仮面ライダーガングニール   作:露海ろみ

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三話目となります。

無印編、更新いたします。


3. Gとの再会 / 陽だまりの少女

爆炎を背に歩く少女がいる。

腰のロストドライバーから抜き出したメモリを胸元のベストに収めた彼女は、無骨な黄色い携帯を取り出すと何処かに電話をし始める。

 

「竜兄さん? ・・・うん。やっぱりこっちでもメモリを売り捌いてる奴がいるみたい。とりあえずメモリブレイクしたよ。うん、場所は・・・」

 

通話をし終えた彼女は携帯を仕舞うと自分の側にやって来た。

座り込んだままの自分と目を合わせる為に膝を突き、手を差し伸べる少女の姿はまるで傅く騎士だ。

 

「お待たせ、未来」

「響・・・なんだよね」

 

騎士は姫の名を呼び、姫は騎士の名を呼ぶ。

恐る恐る手を伸ばし彼女の手を取った。

幻影なのではと思った。でも確かに自分の手は響の手を掴む。

温かい。

それは今や懐かしい、彼女の手だ。

 

「久しぶり、だね」

 

ぎこちないながらも微笑みかける仮面の騎士。

姿は違えど、決して見間違えない。

自身の知る彼女とは違うが、絶対に同じ人物だ。あの時。行方を見失ってしまった『立花 響』で違いない。

気がつくと未来は抱きついていた。

 

「響・・・響!!」

 

涙を流しながら彼女の存在を此処に刻みつける。離したら消えてしまうかもしれない。そんな恐怖が未来にはあった。

 

「ごめんね、ごめんね・・・」

「・・・うん」

 

泣きじゃくる彼女を抱きしめ返し、その背を優しく叩く。かつて自分がしてもらった事を泣き声をあげる彼女に施す。

大丈夫だよ、とその想いを伝えた。

 

「・・・ただいま、未来」

「おかえり・・・響」

 

そうして、二人の幼馴染は二年ぶりの再会を果たした。

 

 

バイクは走る。

それを走らせる響の後ろには大切な幼馴染がしがみついていた。

後ろからサイレンの音が聞こえてきている。どうやら先ほどまで自分達が居た場所にパトカーが集まっているらしい。

徐々に遠ざかるその音を聞きながら未来は再会した響を抱きしめる。

 

『響、なんだよね』

 

腕は響の腰に回されている。昔よりもどこか逞しくなった彼女の身体をしっかりと確かめ、その背中に顔を埋めた。流れていく風の中に彼女の香りを感じる。大好きな幼馴染の香りを。それを胸いっぱいに感じながら、未来は腕の力を込めた。

 

 

ブレーキが短く音を立てるとガンボイルダーは停車する。そこはリディアン音楽院のすぐそばだ。

 

「着いたよ」

 

ライダーから告げられた言葉に未来は名残惜しそうに頷いた。スタンドを下ろしてバイクを安定させた響は未来を抱えると、そこから降ろす。

 

「怖く、なかった?」

 

雰囲気は変わっていたが、根本は変わっていない彼女。それを感じさせる一言にヘルメットを脱いだ未来は笑いかける。

その笑みに響は彼女の髪を撫でた。

 

「今日の事は・・・忘れてとは言わない。ちゃんと説明する。でも、今はゆっくり休んで」

「うん・・・」

 

エンジン音を鳴らすバイクの横で話す二人。

そんな中、響は言った。

 

「実は・・・明日から私もここに通う事になってるんだ。その・・・お昼に、また、会えるかな?」

「そうなの⁉︎」

 

衝撃の事実に驚く未来を尻目に頬を掻きながら目を逸らした響は頬を染め恥ずかしげに続ける。

 

「私も未来と一緒にまた学校に行きたかった、から・・・」

 

その言葉は未来にとって嬉しい一言であった。赤い顔で僅かに顔を伏せながら話す幼馴染の手を握る。いきなり所在なさげな手を握られた彼女の背が伸びた。

 

「明日のお昼、必ずだからね!」

「う、うん・・・」

 

真っ赤な顔で照れた様子の響は慌てた様にヘルメットを被りなおすと、バイクに跨る。

 

「じゃ、じゃあ・・・『また明日』」

「うん! 『また明日』ね」

 

それを聞いた響はアクセルを捻るとバイクを走らせて、逃げる様に去っていく。

ガンボイルダーのテールランプを目で追いかけながら未来は言う。

 

「『また明日』」

 

二年ぶりに言えるその言葉を噛み締めながら、小日向 未来は寮への道を歩き出す。

 

 

一方。バイクを走らせる響は自身の部屋に向かいながらも彼女の笑顔を思い出していた。

その言葉はいつぶりだろう。

彼女と会えなくなり、家から逃げ、あの街に辿り着き、彼らと出逢って、やがて『力』を得た。

 

そうして今、彼女の元に戻ってきた。

 

「ただいま、未来」

 

彼女の名を呼びながら、立花 響はアクセルを吹かす。それに応えたガンボイルダーは速度を上げて、夜の街を振り切っていった。




章を分けましたが、結局二話で一話なんですよね・・・。

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