一から無限に広がる物語(かのうせい) ヒト、それをオクトパストーリーと呼ぶ   作:オクトパストーリー主催者

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苦戦した。これはリベンジしないと。


2021年03月お題募集分
2XXX年某月の出来事 (作:fire-cat)


 とある国家のとある場所で、事件は起きた。

 

「キャップ! 特ダネです! 今回の憲法改正、中身の一部を掴みました!」

 

 大声で若手の記者が駆け込んでくる。

 

「何だと!」

 

 たちまち周りを囲む記者たち。

 ガセだろうと訝しむ声が上がるも、映像を確認すると確かに【機密】【部外秘】の文字が並ぶ文書だった。

 

「こいつは……」

 

 暫くの間、部屋には記者たちが読みふける音だけが聞こえていた。

 


 

地方自治

 

第※条

 日本国は、都道府県制を廃し道州制を敷く。

 

第※条

 日本国は、畿内道、東海道、東山道、北陸道、山陽道、山陰道、南海道、西海道、北海道の九道を置く。

 

第※条

 日本国は、道の下に州を設ける。州は令制国を基とする。令制国外であった沖縄県は琉球国より、琉球州とし、西海道に配す。

 

第※条

 日本国は州の下に地方自治体を置く。地方自治体の名称その他の制度についての詳細は法律で定める。

 

第※条

 日本国政府は、……

 


 

「何だ、これは!」

 

 机を叩き興奮する声が響いた。

 

「はい。平和条項は予想通りでしたけど、地方自治が随分と意外というか……ですよね」

 

 戸惑う若い社員の声。

 

「政府は正気か!? 都道府県を廃止する? 州に変える? まぁこれは未だいい。ただ州が令制国に基づくだぁ? いまさらそんなものもの持ち出してどうする!」

 

 血圧を心配するほど顔を赤く染め上げる年配の記者。

 

「本当に、何を考えているのやら」

「いや、文化的には未だ区分けがあるだろ? 愛知でも東西三河と尾張の違いとか」

「そう考えると案外良いかもな」

「時代劇かよ」

 

「それよりよくこんなの見つけられたな」

 

 情報をすっぱ抜いてきた記者に疑問が飛ぶ。

 

「まぁ色々と伝手はありますから」

 

 照れくさそうに小鼻の脇を掻く記者に

 

「おいおい、西●事件の二の舞は御免だぞ。そこは大丈夫だろうな」

 

 そんな声が上がる。

 そんなへましませんって。と若手記者の反論やそれに対する応酬、改正案の中身についての討議。そんな周囲の喧騒をよそにデスクは考え込んでいた。

(この若いのに特ダネを掴ませるほど政府の防諜は落ちちゃいない筈だ。となれば、こいつは意図的に漏洩させたものなんだろうよ。記事に書かせて潰す気だな)

 だが。と男くさい笑みを浮かべデスクが独り言ちた。

 

「もしこいつが現実になったらどうなるかな」

 


 

 2XXX年某月――

 

『俺っちがこの中で住みたい州だぁ? そりゃ当然ここ尾州よ。次は濃州か』

『ん? 参州だぁ? あんなところ、駿州や尾州から比べたら、なぁ』

 

『飛州ものだよ、良いもんだろ? いや、昔から飛騨の細工物は良いけど、やっぱり物が違うよな。濃州とも良い住み分けができているしな。尾州と参州の仲の悪さに比べればなぁ。昔は一つの県だったなんて信じられんわ。良くまとまっていたな』

 

『武州? ああ昔はよかったけど、今は武州も南北の格差がなぁ。東西の格差もあるし、住むなら相州か総州あたりだろ? 常州でもいいけど』

 

 何の前触れもなく映像が切られる。

 

 

「何でこんな風にお国自慢が酷くなっちまったんだろうな、この国。昔は違ったらしいな」

「そりゃおめぇ、道州制になってからだって聞いてるぞ」

 飲み屋のカウンター席で二人組の男達がグラスを呷る。

「道州制か。あれ自体は問題ないと思うけどな」

「令制国に基づいた割り振りが原因だろうよ。あれで都道府県でまとまりかけていた意識が江戸時代のオラが国まで戻っちまった」

「お国訛りこそなくなっているけど、代わりのお国自慢が年々激しくなって、気が付きゃ江戸の頃までさかのぼって張り合っているからなぁ。良く分裂もせずにまとまっているよ、この国」

 

 某社で掴んだスクープ記事は表ざたになることがなかった。

 すでに国会で単独で議席数の四分の三を占めていた与党の憲法案は反対勢力の抵抗も空しく原案通りに可決され、国民の過半数もこの改定に賛成票を投じていた。

 

「俺の爺さんから聞いた話だけど、今はなくなったあの新聞社が掴んでいたらしいな、事前に改正案を」

「そうなのか? 何故すっぱ抜かなかったんだ?」

 訝しげな声に

「当時の編集長の判断らしい。スッパ抜けばこんな風にはならなかっただろうに」

 そう答える声。

「何だ、政治的信念ってやつか。だから潰れたんだよ、あの新聞社」

 そう言うとグラスを呷る男。

「なぁ、もしそのスクープが記事になっていたらどうなっていただろうな?」

 幾ばくか酔いの回った目が片割れを見据える。

「何だ? 久しぶりのif談義か? いいね、やってみるか。言い出しっぺのお前からな」

「そうだな。まずはー」

 

 男達がその場に居た他の客を巻き込み始めたお遊びとも言える議論が一大イベントになる事を、誰も、この時は予想していなかった。

 

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