次郎、第二の人生   作:フェンネル

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決断

「......さて、目的を作ったは良いが......どうしようか」

 

次郎は行き当たりばったりで何とかしようと思っていた。

美味そうな獣がいれば食そうと思っていたが、グルメ警察のようなものがこの世界にはいるのではないか、その考えが頭から離れなかった。

 

次郎が元いた世界では食す分には問題なかった。

 

だが、この世界は?

 

もしかすれば殺せば捕まるかもしれない。

ただ、そこらの者に負けるほどやわな鍛え方はしていない。

 

「......よく分かっていない場所で無闇に動くのも良くないか......」

 

頬をかきながら辺りを散策する次郎。

 

「......まずはこの世界について知ろうか」

 

所持している物が少ない次郎は、比較的動き易かった。

拠点を持たないということは、それなりのメリットもある。

 

いつの間にか動き易いように体をノッキングで操作していた次郎は、木々の間を駆け抜け、どんどんと遠くへ行く。

 

そして森の中を突き進んでみれば、様々な動物、猛獣に会った。

 

兎もいれば、牛と鹿の混ざったような生物もいる。

そして、大きな蜘蛛もいれば大きな蟻もいる。

 

竜もいれば、緑の肌の人間のようなものや、角の生えた鬼のようなものもいた。

 

「ふむ......中々面白いのう、この世界の生態系は」

 

と、次郎はふと歩みを止める。

 

その理由は、目の前の光景にあった。

 

「......どういうことじゃ?」

 

次郎の目の前に広がる光景、それは全身が腐敗してしまった色々な種類の動物や猛獣達が体中が化膿して死んでいる光景だった。

 

焼けた痕や切られた痕、貫かれた痕から剥がれた痕まで。

色々なものがある。

さらに酷いことに、傷口から数え切れないほどの蛆が湧いていた。

 

「......この傷口を見るに、恐らく色々な方法で殺されたんじゃろ......火か?刃物か?レーザーか?それともただの拷問か?」

 

ただ1人でに問う次郎。

彼が歩みを進める度、木々は揺れ、大地は割れる。

 

この森に残る僅かな生物───否、島全体が、次郎の怒りに触れて震えているのた。

 

「......ふざけた輩もいるもんじゃの」

 

湧き出る怒りを鎮め、そこらにある大木をいくつか刈る。

そして木同士を擦り合わせ、火を起こして死骸を燃やす。

暫くしてから日を消し、地面に穴を開け、骨を入れていく。

 

「無益な殺しというのは、やはり腹が立つもんじゃ。食すこともなく、ただ殺したいから殺す......何を考えているのやら」

 

全ての骨を埋めた後、木々を地面に刺して質素な墓を作った。

 

「すまんな、材料が無かったもんでの」

 

次郎は静かにその場を去っていった。

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

次郎は、1人、野原で座っていた。

そして、この世界について考えていた。

 

「ああも大量に動物を殺されると、良い気持ちはせんな」

 

そんな時、彼の頭上を大きな影が通った。

 

「何じゃ?」

 

目を向けてみれば、とんでもなく大きい怪物が空を泳いでいた。

そしてそれは魚のように見え、竜のようにも見えた。

 

「......鮫?」

 

そしてその怪物の後ろには何匹もの鮫がいた。

どれもこれも大きく、人間界にいた鰐鮫よりも数倍大きかった。

 

その時、どこからか野獣の咆哮のような音が鳴る。

 

「......何だかんだ、飯は食いたくなるのう」

 

それは、彼の腹の音だった。

次郎はその内の1匹にノッキングライフルをしかけた。

 

すると、弾が鮫に当たる寸前で落ちた。

 

「......ふむ、重力か。中々やりおるわ」

 

分析を終え、自分の体を肥大化させ、鮫の上に乗る次郎。

 

「ほっ!」

 

そして鮫の脳内に腕を侵入させる。

鮫がジタバタと動いたが、即座に意識を刈り取った。

 

「ありがとう」

 

1匹の鮫の死。それは、何てことない出来事。

だが次郎は、最大限の感謝を込めて鮫を殺した。

食に対する有難みを持つ者は、グルメ時代において多くはなかった。

 

だが、一龍や次郎、美食屋四天王のトリコ、ココ、サニー、(ゼブラ)達のように自分達の食事に有難みを持つ者は、より美味しく食すことが出来る。

 

それは、美食屋の大半が知らないことでもあった。

 

「......どんな生物も、食材として調理、口に入れたなら、自分の糧となる......当たり前、故に殆どの人間が忘れてしまったことじゃ」

 

その事実を嘆きながら、次郎は鮫を食べた。

鮫の身は柔らかく、魚特有の生臭さがなかった。

 

「......これは」

 

既に鮫を食う手が止まらなくなっていた。

それ程までに、美味いのだ。

 

「......やはり、食欲は正直じゃな」

 

気づいた時には鮫を完食していた。

骨まで残らず、頭、内蔵、全て。

 

「ご馳走様さん」

 

次郎はすっ、と立ち上がった。

彼の表情は、何かを決意した表情だった。

それと同時に、嬉しそうな顔でもあった。

 

 

 

 

 

「ワシも久々に、”美食屋”として活動しようか」

 

警察がいようがいまいが関係ない。

食いたい物は食う。

 

そして、理由もなく命を奪わせたりしない。

 

その思いを胸に抱き、次郎は歩き出した。

 

 

 

誰かが言った───

 

 

 

 

 

体中が全てお菓子で出来た竜がいると───

 

 

 

全てが脂の乗った極上の肉で出来た豚がいると───

 

 

 

美味しく旨い、”食べる”という行為をやめられなくなる、謎の食材があると───

 

 

 

1口飲めば酔いの心地良い気分がいつまでも続く、伝説の酒があると───

 

 

 

食べたい物は、食べれば良い。

 

 

 

人は、”食”を求めるのだから───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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