ダークエルフのお姉さんに連れられて、隅の方で俺達は話を始めた。
なぜ俺のことが分かったのかと聞くと、エルフの直感だと言われた。
エルフすげぇ。
「ドワーフ王国以外で会えると思わなかったよ」
「私は他の子と違って旅人なの。ママのお店にはよくお世話になるけど、専属ってわけじゃないのよ」
旅人かぁ。何か良いな。
「そういえば、そこのお爺さん」
「ん?ワシか?」
「ええ。見覚えがあると思ったら、国王様と城に入っていった人じゃないかしら?」
「国王様......というのは、ガゼル君のことかの?」
「ええ」
ドワーフ王国の国王だからドワーフ王だな。
ガゼル・ドワルゴ......ガゼル君!?
っていうか次郎さんいつの間にドワーフ王国に行ってたの!?
まずそもそも行ってたのか!?
「まあ色々あっての。少し話してたんじゃよ」
「そうなんですか?」
「ああ。割とフレンドリーじゃったよ」
あの王様がフレンドリーねぇ......嘘だぁ。
「王様とあんなに軽く話せるなんて、そうそう無いわよ?」
「まあ王様だししょうがないの」
お姉さんと次郎さんはもう仲良くなっているように見えた。
お姉さんのコミュニケーション能力もそうだけど、次郎さんもエルフというものをエロい目で見ない。だから話しやすいのだろうか。
本当に男か疑ってしまうな。
「そうだ!ここで会えたのも何かの縁だし、占い、やってみない?初回ってことでサービスにするわ!」
「占いか......」
「次郎さん、このお姉さんの占い本当に凄いんですよ。占いって言っても、言葉だけじゃなくて、水晶になんでも映せるんですよ!」
「......自分だけが知っている場所を移すことは可能かのう?」
いや、それは占いじゃないんじゃ───
「うーん、多分できると思うけど......」
できるのかよ!
「なら頼みたいんじゃが」
「お爺さんだけが知ってる場所なら、私を通じて水晶に送るから、手を握ってくれる?」
「ああ、わかった」
次郎さんがお姉さんの手を握り、お姉さんは水晶に力を注ぐ。
すると、水晶には何匹かの獣が映り出した。
狼や烏、馬に猿、竜が1つの場所に集まっていた。
次郎さんは水晶を見た時、懐かしいものを見るような眼差しを向けたが、その眼差しはすぐに悲しげなものに変わった。
「もっと近くに寄れるかのう?」
「わかったわ」
水晶は獣達の様子を詳しく映そうと近くに寄る。
すると、一枚の大きな鱗があった。
「......そうか、向こうでは今日は蛇王の......」
恐らく蛇王というのは名の通り蛇なのだろう。そして表情を見る限り、命日なんじゃないだろうか。
そして、鱗しかないところを見ると、鱗は蛇王の形見だろうか。
そして水晶の視点がどんどん上空に上がっていったと思えば、獣達がいる場所の形がどんどんと見えてくる。そして全体が見えた時に水晶に映っていたのは、とてつもなく大きい大地のような鹿だった。
「スカイディア......相変わらずデカいのう」
スカイディアっていうのか。
それにしてもデカいな。小国1つ分はあるんじゃね?
都道府県何個分だよ。
さらに上に引いていくと、スカイディアの隣にやけに可愛い鯨がいた。
いや可愛いな。
と思ったら水晶の映像は消えた。
「......ここまでかしら」
「ありがとう。懐かしいものが見えたわい」
「ふふっ、良かった」
次郎さんの顔は、どこかスッキリしていた。
エルフのお姉さんも喜んで笑っていた。
最早あれは占いという領域ではないんじゃ......とか思っても異世界だしな。
元の世界での常識を当てはめても無駄だよな。
「あ、そうだ。お姉さん」
「どうかした?」
「少し占って欲しい所が───」
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「リムル様、今度はブルムンドでお待ちしております。是非ともそちらの本店にもおいで下さいませ」
「わかった。今後とも各地での宣伝も頼むぞ」
「承りました!」
「先生、もう帰っちゃうんですね」
「生徒達が待ってるからさ。また遊びに来るよ!次郎さんも、一緒に───あれ?」
俺は違和感を感じて隣を見る。
ミョルマイル達もキョロキョロと辺りを見回している。
次郎さんが姿を消したのだ。
音も無く、その場から消えた。
全く気づかなかった。
ミョルマイル達の方から見ても気づけばいなくなっていたらしい。
「ま、まあでも、次郎さんって急に消えたりするとこあるから」
「......トレイニー様も言っておりましたな」
「とりあえず、俺は帰るよ。またな」
「ええ」
一先ず、精霊の住処に行かないとな。
次郎さんには申し訳ないけど、子供達の命を優先させてもらおう。
まあ正直、あの人なら大丈夫だろうとか思ってたりする。
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「......これはまた、随分と懐かしい場所じゃの」
次郎はミョルマイルの口利きで酒を大量に貰い、持って帰ってトレイニーやリムル達と飲もうと考えた。
そして帰るために店の扉を開けたと思えば、地獄にいた。
何故地獄に来たのかはこの際どちらでもいいので、とにかく出ねばと策を練る。
「......最近、よく別の場所に転移するのう」
「あら?あなた......」
「お?」
聞き覚えのある色気のある声。
振り向いて声の主を見ると、白だった。
白く長い髪を耳にかける仕草は、世の男を惑わすだろう。
「おお、白ちゃんじゃないか。久しぶりじゃのう」
「ええ、次郎さん、だったかしら?」
「そうじゃ」
「随分と筋骨隆々になったわね」
「少し操作しただけじゃよ」
「操作......ところで、何でまたここに?」
「気づいたらいたんじゃよ。前と同じじゃ」
「はぁ......呆れた。そう簡単に来られるものではないのよ?」
そこから白に地獄についての説明が始まった。
曰く、悪魔しか立ち寄れぬ場所で、人間が入って耐えられる環境ではないとのこと。
とはいえ、次郎はグルメ界で長く過ごしている身。
すでに環境の変化に瞬時に適応できる体になっていた。
「......ところで、2人はいないのか?」
「ええ。常に3人1組で行動している訳では無いのだけどね」
「なら、白ちゃんだけでもいいか」
「どうしたのかしら?」
「酒は好きかの?」
「......飲んだことはないわね。話には聞くけど」
「丁度ここにあるんじゃが、どうじゃ?」
白は周りをキョロキョロと見回し、酒を1本受け取った。
「ほれ、コップ」
「ありがとう」
酒を少し注ぎ、一気に口に入れた白。
すると、白い肌はみるみる内に朱に染まり、誰から見ても酔っているように見えるほど、体がフラついていた。
「......酒、弱かったかのう」
白が倒れそうになっていたので、次郎が支え、地面に座らせた。
白が頭蓋骨を椅子にしようとし、次郎が慌てて止めたのは別の話。
悪魔は恐ろしいと、次郎はつくづく思うのだった。
「あら、ごめんなさい」
「いやー、まさか一気飲みするとわ思わなかったわい」
「器が小さかったから、つい」
口調は平静を保っているように聞こえるが、体はゆらゆらと揺れており、普段は冷たく見える表情も、頬が緩んで笑顔になっていた。
気分が高揚しているのだろう。
これ以上飲ませるのは良くないかと思い、次郎は身を任せてくる白に肩を貸した。
そして白はいつの間にか眠った。
「......悪魔も酒には弱い、か」
そんなことを思った次郎だった。
白が寝てしばらく経った頃、黄と紫が来た。
曰く、覚えのある気配がしたので来たとのこと。
次郎が紫の頭を撫でてやれば、嬉しそうに目を細めた。
黄は相変わらず次郎の体に興味津々だった。
どんな風に過ごせば地獄で過ごせるようになるのかと。
2人が騒ぐので白は思わず起きてしまい、頭を押さえて体を起こした。
「大丈夫か?」
「ええ、まぁ......」
「初めての酒は思わぬ事があるからのう。辛くなったら遠慮なく言うんじゃぞ」
「......そうさせてもらうわ」
それからも頭を度々押さえる白。
次郎が心配していると、いきなり紫が次郎の匂いを嗅ぎ始めた。
「ねぇねぇおじいちゃん」
「ん?」
「赤に会ったでしょ?」
「赤?」
「赤い髪の奴」
「ああ、ギィ君のことかの?」
「多分それ」
「確かに会ったが......分かるのか?」
それを聞いて紫は嫌そうな表情をした。
「どれどれ?」
「すんすん......」
紫に続いて黄と白も次郎の匂いを嗅ぎ始めた。
そして、2人ともシンクロして嫌な表情をした。
「ボクあいつ嫌いなんだよね」
「何でじゃ?」
「だって性格がいけ好かないんだもん!」
「あー、分かるぞ紫」
「ウザいという言葉を地でいくからでしょうね」
黄と白も紫に共感する。
次郎は別の世界にいるギィに心の中でドンマイと言った。
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──白氷宮──
「......イラッ」
「ギィ、どうしたの?」
「いや、何か無性にイラッとした」
「......そう」
(イラッ、て口に出して言うのね)
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「ところで白ちゃん、酔いは覚めたかの?」
「ええ。中の成分を分解して、頭の痛みも引かせたの。美味しかったわ......つっ!」
完全に分解しきれていなかったのか、痛みに声を漏らす白。
白にとって、酔いの頭痛のような戦闘の時とは違った痛みというのは初めてで、適切に対処しきれなかったのだ。
「 無理はしないようにの」
「......ごめんなさい」
「おじいちゃん、何の話?」
「ん?白ちゃんに酒を少しな」
「お酒って聞いたことあるような......」
「酒ってあれか?飲んだら頭痛がするっていう」
「黄ちゃん。言い方が悪いぞ。頭痛がするのは飲み過ぎたらの話じゃよ。まぁ、白ちゃんのように酒に弱ければ話は別じゃが」
次郎と黄が話している隙に、酒に興味を持った紫は次郎の酒瓶に口をつけた。
次郎が少し飲んだ程度でまだまだ量のあるその酒。
次郎、黄、白が気づいても時すでに遅し。
紫は自分の手に収まりきらない程の酒瓶の半分ほどを飲んだ。
白の時よりも数倍多い量一気飲みしたのだ。
「お、おい紫!」
「白ちゃん、紫ちゃんの体の機能はまだ子供なのか?」
「そんなことはないと思うわ。私達は原初の悪魔。生きてる年数は人間には計り知れないわよ?」
「ならば大丈夫だと思いたいな......」
次郎は不安と緊張の目で紫を見る。
白はいつになく真面目な次郎を見てふと疑問に思った。
「どうかしたの?まさかあの酒は毒とか?」
「いや、そうではないよ。子供が酒を一遍に大量に体に取り入れた場合、アルコールという酒の中の成分無しでは生きられなくなるんじゃ」
「依存するということね」
白の言葉に次郎は重々しく頷いた。
「一般にはアルコール中毒と呼ばれるが......体を壊しかねない危険な症状じゃ。加えてあの酒のアルコール度数はフグ鯨のヒレ酒をも上回る。危険度は高いぞ」
「フグ何とかが何かは知らないけど、紫が危ないということなの?」
「体が子供の場合はの話じゃ。ワシも酒は好きじゃが、アルコール中毒にはなっとらんかはのう」
2人が話している間に紫は倒れた。
次郎が慌てて駆け寄って抱き上げると、焦点の合わぬ目でボーッとしていた。
「あ〜、おじいちゃ〜ん♪」
そして次郎の姿を見るやいなや、甘える孫のように抱きついた。
次郎はその行動に頭を撫でて対応した。
紫はかなり強い力で抱き締めているのだが、次郎には問題なかった。
普通ならば感じるこの異常性。だが今はそんなことを考えるほど紫の頭は回っておらず、ただただ次郎に甘えていた。
「普段は精神的に少し幼い時があるから、酔ったことで箍が外れたのかしらね」
「まぁまだ子供じゃからのう」
「外見は、ね」
次郎に甘えている間に、紫は眠りについた。
次郎は自分の服を枕にして紫を横にし、様子を伺う。
「......大丈夫、かのう」
「とりあえず、目を覚ますまで待ちましょうか」
「やれやれ、一気飲みするなんてな......んぐ、んぐ......ぷはっ。おっ、中々、美味い......な......」
「黄ちゃん!」
気づけば黄は紫が持っていた酒の残り半分を飲み干し、同じように倒れた。白は紫に呆れといで自分も一気飲みする黄にとことん呆れ果て、次郎は倒れた際に何とか受け止め、紫の横に寝かせた。
「まさか黄ちゃんも飲むとは思わなかったわい」
「本当よ。呆れるわ。紫を見ていなかったのかしら?」
「一気飲みに関しては人のこと言えんじゃろ」
「むぅ......飲み方ぐらい教えてくれても良かったんじゃないかしら?」
「すまんすまん」
次郎と白は酒の麻酔作用によって眠っている黄と紫の隣に座り、2人が目を覚ますまでの間、話を始めた。