久しぶりに書くと、自分の腕の衰えを感じる
ライブまでの数日間、俺はバイトを頑張った。めっちゃ頑張った。とにかく頑張った。
「ライブ開始まで後30分だけど、準備はどう?」
「問題ないっすよ。各バンドもそれぞれ準備できてますし、お客さんも徐々に入ってきました」
そして、今日がライブ当日。人生初ライブ(ただしスタッフ)だ。ちょっとテンション上がってたりする。
だって、ライブだぞライブ! バンドの演奏が生で聞けるんだぞ!? こんな機会もう二度とないぞ!? あ、ここでバイトしてる限りライブ何回もあるか。
それでも、ライブが楽しみなのです。俺、音楽には詳しくないけど、なんか楽しそうだと思ってる。ライブのお客さんが全員楽器弾けるとは限らないでしょ? そういうことだよ。俺のことなんだけど。
「あ、直斗。お疲れ~」
「美咲か。そろそろ着替えるのか?」
「うん。はぁ……なんでキグルミなんて着てライブしなきゃいけないのかな……」
「日頃の行い?」
「あんたよりはマシだと思うんだけどね」
「んだとゴラ」
「はいはい、痴話喧嘩はそこまで」
「「痴話喧嘩なんかじゃないです」」
「そういうところだよ」
後でまりなさん〆よう。美咲が許可してくれるだろうし。てか、なんで美咲と恋人同士にならなきゃいけないんだよ。俺はもっと可愛くて性格も良い人と付き合うの!!
でもね、美咲は周りと比べると美少女の部類に入るの。悔しいことにね。誠に遺憾であります。
「はぁ……まあ、あれだ。頑張ってこいよ。応援してる」
「ありがと」
応援のメッセージくらいは送っておく。あれでも幼馴染だし、折角の初ライブだから成功させてほしいし。俺には見てることしかできないからな。楽器なんて無理無理。
◆◇◆◇◆
ライブ開始まで後数分となった。
客席に観客が入り、後はバンドの登場を待つのみ。最初Afterglow、次に世界を笑顔に!(仮)、トリはRoseliaだ。スタッフという立場ではあるけど、めっちゃ楽しみだ。
「……人多いな」
しかし、本当に人が多い。ほぼ満席だ。人気映画の上映初日の時とかも人多いよね。そんな感じ。人口密度が高すぎるんじゃ。
「あ、あの……」
「?」
突然話しかけられ、反射的に振り向く。するとそこには、白い髪の女の子が立っていました。真っ白な髪の毛だ。あら可愛い。年下っぽいな。
「どうかしましたか?」
「え、えっと、あ、あの、その……!!」
「うんとりあえず落ち着こう。ほら深呼吸。吸って~吸って~そのまま吸って~」
「……!!!」
「ごめんまさかガチでやるとは思わなかった。吐いて! 吐いていいから! 死ぬぞ!?」
「はぁ……はぁ……」
真面目か。うちの幼馴染だったらこの時点で「あたしを殺す気か」って言うんだけどね。真面目なのはいいことだけども。
「それで、どうしたの?」
「じ、実は……自分の席がわからなくなっちゃって……」
「なるほど。チケットは?」
「これです……」
「ふむふむ……この席なら、あそこの一番右の席だね」
「あ、ありがとうございます」
「礼には及びませんよ」
今のセリフちょっと紳士っぽくない? え? わざとらしい?
それはともかく、慣れてそうな感じじゃなかったし、あの子もライブ初めてなのかな? ライブが似合うような性格には見えなかったし。でも、あの美咲がバンドに入ってライブやってるんだもん。イメージだけじゃ人はわからないよ。もしかするとあの子も近いうちにバンド組んだりしてね。
あ、照明ついた。ということは、そろそろか。
「Afterglowです」
最初のバンド、Afterglow登場!ついにライブが始まった。衣装かっこいいな。
「まずは一曲、聞いてください」
前置きは特にないのね。それもそれでロックっぽいかもだけど。
「『Scarlet Sky』」
蘭がそう言った直後、演奏が始まった。キーボードとベースの音でリズムが作られ、その後ドラムとギターの音が入ってくる。そしてボーカルの声が入ってくる……って、え? 控えめに言って最高かよ。
◆◇◆◇◆
「ありがとうございました」
演奏の終了を告げる声と同時に、あちこちから拍手の嵐が巻き起こる。
最初の『Scarlet Sky』の後もいくつかの曲を演奏したAfterglow。率直に言おう。すげぇ(小並感)。同い年だとは思えないほど演奏上手かったし。俺も練習さえすればあれくらい上手くなれるのかな?個人とバンドじゃ全然違うけども。
「どう? 初めてのライブは?」
「あ、まりなさん。控えめに言って最高っす」
「それは良かったよ~! 次は美咲ちゃんたちのバンドのライブだね」
「そうっすね」
「心配してたりするの?」
「まさか。美咲ならなんとかなりますよ」
「信頼してるんだね」
「……昔からの仲なんで」
なんだかんだで美咲のことは信頼してる。あいつがいなきゃ今の俺はいないからな……っと、駄目だな。何かあるとすぐにそっちの思考に走ってしまう。
……俺は未だに引きずってるんだな。美咲はバンドとかやって前に進んでるってのに。
「皆~!! 来てくれてありがとう!! あたしたち、『ハロー、ハッピーワールド!』よ!!」
ん? この声は……
「ハッピー! ラッキー! スマイルー! イエーイ! 皆で笑顔になりましょう!!」
おいおいめちゃくちゃ過ぎないか?てかバンド名決まったんだなおめでとう。安直だけど、悪い名前だとは思わないよ。そもそも俺ネーミングセンスないから評価できないけど。
俺の暗い思考を宇宙の彼方に吹っ飛ばすように現れた、世界を笑顔に!(仮)。ハロー、ハッピーワールド!に進化して登場。レベル上げ(常識という面で)を頑張った美咲と花音先輩に尊敬の意を示します。
「それでは早速行くわよ~!! 『えがおのオーケストラっ!』」
始まったな。
さっきのAfterglowはロック調の曲だった。かっこいい系の曲、とでも言えばいいのかな? しかし、ハロー、ハッピーワールド!の曲は、かなり明るい曲調みたいだ。バンド歴が長いAfterglowに技術面では及ばないけど、また違う魅力がある。バンドや曲の名前通り、笑顔になれるような楽しい曲だ
美咲(ミッシェル)のDJも様になってるな。キグルミ着ても意外となんとかなるやん。あ、あのお客さんめっちゃミッシェル見てる。確かに、バンドに熊がいたら気になるよな。
「まさか本当にあれ着て演奏するなんて……」
「そう思いますよね? でも、あの人たちに常識は通用しないんで」
隣のまりなさんもびっくりしてる。これでまりなさんは常識人だということが証明された。やったね! 俺も、キグルミ着てバンドやることになったって美咲から初めて聞いたときには、遂に美咲の気が狂ったのかと思ったからね!
「この演奏はどうなんすか? まりなさん的には」
「すごくいいと思うよ! とても楽しそうに演奏できてるもん」
「そうですよね。でも、俺、1つ思うんすよ」
「どうしたの?」
「……キグルミの中、絶対暑い」
「あはは……確かに」
あいつ熱中症とかでぶっ倒れたりしないかな。それだけがお母さん心配です。もし倒れた時のためにお墓くらいは用意しとくか。俺やっさしー。
……まあ、流石にね? ガチで倒れたらその時は助けるけども。
◆◇◆◇◆
「とーっても楽しい時間だったわ!!」
あっという間に終わってしまった。楽しい時間は早く過ぎるっていうけど、まさにそれだ。逆になんでつまらない時間は長いんだろうね? 誰も得しないよそれ。
「さて……次はRoselia、いよいよ最後のバンドってわけっすか」
「そうだね。Roseliaの子たちは皆実力が高いから、どんな演奏になるのか楽しみだね」
ハロー、ハッピーワールド!達が舞台から姿を消し、次に現れるであろうバンドはRoselia。今回が初ライブだが、メンバー1人1人の実力が高いらしい。
「孤高の歌姫」と呼ばれ、圧倒的歌唱力を誇る湊友希那を筆頭とし、いくつかのバンドを転々としながらも実力を追い求めてきたギタリスト・氷川紗夜や、俺なんかにも気さくに話しかけてくれたコミュ力お化けベーシスト・今井リサ。厨二病こじらせた小さいドラマー・宇田川あこ(Afterglowの巴の妹らしい。びっくり)に、豊富な語彙を持つもコミュ障気味なキーボード・白金燐子。この5人の演奏はどのような感動をもたらしてくれるのか!? あ、今の紹介は7割くらい偏見です。文句は美咲が受け付けております。
「す、すごかった……」
あ、さっきの真っ白な髪の女の子(略して真っ白ちゃん)もびっくりしてる。反応が素直で可愛い。
「そろそろRoselia来ますかね。楽しみ過ぎる……って、電話? 誰だライブ中に?」
「タイミング悪いね……ドンマイ」
こんな時に電話をかけてくる不届き者は一体誰かねけしからん。もししょうもない理由だったら、その時は電話かけてきた人に家にある靴下という靴下を全てひっくり返してやる。ちなみに靴下は裏返しにして洗濯するといいらしいぞ! 知らんけど。
「さーて、その不届き者の名は……花音先輩!?」
「花音ちゃんに対して失礼な言い方だね……」
「そこは反省してます」
ライブが終わってちょっとしか経ってないはずの花音先輩が、どうして?
俺は電話に出て、その直後に衝撃的なことを知らされた。
ライブの描写は苦手です
投稿ペースはガタ落ちかもだけど、失踪はしないから頼むぜ相棒