常識人で苦労人な幼馴染   作:弾正

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ちょっとシリアス回よ


幼馴染がいるから

 「おいおい……大丈夫なのか、あいつは……」

 

 

 つい先ほど、花音先輩から急にかかってきた電話。その内容は、あまりにも唐突な知らせだった。

 

 

 『み、美咲ちゃんが……倒れちゃって……!!』

 

 

 キグルミでライブするとか絶対キツイとは思っていたけど、まさか倒れるとは。これは想定外だ。

 花音先輩もなんで最初に俺に連絡したのか……俺は美咲の幼馴染なのだからなんとかしてあげてほしい、っていうことなんだろうけど、俺は医療の専門家とかじゃないぞ? 将来医者になる予定もないし。医学部って絶対頭いいじゃん? 俺には無理だ。

 

 

 「まったく、こっちはRoseliaのすげえ演奏聞けると思ってたのに」

 

 

 そんな愚痴を吐きながらも、俺は美咲がいるという場所に向かう。花音先輩曰く、黒服さんの迅速な対応により、とりあえずソファーに寝かされているという。黒服さん有能過ぎて困る。ちなみに、ミッシェル=美咲を認識してない3バカには、このことは伝えていないらしい。まあ、こころやはぐみに「美咲が倒れた」とか言った日には、絶対何かやらかすだろうし。純粋さの暴力が美咲を無慈悲に襲いそうだし。

 

 

 「……人を心配させんなよ、バカ美咲」

 

 

 俺は急ぎ足で向かう。走ると危ないから競歩くらいにしとこう。競歩の方が走るより疲れるけど。

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 「はい到着、っと」

 

 

 なんのトラブルもなく、美咲が寝てるっていう部屋に到着。逆にトラブルあったらビビるわ。

 

 

 「おーい美咲入るぞー……って、倒れてる人に呼び掛けること自体間違いk」

 「どうぞ」

 「喋ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」

 「奥沢様ではありません。黒服の黒井と申します」

 「名字わかりやすっ!?」

 「お静かになさってください。奥沢様がお倒れになっているのですよ?」

 「すいません」

 

 

 そうだよな。美咲を看病してくれてる人がいてもおかしくはないよな。てか、この人黒井さんって言うんだ。黒服の黒井さん。うん、そのままじゃん。

 

 

 「奥沢様はこちらでお休みになっておられます。きっと疲労が溜まっていたのでしょう。ぐっすりとお眠りです」

 「そりゃあ、あの破天荒集団をまとめてたら疲れもしますよね」

 

 

 寝てるのか。無事みたいで良かった。そう安心した反面、ここに来る意味なかったのでは?という疑問が湧いてくる。

 

 

 「あ、直斗くん」

 「花音先輩」

 「さっきはごめんね? 美咲ちゃん、急に倒れちゃったからどうすればいいのかわからなくなっちゃって……」

 「大丈夫っすよ」

 

 

 花音先輩もいた。いつもうちの美咲がお世話になっております。

 

 

 そして、花音先輩の近くでは、美咲がスリープ状態。随分と気持ちよさそうに寝やがって……心配した分が損に思えてくる。

 

 

 「それにしても、こんなに早く来てくれるとは思わなかったな。直斗くんって、やっぱり美咲ちゃんのこと大好きなんだなぁって思ったよ」

 「いやいや、俺が美咲のこと好きだなんて、冗談はやめてくださいよ」

 「でも、美咲ちゃんとお話ししてるときの直斗くん、すごい楽しそうだよ?」

 「……」

 

 

 急いで来たのは事実だけど、それは美咲のことが好きだからとか、そんな理由なんかじゃない。俺があいつのこと好きになるとか、それこそ天地でもひっくり返らない限りありえないな。天地がひっくり返るって面白そうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも、そうか。楽しそう、か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……美咲がいなかったら、楽しいとか以前に、俺はここには、いや、この世にはいないっすよ」

 「えっ……!?」

 

 

 楽しんでる自分と、精神がぶっ壊れてる自分。どっちが本当の俺なのか、なんてな。

 

 

 「あまり多くは話したくないけど、一つだけ。俺の両親は、既にこの世にいないんです。正確には、殺されたんです」

 「!?」

 「そして、そんな時に俺を救ってくれたのが美咲なんです」

 

 

 過去を他人に語るなんて初めてだ。なんで急に話し始めたんだろ? やっぱりまだ、精神が不安定なのかな?それが美咲が倒れたことで表に出始めた、と。情けないな俺。過去に囚われ過ぎなんだな。頭では理解してるけど、精神がそれに追いついてない。

 今でも、あの時の記憶が鮮明に蘇ることがある。

 

 

 『直斗、逃げろ!!』

 

 

 父さんがそう言ってたっけ?やっべ、体震えてきた。

 

 

 

 

 

 

 「直斗くん」

 「花音先輩……」

 

 

 突然、花音先輩が俺の手を掴む。それはまるで、恐怖に震える子供を心配させまいとする親のようだ。細い手が、しかし力強く、俺を掴む。

 

 

 「私には、何があったのかなんてわからない。でも、直斗くんがすごい苦しんでるのはわかるよ」

 「……」

 「私じゃ頼りないかもしれないけど、その時は美咲ちゃんだっているよ。だから、泣かないで」

 「……ははは、俺、涙なんて出てたんすか? 気づかなかったな」

 

 

 女性の前で泣くとか情けなさ過ぎて笑えてくる。こんなんじゃモテるとか夢のまた夢だな。

 

 

 「……ありがとうございます。花音先輩のおかげで、少し楽になりました」

 「どういたしまして」

 「あ、俺が泣いてたってことは誰にも言わないでくださいよ? もし知られたら死ねる」

 「このタイミングで死ぬって言われると、冗談でも笑えないかな……」

 「心配しないでください。両親や美咲が折角生かしてくれたんです。死ぬつもりなんてないっす。というわけで黙っといてくださいよ? フリじゃないっすよ?」

 「……直斗くん、無理してない?」

 「無理?」

 「その明るい性格、無理して作ってない?余計なお世話かもしれないけど、さっきの直斗くんを見てるとそう思えちゃって」

 

 

 無理してるって? 100%否定はできないな。

 

 

 「……否定はしません。でも、こうやって馬鹿してる方が、何百倍も楽しいっす」

 「良かった……でも、辛いときは泣いてもいいんだよ? 私で良ければ、いくらでも話聴くから」

 「いい人過ぎる……」

 

 

 こうやってふざけてる方が性に合うな、俺は。そろそろ切り替えないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これ、私の存在、完全に忘れられていますよね」

 

 

 あ、黒井さん。ごめん。

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 「……ん、ここ、は?」

 「あ、美咲ちゃん。大丈夫?」

 「え、まあ、大丈夫ですけど。あたし、もしかして何かヤバいことしました?」

 「急に倒れちゃって……」

 「あー思い出しました。ごめんなさい、迷惑かけました」

 

 

 そうだった。あたしは確かミッシェルでライブしてて、終わってから程なくして倒れたんだ。何やってるんだろあたし……

 

 

 「ううん、私は大したことしてないよ。でも、直斗くんがすごい心配してたよ?」

 「直斗が……?」

 「うん。美咲ちゃんが倒れたって聞いてから、すぐにお見舞いに来てくれたんだ」

 「……スタッフとしての仕事とか、あたしたちの後のRoseliaの演奏とか、全部放棄して来たってことですか?」

 「あはは……まあ、そうなるのかな。今は戻っちゃったけど、また後で来るって」

 「来なくていいのに……」

 

 

 直斗、ライブすごい楽しみにしてたのに、それを邪魔しちゃったのか……申し訳ないな。次会ったらもう少し優しくしてあげよう。うん、そうしよう。いくら相手が直斗だとはいえ、あたしのせいで迷惑かけちゃったんだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「花音せんぱーい、ライブの後片付けとか終わったんで戻りましたー」

 

 

 あ、帰ってきた。このタイミング狙ってたでしょ。そう疑わざるを得ない。

 

 

 「美咲はどうなってますかー?」

 「ついさっき目を覚ましたところだよ」

 「え!? 起きちゃったの!?」

 「?」

 「お墓まで用意しちゃったのに……」

 「勝手に殺さないでくれない?」

 「お供え物としてスポーツドリンクまで用意しちゃったのに……」

 「はぁ……ありがと」

 

 

 お供え物とか口で言ってるけど、実際はわざわざあたしのために買ってきてくれたんだと思う。直斗はそういうところあるからね。ほんと、素直じゃないなぁ……あたしも人のこと言えないかもしれないけど。

 

 

 「あ、スポドリ代、利子300%つけて返せよ?」

 「高すぎでしょ」

 「そのスポドリを買ってくるのにかかった人件費を考えれば妥当だな」

 「あたし、もし会社の社長とかになったら、絶対直斗だけは雇わない」

 「えぇっ!?」

 「そこ驚くとこ?」

 

 

 前言撤回。やっぱりムカつく。なんで倒れた人に金請求するの? あたしが今回のライブ成功させるためにどれだけ苦労したと思ってるの? 主に3バカのせいだけどさ。直斗も入れて4バカにしようかな?

 

 

 「まあ、でも、倒れて心配かけたのは申し訳なく思ってるから」

 「人に無駄に心配かけさせやがって本当に……ってわけで慰謝ry」

 「は?」

 「ごめんなさい」

 「本当に2人とも仲良しだな~……」

 「花音さん!?」

 「そうっすよ。なんでこんな熊と仲良くしなきゃならないんっすか」

 「…………」

 「痛い痛い痛い!!! 謝る!!!! 謝るから!!!!!」

 

 

 とりあえず、他人に心配かけるようなことは控えるようにしないと。特に直斗。壊れた直斗なんてもう見たくないし。変なところで繊細だから特に気をつけないと。

 

 

 直斗の二の腕を本気でつねりながら、そんなことをあたしは考えた。誰が熊だ。あたし自身は普通の人間です。




やっぱりシリアスは苦手だねぇ……
そして溢れ出る花音先輩ヒロイン感


下に評価ページのURL貼ってみた。失敗してたらごめんなさい。
やり方は、以前、某作家様が教えてくださりました。感謝

こちらのページから高評価をくれると、泣いて喜びます
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