IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男 作:運命の担い手
あれから道場での訓練を毎日している。最初よりはマシになってきて先日本音に勝った。これは本当にうれしかった。
で、今日は簪と一緒に二式の作るのを手伝っている。二式はようやく七割ほど出来てきたが、完成にはまだ程遠い。楯無さんの協力があれば今の倍以上は作業が進むはずなんだが……
それだと簪が嫌がるからそれはできない。まあタイミングを見図れば僅かでも協力に賛同してくれるはずだ。
「なあ簪」
「何……?」
「さすがにこれ以上は難しいぞ」
「……うん」
外見では完成しているように見えるが中身はまだだ。肝心なハードウェアとソフトウェアの問題が山積みだ。
なにより打鉄弐式の最大武装。第3世代技術のマルチロックオン・システムがまだ構築と実装がまだなのだ。このままでは通常の単一ロックオン・システムでやるしかない。
「ん……ふう……」
「今日はこのくらいでよしたらどうだ?」
「でもまだ時間はある……」
「だがここ最近は寝不足だろ?」
「うん……」
そう。最近簪は倉庫に籠る時間が増えてきている。日付けが変わるまで作業をして寝て五時過ぎに起きてまた作業と食べる時間以外はほとんど倉庫の中にいる。
当然疲労もたまることは確実だ。今は午後の三時だが疲労をなるべく減らすにはここいらでやめた方がいいだろう。
「今日はここまでで、明日やればいいだろう。とにかく今日はもう休め。倒れてもしたら元も子もないだろ」
「……わかった。明日にする」
「明日の朝食を食べ終えてからだぞ」
「(ギクっ!)……わかっているよ」
分かりやすいな。
簪はフラフラになりながらも倉庫から出て行こうとしていたが工具などが入っている大きい棚にぶつかりグラグラと揺れて簪に倒れてくるのが分かった。
「簪!危ない!」
「え?」
すぐさま駆け寄り簪を守るように覆いかぶさり、棚が倒れてきた。
ドオオオオオオンンンン!!!!
「な、なんなのこの音は!?」
読書をしていたらいたら尋常じゃない音が響いた。
「お嬢様!大丈夫ですか!?」
「私はなんともないわ。それよりも今の音はどこから……」
「かいちょー!お姉ちゃん!」
本音ちゃんが急いで来たようで息が荒かった。いつものようなおっとり口調ではなかった。
「どうしたの本音。そんなに慌てて」
「かんちゃんとゆーみんが倉庫で棚の下敷きになっているの!」
「なんですって!?」
そんな簪ちゃんと士郎君が!すぐに助けないと!
「虚ちゃんと本音ちゃんはすぐに屋敷にいる男になるべく多く呼んで来て」
「分かりました!」
「うん!」
すぐに虚ちゃんと本音ちゃんは出て行った。
「待っててね。簪ちゃん、士郎君!」
私は庭にある倉庫に向かった。
「簪ちゃん、士郎君。大丈夫!」
倉庫の中は機材やパーツが散乱していた。
「生きてはいますよ。簪も無事ですから。もっとも、早く出たいのですが」
「待っててね。今すぐに出してあげるから!」
どこからかは分からなかったけど士郎君の声がした。簪ちゃんも無事なのね。
「呼んで来ました!」
「お父さんも来たよ!」
外には五人ほど男がいた。警備のために家に男がいるのである。その中に和也さんもいた。
「話しは本音から聞いた。すぐに助けよう」
「お願いします。それじゃ……」
「おいおいどうしたこんなに倉庫の前に集まって?」
「お父さん!?どうしてここに?」
今日は総会で夕方頃に帰ってくるはずだったお父さんがここにいたので驚いた。
「ちょうどよかった。倉庫の中で簪ちゃんと士郎君が下敷きになっているの。手伝って!」
「何!分かった。危ないから外で待っていろ!」
お父さんと和也さん、警備の男で倉庫の中に入った。
「おい!士郎、簪どこだ!場所が分からないと助けようにも助けられねえぞ!」
「なるべく正確に言ってほしい」
そうだった。さっき中に入ったけど機材やパーツが散乱していて分からないのよね。
「大きい棚が見えますか?それの下にいます」
あれね。あれを
「分かった。今助けてやるからな!」
大きい棚の所にお父さんたちは向かって端々を掴んで退(ど)かす用意ができた。
「全員持ったな。それじゃいくぞ。いっせーの!」
少しずつ大きい棚が持ち上がりそこら辺に置かれた。
「簪ちゃん、士郎君!ケガはない!」
すぐに私は駆け寄ってケガがないか確認した。
「簪は大丈夫ですよ。俺は少しありますけど」
簪ちゃんは士郎君に守られるように覆いかぶさっていたおかげでケガは無いようだったけど、代わりに士郎君がケガをしていた。
頭から血が流れていて背中も所々血が滲んでいた。
「救急箱を持ってきます!」
「ありがとう」
虚ちゃんが急いで家に戻って救急箱を取りに行ってくれた。
「沁みるな。消毒液は」
「それはそうだよー。でも、たいしたケガじゃなくてよかったね。ゆーみん」
「まあな」
俺は本音からケガの手当てを受けている。頭の血は派手に見えたが傷が浅く、背中は打撲と切り傷だけだ。
折れている所がないのが
「これでよーし!どう?」
「ああ大丈夫だ。しかし、意外だな。本音が応急処置ができるなんて」
「小さい頃、よく転んでいたからやってくれたり自分でしていたからねー」
それは納得だ。
「し、士郎。…大丈夫?」
「ん?簪か。大丈夫だ。折れてもいないぞ」
「そう……。良かった……」
簪は傷一つもないようだ。そうならないように覆いかぶさったからな。
ああ、それにしても背中がちくちくする。
「しかしまいったな」
「なにが?」
「なにがじゃなくてな。倉庫は元に戻すのに五日はかかるんだぞ。打鉄二式の完成が遅れるのは目に見えるだろ?」
「あ……そうだった……」
中はまだ片づけている途中だ。孝司さんが部下を呼んできれいにはなっているが機材とパーツがバラバラになっているので使える物と使えない物に分けて、壊れた機材とパーツは取り寄せないといけないのでどう頑張っても五日はかかるそうだ。救いなのは打鉄二式が簪に待機状態で持っていたことだ。
「この際だから楯無さんに協力を頼むしかないぞ。このままだと武装はともかく、打鉄二式そのものが出来上がらなくて入学式が始まってしまうぞ」
「だけど……それじゃ……姉さんに近づけない……」
「はあ……」
筋金入りの頑固娘だな。武装を後回しにして機体を仕上げようにも時間が掛かるどうすれば……。
「士郎君。大丈夫そうね」
「本音がいつもこんな風にしているといいのにね」
楯無さんと虚さんが倉庫の前にいる。ちょうどいい、この際だから今言った方がいいな。
「簪。ここは協力してもらおう。腹くくってさ」
「でも……」
はあ……。この頑固さえなければすぐに協力してもらえるのだがな。いや、元はといえば楯無さんがあんなこと言わなければこうにはならなかったはずだ。
しかたないが約束の事を話すか。
「簪。今から話があるが先に言っておこう。すまない」
「え?」
「俺は楯無さんに打鉄二式の製作に手伝ってもらうように言われている」
「そ、そんな……」
簪の表情が信じられないという感じになるが俺は続けて言う。
「それもうひとつ。頼まれたことがある」
「……なにを」
「……信じてもらえるかは分からないだろうが簪と仲良くしてもらえるように頼まれている」
「う、嘘だよ……そんなの……」
「本当だ。俺は嘘を言っていない」
言わないように言われていたが、これ以上打鉄二式の完成が遅れるとさすがにまずいから言うしかない。
なら、それと同時に姉妹の中を解消できればなおさらいい。
「俺はここに来てそれほど長くはいないが簪が楯無さんに劣等感があるくらいは知っている」
「………………」
生活しているうちに分かったのは簪が楯無さんに劣等感があると感じたからだ。
楯無さんの話題となると簪は少し暗くなっている。確かに楯無さんは明瞭快活で文武両道、料理の腕も絶品(先日料理を食べたので)で更に抜群のプロポーション(これまた先日)とカリスマ性を持つ完璧超人と言っても過言ではない。
そして、姉は優秀で妹は出来損ないと簪は思い込んでいる。
「だけど、簪は簪。楯無さんは楯無さんだ。周りがどうこう言ってもその人はその人なんだからな。それに楯無さんにも苦手なことが一つや二つあるはずだろ」
「……そういえば、姉さんは編み物が苦手なんだ。私は出来るけど……」
「そうだろ。誰だって苦手な事はあるさ。むしろない方がおかしい。だから……」
「ふわぁ……!」
簪の頭を撫でた。こうすれば落ち着くだろう。多分……。
「協力してもらうようにお願いしよう簪。楯無さんも快く引き受けてくれるさ」
「う、うん……」
顔が赤いな。どうしたんだ?
「顔が赤いが大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよ!じゃ、じゃあ姉さんに頼みに行くね!」
「あ、ああ……」
なんだったんだ?まあいいか。あとは楯無さんに任せて倉庫の手伝いに行きますか。
「はあ……びっくりした……」
頭を急に撫でてくるからびっくりした。お父さんに撫でてもらったことはあるけど他の男の人には撫でてもらったことがないけど、士郎の手。なんだか暖かったな。
「い、今はそれより姉さんの所に行こう……」
姉さんは倉庫の前にいて機材やパーツを見ていた。
「姉さん。話があるんだけどいいかな?」
「か、簪ちゃん!?い、いいわよ!虚ちゃん、少し離れるわね」
「分かりました。私は引き続き使える物を見ておきます」
作業を虚さんに任せて家の裏に来た。
「そ、それでなにかしら」
「う、うん……。あのね……打鉄二式を作るの手伝ってもらいたいんだ……」
「え?」
今思えばこうして二人で話すのは何年ぶりかな。いつのまにか距離を置くようになって、話すのも一言二言ぐらいになっていた。
「私じゃ姉さんみたいに優秀じゃないから一人でISを作るのは無理だから手伝ってほしい。こんな出来の悪い妹だけどお願い……」
頭を下げてお願いした。
しばらく沈黙すると姉さんが私の手を握ってきた。
「任せないさい。ちゃんと手伝ってあげるわ。それに簪ちゃんは出来の悪い妹じゃないわ。ISを一人で作ろうとしている時点でもう優秀よ」
「そ、そうかな?」
「そうよ。それとごめんね。この前あんな酷いことを言って。本当は一緒に手伝いって言いたかったけど、あの時言いたいこととは別なことを言ってを後悔したわ。ごめんなさい」
「私も今まで避けてごめんなさい」
姉さんが私を抱き寄せて頭を撫でられた。
今まで我慢していた目から一気に涙が溢れ出した。
「お姉ちゃん……。おねえちゃぁん……」
「そう呼ばれるの、何年ぶりかな……」
春先前の風が長年のわだかまりが解けた私達姉妹を喜ぶかのように優しく吹いた。
「やあ、よかったよかった。楯無と簪が仲良くなってよ!」
「そうですね」
夕食が食べ終わり部屋に行こうとしたら孝司さんに止められて、晩酌に付き合っている。
「お前のおかげだよ、士郎。俺達じゃどうしようも出来なかったのにお前がしてくれてほんとに感謝している」
「俺はただきっかけを作ったに過ぎませんよ。結局のところは当の本人たち自身がやったことです」
「だがきっかけがなけりゃ出来なかったことだ。素直に感謝を受け取れよ」
「今日はそうしておきますか」
簪と楯無さんが仲直りして孝司さんはかなり上機嫌だ。沙織さんもそうだが、彩乃さんもそうだ。いつも無表情の和也さんも喜んでいるように見えた。
「それじゃ、俺はそろそろ風呂に入りますね」
「おお、そうか。自慢の風呂だからな。ゆっくり湯にでも浸りな」
あらかじめ風呂の用意をしていたのでそのまま風呂に直接向かった。このあと俺は思いがけないものを目にするとは思わなかった。
「あら?士郎君は部屋に戻ったのかしら?」
「どうした沙織。士郎に何か用があったのか?」
「ええ。お風呂はもう少ししたら入るように言おうと思ったのだけど……」
「風呂に誰か入っているのか?」
「今日は久しぶりに楯無ちゃん、簪ちゃん、虚ちゃん、本音ちゃんの四人で入っているから長く入りそうだからね」
「やば!士郎は風呂に向かったぞ!」
「ええ!」
「さて入るか」
ここの家の風呂はデカい。温泉とかのよりは広くはないが五人くらいは十分に足を伸ばしても入れるだけの広さはある。
「背中は風呂や体を洗うと沁みるがこれは我慢するしかないな」
背中に貼ってあるガーゼを外して傷を見る。よくあんな重い物が圧し掛かったのにこれだけで済んだのが奇跡と言ってもいいくらいだ。
「とにかく今日一日の疲れを癒しますか」
服を全て脱ぎ、戸を開けるとそこには先客がいた。
「虚ちゃん。胸、また大きくなった?」
「知りませんよ。こら、本音。落ち着いてお風呂に入れないの」
「だって、四人で入るの久しぶりだも~ん」
「そうだよね。最後に四人で入ったのは三年前くらいかな?」
中には楯無さん、虚さん、簪、本音の四人がいた。
パキッ
頭がフリーズしてしまって動けなくなり、固まっていた。それも当然。風呂に入っているのだから生まれたままの状態になっているからだ。
「もうそんなに入っていなかったんだ。それじゃ……あれ?士郎君?」
楯無さんがこちらに気づき、他の三人もこちらを見る。
『……………………………………………………』
俺を含め五人全員が沈黙をして俺はなぜかこの時、言ってしまった。
「……眼福です」
「「「「きゃあああああああああああああああああああ!!!!!!」」」」
顔に石鹸、シャンプー、リンス、洗顔剤がオールヒットし、ここで意識が閉じる。
「本当に申し訳ございません」
俺はあの直後すぐに孝司さん来て助けてくれた。本当に感謝だ。
そして風呂から上がってきた四人にすぐに土下座して謝った。
「まあ、あれは事故だったし、悪気があったわけでもないし、私たちも士郎君に顔にめがけて色んな物当てちゃったからお互いチャラってことで」
「いや、それはできません。事故とはいえ、女性の裸を見てしまったのですからこちらが悪いですし」
ああ事故とはいえ女性の裸を見てしまったな。孝司さんと和也さんは今回は事故で初回だから許すが、次はないと言われた。
ああ、あれは怖かった。
「なにか出来ることがあればなんでもします。そうじゃないと俺が納得できないので」
とにかく謝罪として何かをしなくてはならないな。まあ、可能な限りだがな。
「それじゃ……私の彼氏になって」
「それは却下で。俺には彼女がいるので」
「「「「……え?」」」」
はて?何かおかしなことを言ったか?
「し、士郎君。今、なんて言ったの?」
「彼女がいると言ったんです。ですが、いるという記憶だけ、名前も顔も思い出せませんが」
「そ、そうなの。それじゃ、何にしようかしら」
ああ、言っていなかったな。早目に言おうとしたがタイミングを逃していたな。これはとんだ失態だ。
「ゆーみんに料理を作ってもらうのはどうーかなー」
「料理か。それならば大丈夫だ。俺としてもどのくらい作れるか試してみたいからな」
自分がどれほど料理が出来るか俺自身分からないからな。今のうちに把握しておかないとな。
「私はそれでいいと思うけど、虚ちゃんと簪ちゃんはどう?」
「私もそれでいいですよ」
「わ、私も……」
「と言うことだから明日から三日間料理頼めるかな?」
「分かりました。明日から三日間料理させてもらいます」
さて、明日から三日間、料理することになったな。
うーん何を作ろうか。
「それじゃ俺はもう寝ますね。寝不足は色々面倒ですから」
「分かったわ。私たちは少ししたら寝るから」
士郎が部屋から出て行き、いるのは私に本音、お姉ちゃんに虚さん。
「ねえ簪ちゃん」
「何?」
「士郎君のこと好きでなんでしょ」
「ッ!」
ばれたの!どうして分かったのかな……
「う、うん。そうだよ……」
誤魔化してもすぐにばれるから素直に言った方がいいよね。
「そう。でも、士郎君には彼女がいるって言ってたのよ」
「そ、それは……」
「それでも士郎君を好きなんでしょ」
「……うん」
初めはこの気持ちがどういうことなのか分からなかったけど今日、士郎に助けてもらってようやく分かった。
それなのに……
「お姉ちゃんどうすればいいかな?」
「うーん。さすがに私でも分からないな。恋愛したことないし」
「私も分かりませんね」
「恋愛ゲームなら分かるんだけどねー」
「本音。それは二次元の話になっているわよ」
みんなやっぱり分からないよね。こんな時はお母さんと彩乃さんに聞こうかな。
……やっぱり、やめておこう。聞いたらきっとお父さんと和也さんとの出会いの話になるから。
「あ」
「どうしたの簪ちゃん?」
そうだ。そうだよ。なんで気づかなかったのかな。本音と一緒にほんの少し前に恋愛ゲームでやった事を思い出した。それをやればいいんじゃないか。
「ふ…ふふふふ……」
「えーと……簪ちゃん大丈夫?」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。あ、みんな知っている?」
「一応聞くけど何?」
「略奪愛って、知ってる?」
そう。奪えばいいんだよ。そうすれば士郎と結ばれる。
「「「簪ちゃん!?/簪さん!?/かんちゃん!?」」」
ふふふ。私頑張るからね。彼女さんを思い出す前に私の虜にしてあ・げ・る☆
その時のとある場所では
「んっ!!」
「あ?どうした?マドカ」
「いや、士郎が盗られるような気がしてな。それでなんだオータム」
「なんだそりゃ。まあいいや、調子はいいようだな」
「ああ。士郎が生きていたからな。安心して食欲も戻ってきて大丈夫だ」
「それりゃ良かった。だがな、マドカ」
「なんだ?」
「もう少し食べる量を減らせ」
「は?」
「食べる量多いんだよ!そして、なんで太らないんだよ!」
「そうか?あと太らないのはそういう体質だからな」
「今、全世界の女を敵に回したぞ!」
「知るか!あ、任務があるからそれじゃ!」
「こら!逃げるなー!」
こんな会話をしていたとかないとか。
ここで報告です。
最近、リアルで忙しくなってきたので週一で上げることが出来ない可能性が出てきました。
なので、来週からは不定期になります。
未熟者ですがこれからもお願いします。