仮面ライダーガングニール   作:露海ろみ

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一話目となります。

今作は『風都編』と『無印編』の二つのお話を(大体)交互に描いていこうと思っております。
響が風都でどう成長していくのか。
そして成長した彼女が舞い戻った場所でどの様に戦っていくのか。
まだまだ見切り発車な所はございますが、のんびりとお付き合い下さいませ。


無印編
1.Gの帰還 / 翳り咲く勇気


長い直線道路を一台のバイクが走っている。前後を黄色と白の二色にカラーリングされたそれはバイク特有のエンジン音を響かせながら走り続ける。

それに跨る小柄な姿。白シャツに黒のベスト。黒のパンツ。その腰に付けられた黒い中折れハットには『WIND SCALE』の文字が揺れている。

やがてバイクは街を一望できる展望台で止まった。ヘルメットが外され、そこから現れたのはまだ年若い少女の顔だ。彼女は腰のハットを被る。

『あの街』ほどではないが強い風が吹く。少女は飛ばされない様に帽子を抑える。そして眼下に広がる自分が住む街を眺めた。

 

「この街は私が守るんだ。あの街を守る『あの人達』みたいに・・・」

 

自分自身に言い聞かせるかの様に立花 響は、その手に形を変えたガングニールという小さな正義を信じて、握り締めた。

 

 

 

最近この街には二つの噂が流れていた。

一つは認定特異災害『ノイズ』が現れた時、何処からか流れてくる歌と共にそれらを倒す『戦姫』がいるらしい、という事。

もう一つは人々に害をなす『怪人』が現れ、それと戦う『仮面の戦士』がいるらしい、という事。

一つ目の噂は数年前から流れており、もはや都市伝説の様になっている。

だが後の一つは違う。ごく最近流れ始めた噂は瞬く間に人々に広がり、街の至る所で『仮面の戦士』の話がされていた。

曰く。

それは『怪人』が現れるとバイクに跨り、何処からともなくやってくる。

首に巻いたマフラーをはためかせながら戦うその姿は左右二色の黄色と白色。

二色の戦士は右手を突きつけながら『怪人』に問うらしい。

『さぁ、お前の罪を数えろ』と。

 

 

 

小日向 未来は街を走る。いや、背後から迫る脅威から逃げていた。元陸上部の彼女の脚を持ってしても脅威はあっという間に距離を詰めてくる。

 

「どうして、こんな事に!」

 

荒い息を吐きながらも脚は止めない。止めたら自分の命が無いことがわかっていた。

担任に頼まれて街まで買い物に出たのはいいが、思いの外遅くなってしまった彼女は学園への近道の為に路地裏を通った。

だが、それがいけなかった。

薄汚れた路地裏で目撃したのは噂の『怪人』が人を殺す瞬間。醜悪な姿のそれは人の首を意図も容易くへし折ると、目撃した自分に向かって襲いかかってきた。

 

息がきれる。どんなに逃げても奴らは追いかけてくる。そろそろ限界が近かった。

見えてきたのは街外れの廃工場。廃棄されて久しいそこは朽ちるに任せてフェンスなどは穴が開き、近所の子供達の良い遊び場となっている。誰もいない事を願いながら未来はそこに駆け込んだ。ここなら奴らをやり過ごせるかもしれない。

放置された大型機器の物陰にその身を滑り込ませ、叫び出しそうな口を手で覆う。複数人の足音が人気の無い工場に反響していく。

 

『お願い! はやく何処かへ行って!』

 

目を瞑り祈る未来は物音を立てまいとその身を縮こませた。

・・・やがて必死な彼女の祈りが届いたのだろう。足音は聞こえてこなくなっていた。

その恐怖から暫くの間動けなかった彼女はある程度の時間が経った頃、ゆっくりと顔を出す。すでに辺りの陽は落ち、灯の無い工場跡は暗闇に包まれている。

未来は恐る恐る、その身を動かし始めた。早く此処から逃げなくてはならない。出来るだけ急いで、出来るだけ音を立てずにだ。もし今度見つかったら逃げ切れる保証はない。慌てそうになる身を自制し、静かに出口を目指した。

あと少し、あと少しで抜け出せる。未来の顔がその事実に綻んだ。

 

「あれ、誰かいるのかい?」

 

そんな彼女はいきなり後ろからライトで照らされる。ビクッと身を強張らせ、後ろを振り向くと薄闇に作業着を着た男性が立っていた。

 

「困るなぁ。お嬢ちゃん、何処から入ったんだい?」

 

言葉通りの困り顔で近づいてくる男性は頭を掻きながら苦言を漏らす。

 

「この工場はそろそろ解体する予定なんだ。だから危ないよ」

「す、すみません・・・」

 

怪人では無いことに安堵しながら、持ち前の素直さで頭を下げる。すぐ側までやって来た男性はそんな未来に笑いかけた。

 

「ほらほら、君は此処には居なかったって事にしておくから・・・」

 

そう言うと男性は胸ポケットから何かを取り出した。

それは大きめなサイズのUSBメモリの様なもの。

 

「最初から『居なかった』事にね」

 

《MASQUERADE》

 

マスカレイドメモリから流れるウィスパーボイス。聞き終えた男性はそれを首筋に突き立てた。

身体に吸い込まれていくと共に男性の姿が変化していく。先程まで未来を追いかけていた怪人の姿へと。

 

「あ・・・、あぁ・・・」

 

尻餅をつき、異形の怪人を見上げる。肋骨をイメージさせるマスクをし、燕尾服に身を包んだマスカレイドドーパントはその手を未来の喉に伸ばした。太い指が彼女の細い首をへし折ろうと掴む手に力が込められていく。

 

「いけない娘だ・・・。悪い子は、処分しないといけないね。俺の悪い上司みたいに」

 

怪人の指が未来の呼吸と血の巡りを遮断していく。彼女の視界が少しずつだが狭まっていった。黒い死の気配が小日向 未来の未来を今、奪おうとしている。

だがその中で死に瀕した彼女は命乞いをしなかった。

もうあと数刻で死に至るだろう。それでも彼女の心中にあったのは生への渇望ではなかった。

あったのは、とある少女への謝罪。

 

『ごめんね、響』

 

自分が道を違わせてしまった彼女へ言葉を送る。あの日、ライブに誘わなければ彼女は今も隣で笑っていたはずだ。

でも彼女は姿を消した。それも自分のせいで・・・。

それから数ヶ月。この世界は残酷だ。もう、生きていないかもしれない。それを覚悟したあの日からどこか諦めていた。

生きる事を。

彼女を自分から奪ったのは、紛れもない自分。

彼女から平穏を失わせたのは、紛れもない自分。

きっとこれはその罰だ。だからもう抵抗はしない。未来の手から抗う力が抜けていった。

 

『私も、今から・・・いくから』

 

目を閉じると未来はその先を受け入れた。首にかかる力が彼女の抵抗力を越えようとする。

 

—だけれども小日向 未来はここでは死なない。

 

その時。唐突な音が響いた!

バイクの音が人気のない廃工場に飛び込んでくる。二人の前まで来て急停止したバイクから『彼女』は降りると腰から外した帽子を被る。

 

—小日向 未来は死ぬはずがない。

—何故なら・・・。

 

バイクのライトは煌々と輝いて、マスカレードドーパントと未来を照らした。

 

—この物語のヒロインを守る、主人公がやってくるのだから。

 

「その子を離せ、ドーパント」

 

目を開けた未来は逆光の中に立つ姿を見る。いつだったか聞いたことのある声だ。でも朦朧とした頭ではわからない。

その声の主が誰なのか。

 

「《マスカレイド》のメモリ。財団Xの置き土産は・・・私が壊す」

 

光に照らされた人物はベストから何かを取り出すと同時に腰に何かを装着するのが見えた。

誰か分からぬそれはポーズをとると、手元にあるそれを・・・ガイアメモリのスイッチを押し込む。

そして力強い声が鳴り響く。

 

《GUNGNIR》

 

「・・・変身ッ!!」

 

『彼女』は手に持ったそれを腰に巻いたベルトに押し込み、横に倒した。

その瞬間、世界は一変する。

『彼女』の周りに何処からか槍が降り注いだと思いきや、その柄が中心に立つ人物に倒れ込む。

次の瞬間、そこにはヒーローがいた。

 

その目をバイクのライト以上に赤く光らせた仮面の戦士が。

 

黄と白、二色のカラーリングに身を包んだ仮面の戦士が。

 

その首に巻いたマフラーをたなびかせた仮面の戦士が!

 

そして・・・『仮面ライダーガングニール』はその指先をマスカレイドドーパントに突きつけると自らを導いてくれた師匠の台詞を、口にする。

 

「さぁ、お前の罪を・・・数えろ!」




ストックははやくも使い切ったので、頑張って続きを書いて参ります。


なお、響がバイクに乗れる年齢ではないのは重々承知しておりますが、そこは寛大な心で許して下さい。
きっと照井あたりが手を回したに違いありません。
きっとそうなのです。


ご感想などありましたらお気軽に。
いつでもお待ちしております。
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