゃの……良い良い、初見に戸惑うのは誰しも同じじゃて』
見た目からは想像できない、優しげだが古風な口調で話す見知らぬ龍……
私はようやく緊張が解け始め、思い切って質問してみた。
『あの……私、生まれてすぐ人間に拾われたし……他の龍を見るのも初めてで……興味があるって、どういう事ですか?』
『言葉通りの意味じゃ、他意も無ければ……敵意など持っておらぬよ、おヌシが奇妙な方法でニンゲンと話しておるのを偶然見かけてな』
『奇妙な方法……』
どうやら、スイレンは私が人間と筆談していた事に興味を持ったらしい……ただ、奇妙ってどゆこと?
疑問を投げ掛けようとした私にスイレンは衝撃的な一言を発した。
『何故、龍気を使わぬのじゃ?』
……は? ……龍気? ナニソレ?
疑問符が途絶えない私……さらにスイレンは続ける
『龍気を使えば、言葉の通じぬ相手とも意思疎通が図れるし、何より龍の知識が得られる……おヌシは膨大な龍気をその身に貯めておるようじゃが……もしかして、使った事が無いのか?』
私は「龍気」のその万能っぷりに唖然とした……なにそのチート能力?! 誰とも意思疎通が図れるとか自動翻訳も
そして古龍種ならば息をするが如く容易く使える、と……
……もしかして、私が知らなかっただけ……?
衝撃的な事実に打ち砕かれた私は、誰にでも分かる様な驚愕の表情を浮かべた数秒後……重力に従って首をガックリと
あまりに突然の仕草に、クリスは心配そうに私の顔を覗き込む。
レクスもチラ見しているが、意識はスイレンの一挙手一投足に注意を払っている様だ。
「……その龍気とやらが、コイツの力になるのか?」
『我ら龍は皆、この龍気を用いた
スイレンの言が正しいのなら、龍気とは凄まじい万能性を秘めたエネルギーということになる……調査団の一員として、レクスは龍気に興味を持った。
「……龍気とは、一体何なんだ?」
『この地……いや、この
抽象的な説明と同時に「人には過ぎたる力」と釘を射され、レクスは少し残念がる。
代わりに私はショックから少し立ち直り、スイレンに訪ねた。
『私も、龍気を扱えますか?』
『龍であるならば、自ずと扱いは分かる故……感じよ、己が内に持つ
そう言われ、私は目を閉じ……体内のエネルギーの流れを感じ始める。
ほんの僅かな流れ、体内を循環する流れとは違う……足元から大地、大地から身体に循環しているエネルギー……なるほど、龍気の扱いは自ずと分かると言うスイレンの言葉は正しかった。
『……分かる、流れてる……脈動……大地と、私と……全ての生き物に……!』
「これは……シオンの声?」
「ああ……聞こえた、これでようやく直に話せるな……」
理解してしまえば、後は簡単だった……言葉に龍気を乗せ、一種の
『うむ、それが
感知に集中すれば、足元の植物の声すらも聞こえる……意識を研ぎ澄ませば、遠くの人やモンスターの存在までも感知できた。
まさにチートパワーである。
一通り言うべき事を終えたのか、スイレンは翼を広げ飛び上がる。
「お前は、此処の主か?! ……できれば、戦いは避けたいモノだな」
滞空状態のスイレンはレクスの提案に鳴き声で応え、そのまま飛行状態となり……再び山頂に掛かる霧の中へと消えていった。
同時に、今までの息苦しさや荒れそうになっていた天気も徐々に回復していき……足元を流れていた水もまるで最初から無かったように引いており、辺りは静寂に包まれた。
「……なんだか、古龍の認識がガラリと変わりそうです」
「……あぁ、そうだな……」
『スイレン……ありがとうございます』
クリスとレクス、2人の古龍に対する感覚が大きく変わるキッカケとなった出会い……
そして、私の運命を決定付けた……大事な出会い。
私はまだ多くの事を学ばなければ……と、心に決め……水の古龍が去っていった山頂の空へ向かって、感謝の言葉を贈った。
……正解は、越後製菓!!
ではなくて、水を意のままに操る古龍……溟龍ネロミェールでした。
レクス達は初見なので、正体の判明は次回以降になります。
古風な口調と一人称の「
あと、龍気と呼ばれるエネルギーですが……
ゲーム内では「地脈エネルギー」と呼ばれるモノに対する古龍達の認識として、敢えて名前を変えたものです。
本来の地脈エネルギーには様々な効果が宿っており、その一部を古龍達は自らの能力として扱う術を、進化の過程で会得した……そんな裏事情があったら?
そういうネタであると考えて頂ければ……
余談ですが、現在のシオンはライダーズのオトモン相当のサイズに成長しています。
当然、成長ということは……ゼノ・ジーヴァは脱皮するので、アステラの研究員達は今頃徹夜上等!みたいなテンションで狂喜乱舞しているのかも。
さて、次回は……レクスの活動拠点がアステラからセリエナへと変わる……
その前にぶち当たった、でっかい壁。
モコモコで温厚な……「ドスガウシカ」と噂されるアイツとの出会い。
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