次郎、第二の人生   作:フェンネル

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家族

「......ここは?」

 

ギィとヴェルザードと別れた後、次郎は知らない場所にいた。

それも真っ暗な空間にである。

 

彼は今の今まで、トレイニーの為に食料を探しに行っていたのだが、気づいた時には既にこの空間にいた。

 

「......おかしいのう。気配を感じなかったぞ。......”裏の世界”か?にしてはおかしいの......」

 

だが、その考えはすぐに捨て去られることになる。

何故か、目の前にこの空間に自分を招いた者が4人も居たのだ。

 

「な、何故皆がここに......」

「老けたな、”二狼”」

 

次郎に優しい目を向けるのは自分達を息子同然に育て上げ、自分に技術を教えてくれた師匠、”美食神”アカシア。

 

「おかえり、......二狼......また皆で集まれたわね!」

 

涙を浮かべて喜んでいるのは、誰が何と言おうと世界で1番優しい人。師匠と共に自分達を育て上げ、美味しい、温かい飯を食わせてくれた、”神の料理人”フローゼ。

 

「二狼、なんて顔してるんだ」

 

ニッ、と頼りになる笑顔を浮かべるその男は、自分達の兄弟子だが、本当の家族のような存在であり、最後まで世界のために自分の身を使った、世界一強い男、一龍。

 

「......とりあえず座れ」

 

ぶっきらぼうながら次郎に促す最後の1人は、両目に3本ずつつ付いた傷が痛々しい。だがそれと共に懐かしさも感じる。最後に皆と共に食卓を囲むことが出来た、自分達の弟───三虎。

 

次郎は、一筋の涙を流して昔の姿にもどった。

あの、黄金に輝く時間を過ごした時の姿に。

 

5人は、トリコ達の結婚式振りにまた集まった。

結婚式の後、平和に暮らしていた5人だが、ふと二狼だけ急に居なくなってしまったので死にもの狂いで探そうとしたが、よく考えてみれば次郎だから大丈夫だろうと思っていたらしい。

 

「......解せねぇな」

「まあまあ、良いだろう」

 

はははっ、と良い笑顔を浮かべるアカシア。

とても前世で二狼を殺したとは思えない。

 

「ところで、アカシア様」

「ん?うわっ!?」

 

二狼はアカシアに思い切り拳を繰り出した。

アカシアは慌てて回避し、一龍と三虎はフローゼを守るため彼女の前に立つ。

2人はとても楽しそうに笑った。

 

「おいおい、逃げんなよ。楽しく殺ろうぜ?」

「おいおい次郎!ちょっと待て!ちょ───」

「死ねぇぇぇぇ!!!!!」

 

「ちょ、二狼、どうしたの!?」

「フローゼ様、実は───」

 

2人が生きていた頃の、グルメ界でのアカシアと次郎の戦いについて一龍から聞いたフローゼは、光の消えた目で自分の包丁”シンデレラ”を取り出し、アカシアの方へと向かっていく。

 

「ちょちょちよ、フローゼ様!?」

「落ち着けフローゼ!!それは包丁の持ち方ではない!完全に武器だ!」

「離して2人共!アカシアにお仕置きするの!」

 

一龍と三虎を振り払おうと凄まじい力を出すフローゼ。今ならブルーニトロを蹴散らせそうな程怒っていた。

一龍と三虎は正直焦っていた。

想像以上にフローゼの力が強かったから。

 

「ダメです!アカシア様が死んじまう!」

「キレた二狼相手はアカシアもタダではすまんぞ!それに加えてフローゼとシンデレラは不味い!!」

「ふんぬぬ......っ!!」

「絶対離すなよ三虎ああああああっ!!」

「兄者こそ!うおおおあああああっ!!」

 

一龍と三虎は何とかフローゼを静めようと試行錯誤する。

全力で止めている2人と、互角以上に渡り合うフローゼの怒り故のこの力。

 

案外、1番怒らせてはいけない存在は彼女なのかもしれない。

 

そしてそんな中、二狼とアカシアは───

 

 

 

 

 

「アカシアああああ!!!」

「うおおおおお!!!!!」

 

異次元の鬼ごっこを繰り広げていた。

アカシア自身、対抗は出来るかもしれないが、グルメ界で二狼に一瞬でノッキングされたので若干トラウマが残っていたのだ。

加えて、二狼自身の戦闘力。もう打つ手がなかったりする。

 

「待てコルァァァァァ!!!」

「ちょ、落ち着け二ろ───何いいいいい!?!?」

 

アカシアは驚きに目を飛び出させながらも、必死に逃げる。

 

アカシアが驚くのも無理はない。次郎は思い切り腕に力を込め、相手を一撃で宇宙までぶっ飛ばす技を使おうとしているのだ。

 

「じ、二狼!さすがにそれを私に使うわけではないよな......?な!?」

 

とりあえず話し合いをしようと思い、二狼の方に振り返るアカシア。

 

「......あれ?」

 

だが、そこに二狼はいなかった。

そして、誰かに肩を叩かれた。

 

「......ん?」

「よう」

 

アカシアが振り向いた時後ろにいたのは、既に準備万端の二狼だった。

その右腕は、誰が見ても分かるほどの高密度なエネルギーを感じさせる。

 

「...........」

「...........」

 

アカシアが無言で逃げようとするのを、肩を掴むことで止める。

 

「オラアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!」

「うぼおおおおああああああっ!!!!!!!!」

 

そして振り向いた瞬間に思い切り拳を叩き込んだ。

アカシアは遥か遠くまでぶっ飛んでいき、地面に轟音を立てて落ちた。

 

「ふう」

 

やることを終えた二狼は、晴れやかな顔でフローゼ達の元へ向かう。

 

「......心做しか、アカシアが吹っ飛んで行ったところと同じ方向だな......」

 

二狼が行こうとしているのは、フローゼ達がいる場所。

 

フローゼ”が”いる場所。そして、そんな場所にアカシアが飛んで行ったとなると───

 

 

 

 

 

「アカシアああああああああ!!!!!!!」

「うわああああああああ!!!!!!!!!」

 

フローゼに鬼のような表情で追いかけられているアカシア。

一龍と三虎は、遠い目でアカシアに敬礼していた。

 

「......どうした?2人共?」

「おう、二狼。見てみろ」

 

一龍の指差す方向に目を向けると、自分よりも怒り狂っているフローゼがアカシアを追い回していた。

 

「うわあ......」

「フローゼは怒らせてはいけないな」

「だな......」

 

ここに来て、三弟子は同じタイミングでため息を吐いた。

 

「誰か助けてくれぇぇぇぇええええ!!!!!!」

「アカシアああああああああ!!!!!」

「うぎゃあああああああ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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