仮面ライダーガングニール   作:露海ろみ

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一話目となります。

気まぐれに書き進めたお話です。
他に連載している作品もありますので投稿頻度は低いとは思いますが、少しずつ書いていこうと思っております。

戦姫絶唱シンフォギア×仮面ライダーW。

ガングニールのガイアメモリを持つ少女の、戦いの物語となります。


風都編
1.これが私のビギンズナイト


風が吹いている。

路地裏に座り込む彼女の髪を揺らした。

 

家を飛び出してからどれくらい経ったのだろうか。

あの日。ツヴァイウィングライブの日。

生き残ってしまった私はその生を否定された。父は仕事を失い、母や祖母も心無い人々から迫害を受けた。味方でいてくれた親友もある日を境に引っ越して行ってしまった。

過熱する悪意の嵐にこれ以上家族を巻き込めないと思った私は一人家を飛び出した。

流れに流れて辿り着いたこの街は『風都』というらしい。

名前の通り風がよく吹く街だった。

 

風が吹いている。

見上げた先にはこの街のシンボルたる巨大な風車。今日も今日とてよく回っていた。

 

「お腹、空いた」

 

もう何日も食事をしていない。高々14の小娘には大した金もなく、路銀などとうに尽きていた。

このまま死んでしまうのもいいかもしれない。自分なんかが生きていても迷惑をかけるだけだ。それでも・・・。

 

「最後くらい未来に会いたかったな」

 

今はもう会えない彼女を思い、立花 響の目がゆっくりと閉じられた。

 

 

風の街『風都』

この街には『仮面ライダー』と呼ばれるヒーローがいる。

その片割れ、左 翔太郎は今日も依頼をこなす。彼の職業は探偵である。

 

「相変わらずウチにはこんな依頼ばっかりだな」

「文句ばっか言ってないで、早く見つけんかい! 得意でしょ、猫探し」

 

『はよせんかい!』と書かれたスリッパで翔太郎の頭を引っ叩くのは鳴海 亜樹子。彼女は翔太郎のいる鳴海探偵事務所の所長である。もとは彼女の父、鳴海 荘吉が探偵業を行なっていた事務所は今や彼女が引き継いでいた。

 

「いってーな!」

「ほれほれ、得意の猫の物真似して!」

「ったくよぉ・・・」

 

叩かれた所を摩りながらも律儀に猫の鳴き声を出す翔太郎。猫の気持ちになる事が猫探しのコツだ。しかし二人で路地に入っていくといたのは猫ではなく、人であった。

 

「翔太郎君、あれ!」

「・・・おいおい、マジかよ!」

 

壁に背をつけ座り込む少女に駆け寄ると抱き起こす。揺するとわずかだが反応があった。生きてはいる様子である。

 

「大丈夫か、お嬢ちゃん!」

「翔太郎君!」

「あぁ、とりあえず連れて帰ろう。こんな所じゃどうしようもねぇ」

 

翔太郎は少女を抱き抱えると亜樹子を促し、事務所に向かう旨を伝える。腕の中の少女は驚くほどに軽く、顔色が悪い。

二人は事務所に向かい駆け出すのだった。

 

 

身体を伝わってくる振動。それを感じた響は薄らと目を開く。どうやら自分は誰かに抱き抱えられている様だ。逆光により顔は見えないが、帽子を被っているのはわかる。その人物の口元が開かれた。

 

「しっかりしろ! 生きるのを諦めるんじゃねぇぞ!」

 

奇しくもその言葉はあの日かけられた言葉と全く同じであった。抵抗する力もなくした響はそのまま自分を抱える人物の腕の中で意識を失った。

 

 

「立花 響。この少女の名だ。数週間前から警察に捜索願が出されていた」

 

鳴海探偵事務所には三人の姿があった。

そのうちの一人、赤い服を着た男、照井 竜が続ける。

 

「調べてみたら、どうやら・・・あのツヴァイウィングライブを生き残った少女らしい」

「あのライブのか・・・」

 

聞いて思わず帽子を深く被りなおす翔太郎。

ツヴァイウィングライブの惨劇。それは認定特異災害ノイズの出現により多くの人命が失われた大事件。

だが事件はそれで終わらなかったのだ。

辛くも生き残った人々を待っていたのはマスコミによる報道だった。実はノイズによる被害数よりも将棋倒しになったり、逃げる為に半狂乱になった人からの暴行で死亡した人数の方が圧倒的に多かった。

これを受けた世間は生き残った被害者を『加害者』として捉え始める。更に言えば国が被害者に見舞金を出したのもマイナスに働いてしまった。

『人殺し』『なんでお前が生き残っているんだ』『税金泥棒』『あの人を返してよ』

『お前が死ねばよかったのに』

これらは被害者達が周囲の人間からぶつけられた言葉の一部である。

そして、生き残った人々への迫害が激化していった。

 

「確かにあの事件の被害者で人的被害の方が多かったのが事実だ。だがそれは不幸な事故や一部の心無い人間達によるもの。殆どは本当の意味での被害者だ」

「あぁ、俺もそう思う。あんな小さな子が人を殺したりするかよ・・・ふざけてやがる」

 

言いながらベッドで眠る響を見遣る。

微かな寝息が聞こえてくる。側に座る亜樹子も心配そうにその手を握っていた。

 

「家族には俺の方から連絡を入れておいた。近日中に迎えにくるらしい」

「そうか。何から何まですまねぇ、照井」

「俺は警察官だからな。これが仕事だ」

 

そう言い微笑む照井を見て、こいつも変わったもんだと翔太郎は笑い返す。

 

「うぅ・・・」

「翔太郎君!」

 

どうやら彼女が目を覚ましたらしい。亜樹子の声に二人はベッドに近づいた。目を開けた響は自分が寝かされていることに気がつく。

 

「ここは・・・どこ?」

「大丈夫⁉︎」

 

起き上がろうとする彼女だったが力が入らない様で身動ぐ事しか出来なかった。

 

「目が覚めたか、立花 響」

 

急に名前を呼ばれた響は警戒を露わにした。だがその鋭い目つきにたじろぐ事もなく、照井は警察手帳を見せる。

 

「風都署超常犯罪捜査課の照井だ。君の事は持ち物から調べさせてもらった」

「・・・警察が何の用?」

 

敵意を剥き出しにする彼女を見て、照井は過去の自分の様だと思った。かつて井坂に復讐する事だけが目的だった頃の自分とそっくりだ。その顔は憎しみに囚われ、自身を失っていた頃の自分にそっくりだった。

照井はその目を見据えながら事実を告げる。嘘はつかない。

 

「君の家族から捜索願が出ていた。連絡は済んでいる」

「・・・余計な事を!」

「今は休むといい。所長、すまないが彼女の事は頼んだ」

「まっかせて、竜君!」

 

元気良く敬礼を返す亜樹子は愛しの旦那に満面の笑顔だ。照井はそれを見て微笑むと事務所の扉を潜っていった。

その背を忌々しげに睨んだ響は此処にはいられないと身体を起こそうとするが連日の無理がたたり満足に動かす事が出来なかった。

 

「だめだよ。ちゃんと寝ていなきゃ!」

「うるさい・・・。私に構わないで」

 

亜樹子が心配から駆け寄るがその手を打ち払う響。

信用出来ない。他人を信じてたまるものか、と歯を剥き出し威嚇した。

その礼を失した行動に鳴海探偵事務所の所長の頭に血が昇る。

 

「お・と・な・し・く、しなさい!」

 

パコン、と音を立てる響の頭。衝撃に目を丸くすると涙目の亜樹子の手には『横にならんかい!』と書かれたスリッパ。口を一文字に結びながら、響の肩を掴むとその身をベッドに横たえる。

 

「怪我してる女の子を放っておける訳ないでしょ! 大人しく寝て休むの、良い⁉︎」

「え? あの・・・」

 

あまりの剣幕に圧倒された響は力強く押されるがままにその身を倒す。

 

「お願いだから、ちゃんと休んで。話なら後でちゃんと聞いてあげるから・・・」

 

響の頬に手が添えられる。触れたそこから彼女の体温を感じた。これはかつて感じた事のあるものだ。見ず知らずの自分に向けられる慈しみ。亜樹子の表情も相まって、徐々に響の警戒心は形を顰める。目蓋が重くなっていった。

 

「大丈夫だから・・・。ちゃんと眠ってね」

 

まるで母の言葉の様に響く亜樹子の言葉に久しぶりの感覚に戸惑いながらも目を閉じる。温かい掌を感じながら立花 響は安らかな眠りに落ちていった。

 

 

やり取りに口を出さずに見守っていた翔太郎は目を細めると帽子を手で押さえる。しかし抑えきれない怒りが彼の心中を支配している。

見たところ十代も前半の少女だ。しかし起き上がった彼女の目にはまるで世界全てを憎むかの様な輝きに囚われていた。

なにがこの少女をこんなに追い込んだのか。

それは・・・自分たち『大人』だ。

自分たちが彼女を、あのライブの被害者達を追い込んだ。世間が面白がるかの様な報道をして、本当の被害者を偽物の加害者として知らしめてしまった。その結果が目の前に眠る少女を形作ってしまったのだろう。

ギリリ、と左 翔太郎の歯が音を鳴らす。堪えきれなかった怒りは拳となって事務所の壁に叩きつけられた。

その左拳は、僅かに事務所を揺らした。




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