操縦者不明のGTロボを潰した後、次郎はその機体をよく観察していた。
「このGTロボの形からして、おそらく初期型......毒への耐性は出来てないと見える......そして大した汚れのないところを見るに、そう遠くで製造された物ではないな。いや、恐らく飛行して来たのだろう。ふむ......」
ほとんどスクラップになったGTロボの残骸を見ながら、次郎は敵の本拠地の情報を絞っていく。
そして大方の距離が把握出来たところで、いざ出発しようと踏み出した途端、GTロボが轟音と共に爆発した。核諸共。
次郎は飛び散る破片を対処し、歯噛みした。
「......まさか自爆機能付きとは。初期型と言っても三虎の所とは違うの」
自爆の規模はそう大きくないが、間近でくらうと大怪我に繋がる。
「......やはり、根源から潰した方がいいか。......すまんな、トレイニー。約束は遠くなりそうじゃ」
ひとまず食材探しのことを頭から離し、GTロボの製造場所を突き止めること”だけ”を目的として、次郎は行動を始めた。
「......まずこの森は100%無いな。距離を取るかの」
手始めにジュラの大森林から離れた場所で探そうと、森を抜け出す。そして氷土の大陸とは逆方向へ走った。
何故氷土の大陸とは反対に移動したかといえば、あそこ一帯は大体ギィが支配していると考えたからだ。
生物はおろか、魔物がいるかすら怪しい。
「......あの大陸はかなりの寒さだったの」
アイスヘル経験者として次郎は思った。
「......いや、無いか」
もしかしたらギィが作っているかも、と思ったが、その考えは一瞬で捨てられた。
何故なら、ギィ1人いればGTロボなど作らずとも大体の戦闘はすぐに終わらせられる。彼はそれ程戦闘力が高い。
かといって楽をしようとする性格にも見えない。
どちらかと言うと、戦闘狂の片鱗が見えた。戦うならば自分で行くだろう。
そして、隣にはヴェルザードもいる。
負けることはまず無いだろう。
という事で歩みを進めていたのだが、やたらと大きい城が見えたので足を止めてよく見る。そして気づいた。
もしかしなくとも、そこは王国だった。
「......む、やけに栄えとるの」
次郎はこれほど栄えた国ならば少しは手がかりが掴めるかもしれないと思い、王国の中へと入った。そしてふと立ち止まる。
「......?」
その時何かの視線を感じたが、すぐに消えた。
敵意は感じなかったので、少し気に留める程度にした。
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入国し、国民達を見てみれば、楽しそうに過ごしている。
次郎はこの国は楽しい場所なのだろうと思い、少し頬が緩んだ。
「もし、そこの婦人」
「私ですか?」
「ええ、少しお尋ねしたいことがありましてのう」
「まあ、どうされまして?」
目の前の優しそうな耳の尖った、所謂エルフの婦人は珍しいものを見るように次郎を見る。
それもそうだろう。この世界ではリーゼントなどという世界一イカした髪型が存在しない。
言ってしまえば世界初のものを目の当たりにしているのだ。
とはいえ、その眼差しは優しかった。
「おぬし、嘴が尖ったロボットのようなものの話を最近聞かないか?」
「ロボット......所謂金属の人形ですか?」
「まあそんなもんじゃ」
次郎が身振り手振り使って形を再現して見せる。
婦人は考え込むもこれと言って思いついた表情はせず、思考の末に申し訳なさそうな目で次郎を見た。
「......すみません。そういう話は聞いたことがありません」
「......そうか。すまないのう。時間を取って」
「いえ、楽しく話せましたわ」
「それでは」
「ええ」
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それから、次郎は辺りの人々に聞いて回っていた。
ある時はバーのエルフに。
「......知らないわ」
「......そうか。時間を取ったの」
ある時は戦闘経験の豊富そうな戦士に。
「悪ぃなジイさん。俺はそういう噂は聞かねぇ」
「いやいや、時間をくれてありがとう」
「国王様なら何か知ってるかもな!」
「......ありがたい助言じゃのう」
それからかなりの時間歩き続けた次郎は、腰を抑えてその辺に座る。
街ゆく人々に話を聞いても、GTロボの存在すら知らないと言う。
その事実が次郎に奇妙な違和感を感じさせる。
ジュラの大森林の中ではあれ程の被害を出しておきながら、情報量の多そうな国で誰にも知られていないとはどういう事かと。
だが、その前に情報を掴むことが第一と次郎は聞き込みを再開した。
「こう、鳥みたいな頭のロボットを知らないかのう?」
今目の前にいる色黒の男は、かなり強いと見える。
などと思いながら同じ質問をする。
「すまんな。俺には分からない。ただ......」
「何じゃ?」
「そういう話はよく聞くな。確か......GTロボ......だったか?」
「GTロボ......?今、そう言ったのか?」
次郎は耳を疑い、男の肩を掴む。
姿を隠している男達が身構えるような音が聞こえたが、そんな事は問題ではなかった。
元々は自分達の世界にあったGTロボ。その名前を知っているということは、誰かから教えてもらった他ない。
GTロボの名を知っているということは間違いなく自分達の世界の人間であると次郎は思ったのだ。
「その名を誰から聞いた!?」
「落ち着け。興奮しすぎだ」
「......頼む、教えてくれ。ワシはその情報を知らなければならないんじゃ......!」
深く頭を下げて目の前の男に頼み込む次郎。
男は頭を掻き、次郎に「来い」と一言。
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城のような建物の中へと案内され、目の前で玉座に腰掛けた男。
風体で察することが出来る。目の前の男は国王だ、と。
「......名は?」
「ワシは次郎。美食屋じゃ」
「美食屋......聞いたことのない言葉だな」
「とは言っても、ほとんど活動しとらんがの」
「......まあ良い。それで?何を知りたい?」
頬杖をついて興味深げに次郎を見る王は、彼の素性を探っているようにも見える。
「......何故、おぬしがGTロボという名前を知っているか聞きたい」
「そうだな......だがその前に1つ聞かせろ」
「......何じゃ?」
「俺がその名を知っている事がどうなのかは知らないが、何故貴様はそのGTロボという名を知っている?」
「それは......」
言い淀む次郎を見て、王は鋭い眼光を向ける。
それに合わせて周りの者達も構える。
「知られてはならぬ訳でもあるのか?」
「......ワシは昔あのロボットと縁があっての。じゃがあのロボットは、ワシの知っているGTロボではないんじゃ」
「......貴様の知っているGTロボとは、どういう事だ?」
また次郎は答えに迷う。世界などという単語を出しても信じてもらえるかどうかは分からない。
もしかすれば、不審者と見られて情報は得られないかもしれない。
ここで次郎はふと、トレイニーの言葉を思い出した。
トレイニーは自分の様な別の世界から来た人間を”異世界人”と呼んでいた。それはつまり、この世界では案外浸透した呼び名なのかもしれない。
もしかすれば、目の前の王は異世界人という存在を知っているかもしれない。
「......その前に1つだけお聞かせ願いたい」
「構わん。申してみよ」
「異世界人という存在をご存知か?」
「......噂程度にしか聞かんな。だが、”爆炎の支配者”の異名くらいは耳に入る。それがどうした」
「ワシもその異世界人じゃ」
「それは真か?妄言か?」
「真実じゃ」
次郎の目は嘘をついているようにも見えない。
疑うのは愚策か、と一先ずその事実を王は信じた。
「......ならば信じよう。そして問う。貴様が異世界人であることと、GTロボと何の関係がある?」
「......あのロボットは、元々はワシらの世界にあった物じゃ。それがどうにかしてこの世界に来た。もしくは、GTロボを作る術を持つ者がこの世界に来た、とワシは睨んでおる」
この発言に周りの兵達は驚くも、王に動揺している様子はない。
「貴様はそれを知ってどうするつもりだ?」
「根源から潰す」
「貴様が?何故?」
「あの世界にいた者として、異物は排除せねばならん」
「......ほう」
次郎の中から感じる気迫に、王はニヤリ、と口角を上げた。
「......本音は?」
「あのロボット自体には罪があるわけではないんじゃが、操縦者が些か無粋な輩での。食う訳でもないのに生物を無差別に殺しよる。誰かが守らなければならないんじゃ」
「ふっ......ははははっ!!」
次郎の言葉に王は顔に手を当てて大きく笑い声を上げる。
その声を聞いてか、兵は武器を離した。
そして直立のまま動かず、次郎と王の会話が終わるのを待つ。
「なるほどな。自分に害がある訳でもないのに、生態系を守る、か。貴様、余程の物好きと見えるな」
「よく言われるわい」
「......良いだろう。貴様の言い分を信じる。教えよう。あのロボットについて───」