学校が終わって、今日もバイトだぜ! 俺働き者!!
それと同時に、「しゅわしゅわ☆パスパレ復興大作戦♡」の一環として、「氷河期横断計画」を開始する。ネーミングセンスがダサいとか意味不明とか言ったやつ、後でCiRCLEの裏な。
「やっほ~☆」
「……」
OK!「氷河期横断計画」第一段階、ロゼリアのCiRCLE入り、達成!! これでもしロゼリア来なかったら計画が延期されてたからな。危ない危ない。
なるほど。まず来たのはリサ先輩&友希那先輩か。この2人はいつも一緒に来るよな。リサ先輩が言うには幼馴染らしい。俺と美咲みたいなもんか?
「あ、こんにちは。では、2番スタジオへどうぞ~」
「ありがと~」
今回の計画に必要なのはこの2人ではない。いや、昨日リサ先輩には色々とお世話になったけども。
昨日何があったのかって? ちょーっと氷川日菜先輩について聞いただけさ。それと、その姉である氷川紗夜先輩についてもね。計画実行には情報が必要不可欠なのさ。俺頭いいっ!
「漆黒の闇より出でし……えっと、その……なんかすごい魔王!! 宇田川あこ、参上!!」
「くっ!! これが魔王の魔力か……今の俺では倒すなど不可能、か……」
「こ、こんにちは……」
次に来たのは宇田川あこ&白金燐子先輩。この2人も結構仲いい。NFOというネットゲームで知り合ったらしい。あこはともかく、燐子先輩がネットゲーム大好き人間だと知った時には驚いたね。そういうイメージが全くなかったから。
「あ、2番スタジオでリサ先輩と友希那先輩が待ってま~す」
「わかりました……」
「わかったー!!」
いやー、若いもんは元気じゃのう。あこはロゼリアの中で唯一俺より若いからな。妹みたいな存在だ。実際巴の妹だし。元気なところは姉妹そっくりだ。
「こんにちは」
あ、大本命氷川紗夜先輩降臨。第二段階、どうにかして紗夜先輩と2人きりで話せる状態を作る、実行!!別に2人きりにやましい意味はないからな。割とガチで。ちなみに紗夜先輩は美人。俗にいうクールビューティーみたいな人だ。
「こんにちはー。ロゼリアの皆さんは2番スタジオでお待ちでーす」
「了解しました」
「それと、1つお願いが」
「なんでしょうか?」
「練習後、ちょっとだけお時間頂けないでしょうか?少し大切なお話が」
「……わかりました」
「ありがとうございます!!」
よし、第二段階クリア! 絶対怪しまれたけど! 急に男に時間くれと言われたら普通怪しむよ。でも、成功したから結果オーライだね!!
後は、第三段階、紗夜先輩とお話する、だな、これが難易度バカ高いんだけどね。EXPERTだね。太〇の達人だとおにだね。
◆◇◆◇◆
「時間とってくれてマジでありがとうございます」
「別に構いません。それで、要件とは?」
ロゼリアの練習が終わり、ここは2番スタジオ。ここにいるのは俺と紗夜先輩の2人のみ。こんな展開昨日もあったな。
よし、覚悟は決めた。ここからは真面目にいくぞ。
「妹さんと話がしたいんです」
「っ……!?」
俺の目的は、とりあえず氷川日菜先輩と話をすること。そして、日菜先輩は紗夜先輩の双子の妹(byリサ先輩)。だったら、紗夜先輩に頼み込めばいいというわけだ。
いや、本当はね、リサ先輩経由でいこうと思ったんだけど、昨日その話をしてる途中で、聞き捨てならない言葉が聞こえてさ。
『紗夜と日菜は、あまり仲が良くないみたいなんだよね』
『え? どうしてっすか?』
『詳しいことはわからないけど、日菜が言うには、紗夜が避けてるみたいで』
『避けてる?』
『そう。家族なのに避けるだなんて、紗夜も酷いよね~』
家族と喧嘩するのならわかる。でも、家族を避ける?なんの理由があるのかは知らないけど……
「その様子だと、やっぱり何かあるんすね」
「……長尾さんには関係のないことでしょう?」
「……生意気な後輩から1つだけアドバイスです。失ってからじゃ遅いんですよ」
「失ってから? それはどういう……」
後悔してからじゃ、遅いんだよ。
俺は別に、家族と仲が悪かったわけじゃない。でも、今でも思うんだ。「もっと話しとけば良かった」「もっと色々なことをしてれば良かった」って。これは俺の勝手な気持ちだけど、周りの人にそういう思いはしてほしくないんだな。紗夜先輩が今すぐ失うなんてことはないだろうけど、このままだと危ない気がしたんだ。
「そのままの意味っす」
「そのまま……まさか!?」
「俺には兄弟姉妹なんてそもそもいないからわからないっすけど、父と母はいたんで」
「……そういうことだったのですか。辛いことを思い出させてしまい、申し訳ありません」
「大丈夫っすよ。俺が勝手にやったことなんで」
日菜先輩を説得するという目的に便乗した、俺の自分勝手。美咲が俺をバカだと言うのも痛いほどわかる。紗夜先輩と俺が仲が良いわけでもないのに、こうやって介入する。これがエゴイストってやつか?まあ、行動を改めるつもりは全くないんだけど。俺は俺のやり方を信じるだけ。周りから見れば間違いでもな。これこそ究極の自分勝手。
別に響かないのならそれはしょうがない。そこら辺にいる後輩1人の言葉で状況が変わるほど簡単なことには思えないし。でも、俺は言いたいことは言った。
「それで、妹さんと会わせていただけませんか?」
「1つ気になっていたのですが、なぜ日菜と話がしたいのですか?」
「Pastel*Palettesのことについてでちょっとお話が」
「……Pastel*Palettesは現在、活動自粛中だと聞いているのですが」
「エアバンド騒動ですね。バンドでギターを弾く身としては、許せないものだったりするんすか?」
「そうですね……特に妹のことは」
「確か、同じギターでしたっけ?」
話を本題、日菜先輩のことに戻す。
「はい。あの子は、私の真似をしようとしてギターを始めたんです」
「それはお姉さんのことが大好きないい妹さんですね」
「しかし、あの子は天才でした」
「天才?」
「私のやっていることをことごとく真似して、そして、全てにおいて私より上手くなっていく。そんな私に残されたものはギターのみ。それなのに、日菜はギターも始めて、オーディションに合格してバンドにも入った。私が必死に練習して手に入れたこを、日菜は簡単にできるようになった。私にとっては、それが苦しかった。ギターを早くやめて欲しいとも思った。だけど、この前の初ライブでは楽器を弾かなかった」
「……」
つまり……紗夜先輩は日菜先輩に対して劣等感のようなものを抱いているということか? 紗夜先輩はかなりギター上手いのに。楽器未経験の俺でもわかる。それと簡単に並ぶって日菜先輩相当ヤバい人だな。
「私が勝手に思っているだけとはわかっているのですが、日菜が私のことを見下しているように感じてしまった。ギターをそのままやめてくれればいいと思う気持ちと、私に唯一残されたギターを踏みにじられたことに対する怒り。それが複雑に絡み合った」
「……」
「……申し訳ありません。少し話過ぎてしまいました。それで、日菜と話がしたいのですよね? 家まで案内しますが」
「いいんですか?」
「私の身勝手で醜い思いを聞いてもらってしまったので」
「ありがとうございます。俺の方こそ、生意気なこと言ってすいませんでした」
頭を下げる俺。落ち着いて考えると、相当ヤバいことした気がするからな。地雷を踏みぬいて壊したレベルで。つまり爆発しなかったからセーフ。
「私の方こそお礼を言いたいくらいです。話を聞いてもらって少し楽になったこともですが、何より、少しは日菜と向き合ってみようと思わせてくれましたから」
「え?」
「まだ和解しようとまでは思えませんし、ギターを勝手な理由で弾かなかったことは簡単には許せません。ですが、このまま取り返しのつかないことになる前に、一度しっかりと向き合いたい、と」
「そうですか……それは良かった」
そう思ってもらえて良かった。ここから仲直りに近づいてくれると嬉しい。家族で争うことほど悲しいことはないからな。
「ところで、Pastel*Palettesのことについて話すと言っていましたが、それはどういうことなのでしょうか?」
「『しゅわしゅわ☆パスパレ復興大作戦♡』の一環です」
「……ふざけているのかしら?」
「ごめんなさい。簡単に言うと、もう一度パスパレの皆で活動しようということです」
紗夜先輩怖い。美咲の「ふざけてるの?」の100倍怖い。あ、でも、つねられたりしないだけマシかな?
シリアスを書くのは苦手なのです